奈良県十津川村谷瀬集落、人口3681人の村で、62人が住む集落。スローライフ・ジャパンは今年度、ここの「谷瀬集落づくりアドバイス事業」をお手伝いしています。そもそも谷瀬(たにぜ)と出会ったのは、2012年の7月奈良県の「スローライフによるむらづくり事業」です。十津川村に調査ヒアリングをし、谷瀬集落自慢の「谷瀬の吊り橋」を訪れました。かつて何度も流された橋を住民が行政に頼らずに、自らのお金を出してかけたという吊り橋です。その物語に、谷瀬の気概を感じたものです。その後2年間、奈良県の「一町一村一まちづくり構想策定業務」で通うことになりました。寄合を何度も重ねて、集落の皆さんと作ったのが「吊り橋に続く“ゆっくり散歩道”構想」です。これまで吊り橋までは観光客が来ていましたが、そこから先、集落内には外部の人はあまり入ってきませんでした。集落の人も、外部の人を積極的に呼び入れませんでした。しかし、人がどんどん減って、他所の人の手を借りなくては、また他所の人に住み着いてもらわなければたちいかない。谷瀬の人は、これからは外に向けてむらを開こうと決意したのです。それが具体的には“ゆっくり散歩道づくり”でした。かつて吊り橋を掛けたように、役場に頼むのではなく自分たちの力でできることはやって行こう、と。散歩道といってもゼロから道を作るのではなく、普段使っている生活道と近くのお宮さんに続く細道をあわせて、1600メートルをそう呼ぶことにしました。もともと集落で「ゆうべし」(柚餅子)や「高菜漬け」を作ったり、「吊り橋茶屋」を運営したり、団結力はあります。自分が、これならできるということを具体的に書き出して、少しずつ実行してきました。みんなで歩き「ここの木を伐れば吊り橋が見える。展望台にしよう」とか、「もっと花を植えよう」「ベンチも道標も必要だ」と。やるべきことがどんどん具体的に見えてきます。手作り整備を進めて、今年の4月には“ゆっくり散歩道”オープンのテープカット。その数日前に、マップや地図看板、道標がようやく間に合いました。そして他所の人が歩き出すと、「階段には杖がいるだろう」とむらの高齢のおじいちゃんが、手作りで竹の杖を用意したり、ベンチももっと増やしたり。都会人にはない技術がむらの人にはあるので、こういうことはたやすいのです。むらのお宮さんには、先日、由来看板が取り付けられました。神主さんである集落の総代さんが文章案を作り、みんなで検討し、むらの筆達者の人が書きました。由来文には「・・・まさに村づくりのために生まれた神社である・・・」とあります。谷瀬の人たちの今の想いなのでしょう。絵馬もおみくじも用意しました。奈良女子大のの学生さんも通い始め、若い助っ人も出てきました。可愛いイラストの案内看板は、学生さんと地元の人たちの合作です。この秋には、村の祭りの餅まきに他所の人を呼ぼうと企画中。だんだんに「縁側カフェ」や特産品開発の「加工所」も、と考えています。人口を増やしたくて新規移住者に来てほしくとも、むらびとがよその人との交流に慣れ、それを喜びにできないとうまくは行きません。空き家を不動産業的に売り出しても、お互いの気持ちが通じなければ・・・。まずは交流心を育て、交流に慣れることからスタートした谷瀬の「ゆっくり散歩道プロジェクト」。さらに、むらづくりへと構想が広がっています。みんなが必ず発言する「寄合」(ワークショップ)が、話すだけでなく必ず実行に繋がる場になるよう、スローライフ・ジャパンは心がけています。11月9日(日)は、この美しい集落ののどかなお祭り。「谷瀬の吊り橋」を渡ったその先の「ゆっくり散歩道」を歩いた丘の上、森山神社で餅まきです。“谷瀬の餅まき・秋”、お昼からの開催。参加希望の方はスローライフ・ジャパンまでご一報ください。 メール ●ご案内はこちらから谷瀬の餅まきチラシ“