活動紹介
活動紹介 : スローライフ・フォーラムinとなみ野全体会シンポジウム2

2010年11月14日のシンポジウムの記録2です。富山県石井知事の発言から。
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(石井) それでは「スローライフinとなみ野」ということなのですけれども、それをどう成り立たせていくか、今後どうあるべきかというのを考えるときには、やはり富山県全体の今のポジションをお話しして、その中で、では、となみ野の散居村はどのように守って次の時代に伝えていこうとしているのか、何が課題なのかというような点を、10分頂いていますが簡潔にお話ししたいと思います。
(以下スライド併用)

#1
 これはまず、富山県人だと誰でも富山県の風景というと、砺波の散居村も大切なのですが、もう一つやはり「海越しの立山」です。これを見て1300年前に大伴家持が、これを言っていると話が長くなりますが立山の歌を歌いました。こういうのが私たちの心の原風景なのですね。
 五箇山もそうですし、立山、北アルプス。日経リサーチが二万数千のサンプルから取ったら、国内で観光資源の満足度が高いのは、上から7番目までに三つ富山県関係が入っています。これ以外の四つはどこかというと、みんな沖縄の離島なのですね。8番目が上高地、10番目が知床です。というイメージで見ていただきたいと思います。
 これは雪の大谷、立山黒部アルペンルートですが、ここは例えば台湾、香港、シンガポール、タイ、こういった暖かい国から来る観光の人にとっては聖地になりつつあります。

#2
 それからスローライフの舞台としての富山県ですが、今お話しいただいたように持ち家率がずっと1番でしたが、最近、持ち家も増えているのですが、まちなか居住を進めるためにマンションや案外借家が増えてきたので、少し秋田県よりも1番下がって2番になりましたが、活力はあると思います。
 それから、住宅当たりの延べ面積なども全国トップです。それから、これは意外に思われるでしょうけれども、勤労者世帯の可処分所得が実は全国2番目なのです。これは三世代同居が多いということもありますが、もう一つは男性もそうですが女性も働き者が多くて、女性の有業率が高く、全国1番です。
 いろいろな見方がありますが、文科省の学力調査だと大体トップクラスをいつも取っています。それから有効求人倍率も、全国の4番目、5番目、6番目というようなところです。

#3
 それから、スローライフの舞台としての可能性というと、大都市と比較すると、例えば物価は東京に比べるともちろん9割程度で安いです。住宅については、土地を買うなどというと10分の1で済みます。借りても3分の1ぐらいで済みます。それから家計で、例えば可処分所得というと、先ほど言ったように、意外と世帯単位で見ると2番目ぐらいに高くなっています。

#4
 それから歴史と文化という意味では、これは高岡の瑞龍寺です。これはお話に出ているあずまだちです。
 それから、砺波は歴史文化も盛んで、出町の子供歌舞伎、この写真ですね。
 これは世界遺産の五箇山です。ミシュランの三つ星も頂いております。
 利賀村に行かれた方々もおられますが、これは劇団SCOTの鈴木忠志さんが主宰しているもので、あそこが本拠になって世界的な演劇の聖地だと言われつつあります。
 これは八尾のおわらですね。

#5
 それから、これは私が知事に就任する前からクマが出てきて、人が一人亡くなるということがありました。今年も久しぶりにたくさん出てきているのです。そのときにタウンミーティングをやって、結局、県民の皆さんのご賛同をいただいて「水と緑の森づくり税」というのを一人500円、中小企業ですと1000円から4万円の規模に応じていただくことにしました。
 一点だけ、私がものすごく感動したことがあります。私が霞が関で税政の局長などをやらせていただいたものですから、国民の皆さんから税金を余計に頂くというのはいかに難しいというのはものすごく骨身に染みています。ですから、私は本当は、超過課税、こういう森づくり税をもらうというのは、頂きたいのですが本当に大丈夫かなと思っていましたが、ところがタウンミーティングを積み上げても賛成の意見が圧倒的に多いのです。それでアンケート調査をしたら、実に85%の人が条件付きではありますが賛成という、驚異的な数字になりました。その後も、人口110万人の富山県ですから、年間に頂いているお金は3億7000万円ぐらいなのですけれども、明るい里山をつくったり、奥山の荒廃したところに、それこそクマが食べられるような、どんぐりがなるような木を植えたりと、こういうことをやっています。

#6
 それから、例えばレジ袋の無料配布の取りやめです。杉並区あたりでは有料化と言っていますが、富山県の人は有料化というのは嫌いなのです。お金を取るのが目的ではなく、レジ袋をやめてほしいということが目的なのです。
 これは県単位で始めたのは、富山県が最初なのです。一昨年の4月、これも散々スーパーと消費者団体、女性団体で議論する場をつくりました。いろいろ紆余曲折がありました。時期尚早とおっしゃる人もいました。しかし、結局、最後はやろうではないかということでやって、本当にうまくいきました。このマイバック持参率が、2年目ですが94%です。これまではいくら努力をしても20%ぐらいでした。しかし、こういうふうに取り決めたら、ではみんなで守ろうよということになる、そういういい県民性なのですね。素晴らしいなと私は感動しています。
 これを全国知事会で、富山県でやってみたらうまくいきましたよと、どうですか皆さんと言ったら、今12県まで広まりました。というように、環境問題も熱心にやっています。

#7
 文化関係も、先ほど利賀村の話が出ましたが、舞台芸術では世界的な拠点になっていますし、子供の舞台芸術も盛んで、16カ国、72団体、2000名を集めて、こういうこともやったりしています。ほかにいろいろお話しすれば切りがありませんが、次に行きたいと思います。

#8
 それから今やっているのは、結局となみ野でスローライフということとも実は関連するのですが、ふるさとの良さ、ふるさとの魅力、それからふるさとの歴史・文化というのを学んで、また楽しんで、そして次の世代に伝えようという運動を実はこの2?3年前から始めています。
 それから、これはふるさと文学の拠点もつくることにして、知事公舎を今年の3月に廃止しまして、これを改造して足りない点は増築をして「ふるさと文学館」というのを今、つくる方向で進めています。

#9
 それから「越中万葉」というのは、これは大伴家持が1300年前に来て、万葉集というのは4516首あるのですが、大伴家持が越中国守の5年間で、越中で詠んでくれた歌が223首あります。その中には素晴らしい作品がたくさんあって、これを高岡の人たちが中心に「越中万葉朗唱の会」というのをずっとこれで20年やっているのですね。去年で20年目になります。今年は平城京で1300年だったから、高岡のボランティアの皆さんがぜひあそこで朗唱の会をやりたいということで、私は奈良の荒井知事に電話しまして、私は大伴家持の歌を歌うから、あなたは額田王か天智天皇をやったらどうだと言ったら、一応実現したのですが。

#10
 それからスローライフで、やはりおっしゃるように過疎も進んできますので、やはり何とか交流人口を増やしたいのです。それで4年後には何とか今、金沢まで新幹線が開業するというふうにこぎ着けました。
 それから、これはかねて東海北陸自動車道も、もう40年近い懸案でしたが、これが一昨年7月に全線開通して、名古屋とも随分近くなって交通量も2倍、それからいろいろなフィッシャーマンズワーフのようなものの売り上げも、それぞれ伸びています。

#11
 それから、「二地域居住」もそうなのですが、この際住んでみたいと先ほど利賀村で移住したという方もおられましたが、「くらしたい国、富山」というのをこれで4年ぐらいやっています。この3年の実績を見ていただくと、大体市町村や県の窓口を通して来て定住した方、それから、Uターンセンター経由の方がいろいろありますけれども、500人弱ぐらいは移住してもらいました。ただ、この中にはもともとおじいさんやおばあさんが富山の人だったという人もいるかもしれませんが、それなりに成果が上がりつつあるのかなと思っています。

#12
 それから、観光も当然交流人口の拡大の一環ですので、いろいろなことをやっています。少し今日の話とやや重なる部分と外れる部分がありますが、国際観光なども今、大変熱心にやっていまして、例えば立山黒部アルペンルートベースで言うと、外国から富山県に来るお客さんはこの5年間で5.5倍になりました。これからもこういったことも力を入れていきたいと思います。

#13
 それから、先ほど皆さんのお話に出ましたが「とやま帰農塾」ですね。それから、都市と農山漁村の交流に力を入れるということで、それぞれボランティア的にやってもらっているのですが、かと言って全く公的支援なしでは大変ですので、多少講師の謝金や交通費に、若干50万円とか30万円ぐらいの支援は市町村とも一緒になって県がしています。実際に、例えば五箇山塾や井波塾など、いろいろやりますと、やはり都会からいろいろな方が来て大変喜んでくださっていまして、これからもこういうことはもっと力を入れてやりたいと思っています。
#14
 それから、となみ野はともかくチューリップも、チューリップフェアはあそこに上田市長がおられますが、来年が60周年でして、これは従来以上に力を入れたいと思います。
 それから、歴史・文化も豊富なとなみ野でして、これは出町の子供歌舞伎です。重要文化財になっていますね。
 それから特産品もいろいろなものがあるということでございます。

#15
 観光スポットが今ご紹介したとおりにありますし、それからお祭りですね。それから、さまざまに利賀のSCOTの舞台芸術もそうですが、「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」など、地元の方も今頑張って、いろいろなイベントを兼ねてやって定着してきています。

#16
 それから景観保全の話も先ほど出ましたが、例えば今、この散居の景観を守ろうということで、実は枝打ちの費用などもばかにならないので、これを例えば戸当たり上限15万円で費用の半分を市町村と県が折半して出しましょうということをやっています。特に危機だったのが平成16年、私がちょうど知事に就任させていただいた年の暮れなのですが、台風23号が来て、屋敷林が本当にばたばたに倒れるということがありました。このときは確か200万円ぐらいまで上限を上げてやりました。
 しかしこれはうれしいことに、先ほどもいろいろ議論がありましたが、この景観を生かした地域づくり協定というのを集落単位に結ぶことにしていまして、これを結ぶと少なくとも10年間は屋敷林を維持するという約束になっています。これに応じてくださっている集落が、今で336集落です。これは、となみ野の散居村の大体6割です。これを何とか8割ぐらいまで上げたいと、砺波の市長さんや南砺の田中市長さんと相談をしています。そういうことです。
 それから、これは井波の八日町地域ですが、井波の分科会もあったようですけれども、あるストリート、例えば八日町通りとかというようなところで景観づくりの住民協定を結びまして、これを維持してきれいにしていこうと。これの修景の保存の費用などは例えば地元が3分の1、県と市町村が3分の1ずつ持つと、このようなやり方をしています。
 それから先ほどお話に出た散居村ミュージアム、これも県・市で、また地元の皆さんと協力してやっています。先ほどお話にあったとおりで、いくら外の人が「散居村が美しいから残してくれ」と言っても、住んでいる人が勘弁してくれということになったら絶対長続きしません。そういう点は、うれしいことに皆さん割に誇りを持って熱心に取り組んでいらっしゃる方が多いので、これはありがたいなと思っています。

#17
 それ以外にも映画をつくったりしていろいろとPRしています。
 これでこちらのスライドが終わりますが、もう1点だけ皆さんに申しますと。このとなみ野の魅力は、こういう先ほどの神野先生の基調スピーチで、となみ野の森と風と水とというお話がありましたけれども、確かにそれも魅力なのですが、もう一つはやはり、私が言うのも何ですが、富山県全体が割に人情の温かいところです。その中でも特に私は砺波市や南砺市は非常に、本当に温かい地域のコミュニティーが残っているところだと思います。
 話が長くなってはいけませんが、例えば浄土真宗も盛んですし、それから先ほど報恩講料理の話が出ましたが、家族みんなで食事を楽しんだりということもあります。それから一点だけ言うと、例えば戦争中に、棟方志功さんが東京にいられなくなって疎開をしました。本当はあの人は青森の人なのですね。富山に来たら、経済的に本当に大変だったはずなのですが、みんなが温かく支えて、そして彼は立派な芸術家になりました。というようなところでして、私はこれからの散居村なりスローライフというときに、水とか緑とか、そういうことも大事ですが、実はそこに住んでいる人間、人情や人の志、そういうことがすごく大事なところで、少しまた後で補足しますけれども、それも実はとなみ野の魅力だということを一言付け加えてご報告とさせていただきます。
 ありがとうございました。

(増田) どうもありがとうございました。
 いろいろな切り口からこの地域のことを語っていただいたのですが、特に、やはりそこに住んでいる人たちのコミュニティーのつながり、そういうことを最後におっしゃっていただきました。
 私も今の知事さんがご説明された資料を見まして、よく地方自治の原則というか、神野先生のお話の中にも他のところでもいろいろなときに出てきますが、よく「自助・共助・公助」というのがありますよね。補完性の原理というのですが。本人、個人、あるいは家族で協力し合いながらいろいろなことを解決していくのですが、どうしてもそれは限度があります。それを地域で、皆さん方のお互いの、互助ともいいますが助け合いで、自助を補完するものとして共助で、みんなで解決をしていく。そして、それができないものを公助ということで税金などを使って解決していく、そのようなことだと思います。
 今の資料を見ていましても、例えば富山の森づくり条例、まさに知事さんのお話にあったように、これは住民にとりましては負担が伴います。岩手県でもやはり導入するときには随分いろいろな議論がありましたけれども、森を守るという意味での賛成が非常に、自分たちが負担してでもそういうことをやっていこうという話がありました。
 それからもう一つ、先ほど見ていましたが、これは知らなかったのですが、マイバッグ持参率が非常に高いです。それからレジ袋を使わないという運動の発祥の地がここだということは、スーパーやコンビニというのは便利さでなっていますから、もう手ぶらで行って、パッと買ってレジ袋でいろいろなものを持ち帰るというのが都会のやり方なのですけれども、そうではなくてマイバッグを持参して、それでレジ袋なしで環境も良くしていく、これはまさに公助で、いろいろな環境問題を最後、焼却処理してたり何なりしていくことではなくて、自助で自分が持っていって、負担をできるだけ少なくしようと。だからそういう富山の皆さま方の気質というか、心意気というのでしょうか、そのようなものがこういうところの数字にも出てきているのではないかと思いました。
 今、知事さんの方からも、いろいろな富山の魅力につながるようなお話がございました。三人の分科会の皆さん、先ほどは丸岡さんからお話ししていただいたので、今度は坪井さんからですが、昨日、私もずっと坪井さんとご一緒していました。あの住まいを見て、私も圧倒されたけれども、坪井さんは完全に圧倒されていたような感じがありますが。ここで言えば三人とも、もちろん私もそうですがよそ者ですよね。よそ者から見て、また別の意味で、別の目で見て、この地域の魅力なり良さなり、あるいは工夫なりということを恐らく感じ取ったのではないかと思います。先ほど分科会の報告ということでお話ししていただきましたが、今度は坪井さん、それから斉藤さん、それから丸岡さんということで、それぞれ皆さん方が感じ取ったこの地域の良さ、工夫、それから新しい発見のようなことを少しお話ししていただければと思います。
 では、お願いします。