5月の「さろん」は池田町長のお話。十勝ワインに酔いました。

5月17日。第118回の「さんか・さろん」は、北海道池田町から『ワインでまちおこし。自治体ワインの先駆け、池田町のいま』をテーマに安井美裕町長にお話しいただきました。

 
池田町は北海道の道東“十勝エリア”に位置する人口6千人の町。主要産業は農業で、大規模に小麦やじゃがいもを作る穀倉地帯。肉牛や乳製品などの畜産も盛んですが、今回は誕生から間もなく59歳になる"十勝ワイン”に注目です。

お話は1950年代、極寒地である池田町の苦境から始まりました。地震・冷害・凶作と続いた3年間で町の財政は厳しく、赤字再建団体の指定を受けました。その後就任した丸谷金保町長は、苦境から脱却する柱に、山野で育つのぶどう栽培で「豊かなふるさとを取り戻そう」と町民に呼びかけ、自治体としてブドウ栽培とワイン造りの挑戦が始まったそうです。十勝ワインが誕生した1963年は、翌年の東京オリンピックの影響もあり、日本人の食文化が変化した頃でした。

当初から「十勝ワインは百年の大計」と臨んだ事業。誕生後も品質の向上や酸味を活かした独自品種の改良・開発に努力を惜しまず、池田町ならではのワイン造りをしているそうです。その代表的な「アイスワイン」は、マイナス20℃にもなる十勝ならではの栽培法。実ったブドウを秋には収穫せずに冬を越し、凍結した実を早朝の僅かなタイミングに職員さんが収穫してワインに加工するのだそうです。また、赤ワイン『山幸(やまさち)2019』は第9回サクラアワードにおいてゴールドを受賞するなど、本物志向のワイン造りをしています。

“池田町はワインのまち”と言われるとおり、町民はよくワインを飲むそうで、国民平均の約4倍。ビールと同量というから驚きです。ワインのある生活に潤いと誇りを感じる町として、昭和44年から平成29年の事業収益25.1億円は、様々な形で町民に還元されています。秋のワインまつり、海外のワイン産地への研修旅行、音楽施設の建設費、PTA会費の無料化、福祉事業、ワインが眠る「ワイン城」のリニュアル、ブランド牛「いけだ牛」の開発など、ワインを核としたまちづくり事業へと展開しています。
また次世代へ引き継ぐため、中学生がブドウ畑の収穫をしたり、成人式には誕生年のワインがプレゼントされたり、幅広い世代に人気のバンド「ドリームズ・カム・トゥルー」の吉田美和さんが池田町出身ということもあり、交流イベントや新ブランドの共同企画なども町民の郷土愛醸成に繋がっている様です。お話は更に今後に向けてと続きます。

新品種の開発・ワインツーリズム・食資源の見直しから新たな展開へ・ブドウ生産体制を再構築し、農業生産法人や農地の団地化で後継者や小規模の生産を支援する・「いきがいブドウ園構想」など、多くの可能性をお話頂きました。

この後の参加者との意見交換の前に、皆でワインで乾杯!
ワイン好きの人・既に池田のワインを飲んでいる人・これからワイン造りに挑戦したい若者・リタイヤして池田町と大阪の2地域居住をしている人…など、いろいろな立場の方がご参加でしたが、多くの方から「感銘を受けた」の意見でした。地方行政に携わる方たちには町全体で公共の収益事業を行っている事に驚きの声が上がりました。また、観光の可能性として「ガストロノミー」にワインを付加させて「エノガストロノミー」としてのPRや、「ワイン城」を核とした、十勝エリア全体の連係などの意見もでました。参加者のお一人のグラフィックレコードもご覧ください。
 

十勝で生まれ、憧れの池田町に就職し、大学で学んだ食品科学を活かしてワインの製造技術に携わってこられた安井さん。2020年10月から町長になられたそうですが、その心には常に先人のご苦労や100年の大計に向けた志がある様です。そして趣味は”和飲(わいん)”と言うそのお人柄に魅了される回となりました。参加者は42名でした。