「戦後80年」の酷夏、炎暑を、いかがお過ごしでしょうか。何気なく「戦後」と書きましたが、米コロンビア大学の教授が「日本人は『戦後末』と呼ぶべき時代を経験している。幕末が江戸時代の終わりを表したように、いまの日本は戦後の終わりを迎えている」という指摘をしていました。世界中で多くのことが同時に変化してゆく「ポリクライシス(複合危機)」のただなかで、この国はどうなるのか。私たち一人ひとりが問われています。
*写真は信州・浅間山。8月24日、山頂は夏雲に覆われていました。
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『緑と絆の木陰』
最高の涼味
川島英樹 (せたがや文化財団)
暑い!暑い!と言っているうちに、8月も最後の週になった。大人になってよかったと思える時期である。こどもだった時、今頃は最悪だった。夏休みの自由な世界が終わってしまう淋しさに、手つかずの宿題が積み重なって、戦々恐々。ちょっとずつ早くなる夕暮れに、ちょっとだけ涼しくなった風が、もの悲しさを募らせたものだった。もっとも、今年はまだ当分、涼しい風は感じられそうにもないが……。
もうひとつ、大人になってよかったこと。ビールだ。汗ビショで飛び込んだ居酒屋で、運ばれてくる中生ジョッキ。あるいは、帰宅、シャワーを浴びて、開ける缶ビール。最高だ。火照った体にビールを流し込み、「あーっ」と唸って、一日をやり過ごす。この繰り返しで、生きていくんだなと思う……。
次の日が来る。朝から30度越え。満員電車に揺られて仕事へ。わが職場は、築30年の高層ビル。地下鉄の駅とつながってはいるが、途中で外気がたっぷり、ビルに入る頃には汗が噴き出している。そこで、地下のスーパーに寄り、冷え冷えの食品売り場を一周、時に二周してから事務所に向かうことになる。
1階は吹き抜け。ガラスの天井から太陽が照りつけるエントランスは十分に暑い。それでも、制服を着て立つ警備員、汗を拭い、腰を屈めてエスカレーターを拭く清掃員がいる。頭が下がる。
挨拶をする。深々と頭を下げるガードマン、大きな声で「おはようございます」と返してくれる掃除のおばちゃん。ココロの中に、爽やかな風が吹く。
<あっちこっちで多事争論>
原発を考える夏
古川伝 (福島県郡山市 スローライフの会会員)
この夏、原発について考えさせられるニュースが相次ぎました。
まず、7月22日に関西電力が2011年の東日本大震災以降で初めて、原発新設の考えを打ち出しました。今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画で「原発依存度の可能な限りの低減」の文言が削られたのは、こういうことだったのだ、と合点しました。関電では使用済み燃料がたまり続け、行き場となる再処理工場や中間貯蔵施設はまだめどが立っていないというのに。
29日には、東京電力が福島第一原発の燃料デブリの本格的な取り出し開始時期の後ろ倒しを発表しました。「2030年代初め」から「2037年度以降」に。2回の試験的取り出しでは合計わずか0.9㌘なので、さもありなん。なのに、2051年までの廃炉完了の目標は維持するという不思議さ。
そして30日。カムチャツカ半島付近の巨大地震で、日本沿岸には広範囲で津波警報が出されました。その日、福島第一、第二原発では廃炉作業中の所員たちに高台避難が指示され、第一原発では8月1日までの予定で実施されていた処理水の海洋放出が手動停止となりました。「原子炉が稼働していないから大丈夫」とは決して言えないことを、再認識する機会となりました。
*前号の中村桂子さんの「文つくりは、人間の基本的賢さとつながる作業」に共感します。ちなみに、この文章は生成AIを使っていません。念のため。
「まち」と「長崎スタジアムシティ」
赤坂伸子 (長崎市 Café+G 燈家 AKARI-ya)
100年に一度の変革期を迎えているという長崎。まちの様子を大きく変えるビッグプロジェクトのひとつが「長崎スタジアムシティ」です。通販会社ジャパネットが総事業費1000億円をかけて建設したサッカースタジアム(写真・上)、アリーナ、商業施設とオフィス棟、ホテルからなる複合施設(写真・下)で、昨年10月に開業しました。
中心は2万人収容のサッカー場ですが、試合のない日もスタジアムは解放され朝7時から夜11時まで出入り自由です。買い物や食事、温泉やアクティビティのほか、コンコースを朝ランしたり、スタンド席に座って昼寝したりもできます。
かくいう私も家から歩いて20分のこの場所をフル活用。中にあるスーパーや飲食店の利用はもちろん、その先の目的地までスタジアムの中を通路がわりに歩きます。
サッカーやバスケの試合がある時は、あちこちの路地から、バスや路面電車から、地元チームのユニフォームを着た“じげもん”たちが大勢現れてそこをめざします。
コンパクトシティ長崎だからかもしれませんが、公園のように日常使いができ、スポーツ観戦やイベントではこの上ない非日常が味わえる場所。単なるスポーツ施設でなく、「長崎スタジアムシティ」は長崎の「まち」と地続きなのだと感じます。

写真展「東京ドリーム」
金井紀光 (東京都 写真家)
東京には、まるでテーマパークのような美しい街がどんどん出現してきました。私たちの身の回りからリアルなものが消えて、人々は「夢の世界=虚飾の世界」に包み込まれます。
ドリーム都市、東京。人々は、さながら回遊魚のように街を巡ります。インバウンドの増加でさらにそれは増幅されましたが、コロナによって虚飾の世界は、うたかたの夢の如く崩れ去りました。
そして時が経ち、今また東京はコロナ以前に、いやそれ以上の賑わいです。「過ぎた欲望」「娯楽の消費」といえる状況が続きます。
■9月4日(木)~9月10日(水)10時から18時、日曜休館、最終日15時まで。無料。東京都新宿区新宿1-4-10 アイデム本社ビル2F、アイデムフォトギャラリー「シリウス」で。(丸ノ内線 新宿御苑駅からすぐ)どうぞお運びください■

「製造業」重視は米国建国初期の争点だった
太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)
製造業重視を掲げるトランプ米大統領は貿易相手国に「関税政策」という手段で巧妙な外交を展開している。来年は米国独立250年だが、建国初期も「製造業」の育成や関税政策に躍起だった。
1791年12月5日に連邦議会下院に伝達された「製造業に関する報告書」という文書がある。筆者は米国初代財務長官だったアレクザンダー・ハミルトン(1755-1804)。
当時、増大する米国の農産物余剰の輸出に対し英国を中心とする規制に悩んでいた。ハミルトンは農産物を国内で消費するためには製造業を米国の産業の柱にすべきだという考えを報告書で強調する。「米国のように未開拓で非常に広い土地を農場に転換することほど資本と労働の有利な用い方はほかになにもない」という農業重視派に対する反論だった。さらに米国に資本を誘導し、移民も積極的に活用すべきと記す。
また、製造業の振興には保護関税政策も欠かせない、とする。米国の製造業者が外国のすべての競争者より安く売れる、として事実上の奨励金と位置付ける。そして財政収入の一源泉とした。米国の高関税率政策は英国の覇権が米国に移るまでの19世紀末まで続く。現在は次の覇権を巡る中国との確執だ。歴史をみるとポストトランプ時代も高関税政策は続くだろう。
(参考:「製造業に関する報告書」【未来社、1990年】)
わが家のタマとマル
南條青志 (和歌山県紀の川市 スローライフの会会員)
私の家族には、珠(タマ)、円(マル)という2匹の猫がいます。4年前の夏、炎天下に放置されていたところを保護猫団体に助けてもらい、その秋に縁あって我が家にやってきました。
タマは、太っていて食いしん坊。お話好きで、いつも大きな声で鳴いて相手をして欲しがります。マルは、痩せていて少食。声もか細いかすれ声。ひとりでいるのが好きです。姉妹なのに、同じように育てたはずなのに、性格も見た目もこんなに違うものなのか、と不思議に感じてしまいます。
保護猫団体との約束で、外に出したことはなく、年中おうちの中。まさに家の主(ぬし)です。一緒に寝たり、違うところに寝たり、取っ組み合いをしたり、お互いを舐め合ったり。自分たちの好きなことをして過ごしています。
ふたりは、わが家に来て本当に幸せだったのかな? 他の方に引き取られるか、野良猫として暮らした方が幸せだったのかもって思ったりもします。話せないので何を考えているか、はっきりはわかりません。でも、仕草や声色から何を考えているのか一生懸命に思いやる。ちょっとした一言で関係が悪くなってしまう人間同士よりもずっと純粋な関係かも知れません。
わが家に笑顔をもたらしてくれる大切な家族です。

『スローライフ曼荼羅』
ワイン花火
野口智子(ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)
最近の花火大会は大仕掛けで、何万発とか、ドローンショーが話題です。大きくなればリスクも増え、事故なども起きる。私はこじんまり規模の花火で充分と思います。8月始め、北海道池田町「夏まつり」で、ちょうどよい花火を見ました。大規模ではなく、さみし過ぎてもいない。河川敷から見上げることはできたのですが、高台にある「ワイン城」でワインを飲みながらとしゃれてみました。するとどうでしょう、目の前に上がる花火が、ワイングラスに写り込み、白ワインが赤く染まったり、ロゼ色になったり。ワインのまちらしい観賞ができました。 https://noguchi-tomoko.com/post-10884/
■■つべ小部屋■■
ある自民党員の妄想を妄想する
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
参院選は完敗だった。衆院選、都議選に続く3連敗は、私の不徳のいたすところであることは認める。だが、責任を取れ、さっさと辞めろという党内の声には強い違和感がある。大きな敗因は、あの裏金問題ではないか。あの連中にとやかく言われたくはない。
ばらばらな野党を政策ごとに抱き込むしかない状況は、私が辞めても何も変わらない。おまけに直近の世論調査(朝日新聞18日付)では、「首相が辞める必要はない」が過半数を占めたというのに、いったい誰に代われと言うのか。
いま頭に浮かぶのは、1993年の自民党分裂だ。政治改革をめぐる党内対立の結果だった。私も自民党との考え方の違いを痛感して、下野した自民党からいったんは離れた。
党内を見渡せば、現在も考え方の大きな相違がある。私は「戦後80年談話を出すな」と訴えたり、全国戦没者追悼式の式辞に「反省」を復活させたことにガタガタ言う連中とは相容れない。彼らが世論を代弁しているとは、とても思えない。安倍政権時代、記者から「日本にも欧州のような極右政党が出てきますか」と聞かれるたびに、こう答えたものだ。「いいや、安倍という極右が自民党のトップにいる間は極右政党に出番はないよ」と。
言う通りだった。安倍亡きあと、極右の参政党と保守党が現れた。自民党内には彼らと手を組める連中がいる。たとえば高市某だ。彼女はあの杉田某と二人並んだ選挙ポスターを参院選で掲げていたくらいだから、極右との相性もいいだろう。ならば、この際、93年のときと同じように党から出ていってくれないか。初の党総裁選の前倒しという、実質的な総裁リコールをするくらいなら、はっきりとたもとを分かとうではないか。
それにしても参政党とは何なのだ。公約には「賃上げ」の文字がなかった。支持者は給与を上げてもらいたい勤め人たちではないということか。だから、10万円を配るとか、手取り額を増やす減税策が受けたのか。今さらながら、あの「日本人ファースト」には笑えた。なぜ、「ファースト」なのか。日本なら「日本人第一」と言うべきだろうに。
そろそろ参院選の総括をしなければならない。これまでは棄権していた有権者が、SNSを見て投票所に足を運びだしている時代に、どう対応すべきか。戦後80年談話は、そのあとでいいだろう。
<編集室便り>
▽9月の「さんか・さろん」は長崎県・雲仙市長です。
10月の「スローライフ・フォーラムin雲仙」に向けて、雲仙市の金澤秀三郎市長からお話をうかがいます。9月16日(火)19時から。
詳しくはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2025/08/25/%ef%bd%93-355/
10月11日(土)・12日(日)のフォーラムにむけて、参加者を募集中です。
詳しくはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2025/06/08/%ef%bd%93-349/
交通、費用などについては事務局へご一報ください。slowlifej@nifty.com
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