瓦版2025.12.09第748号室崎千重さんほか、多数コラム掲載。

 インフルエンザの患者数が警報レベルを大きく超え続けています。従来のワクチンが対応していない「サブクレードK」と呼ばれる変異ウイルスが広がっており、予防接種を受けた方も安心できないそうです。これから忘年会、大掃除、正月の準備と何かと忙しい「師走」の日々。手洗いやマスク着用など、基本的な感染対策を、おさおさ怠りなく。

*写真は東京・浅草寺のプロジェクションマッピング(12月5日)

======================================

●感想を下記までお寄せください。

slowlifej@nifty.com

●会員の方からの投稿をお待ちしています。次回の締め切りは12月18日です。

『緑と絆の木陰』

地域に関わる心得

  室﨑千重 (奈良女子大学准教授)

 奈良県明日香村のある集落に、新たに関わることになりました。これまでの十津川村谷瀬集落とは別のフィールドワークです。

 初めての地域に入るにあたって、宮本常一・安渓遊地著「調査されるという迷惑―フィ-ルドに出る前に読んでおく本―」(みずのわ出版)を研究室で読んでいます。この本は、外からズカズカ入ってくる他者への地域の困惑、怒り、悲しみが具体的に描かれていて、地域から搾取するのではなくて、得たものを地域にも還元して共に歩む必要性を教えてくれます。

 学生は多くを感じてくれた一方で、「借りた資料を返さないとか、断っているのに勝手に写真を撮るとか、あり得なくて酷い」との発言もありました。しかし、学生も私も地域の人と話す時にカタカナ言葉を多用するとか、自分たちに都合よく進めようとする一面がないとは言えません。本ほどの非道はなくても、自分たちも気をつけないとね、と話していました。

 そんな矢先、某地方テレビ局から「十津川村谷瀬集落と学生の関わりを取材したい、放送日は2週間後、いつ十津川村にいくのか」と連絡が入りました。12月に訪問予定はないと伝えても、「村の人と学生が一緒に特産品を作る、交流風景を撮りたい。取材予定は〇日か〇日です」と主張されます。学生も村の人も忙しいので、活動のある別の日に取材に来てはどうかと言っても、「放送日に間に合わない」と聞いてくださらない。テレビ局の傲慢さに唖然としています。

 先日のゼミで学生たちと、さすがにこの本に出てくるような無礼は今の時代はないねと笑っていたのに。テレビ局の方こそこの本を読むべきだ、と思います。

<あっちこっちで多事争論>

最低賃金1000円時代に

  川竹大輔 (高知大学次世代地域創造センター)

 12月1日から高知県では最低賃金が1023円と、初めて千円台に乗りました。学生に聞くと、以前よりも少ない人数で職場をまわそうとする傾向が勤務先で強くなって、学生側の急な予定変更に応じてもらいにくい状況が生まれているそうです。

 居酒屋では事前予約が入っていないとバイトは来なくて良いと言われるので、複数のバイト先を掛け持ちして収入を確保している実態を聞くこともあります。

 バイト学生に無理を言うことで時給アップの波を乗り切ろうとする店側の姿勢かもしれませんが、これでは学生の応募も少なくなるだろうとも思いました。

 立場を変えて、「高知の中小企業を知る」という高知大学の授業でゲスト講師に来てくださる経営者の方々からは、賃金アップが続くなか、少ない人数で経営をしていくための工夫も教えていただきました。たとえば、AIを活用したチラシ作成や会計業務、議事録作成に要する時間の短縮を図っている、などです。

 多数の社員を雇用する事業所では、IT化やAI活用で間接業務を減らして最低賃金に上乗せする時給を実現することで、なんとか働く人を確保しているということです。

 人手不足と賃金アップが続くなか、高知で起きていることを、みなさんと共有したいと思います。

 いかに生産性を各職場で上げていくのか、価格を持続可能に設定できるのか、それぞれに問われているようにも感じました。

包む文化に人が集まる〜折形ワークショップ〜

  小松崎いずみ (埼玉県越谷市 スローライフの会会員)

 霜月の北鎌倉で、ギャラリー「えにし」さんを会場に「ORU-KOTO® 花包み・草花包み・木花包みワークショップ」を催しました。瓦版738号でご紹介した会合の3回目。今回は2日間で20名の方々との温かなご縁に恵まれました。

 印象的だったのは、みなさんの自己紹介。山と山の合間の谷戸(やと)と呼ばれるエリアにある会場へ、それぞれ「山の上から来ました〇〇です」「海の方から来た〇〇です」。変化に富んだ地形に根付く言葉に、参加者は「えー山? 海?」と、顔を見合わせて笑みのウェイブ、会場をひとつにしてくれました。包む文化に人が集まる場所の意味を考えさせられる瞬間でした。

 また今回は、花と手仕事で伝統を再構築する【花屋努】代表の橋本冠斗さんとの出会いにも恵まれました。ワークショップ前日に応援に駆けつけてくださり、すぐに意気投合。地元ならではの視点と感性が加わり、場の空気がさらに豊かになりました。

 水引の役割や色の意味にも触れながら、お正月の花包みや稲穂飾りを制作、地域×文化×技術が響き合う会合となりました。これからも、この出会いを大切に育てていきたいと思います。

 

公益資本主義のススメ

  太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)

 「公益資本主義のススメ」を10数年来、唱え続けている人物がいる。原丈人(じょうじ)さん=写真。米国で1970年代からベンチャーキャピタル(起業家に資金と経営力を提供)事業を手がけ、85年にはアライアンス・フォーラム財団を設立。バングラデシュやザンビアなどでIT技術を活用した人材育成を実践してきた。

 原さんによれば、公益資本主義とは「会社は社会の公器である」ととらえ、事業を通じて社会に貢献する資本主義。公益とは「私たちやその子孫の経済的、精神的豊かさ」。具体的には、会社を支える従業員、顧客、株主、仕入先ら関係者や、地域社会そして地球環境に対し会社の利益を公平に分配することだ。

 同氏は世界に広がる「格差と分断」の原因は米英型の「株主資本主義」にある、という。その根本は「会社は株主のもの」で、会社の利益は株主が享受し、富の偏在が進む。米国では1%の個人資産家が国民全体の35%の純資産を保有する現実がある。

 公益資本主義を学術面から研究する新しい試みも始まった。同財団との協力で慶應義塾大学に公益資本主義研究・実装センターが11月に創設された。発足会には石破茂前首相も出席し「会社の配当の伸びが社員の給料の伸びより圧倒的に高い」と強調。玉木雄一郎国民民主党代表や魚谷雅彦前資生堂CEOら多くの経済人も、それぞれの立場と経験から公益資本主義への考え方を披歴した。

12月、冬の静寂の中に思う

  松井悠夏 (東京都 スローライフの会会員)

 12月の空気には、どこか張りつめた静けさがある。街はあわただしく動いているはずなのに、自分の内側だけがひとつ季節に取り残されたような気がして、ふと焦ってしまう。

 この1年、私はどれほどの情報に触れ、どれほどの言葉に動かされ、そしてどれほどのものを深く考えないまま受け流してきただろうか。曇ったメガネをふきながら、この1年で取りこぼしてしまったもの、積み重ねたものを静かに数えている。

 忙しさの中で後回しにしてきた感情や、本当は考えるべきだった問いが冬の静寂の中でようやく形を持ち始めた。無理に答えを出そうとは思わない。ただその存在に気づき、そこに誠実でありたいと思う。

 12月は終わりと同時に余白でもある。何かを増やすのではなく、そぎ落とし、整え、次の時間を迎える準備をする月。冷たい空気を胸いっぱいに吸い込みながら、自分が今どこに立っているのかだけは見失わずにいたい。そうしないと自分が自分ではない、何か恐ろしいものになりそうな気がするからだ。

 そして心が動いたほんのわずかな瞬間でも忘れずにいたい、それだけはそぎ落とさずに大切に抱きしめていたい。目には見えないけれど確実に次の季節へ続く道を照らす光になる。

 この静かな冬の時間の中でしか見えないものを抱え、新しい年を迎えに行く。

納豆不足が原因?

  児玉征也 (NPO法人紀州粉河まちづくり塾代表)

 日本のソウルフードともいえる納豆について一席。

 私たちの関西では、納豆は非日常で、とりわけ私の働く和歌山市は全国一納豆への支出額が少ない(総務省の家計調査〈2人以上の世帯〉、2022~2024年平均)。

 このほとんど知られていない話を先日、メディアの支局長さんたちに話したら、「スーパーの納豆の種類が少なすぎる」と言われた。「いや、5種類ほどは選べる」と抗弁してみたのだが、相手にされなかった。私も10年ほど前に東京・五反田に住み、駅前スーパーに通っていたが、そんなに納豆の種類が多かったか? 息子たちは「納豆食べ放題の店」で10種類ほどを堪能したと言うが、 そんな店があるなら試しに行ってみたかった、と思う。

 実は我が家では、親の代から納豆は日常だ。そんな私は、前号の野口さんの「曼荼羅」の「協力隊はタマゴかけご飯」にツッコミを入れて「納豆」を足すべきだ、つまり「協力隊は納豆タマゴかけご飯」のほうがいいんじゃないか、と思う。「よく混ぜて『粘り強く』地域を元気にしています」というわけだ。

 和歌山の県民性は、良く言えば進取の気性だが、早い話があきらめが早く新しモノ好きということ。地域に粘りがないのは、やはり納豆不足が原因かしらん、と密に思う今日この頃だ。

『スローライフ曼荼羅』

津南町でお絵描き

  野口智子 (ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)

 新潟県津南町、豪雪地帯。雪の下で寝かされた甘いニンジンと、名水で知られる町。そこの商工会で研修をしました。町のいいもの、いいことをクレヨンで描きます。えっ? 絵? と驚いていた人たちも、描いているうちに子どものような顔になっていきます。私はこれをクレヨン効果と呼びます。たまにはこういう緩い楽しい時間が必要かと、お絵描きワークショプお試しください。https://noguchi-tomoko.com/post-10977/

■■つべ小部屋■■

「そんなことより」と野田さん

  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 「怒つてる 顔よりむしろ 笑つてる 顔がおそろし 高市早苗氏」

 コスモス短歌会の選者、田中愛子さんの一首にしみじみと共感している。初の女性宰相の言動に個人的には閉口しているのに、世論の支持はそれなりにあるので、なお怖い。

 「台湾有事」答弁、旧姓の通称使用の法制化、スパイ防止法などなど、言い散らかすなかで、立憲民主の野田佳彦代表との党首討論も象徴的だった。政治資金の厳格化を求められ、思わず、「そんなことより」と口にした、あれだ。彼女の本音だし、批判的に報じたメディアもあったが、世論の反応はどうにもぬるい。

 あの瞬間に、野田氏がさっと立ち上がり、大声で「高市首相の正体見たりぃー」と見得を切ればなぁ、などと夢想しても詮無い。野田さんは伝家の宝刀の解散総選挙を党首討論で約束してしまうような人。政治センスはほぼゼロだと思って見てきたので、いまさら驚かないが、それにしても、淡々と時間切れを受け入れたのはお粗末すぎた。

 加えて、維新が公約の「企業・団体献金の禁止」を封印して、定数削減を叫ぶ姿にも呆れるが、それを黙認するかのような世論の反応にも驚く。

 思い出すのは、瓦版711号(2024.05.28)の小欄で指摘した、企業・団体献金への世論の甘さだ。派閥の裏金批判が沸騰していた昨年4月、朝日新聞の世論調査で「企業や団体の政治献金を、全て禁止するべきか」と問うと、「全て禁止すべきだ」39%、「その必要はない」50%、「その他・答えない」11%だったのだ。いま問い直しても、似たような容認傾向だから、「そんなことより」への批判も鈍いのではないか。

 しかし、何度でもいうが、企業・団体献金の温存は「国会議員による税と献金の二重取り」だ。それに何より、「献金に効果があれば賄賂であり、効果がなければ株主利益を損なう」という筋論に抗弁できない。

 そう考える筆者は、きょうもNHKの朝ドラの主題歌を口ずさむ。

 「日に日に世界が悪くなる 気のせいかそうじゃない」

<編集室便り>

12月16日の「さんか・さろん」は中村桂子さん。

 12月の「さんか・さろん」は毎年恒例、中村桂子さんの「さろん」です。どうぞご予定ください。

日時:12月16日(火)19時~20時30分、Zoomで。

講師:中村桂子さん(JT生命誌研究館名誉館長、スローライフの会共同代表)

テーマ:「生きものとしての土木、農業、教育――最近学んだこと」

参加費:会員1000円(年間分3000円を支払済の方はそれで結構です)、一般2000円

申込:12月13日(土)までにメールで  slowlifej@nifty.com

詳しくは:https://www.slowlife-japan.jp/2025/12/05/%ef%bd%93-365/

<中村さんから>

 ~なぜか最近とても忙しく、忙しくやっていることの一部を申し上げるなら「生きものとしての土木、農業、教育――最近学んだこと」となるのですが、こんな題でよろしいでしょうか。農業高校(長野)、小学校農業科(北海道)、メガソーラー(千葉)などのこと。基本は相も変わらず「生命誌」で、「人間は生きもの」であることを忘れないで下さいという当たり前のメッセージです。~

 

ほんだゆかりさんの「さろん」YouTubeでどうぞ。

 大好評だった、11月18日(火)のほんだゆかりさん(静岡市 スローライフの会会員)の「さろん」。「緩急自在な暮らしのススメ@ほんだ的シニア活動」は、こちらからご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=IJdewmy22qM&t=53s

爽快シニア活動のお話、ほんださんの日々のブログはこちらからです。➡ https://dooq.com/salon/

 

(PR)クオリティソフトから・・・

 【たまな商店】雲仙の自然に寄り添い在来種を守り続ける竹田かたつむり農園が、天日干しで仕上げた「羽二重もち米」。白さとなめらかさが際立つ高級もち米で

お餅やおこわも格別な仕上がりに。大切な人と一緒に。https://x.gd/habutae

 

====

〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目12番13号

新宿アントレサロンビル2階「スローライフの会」

メール slowlifej@nifty.com 電話090-7433-1741(野口)

 

※ご連絡はなるべくメールでお願いします。

※活動詳細はホームページからご覧ください。

http://www.slowlife-japan.jp/