瓦版2025.7.22第739号増田寛也さんほか、多数のコラム掲載。

 いよいよ、ついに、とうとう炎帝さまのお出ましです。溽暑から猛暑、酷暑、激暑、炎暑、熱暑、劇暑に見舞われ、汗だらだらの日々が続きます。今年あたり、まだ広辞苑には載っていない爆暑、虐暑、悶暑、惨暑、沸暑、燃暑、焼暑、焔暑、危暑なんて言葉も生まれるかもしれません。まさか「死暑」へと続いてしまわぬように、くれぐれもご用心を。

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『緑と絆の木陰』

街の書店の生き残り

  増田寛也 (野村総合研究所顧問 スローライフの会共同代表)

 街の書店が次々と姿を消している。書店のない自治体は、全国で3割近くにのぼる。私が小学生の頃から出入りしていた、東京・目黒区自由が丘駅前の老舗書店「不二屋書店」も、この2月にとうとう店を閉じたと言う。ネットで注文すれば翌日には手元に届くので、近くの書店が消えても不便さは感じないという人も多いはずだ。読書じたいタブレットでする時代である。しかし、書店に入ってゆっくりと本を見て回り、何冊かはペラペラとページをめくり、その上で買うかどうかを決める。こうして得られる思いがけない一冊との出会いは、書店でなければ到底ありえない。

 政府が6月に書店活性化プランをまとめた。経営の効率化への支援、自治体や図書館との連携などが盛り込まれている。政府がこの領域に乗り出すことに違和感を覚える向きもあろう。また、経営の巧拙より品揃えにおける店主独自の視点が重要な事は、独立系の小さな書店が多くの支持を集めていることからも明らかだ。

 私は、問題解決のためには、幼児期から本に親しむ機会を増やす地道な取り組みが一番重要だと思っている。しかしそれには相当な時間が必要となり、結果が出てくるのを待つ間に書店の灯りが更に消える事は何としても避けたい。プランを最大限活用するも良し、特定の分野での専門性をとことん追求するのも良し、一店でも多くの書店が生き残ることを願う。

<あっちこっちで多事争論>

夏は水辺とワインに癒されて (上)

  安井美裕 (北海道池田町長)

 私は「川」のある風景が大好きです。今月9日、北海道池田町では、水辺に親しみながら食を楽しむ「水辺で乾杯 池田町」というイベントが開催されました。

 平日の夕刻、青いものを身につけ、河川敷に集まってきた町民400名余りが、川の向こう岸の日高山脈に沈む夕日を見ながら、町内産のスパークリングワインで乾杯し、キッチンカーや若者有志が出店する露店で販売する地元食材をふんだんに使った「ピザ」、いけだ牛の「メンチカツ」などをワインと共に楽しんでいました。

 本町は、流域面積全国第6位の十勝川水系にあって、本流である「十勝川」と一番の支流である「利別(としべつ)川」の合流点の上流に位置し、開拓以来、何度も洪水に苦しめられました。ですので、水系の中でもいち早く治水事業が開始されました。一方で、河川は肥沃で生産性の高い農地をもたらしました。まちの発展は川と共にあったのです。

 イベントの前日、前々日は北海道らしからぬ猛暑となりました。ただ当日は、程よい暑さと、すがすがしいそよ風、大好きな川のある風景に、いっぱいの美味しさ、何より参加者同士の会話と、水辺が私たちに「癒し」のひと時をもたらし、何だか今まで以上に水辺が近い存在になった一日でした。

 

本屋と映画館と銭湯

  前原民子 (東京都 スローライフの会会員)

 本屋と映画館と銭湯がなくなると街がダメになるという法則があるらしい。

 わが故郷の飛騨高山の古い街並みはいつ帰っても、インバウンドの観光客や修学旅行生でいっぱいだ。だが、昔からあったお店が、土産物屋、ドラッグストア、飛騨牛握り寿司、飛騨高山ラーメンなどの観光客向けのお店に代わっていく。餅屋、八百屋、お惣菜屋、グンゼの下着などを売っていた衣料品店など、個人商店がどんどん姿を消している。観光の町だからとはいえ、人の暮らしの息づかいが感じられなくなっていく気がしてとても寂しい。

 そこで、本屋と映画館と銭湯の法則である。映画館は11年前、飛騨唯一の旭座が閉館した。本屋もほとんどなくなり、駐車場のある大型書店が郊外にできた。最盛期には24軒あったという銭湯も、いまや2軒を残すのみだ。

 だが、嬉しい話もある。92歳まで一人で下駄屋さんを営んでいた祖母(前田まさ子さん)の仕事を絶やしたくないと、孫の妻のゆきえさんが、鼻緒の挿げ替えの技術を継いで、場所を変えてお店を続けているのだ。伝統の技を大切に守る人がいて、ふらっと寄れる映画館や本屋や銭湯があって、そこに住む人が居心地のいい街こそ、訪れても楽しい街だと思うのだが、高山は大丈夫?

*写真は左から、ゆきえさん、筆者、知人

 

祇園祭の底力はどこにあるか

  太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)

 京都では24日、祇園祭の後祭(あとまつり)の山鉾巡行が行われる。それに先立つ前祭(さきまつり)の7月12日夜、山鉾を見る機会があった。四条通りを歩くと、毎年17日の前祭の山鉾巡行の先頭を行く長刀(なぎなた)鉾が現れる。同日、曳き初めを終わった鉾に埒(らちという鉾の周りを囲む柵)を設置する準備を始めようとしていた(写真)。

 6月初旬から鉾の組み立てに入り、7月1日に吉符入(きっぷいり)。前祭と後祭の2度の山鉾巡行が行われ、31日の疫神社夏越祭で祇園祭は終わる。

 いまから1156年前、平安時代初期に流行った疫病退治のために京都・八坂神社(祇園社)の祭として始まった。かつては「祇園御霊会(ごりょうえ)」といわれ、いわば国家事業だった。

 祇園祭の目玉である山鉾は各町々で自主運営され、競い合う。町衆の力で支えてきた山鉾。長刀鉾保存会に電話すると「7月31日が終わると体がガクッとくる」と支える町の人々の本音が出た。案内してくれた京都出身の人物は「(祇園祭は)八百万の神の日本で生きていることの感謝と鎮魂でしょう」という。祇園祭の経済効果は200億円以上(宮本勝浩関西大学名誉教授)との調査もある。

 帰路、京都駅の売店で昔からある生菓子の包装紙は「祇園祭」。つい買ってしまった。

 

激しいばかりが夏歌じゃない

  新澤公康 (奈良県高取町 スローライフの会会員)

 歌を唄うものにとって、その季節感はとても大切にしたいものです。寒い時には雪や縄のれんで熱燗が進む情景が自然と浮かび、夏には夏歌とばかりに、暑さを吹き飛ばす激しいサウンドが多いようです。そんな中、僕はこの時期、よく『さとうきび畑』を唄います。

 太平洋戦争末期、戦火の中で生まれた「島に生まれた主人公」が母に子守唄代わりに聞かされた戦火の記憶。激しい恐ろしいはずの戦争が柔らかく悲しく歌い継がれます。それだけに突き刺さる辛い思いがいつにも増して醸成されるようです。

 まもなく迎える8月は戦争や原爆投下、近年の航空機事故など、日本人が辛すぎる悲しみと向き合う慰霊の季節。この国が向かう未来に決して間違いがありませんようにと、しっかり平和の尊さをみんなして確認したいものです。そしてこの酷暑が過ぎると、もう立春から数えての二百十日。越中八尾での風の盆。こんな季節に唄う歌にも秋風が感じられ、季節が移ろいます。ああ、早く秋の歌。唄いたいものです。

 

しずおかのひみつ (上)

  ほんだゆかり (静岡市 スローライフの会会員)

 タクシー運転手に転身(瓦版734号/2025年5月13日に寄稿)して、静岡駅から県外の方をよくお乗せします。お客さんと話していて、気がついたことがあります。

 たとえば、グルメ。

 「おいしい物って何ですかね? 焼きそば?」

 「いや、それは富士宮」

 「ギョウザ?」

 「そりゃ、浜松」

 「さわやか」

 「いいや~、それは菊川」・・・・・・。こんな感じです。

 「静岡」って私にとっては、「静岡市」なんですが、「静岡市」の印象薄―い? ほかの地域のイメージが強いみたい、です。

 静岡市だって、面白いところ、いいところ、美味しいものが、たくさんあるのに・・・・・・。なんだかさびしいな。

 ということで、次号で、ほんだおすすめ「静岡市グルメ」を、ご紹介します。

 (つづく)

 

広島今昔65年 老人の呟き

  遠北剛 (広島市 スローライフの会会員)

 病院の待合室。予約を入れても1時間は待たされる。暇つぶしに書棚から一冊の本『広島今昔写真集』のページをめくる。

 未だに記憶に残る珍しい写真が掲載されている。65年前、昭和35年、自分が広告会社の企画マンとして屋外広告媒体の企画案として採り上げた2件。その一つが映画館、東洋座ビル屋上に取り付けたトリスの酒樽。天気予報の光を回転させる計画が、その振動がうるさくて映画館のお客さんに迷惑がかかるからと、回転は即中止に。

 もう一つは、広島駅前ビル広島百貨店屋上の看板。森永ミルクキャラメルの上をヘリコプターが走る。目を引くアイデアとして採用されるも、取り付けてまもなく安全対策が重要視されてヘリコプターは取り外された失敗策。余りにも懐かしい写真に、素敵な感動をいただいた。65年前の思い出。

 

六道絵(地獄絵)

  笠原俊典 (滋賀県長浜市 持専寺住職)

 暑い夏です。今も世の中では、欲望と奪い合い、戦争と悲しみの輪廻を繰り返しています。いつになれば解放されるのでしょうか?

 先人たちは、こうした世界観を六道絵(地獄絵)として、繰り返し、繰り返し、大切な教えとして聞いてきた、と言われています。地域の宝として、当院にも所蔵されています。

 持専寺では、来る8月15日午前9時より、盂蘭盆会にて六道絵15幅の展示および地域博物館学芸員さんによる絵解き(講演)があります。お問い合わせは、下記ポスターの連絡先までお寄せください。

 

「スローライフ曼荼羅」

ししくったむくい

  野口智子 (ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)

 かつて、肉食がタブーだった日本にはこんな諺があります。獣肉を食べると、バチが当たる。こっそりといい思いをした以上、困ることが起きる、報いを受けるという戒めです。先日、京都府綾部市で、猪、鹿、熊を食べる機会がありました。上機嫌でたらふく食べたものですが、その後、各地で熊が人を襲う騒ぎがありました。ドキッとして、わが胸に手を当てました。https://noguchi-tomoko.com/post-10859/

■■つべ小部屋■■

嘘は事実の6倍の速さで広がる

  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 参院選の2日後に、国の政治の先行きを「つべこべ」書いても、「雨の降る日は天気が悪い」みたいな話にしかなりそうにないので、今回は参院選を見ながら考えていたことを書く。

 SNSと選挙の関係についてである。公示前に公開講座「選挙を守る」(後藤・安田記念東京都市研究所主催)で、専門家の話を聞いた。山口真一・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授らによると、昨年の東京、兵庫の知事選では新聞やテレビより、ネットを参考にして投票した有権者の方が多かった。

 そんなSNS選挙の課題は①過激な言説や「既得権益と戦う」といったわかりやすい対立構図が拡散しやすい②建設的な合意形成が進まず、社会の分断が進む③フェイクや真偽不明な情報が目立つ、など。

 そして、フェイク情報を「誤りだ」と認識できるのは年代差なく、2割弱しかいない。嘘はいくらでも作れて、事実の6倍の速さで広がる。SNSを批判的に見ていると思っている人ほど、フェイクに騙されやすい。そして有権者に最も多い「弱い支持層」ほど、フェイク情報で変化しやすく、インフルエンサーが選挙結果を左右しかねない。

 筆者の周りでも、政治のショート動画を見て、まるで「推し活」のような気分になったという話を聞く。自分が見た動画と似たような情報が次々に届き、「沼にはまる」感じらしい。

 そもそも、インチキ情報でも視聴回数に応じて金を稼げる現状に問題があることには疑いがない。新聞やテレビにあるような広告掲載基準をネットにも設けるべきだという意見もあるが、具体的にどうするのか。年間の広告料収入が新聞業界3500億円、テレビ1兆7千億円に対し、ネットは既に3兆円を超えている現状に、どこからどう手を付けるのか。

 EUのように、SNS運営会社に透明性や責任ある対応を義務づける法律が必要だろうが、それで「選挙期間中のフェイク」に即応できるのか。国会に課されている重要課題だが、果たして今回の参院選で議席を増やした政党が、偽情報があふれるネットの現状を改善する志向性があるのかどうか。それが疑わしい。

<編集室便り>

▽7月の「さんか・さろん」は「おとなの食育」~食育と地域社会~でした。

 講師の村井康人さん(新潟市在住、リバース食育研究所、スローライフの会会員)の話はわかりやすくて深く、切実でたいへん勉強になりました。質疑応答、意見交換も盛り上がり、楽しいひとときでした。

 参加した会員の高橋征吾さん(東京都)からは「とても有意義な時間でした。中食・外食のお世話になりっぱなしの人間なので、自分と食との関わり方を考えるいい機会になりました。もっと自分が食べているものの『素性』を知らないといけませんね」という感想が届きました。

 また、同じく会員の野木武さん(京都府京丹後市)からは地元の「食」を伝えるYouTube「京丹後市まるごと京丹後食育の日2023」のアドレスが届きました。

https://www.youtube.com/watch?v=KpxOpWeNutY

3分半です。ぜひ、ご覧ください。

▽8月の「さんか・さろん」はお休みです。

 皆様にお会いできずに淋しいですが、事務局も夏休みです。

 また9月にお会いしましょう。

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