3月さろん◆開催日:2012年3月21日(水)※毎回第3火曜日開催の会ですが、春分の日のため、翌日の開催としました。◆場所:東京都千代田区・都道府県会館◆テーマ「映画『幸せの経済学』と講演の夕べ」◆スピーチ:神野直彦(東京大学名誉教授、スローライフ学会学長 3月のさろんは、映画『幸せの経済学』と講演会でした。さろん始まって以来の70人を超えるみなさんが馳せ参じ、会場は熱気にあふれていました。 スローライフ学会長・神野直彦さんの映画の深奥に迫る講演の後、映画上映。ヒマラヤの小村ラダックが、押し寄せるグローバリズムの波に洗われる様子と、専門家のコメントで構成された内容に、日本の行方を考えさせられ、懇親会の会場まで熱い議論が続く一夜でした。●「注釈『幸せの経済学』」神野直彦さん(スローライフ学会長 ) 今日上映の「幸せの経済学」を観るにあたって、ラダックという土地、また、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ監督のお話をいたしましょう。 私は、少々前の話ですが、国連から依頼され、財政建て直しのためウイグルに向かったことがあります。私以外に開発経済学の専門家2名が参加しました。そのお二人は半袖のサファリジャケットで、私は背広にネクタイ、長袖のワイシャツです。 私は、お二人が漫画を読んでいないなと思いました。漫画とは、イギリスの特殊部隊のサバイバル専門教官マスター・キートンが主人公で、日本人必読の漫画です。(笑い)。 ウイグルは現地語で“生きては帰れぬという意味のタクラマカン砂漠を越えて行きます。夕方5時でも42度、最高気温50度の砂漠です。漫画では、砂漠で長袖、長ズボンのマスター・キートンが生き延びる。 私はこれを読んでいたから、生き延びる格好で行ったのですが・・・。残念ながら筑波の教授が惨殺される事件があって、日本人は危険だからと火炎山で帰らざるを得ない結果となってしまいましたが。 実は、私がウイグルに行くはずだったルートは、わずか26歳、書を読むことしか趣味がない隋の天才少年三蔵法師が法を犯してまで629年唐の長安を旅立ち、三蔵を持ち帰るためにカシミールに向かったその道でした。 そのカシミールはアフガニスタン、パキスタン、インドの三国がきびすを接する位置にあって、現在の世界秩序“パクス・アメリカーナ”が崩壊していく縮図のような場所です。 カシミールには国際法上の国境がありません。今はインド、パキスタン、中国に3分割されて実効支配されている。治安が安定していません。2008年にはカシミール分離独立運動が起こり、いわば血塗られた場所です。 今日の映画に登場するラダックはインドが実効支配し、リトルチベットと呼ばれ、日本人の渡航許可はカシミールではラダックしか降りない。カシミールの中では比較的安全なところですが、中国も自分の領土だと言い出していますから、治安がいいといってもどうなるかわからないといった場所が、ラダックです。 映画監督のヘレナ・ノーバーグ=ホッジはスエーデン人。大学で言語学を専攻し、1975年にラダックに入り、最初の英語とラダック語の辞書を作成した女性で、もうひとつのノーベル賞「ライト・ライブリッド賞」を受けています。 映画では、そもそもテロも暴力もなく幸せに暮らしていた人々が、今ではお互いに殺し合いをすることになっているいわばグローバリゼーションの解決方法はローカリゼーションしかない、といっています。※この後、映画の上映となりました。<まとめ 斉藤 睦(地域総合研究所、NPOスローライフ・ジャパン理事)>“