瓦版2026.1.27 第751号 川島英樹さんほか、多数コラム掲載。
瓦版2026.1.13第750号 中村桂子さんほか、多数コラム掲載。


今週は列島各地で気温が20度を超え、北国の天気予報の「雪だるま」が「傘」に替わってきました。「春が来た」と嬉しくなるには、まだまだ早すぎますが、だんだんと日差しの温もりも増しています。同時に、例年に比べて雨が極端に少ないため、花粉が多く飛び交いそうです。まもなく3月。卒業、お別れのシーズンですね。
*写真は「水カニ」。脱皮直後のズワイガニで、甲羅が柔らかいです=福井市にて
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『緑と絆の木陰』
誕生日に寄せて
神野直彦 (東京大学名誉教授 スローライフの会顧問)
ジェームス・ディーンの誕生日である2月8日の翌日、2月9日は私の誕生日である。二人とも温もりの恋しい、寒さ厳しき冬の季節に生まれている。今年、私は自分の誕生日に、夜の帳も明けやらぬ午前4時に、寒さに震えながら起きることになってしまった。衆議院選挙についての印象を、早朝のNHKラジオで述べるためである。
スタジオは騒然としていた。選挙結果はもう出ていたけれども、私のわずかな出演時間の間にも、オリンピックの速報が入ってくるからである。そうした雰囲気に戸惑いながら私は、主権者である国民が社会のあり方を決定する大切な機会である選挙では、国民が冷静に慎重に判断することが求められるのに、今回は時間的余裕もなく、何が問われているのかもわからないままの選挙になったのではないかという印象を述べた。
自分たちの生活と未来を深く考えることもなく、選択した選挙であることは、財政学者でノーベル賞を受賞したブキャナンの「公共選択理論」が奇妙に妥当している事実が、見事に物語っている。ケインズ流の財政政策論では、デフレで不況の時期には、減税して「積極財政」を展開して、景気回復を図り、インフレで好況の時期には、増税して緊縮財政を展開して、景気の過熱を抑えることになっている。ブキャナンはこうした財政政策論は、政治が公共性を体現した賢人たちによって運営されているという「ハーヴェイ・ロードの前提」にたっていると批判する。
つまり、政治家も国民も利益を求めて行動する大衆民主主義のもとでは、好況であろうとも、政治的に受けのよい、減税と「積極財政」が繰り返され、財政赤字が常態化し、インフレを抑えることができなくなってしまうと、ブキャナンは主張し、憲法で均衡財政を規定することを提唱したのである。
デフレ経済からインフレ経済に転換したというのに、今回の選挙ではブキャナンが指摘するように、減税と「積極財政」の大合唱となってしまった。しかし、こうした循環的問題の背後には、ヴィジョンを描いて取り組まなければならない構造的問題が控えていることを忘れてはならない。
とはいえ、私たちは社会に幻滅することなく、戸惑いながらも、理想を求め続けなければなるまい。ジェームス・ディーンのように。
※3月6日、神野先生登壇のシンポジウムがあります。詳しくはこちらから。
https://www.slowlife-japan.jp/2026/02/21/%ef%bd%93-374/

<あっちこっちで多事争論>
イマージュと総選挙
太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)
新たに当選した衆議院議員の顔ぶれと、首都圏を中心に日本列島での政権党一色の図を掲載した新聞を見て、何か気持ちが悪くなった。異論反論を許さない政治状況の出現だからだ。
今回の総選挙を振り返ると「群衆心理」(ル・ボン、1895)の様相だった面があるのではないか。フランスの学者ル・ボンが18世紀のフランス革命を題材にし、人々が思考を停止し判断能力を失い、行動に出たことを分析している。
「私かほかのだれかを選ぶ選挙」「国論を二分するテーマを実行するための選挙」など歯切れのいい短い言葉を重ねて言い続けた今回の選挙での為政者。ル・ボンはフランス革命は自由、平等など短い言葉、ある意味あいまいな言葉を連呼することで人々のイマージュ(心象)を集団精神として形成、人々の日ごろの「考える」心がなくなることを強調している。
一方、新聞、テレビなどがつくってきたこれまでの情報空間は置き去りにされたこともはっきりした。SNSを駆使したデジタル・ネットの「討論」過程なしの情報空間の影響力がますます大きくなった。多様な「コミュニケーションとコミュニケーションが接続し続けるのが社会」(ドイツの社会学者ニクラス・ルーマン)をどうつくるか。情報を一方的に伝達するだけがコミュニケーションではない。既存メディアが「プロパガンダ・メディア」に陥らぬよう、真剣に考えなければ生き残れないこともはっきりさせた総選挙だった。
本当に寒かった選挙
しばやまのえみこ (東京都 スローライフの会会員)
「……選挙管理委員会の皆様は大変だと思います」
……のようなことを、ソーリは言っていた。政治家の言葉をこれほど親身に感じたことはない。「そうだよ、その通りだよ! あんたの言う通り、大変だったよ、本当に!」
選管の忙しさは当然、現場を運営する選挙従事者、いわゆる選管のアルバイトにも影響する。投票所入場券が届かないことは当初より指摘されていたが、何もかもが初めての経験だらけ。選挙関連のバイトも人集めに苦労していたようだ。
一口に選挙関連の仕事と言っても多数ある。実施する自治体はもちろん、マスコミ関連もあるからだ。
私が携わった投票所にも、出口調査員クンはやって来た。
「アンケート、集まっている?」
「まあまあだね。偏ってもいけないし」
「年齢とか性別とか?」
「そう。いろいろルールがあるから」
しんしんと雪が降りしきる中、肩を丸め、小刻みに足踏みなどしながら、組む腕には腕章、そしてタブレットを抱えている。
開けっ放しにされた入り口のこちらとあちら。
会場の外には出られない選挙従事者と、中に入れない出口調査員は、吐く息を白くしながら言葉を交わす。
やがて時間が来ると、雪が降りきしきる中、彼は次の会場へと去って行った。次は、近くの小学校らしい。

SNSと民主主義社会について
大山皓史 (札幌市 スローライフの会会員)
もし高市政権が、国論を二分する憲法9条の改正や非核三原則の見直し、防衛関連法制の整備強化などに突き進み、(容易に)戦争ができる国に変えようとするのであれば、それはSNSが濫用されたネガティブ面の結果でもあると思います。
とはいえ、一番の問題はSNSを利用する国民の側にあると思います。根拠の無い偽情報の発信者の良心の欠如と無責任さ、偽情報を簡単に信用し同調する、受信者の主権者としての責任意識の希薄さなどが、少なからずあると思うからです。もし目先の自己の利益しか眼中になく、人類共同体の平和、地球環境の保全などの公益に対する責任を省みないのであれば、そのつけは、いずれ自分たちに回ってくるのではないでしょうか。
以前にも書きましたが、現代社会は①自分の経済的利益を最優先にする社会(その極が新自由主義思想=市場原理主義に主導された現在のマネー至上主義社会)、②お金で買えない価値もあることを理解し(経済的損得に優先して)他者や自然環境と調和して共生しようとする社会に分けられると思います。
理想の未来社会は、①ではなく、スローライフの精神と親和的な ②の先に見出せるでしょう。②の具体的なイメージをSNSなどで発信することで、一人ひとりの国民が公益意識と共に独立自尊の精神で、主権者としての自覚にめざめる。そんなSNSのポジティブな可能性にも着目すべきだと思います。
選挙結果を見て
辻亜月子 <京都市 「さんか・さろん」参加者>
自民圧勝の情勢調査に暗澹たる気持ちでしたが、開票速報を見て、やっぱりと思うと同時に、高市さんは日本のトランプになると思いました。彼女が政治家になった時から、上司に媚を売る女子社員のようだと思っていました。一見信条があるようですが、自分をかわいがって重用してくれる上の政治家と同じことを言うだけの人だと思います。歯止めがなくなったので、彼女が大好きな安倍元首相がやりたかったことを全部やるだろうと予想します。誰も止める人がいない、恐ろしい状況になりました。
昨夜の「さんか・さろん」の中で、SNSを信じる人は、そもそも新聞も読まないしテレビも見ないと言われていました。大手メディアは嘘ばかり報道するからなのだとか。遠慮せずに言わせていただきますが、「さろん」参加者の中に、SNSを見ないという方がおられました。SNSを見ないで彼らは嘘を信じているという方も、SNS信者と同じなのではと思います。要するに、自分が信じたい方の意見だけを見て、他方は見ずに(聞かずに)批判する点が同じではないか、ということです。彼らが何を見、何を聞いているのか一度覗いてみてはどうでしょうか。
SNSにそれほど影響力があるのならば、自民党に対抗する人々もSNSの利用の仕方を研究して対抗するべきでしょう。自民党はその辺をよくわきまえていたということに尽きます。これから、日本がどうなっていくのか、自分の子や孫が戦争に巻き込まれないよう、私たちがしっかりしなければと思う次第です。
「さんか・さろん」に参加して
高橋征吾 (東京都 スローライフの会会員)
とても充実した時間でした。「高市フィーバー」が列島を席巻する中で、日本各地からの参加者に「正気」の人が多かったことに、少しだけホッとした気分になりました。集まって話をするのは大事なことですね。
坪井さんも指摘された解散権の乱用と小選挙区制は改めて問題だと思いますし、皆さんの話を聞く中でスマホ(SNSやYoutube)による「汚染」も看過できないレベルにまで来ているのだなと考えさせられました。
超巨大与党が誕生したことで、これからはマスコミでも市井レベルでも「いや、そうはいうけれども」という異論・反論がより一層大事になると思います。
便利さの裏で失われる「大切なこと」
関根秀昭 (横浜市 スローライフの会会員)
現代社会ではテクノロジーが急速に普及し、日常生活は格段に便利になりました。しかし、その恩恵を享受する一方で、私は拭いきれない違和感を抱いています。これでいいのだろうかと思うこともあるのです。
例えば、PCやスマホの普及により手書きの際に思い出せない漢字が増えました。思い出す前に検索し、考える前にAIに聞くなど、思考の補助としてデバイスが手放せなくなっています。また、手軽で美味しい冷凍食品やレトルト食品の利用は、食べてもらいたい相手を思い浮かべる情緒や、調理における科学的な探究心を奪います。ゴルフのスコア管理も、タブレットでの自動集計は効率的ですが、手書きでスコアを記入した時代にあった一打一打への深い反省や振り返りの機会を失わせています。
利便性の向上は時間的余裕をもたらすはずですが、実際にはその実感はなく、むしろ人間にとって大切な思考のプロセスや精神的な豊かさを無くしているのではないか。効率化の波の中で、私たちが無意識に切り捨てているものの重みを問い直しています。
あの頃の冬
舟越隆裕 (栃木県日光市 珈琲CoCom)
厳寒の冬ですね。でも、私が子どもの頃の日光は、こんな寒さが当たり前でした。
小中学校には「寒休み」というものがあり、1月の最終週がお休み。(その分、夏休みが短かったのですが)
と言っても、家に篭るわけではなく、スケート三昧の日々でした。かつては、徒歩で行ける範囲にいくつものスケートリンクがあり、それは、先生やPTAが一晩中水撒きをして作った天然のリンクだったのです。今思えば、感謝の限り。
もちろん、授業でもスケートがあり、冬の一大イベントは、学校対抗のスケート大会。他の学校の子どもたちとの笑顔の交流も生まれました。
まさに、大人の世界も子どもの世界も一体となったまちのコミュニティが自然に生まれていたのですね。
数十年前は、クリスマスはホワイトクリスマス、初詣は、凍った足元に気をつけながらのお詣り・・・。そんなことを思い出す今年の冬です。
*写真は、10年ほど前の日光市霧降の屋外スケートリンク

親子の時間
南條青志 (和歌山県紀の川市 スローライフの会会員)
両親を連れて大阪伊丹空港の伊丹スカイパークに出かけました。今年で85才になる父は、普段ほとんど外に出かけません。何とか連れ出して体を動かしてもらおうと思い、暖かそうだし、飛行機でも見に行こうと連れ出しました。
和歌山から途中でトイレ休憩をはさみながら車で2時間。近くで腹ごしらえをして伊丹スカイパークに到着。滑走路に沿って作られた、飛行機の離着陸を思う存分楽しめる公園です。
父は学生時代は航空部に所属してグライダーで学生チャンピオン。社会人になってからも自家用操縦士を取得するなど空が大好きな人です。よろよろ杖をつきながらも、次々と着陸したり、飛び立っていく飛行機を静かに眺めていました。
2時間ほどして、「もう限界や」。本人なりに頑張っていたらしい。
「また空飛んでみたいか?」
「いやもうええわ。これで飛行機も見納めやな…」
まあ、そう言わずまた行こ。行けるうちはね。
15年目のフクシマ「電柱」
金井紀光 (東京都新宿区 写真家)
昨年はまだ電柱部分がわずかに見えていた。今年はこの姿。果たして機能しているのか?(2026年1月、福島県大熊町)

『スローライフ曼荼羅』
ゼロチャレ
野口智子(ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)
「ゼロからのチャレンジ!!~わたしたちの町にお城がある理由~」というマンガの略称です。ブドウの育たない寒冷地・北海道池田町で、自治体として初めてワインを造り、「ワイン城」と呼ばれるブドウ・ブドウ酒研究所ができるまでを、子ども達に分かるように描かれたマンガ本。2人のお若いママさんが描きました。本作りもゼロからのチャレンジでした。そしてこのほど、発刊1周年の催しを、イベント素人の女性たちが“ゼロチャレ”し、たくさんの子ども達が集まりました。https://noguchi-tomoko.com/post-11084/

■■つべ小部屋■■
これまでの4年、これからの4年
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
冬季五輪の閉会式の2日後だった。2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻した。あれから、きょうで4年になる。再びオリンピックの熱い戦いが繰り広げられた。でも侵略戦争はまだ続いている。この国はメダルラッシュに沸いた。でも戦場では戦死者が増え続けている。「りくりゅうペア」の涙にもらい泣きした人は多いだろう。でも同じテレビ画面に、殺された兵士の家族が流す涙が映し出される。
なぜ、ウクライナの戦火はやまないのか。私たちに何かできることはないのか。4年間、堂々巡りをするばかり。そして、世の中どうなっているのか、どうなってゆくのか、と歯噛みし、途方に暮れる。
ガザでのイスラエルの虐殺を支える米国大統領の横で飛び跳ねていた女性が首相にふさわしい、という民意が総選挙で示された。圧勝した彼女は記者会見で、憲法と皇室典範を変えたいと意気込んだ。それが首相を応援した多くの有権者が望んでいることなのか。
いや、今回、自民党に投票した人々は自覚していようがいまいが、1月27日号の小欄に書いた通り、非核三原則が葬られることも、武器輸出が拡大することも、選択的夫婦別姓が遠のくことも、そして皇室典範を変えて女性・女系天皇への道を閉ざすことも容認する側にいる。
衆院議員の任期も4年。これまでの4年と、これからの4年、どちらの方が歯噛みし、途方に暮れることが多いだろう。世の中どうなっているのか、どうなってゆくのか、と。
「追記」
4年前の瓦版に書いたことを改めて。
ウクライナ侵攻が第3次世界大戦の始まりだと唱える人の話。
第1次世界大戦の開戦日は1914年7月28日。19+14+7+28=68。
第2次世界大戦は1939年9月1日で、同様に19+39+9+1=68。
そして今回の2022年2月24日も、足し合わせると・・・・。
<編集室便り>
▽2月の「さんか・さろん」の感想がたくさん届きました
坪井ゆづる・スローライフ瓦版編集長による、「選挙結果をどう見るか」の話でした。皆さんからもたくさんの意見が出ましたが、さらに投稿が届きましたので今回ご紹介いたします。それだけ、今回の選挙に対して、言いたいことがあったのでしょう。こんごもどうぞ、瓦版あてお寄せください。
▽2月の「さんか・さろん」をYouTubeにあげました
2月17日、講師:坪井ゆづる(地方自治総合研究所客員研究員 スローライフ瓦版編集長)「選挙結果をどう見るか」
https://www.youtube.com/watch?v=3WlBK7QT8iE&t=113s
講師のお話部分だけを録画しております。お時間あるときご覧ください。

▽投稿について
この瓦版への投稿は、500字くらい、写真1枚、連載は上下2回が原則です。投稿できるのはスローライフの会会員に限ります。あくまで原則ですので、会員以外の方で投稿希望の方はご一報ください。
締め切りは毎月、第1木曜(第2火曜配信)と第3木曜(第4火曜配信)です。
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