第130回 「さんか・さろん」は7月18日、高知市の『はりまや橋商店街』にあるキッチンスタジオより、「全国初の地域系学部で何を学んでいるのか~高知発・地方創生推進士の活動~」をテーマに、高知大学次世代地域創造センターの川竹大輔さんと、在学中の稲葉涼太さん(高知大学地域協働学部4回生)と卒業生の檜山諒さん(キッチンカフェBrew管理人)の3名にお話しいただきました。
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~まずは川竹大輔さんのお話です。~
高知大学では、平成27年4月、全国に先駆けて「地域協働学部」が創設された。地方の人口減少が顕著な中で、ローカルな大学ができることは何か。地域の課題解決をより実践的に学ぶ。4年間の段階的なカリキュラムを組み、実習時間は年間200時間、定員60名の学部。入学生は他校に比べ、県外率が高く、卒業後も高知県に残り社会人として活躍する率が高い。
高知県の人口68万人の内、学校関係者はおよそ1割にのぼる。教員を各地に配置して、各地での「集落活動支援センター」や過疎対策に参画しやすい種蒔きをして実習地を作っている。学生は報告などの提出物も多く、地域の中でコミュニケーション力が育っていると感じる。
地域への深い理解と愛情を証明する称号『地方創生推進士』の育成に注力している。具体的には、高知の中小企業を知る科目は人気で7年目になる。よさこいを体系的に学ぶ『よさこい概論』や『えんむすび像』、社長の”かばん持ち”をしながら地域や仕事のノウハウを学ぶ『社長インターンシップ』などもある。地域・企業・学生のマッチングにつながっている。
~稲葉涼太さんのお話では、さらに画像や感想を交えた学習の様子が紹介されました。~
高知大学地域協働学部は、実習時間が長い事で知られていて、そこが魅力で入学した。これまでの実習で、廃校活用・集落・SNS発信・キャンプファイヤー・ピザ窯つくり・日曜市・田舎ずし・高校生との交流・後輩へ継続マニュアル作りなど、コロナ禍で交流は難しかったが、様々な実習ができた。
地方が抱える慢性的な人手不足とコロナ禍での学生をマッチングする『学生団体ディスティニー』は、460名が登録し、389名が実施した。高知のNPOを一堂にグループディスカッションする『こうちNPOフォーラム2022』の実行委員長を務めた。その際、協賛企業を募り、その後の就職にもつながった例は印象的。全学年を集めて『チキョフェス2022』も実施できた。
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後半の意見交換はとても活発な意見や質問が出ました。
特に参加者は大学の教授経験や、地方創生に携わっている方が多く、一方、川竹さんにも、今回の「さろん」で、周知と連携を望むお考えがあり、今後につながる有意義な時間になりました。以下、参加者からの意見や高知の方々のお返事などの抜粋です。
・イキイキとして気持ち良いお話が聞けた。『地方創生推進士』これを国家資格にしたらどうか。学生だけに限らず、社会人や移住者・元気な高齢者にもマーケットはあるのではないか。また、その人たちの交流会なども。
・『地方創生推進士』を地方を切り拓く『ローカル・イノベーター』と位置づけている。学生の共感を得られている。
・『地域協働学部』は高知だけの名称。全国にある地方創生学部は統一した名称がない。
・少子化により大学が生き残るための側面も大事で、成功例だと思う。
・学生が能動的に4段階の学びで即戦力になることが分かった。その中で、キーポイントとなる瞬間は?
・地域住民との相性が大切で、「夕飯食べていきなさいよ!」の関係になれるように、相性のサポートも大事。
・学生は自由だ。学生が主体となって能動的に、良い距離を保っている。
・若い力=労働力として期待されてしまう事があり、地域に入った時に、”労働力”だけにならないよう、理解を得るのに苦労したこともあった。
・県の「産業人材コーディネーター」の肩書に就いた。学生と産業・企業のマッチングの成功例が聞けて、大きなヒントを貰った。
・各々の待っている地方の個性(強味・自治)と、コンテンツをつなげていける人材育成が必要だ。行政は学びの体系づくりを取り組むべきとあらためて感じた。
・高知の県民性にフラットさがある。礼儀は大事だが関係性を作るハードルが低い。
・社会には必要でも、学内では新しい学部に対する風当たりはどうなのか?と気になる。
・モデルに充てはまらない新しい試みは理想されにくい。学部創設にあたっては、文科省と大学とカリキュラムマップのすり合わせが必要だったと思う。
・SNSの利用は即効性はないが、積み上げられる。費用は掛からない。インサイト機能で、どんな人が興味を持っているのか調べられる。
・若い人の発想力には素晴らしいものがある。さらに発想を育成するような世界観や視野を大事にしてもらいたい。
・商品開発やニーズなど、あるものの組み合わせだけにとどまらないような学びが刺激になる。
・即戦力の学部は素晴らしいが、アメリカの大学の「Wメジャー」のように、2つが専攻できるのが望ましい。数百年のアカデミックな学問を”コア”に、自分らしく学び続けられる”好き”も同時に持ってほしい。
10年後、20年後のヴィジョンについての質問に、稲葉さんは「人と人をつなげる川竹さんのような存在になっていたい」との答えでした。
スピーカーの川竹さんは、2021年12月の「さんか・さろん」『よさこいは、日本にどう広がり、どんな役目を果たしたか」に続けて2回目のスピーカーでした。
前回は話が早すぎた!とのご自身の反省から、今回は学生さんと共に、時間配分も気をつけて…と、優しい先生のお顔も伺える回となりました。
参加者は30名でした。