瓦版2024.10.08 第720号 斉藤睦さんら9人のコラム掲載。

 いよいよ、あさって10日が締め切りです。「スローライフ・フォーラムinゆすはら」に行ってみよう、参加してみるか、冷やかしに顔でも出すかという皆さま。ぜひぜひ、お申し込みください。晴れた日には太平洋から瀬戸内海まで一望できる「雲の上の町」で、いまそこにある現実を見据え、地元の方々と真剣かつ和気あいあいと語り合いましょう。

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ご感想を下記にお寄せください。

slowlifej@nifty.com

『緑と絆の木陰』

世界の課題解決先進地域・梼原町
  斉藤睦 (地域総合研究所顧問)
 9月のスローライフの会「さんか・さろん」は、とても面白いものでした。
 ゲストは来る11月9日、10日に行われるスローライフ・フォーラム開催地・高知県梼原町長、吉田尚人さん。人口3000人強の梼原町の個性的なまちづくりを、町長さんの口から実際に伺うと構想力、思想の奥行きの深さ、プロジェクトにかける熱意、ファンづくりの巧みさなど、魅力あふれる内容に圧倒されました。
 町のスローガンのひとつは「世界の課題解決先進地域」。
 いま世界最大の課題は、炭酸ガスの削減。町は国から脱炭素先行地域の選定を受け、二基の風車で1000世帯の電力をまかない、木質ペレットを原料とする熱電供給発電施設、小水力・太陽光発電を設置し、サスティナブルで低炭素なまちづくりに取り組んでいます。
 また、梼原高校までを含め、0歳から18歳までの保幼小中高の一貫教育に取り組み、梼原高校卒業生が次々と志望大学に進学し、2年続けて司法試験に合格する若者がでて、省庁職員にも採用されるなど、18年一貫教育で夢を実現する教育力の高さを誇っています。
 さらに話題となっているのが新国立競技場設計で知られる世界的建築家・隈研吾氏が、30歳代、木造芝居小屋「ゆすはら座」と出会って木造建築に開眼したと語っていること。その縁で、「雲の上ギャラリー」「雲の上の図書館」「梼原総合庁舎」ほか、隈氏設計の建築物が梼原町に6つも誕生。令和2(2020)年には町全体をミュージアムに例えた「隈研吾の小さなミュージアム」をオープンさせました。
 11月のスローライフ・フォーラム。全国からたくさんの人々が集い交流し、梼原町に学ぶ会合です。ぜひ、会場の「ゆすはら座」でお目にかかりましょう。

(写真は「雲の上の図書館」)

<あっちこっちで多事争論>

2拠点生活エンジョイ記
  栗林ゆか (仙台市 フラワースタイリスト)
 7月に北海道池田町で移住定住体験住宅を貸与していただき、3週間ワーケーションを体験しました。50歳過ぎてのワーケーションデビューです。通信環境は住宅内にポケット型Wi-Fiがひとつあるだけとのことで不安もありましたが、まずはパソコンと最低限の衣服や生活用品一式を小さなスーツケースに詰め込み、できるだけ身軽な状態で憧れの土地へ。
 将来の移住を視野に入れつつ家族の理解を得ての旅でしたが、素晴らしい収穫がたくさんありました。タンチョウの声で目覚め、十勝ワイン所有の実り豊かなブドウ畑の脇道を貸与された電動自転車でサイクリング。常にポケット型Wi-Fi(写真:サドルの上)を携帯し、通信も最大の懸案事項だった仕事も、大自然の中でエンジョイしました。
 住宅は家財道具一式完備で3LDKの旧教員住宅。1泊1500円(3週間滞在の場合)で実にリーズナブルでした。地元の豊かな食材を使用しての自炊生活や温泉通いは実に快適で、大自然に咲く花や現地の方々から様々なインスピレーションを得ました。私の場合は仙台市と池田町の2拠点ですが、ぜひ、皆さんも別の土地での日常生活〜デュアルライフ~にトライしてみてはいかがでしょうか。

「南海トラフ地震が来る!」 (下)
  佐藤義孝 (東京都 スローライフの会会員)
 前号の「南海トラフ地震が来る!」の続編は、首都直下地震について。
 皆様ご承知のように、政府の地震調査委員会(文科省)によれば、首都直下地震の30年以内の発生確率は70%と言われている。この確率は首都圏(南関東6都県)で発生した、過去の巨大地震である1703年の元禄江戸地震(M8.2)から、1923年の大正関東地震(関東大震災 M7.9)までの220年間にあった8回のM7クラスの地震の間隔が、平均27.5年であることから計算された確率と言う。従って今日起きるかもしれないし、30年経っても発生しないかも知れないと言う事である。
 東京都の昨年版の防災計画は、首都直下地震での死者は東京都だけで6,148人と想定している。だが、関東大震災の死者10万5千人と比べてあまりにも、過小想定ではなかろうか。
その原因は、関東大震災クラスの巨大地震を前提とせず、中央防災会議の方針の下で「都心南部直下地震」(M7.3)を前提としたためである。
 「最大クラスを想定すると首都圏の被害が甚大となり、海外企業の日本離れにつながる」として、「想定外をなくす」と言う東日本大震災の教訓が生かされることはなかったのであった。
 4000万人が暮らす首都圏を襲う大地震、過小評価による「油断」など許されないのではなかろうか。

トチの実拾い

  京都府綾部市 あやべ水源の里連絡協議会事務局

 綾部市、「水源の里・古屋(こや)」の名物はトチの実を使った特産品です。古屋は住民3人の小さな小さな集落なので、毎年9月には集落外の方々がトチの実拾いのお手伝いに訪れます。今年もボランティア組織の『古屋でがんばろう会』の皆さん、地元小中一貫校の生徒さん、その他綾部市内外からも多くの参加者が集まりました。

 残暑厳しい時期でしたが、森に分け入り木陰に入ると涼やかに。トチの実を求め、奥へ奥へと足を進めます。残念なことに今年は不作で収穫は少なかったものの、こうした参加者皆さんのお力添えに古屋の特産品づくりは支えられているのです。

「人類はどこで間違えたのか」を読んで
  大山皓史 (千葉県松戸市 弁護士)
 中村桂子さんの近著『人類はどこで間違えたのか/土とヒトの生命誌』(中公新書ラクレ)を読み、生命誌に関する多くの知見を教えていただきました。
 なかでも、生命誌に基づく世界観から現代文明、とくに現在の新自由主義、金融資本主義、(機械論的世界観による)科学技術振興で進歩・拡大・支配を進めていく先に未来は見えない(259頁)という点や、経済成長という一つの物差しが示す、拡大・成長・進歩をよしとし、そのために効率だけに価値を置いた現代社会は、誰もが生き生きと暮らせる場になっていない、過当な競争、そこでの敗者は自己責任とされてしまう冷たさは、人間を大切にする社会とは言えない(304頁)などの指摘は、拙著『心ゆたかな社会へ』(東京図書出版)の問題意識と重なるところが多く、共感しました。
 世界は、人新世といわれる人間による(自然と社会)環境破壊の時代に翻弄されています。現代文明のありようを再点検し、皆が明るく暮らせる未来への途を拓いていきましょう。

淡路島の海人(あま)の塩づくり
  人形寺祥弘(兵庫県淡路市 スローライフの会会員)
 塩は、人間が生きていくうえでなくてはならないもので、塩作りはとても大切な仕事でした。大昔の日本では、海水を煮詰めて塩を作っていました。この作業には、塩作り用に作った土器を使うことから、土器製塩とよばれています。
 手順はこうです。粘土を成型し、乾燥、素焼き、本焼きを経て製塩土器にします。ホンダワラを利用して濃い塩水「かんすい」を作り、それを製塩土器で煮詰めると塩の結晶ができます。塩が湿気で溶け出すのを防ぐため、再度加熱し、にがり成分を取り除いて完成となります。
 こうして作られた塩が都(奈良、京都)に運ばれ、淡路島は、塩をはじめ豊かな海産物を届けたことから御食国(みけつくに)とよばれるようになりました。
 今回、炎天下、焚火で土器を焼きましたが、それだけでも実に大変でした。

SUP初体験で海辺暮らしの夢が広がる (下)
  西川展子 (和歌山県海南市 「げんき大崎」理事)
 この夏、SUP(Stand Up Paddleboard)にチャレンジしたもう一つのきっかけは、アウトドア好きの親戚家族が大崎に遊びに来てくれたときの言葉です。「大崎に住んでいたら、いつでも好きな時にSUPできるね。例えば、朝ランニングならぬ朝SUPで体幹鍛えてから出勤するなんてこともできそうで素敵」と話してくれたのです。
 今の若い世代は、そんな風に海辺の暮らしをイメージできるんだ、楽しめるんだ、と私には「目から鱗」でした。
 SUPは、こどもから年配者まで楽しめ、体も鍛えられるし、何より水面と親しめるスポーツです。海が穏やかな時は足を海につけてゆっくりしたり、ボードに寝転んだり,読書もできそうなぐらい、静かでのんびりとした時間を海上で過ごせます。
 まさに自由度満載のSUPに出会ったことで、近い将来、健康で素敵な海辺暮らしを本当に実現して、みんなに勧めたいなあと、やりたい妄想が増えました。

蜻蛉のややこしい話
  松井悠夏 (東京都 スローライフの会会員)
 ふわりと蜻蛉が稲穂に止まるのを見た。「蜻蛉」の読み方はたくさんある。一般的には「トンボ」。俳句や短歌でいまだに見るのは、トンボの古語の「あきつ(づ)」、トンボの別名の「せいれい」、そして「かげろう」。句集や歌集を開く時、「蜻蛉」を何と読ませるものか考えながら読まないと、意味が変わってくるのが日本語の面白いところである。
 三音ならトンボか、あきつ。「あきつ(秋津)」には秋の虫という意味がある一方で、語感がやわらかいので雅なイメージが出るため、ごくたまに「日本」という意味で使われる時もある。
 「蜻蛉魂」(せいれいこん)は「あきつ」のイメージで読ませる言葉で、日本の魂、つまり大和魂的な意味がある。トンボは前にしか進まないことから勝ち虫の意味があり、「蜻蛉魂」には日本が勝つという意もある。
 四音なら、かげろうか、せいれい。カゲロウとトンボは違う昆虫なのだが、昔の人は特に区別していなかったらしい。飛ぶ様子が陽炎のように見えることから付けられたが、その命が短いことから陽炎のような儚さにもたとえられる。
 秋の虫、日本、勝ち虫、儚い……。目の前を飛ぶ蜻蛉が「あきつ」なのか「せいれい」なのか、はたまた「かげろう」なのか。自分のそのときのこころに聞くとおもしろいかもしれない。

『スローライフ曼荼羅』

ハナニラ

  野口智子 (ゆとり研究所)

 高知県梼原町の農家民宿で、初めて「ハナニラ」をいただきました。ニラの花とも、鑑賞用のハナニラとも違う、食用の「ハナニラ」です。民宿のおかみさんが一本ずつ摘んで、サッとゆでて、そこに宿の鶏の産みたて卵とお醤油をかける。そして、小鉢を持って勢いよく食べる。シャキシャキの食感と甘みがたまりません。お刺身やステーキなどより、ずっと贅沢な尊いおもてなしだと感じました。

https://noguchi-tomoko.com/post-10531/

つべ小部屋
地雷原の上で踊る国
  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 県庁所在地で唯一、原発のある松江市で先週、原発の再稼働差し止め決定を出した元裁判官、樋口英明さんの話を聴いた。私が通う地方自治総合研究所もかかわる催しで、全国から約2800人の自治体職員が集まり、地域の課題を話し合うなかでのことだ。
 福井県の大飯、高浜両原発の再稼働を止めた樋口さんによると、住民の反対で建設を断念させた原発は全国で54カ所を数え、「実は市民運動には力がある」のだそうだ。「3.11」後に稼働を差し止めた裁判官も7人いる、という。
 それでも、この地震大国で原発依存が続く現状を「地雷原の上で踊っている」と評しつつ、原発の電力依存度が6%に過ぎない今、原発回帰を進めた政権は「狂っている」と断じだ。被害の甚大さを踏まえて、「原発は国防問題だ」と指摘し、世界一の原発「東電柏崎刈羽」をはじめ、海岸線にずらりと並ぶ原発を「自国に向けた核兵器」とも語ったことも印象深い。
 せっかくの機会だったので、国策として進める原発なのに、なぜか避難計画は自治体に丸投げされ、会場を埋める自治体職員が作らされている現状への感想を聞いてみた。答えは、実効性のある避難計画など作れるはずもないことは明白であり、その事実を自治体の職員が指摘し、地方からどんどん声を挙げてほしい、だった。
 27日に投開票される衆院選で、原発問題はどう語られるのだろう。大きな争点にしなければいけないはずなのに、なんとなく素通りされかねないことを強く懸念している。

<編集室便り>

▽10月「さんか・さろん」は華岡青洲(はなおかせいしゅう)について

 華岡青洲は、江戸時代の外科医。世界で初めて全身麻酔を用いた乳癌手術を成功させた人です。“医聖”と呼ばれますが、単に医術だけでなく、彼は地域づくりに尽力し、人の道を説きました。

 今回は「道の駅 青洲の里」の駅長・神徳さんから、華岡青洲についてのお話をうかがいましょう。かつての偉人から学びましょう。詳しくはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2024/10/02/%ef%bd%93-322/

日時:10月15日(火)19時から Zoomで
講師:神徳政幸さん(一般財団法人 青洲の里代表理事)https://seishunosato.com/
テーマ:「世界の医聖華岡青洲 世のため!人のため!地域のため!」
申込:10月12日までにメールで

参加費:スローライフの会会員は1000円、(年間参加費3000円支払い済みの方は結構です)一般は2000円

 

▽10月10日が「スローライフ・フォーラムinゆすはら」泊りがけ参加の締め切りです。

 皆さま是非、11月9日・10日、高知県梼原町へ。詳しくはこちらから。

フォーラムチラシhttps://www.slowlife-japan.jp/2024/09/12/%ef%bd%93-318/
行程詳細 ⇒https://www.slowlife-japan.jp/2024/07/02/%ef%bd%93-309/
※飛行機利用の方は11月9日(土)11時 高知空港で、JR利用の方は9日 11時30分高知駅で、チャーターバスがピックアップしますので梼原まではバスで一直線で行けます。どなたでも参加できるフォーラムですが、宿に限りがありますのでお早めにご一報ください。メール slowlifej@nifty.com

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メール slowlifej@nifty.com 電話090-7433-1741(野口)

※ご連絡はなるべくメールでお願いします。

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