2012年4月「さんか・さろん」報告

4月さろん
◆開催日:2012年4月17日(火)
◆場所:東京都千代田区、平河町Mercury Room
◆テーマ「北海道は、フロントランナー」
◆スピーチ:多田健一郎(北海道副知事)
旧自治省出身で、富山、静岡、香川など現場で日本の地域振興を担ってきた多田さん。昨年から北海道副知事として、辣腕をふるっておられます。さんか・さろんの地域を語るシリーズのトップバッターとして、北海道について、縦横無尽にお話いただきました。 会場に大きな北海道地図を運び入れ、「鹿ジャーキー」や有名スイーツの差し入れもいただきました。

●「北海道は、フロントランナー」多田健一郎さん(北海道副知事)
―北海道は、大きい。―
北海道は大きい。どれくらい大きいか。本州にあてはめて考えれば、東京に知床を置くと、函館は高松あたり。「いま、函館で飲んでいるから、飲みにこないか」と友達が札幌の僕に声をかければ、高速で300キロ。東京から岡崎あたりまで。それくらい大きいです。
人口は550万人。福岡県とほぼ同じ。そのうちの190万人は札幌にいますから、人口密度は全国平均の1/50.。宗谷地域は京都府と同じ面積で京都260万人に対して、7万人。別海町は1500平方キロで香川県の1800平方キロに少し欠けますが、人口1万5千人。広々しています。
日本の自然林の6割が北海道にあり、国立公園も6つある。日本のラムサール条約地33のうち12が北海道にあり、どれも面積が大きい。
気候は冷涼で、流氷が接岸する。しかし最近若干梅雨っぽくなったと、みんな言ってますね。

―どう付加価値をつけるかが課題―

経済を見ると、1997年の拓銀破綻で深刻なダメージを受けました。財政で兵庫県とワーストの1 、2位を争う厳しい状況です。 道の名目総生産の推移を見ると、公共事業が1/3を超え、1次産業は比率全国平均の2倍。1戸当たりの耕地面積は全国平均が1.3 ha、北海道は16.5ha。ヘリコプターで農薬を撒いてます。
問題は2次産業で全体の15%。うち製造業は8%。震災で東北の製造業が世界のサプライチェーンの一翼を担っていることが証明されましたが、北海道まではその波が来ていない。
製造業の多くは食品加工で、スケソウダラをたくさん獲っているが、明太子で福岡にまける。もち米生産も日本一でも、餅の知名度では新潟にまけ、ジャガイモもポテトチップになると、埼玉にまける。付加価値がなかなかつけられない。
付加価値でもうかるように、国の特区を食品分野で取った。米は最近魚沼産に引けをとらない評価をもらっているし、海産物はそのままでは儲からないので、加工して付加価値で儲ける方法を探っている。
特産ハスカップベリーの加工、発酵食品で話題の魚しょう、名前が知られてきた小麦「はるゆたか」の加工品、牛乳は静岡の抹茶と協力して抹茶オレなど健康食品分野もねらっています。

―震災のバックアップは北海道に―
話題の再生可能エネルギーは太陽光発電が全国4位、風力1位、水力5位です。注目は雪氷エネルギー。冬の雪を倉庫に入れておいて、夏の冷房に使う。
データセンターは消費電力の4割を空調に使ってますが、北海道なら冷涼な外気でその6割が減らせるし、雪氷を使えば9割減らせる。これに着目してさくらインターネットが巨大なデータセンターを石狩につくってくれました。
震災以降、バックアップ拠点構想に力を入れています。北海道は土地があり余っていて、エネルギー資源があり、13空港と分散する港湾施設がある、水資源も豊富。札幌の都市文化まである。
首都や中京・近畿の都市機能・生産機能の多重化・分散化の受け皿として北海道の価値を打ち出したい。いざとなったらどこにでも助けにいける災害時の防災船を函館に用意することも考えています。
バックアップは北海道で、を合言葉にしたい。

―観光は外国人客の伸びが大きい―
観光客は平成11年の有珠山噴火の前がピークで、その後、頭打ちでした。しかし外国人観光客が伸びて、平成22に74万人。23年は百万人と思ってました。震災で止まったのが、今、復活の兆しが出てきた。
外国人はオーストラリア人がスキー、中国人が春節と冬に来て、季節変動をなくしてくれる。中国人は1億人が見た映画のロケ地釧路のせいで、急激に伸びた。道のGDP18兆円の1.3兆円を観光で稼ぎ、波及効果は1.8兆円と大きい。
北海道がめざす観光は、リピーターで滞在型。地産地消で着地型です。SOHO機能も含めて、ニセコの30泊20万円の商品が売れているようです。
ニセコの1億円以上のリゾート住宅もアジア人にバンバン売れています。理由がわからない中国人の土地購入なども話題になり、これには事前届け出制の条例で対応することにしました。
観光の問題は、ほとんど飛行機で来ますから、最近の飛行機の小型化など、飛行機の要因に制約されることです。
今年夏のJRディスティネーション・キャンペーンは北海道です。温泉、花、自然、食べ物、イベント、スポーツ。楽しい北海道に、ぜひ、来てください。
<まとめ 斉藤 睦(地域総合研究所、NPOスローライフ・ジャパン理事)>