瓦版2026.3.24 第755号 増田寛也さんら、コラム多数。

  「暑さ寒さも彼岸まで」。ことしは、ことわざ通りになるでしょうか。桜の開花は早いようで、この瓦版が届くころ、東京、名古屋、大阪、福岡では既に咲き誇っていると思われます。問答無用の軍事侵攻が相次ぐご時世に、「暢気に花見をしている場合か」と考えるか、「呑まなきゃ、やっていられない」と思うか。いろんな花の愛で方がありそうです。
*写真は春の日差しを浴びるモクレン=横浜市の港の見える丘公園の近くで
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『緑と絆の木陰』
わらび座 東京公演を観て
  増田寛也 (野村総合研究所顧問 スローライフの会共同代表)
 秋田県の田沢湖畔、あきた芸術村に拠点を置く「わらび座」が東京で公演をするというので足を運んだ。声を掛けてくださったのは劇団の前の代表の是永幹夫氏。私が岩手県知事時代から大変お世話になった方だ。わらび座が誕生したのは1951年。私と全く同い年で、今年で創団75年目となる。日本各地の民族伝統芸能をベースにした多彩な舞台劇は、多くの人々の心をとらえてきた。
 今回は東北6県の祭りを表現した観客参加型の作品。新宿歌舞伎町のど真中にあるミラノ座全体が揺れ動くような圧巻の舞台だった。1席1席に太鼓が設置されている「太鼓シート」では、親子連れの子ども達が太鼓を打ち鳴らし、提灯が各席にある「提灯シート」では提灯を振って祭りに参加する。他にも「うちわシート」があり、私は提灯を振り回しているうちに時間の経つのも忘れ、気が付けばフィナーレを迎えていた。
 私が観た地方の劇団には、鳥取県鹿野町の廃校後を拠点にする「鳥の劇場」、富山県利賀村の「早稲田小劇場」などがあるが、わらび座の舞台には、大地にしっかりと根を生やした、土の香りがいつも漂う。
 過疎化が進む秋田をベースにした活動は悪戦苦闘の日々かもしれないが、だからこそ、人の数は多くとも「心の過疎化」が進む大都市東京の人々に、心の栄養となる感動の詰まった舞台を届けられるのだろう。観客と舞台の間に強い絆を感じ、これからもわらび座を応援し続けようと思う一日だった。

<あっちこっちで多事争論>
クマについての正しい知識と対策 (下)
  岸元良輔 (NPO法人信州ツキノワグマ研究会)
 クマはとても広い行動圏を持ちますが、なわばりがなく、何頭もの行動圏が重なり合います。そして、よい餌場があると集まってきます。アラスカのヒグマの例ですが、サケが遡上する河川に20頭くらいいる写真をご覧になられたことはないでしょうか? 実は、トウモロコシ畑、果樹園、ホテルの生ゴミ捨て場など、クマが好むような人為的な餌場があると、同じことが起きます。信州のある養魚場で、夜間に1枚の写真に9頭のクマが写ったことがあります。このような場所は電気柵などで守らなければ、駆除だけに頼っていると、状況はどんどん悪くなってしまいます。
 長野県では、この20年間に推定個体数が3倍近くに増えています。にもかかわらず、年間の人身事故数はほぼ横ばい、農業被害額はむしろ減っています。これは、電気柵などの防除対策が進んだからです。また、個体数も無制限に増えるわけではなく、今はクマの高齢化が進んでいて、今後は個体数が抑制されると予測しています。その他、多くのクマが山裾ぎりぎりまで利用しているのに、ほとんどが人の生活圏には出没しないなど、4月21日の「さんか・さろん」では、これまでの研究や経験に基づいたお話をさせていただこうと思います。
 クマは基本的には、人を避けてひっそりと暮らしていて、積極的に人を襲う動物ではないのです。
医師とショベルカー
  太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)
 「他の人がいやがるところに行き、他の人がいやがることをする」
 内村鑑三のことばをそのまま行った中村哲医師が、アフガニスタンで凶弾に倒れて6年余りが過ぎた。中村医師の出身地博多での研究会で、ペシャワール会Worker OBの川口拓真さんの基調講演を聞いた。
 中村医師は1984年、パキスタン・ペシャワールの病院に赴任、86年からアフガニスタンでの医療活動を行った。2000年ころ、大きな干ばつに見舞われ、老人や幼い子供たちが栄養失調になり、瀕死の状態でやって来た。水もない、食料もない。薬での治療はできない。「いのちの水の確保が第一」と考え、まずは井戸掘りをすると自ら宣言、現地の人々と一緒に1600もの  井戸を掘った。
 しかし、井戸では限界がある。そこで、アフガン東側、氷河からの水が豊富なクナール川から取水し用水路をつくろうと計画。川からの取水は川に堰を設けるのが一般的だが、堰の建設に必要な本格的なコンクリート工事は重機や技術面で無理。福岡県朝倉市の斜め堰などを参考に、日本の伝統技術を駆使して全長27㎞の用水路を完成させた。
 川口さんは「中村先生は本当に楽しそうに川でショベルカーを使いこなしていた」という。「俺は行動しか信用しない」といった中村医師のことば通りだった。
*写真は、現地の人々を前に話す中村哲医師(ペシャワール会パンレットから)

あぁ、親指シフト (上)
  ほんだゆかり (静岡市 タクシードライバー)
 「親指シフトキーボード」という変わったキーボードのことをご存じでしょうか。
 いや、ご存じの方はとても少ないと思います。この特殊なキーボードは、「親指シフトキー」を活用することで、一度の打鍵で日本語五十音や濁音、半濁音、記号などを入力することがで、ローマ字入力の2倍以上の速度で原稿を書くことができます。
 例えば「H」のキーをそのまま押すと「は」、右親指キーと一緒に押すと「み」、左親指キーと一緒に押すと「ば」。ひとつのキーで3種類の文字(記号)を入力できるのだから、ローマ字に比べて2倍以上早いのです。
 「親指シフト」は1980年に富士通が開発した技術です。1980~90年代に在籍していた新聞社に入社した年、まさにこの年が、鉛の活字を1文字ずつ拾っていた新聞制作現場の電算化(コンピュータ化)が始まったタイミングだったのです。現場で与えられ、初めて触ったコンピュータのキーボードは全てこの「親指」。必然的に習得した入力方法は「親指シフト」でした。以来、40年ずっと使い続けています。
 というか……、ローマ字だと原稿が書けない不自由なカラダになってしまったのです。(つづく)

私たちが作った竹製品、お譲りします
  大原興太郎 (三重大学名誉教授)
 東日本大震災と原発事故を忘れてはいけないと思い、2度ほど福島を訪ねて、被災地の光景を目に焼き付けた。それでもいつしか自分の中でも少しずつ風化しているのか、当事者意識が薄れてきていることを認めざるを得ない。
 3月17日の「さんか・さろん」を聞き、改めて今できることは何かを考えた。中村桂子先生も言ってみえたが、自分たちの問題だと如何に捉え続けられるかが重要なのだと思う。
 一市民として何ができるのか。人生の晩年に三重スローライフ協会などを通してスローライフ運動に関わってきた者としては、ささやかでも身体が動く限りはそこにこだわり続けたい。
 私はスローなライフスタイルは自然(物)をできるだけ活かすことであり、そのためには手間暇を惜しまないことだと思っている。10年あまり前から勤めている松阪農業公園ベルファームで、竹林整備や伐採竹の竹製品を作って楽しんでいて、その竹製品や竹炭は、ベルファームの中で販売したり、仲間や知り合いに差し上げたりしている。写真のように竹箸、靴べら、一輪挿し、杖や竹ナイフなどもある。
 もし興味を持ってもらえれば、スローライフの会の会員さんに限り無料でお送りするので、ぜひ気軽に声を掛けていただきたい。使ってみて気に入ってもらえれば、スローライフの会へのカンパの割増にでもしてもらえれば望外の幸せである。
お申し込みは大原のメアド kohara@xf6.so-net.ne.jp へ。

再び東電福島原発事故を考える
  大山皓史 (札幌市 弁護士)
 東日本大震災から15年、高市政権は原発を再び積極的に推進する姿勢です。福島原発の大事故の反省も忘れたかのようなその無神経な鈍感さ、無責任さが、とても気になります。
 2011年9月のNHK、ETV特集「日本原子力発電史(1)(2)」によると、日本に原発が導入されたのは、東電も通産省も政界も防災対策を軽視し、ただ安上がりという理由だけ。原発リスクの真の実態をほとんど知らない学者、評論家、ジャーナリストも、政府が原発を「国のエネルギー政策の基本」に据えたことを黙認どころか奨励したという。
 当時、原発推進の政策は真に公益のために、無私に徹して、決定されたかというと、そうではなかったようだ。安全神話を作り上げるのに寄与した専門家?も、公正無私ではなく、(何ほどかの)私益と保身のために職務遂行していなかったか。
 国の重要な政策にかかわる人達が、社会から負託されている自己の職責の重さを忘れ、職務を(少しずつ) 公正無私に全うしないとなると、それらは初めは「小さな(無責任な)原因」であっても、それが集積して誤った国策を推し進め、結果として、福島原発事故のような途方もなく「大きな悪い結果」をもたらしたことを忘れてはならないだろう。
 一方に、無私に徹しきれない人間の卑小さがあり、他方で、そのような卑小な人間が身の丈を超えた科学技術文明の力を獲得し、その力を私益と一体化した資本主義経済システムにより国家社会を組織化したことの矛盾、ギャップを痛感する。
 この問題をどのように克服したらいいのか。これこそが人類の将来にとって一番の問題ではないだろうか。

坪井ゆづるさん 新潟で講演
  野口一則 (新潟市 スローライフの会会員)
 坪井ゆづるさんにお願いして、3月10日(火)に新潟経済同友会の例会でご講演をいただきました。新潟県内の企業経営者120名が対象で、演題は「日本政治の現在地 3つの視点で考える①衆院選②民主主義③ふるさと」でした。
 今回の衆院選は、「解散から投開票まで戦後最短のわずか16日、何が問われたのかが分からないまま選挙が終わってしまった。憲法7条解散がまかり通り続けている日本は世界的に見ても極めて珍しく、『解散は総理の専権事項』ではない」。
 高市旋風は、「はっきり言う、逃げない、明るいといった物言いが、ふだんはあまり政治に関心のない有権者に『何かを変えてくれそう』との期待感を与えたことが要因」。「女性だから応援する」という声も目立った。また「YouTube利用者の72%はテレビや新聞の情報は信用できない、『敵対的メディア認知』の傾向があり、選挙へのSNSの影響力が増している」との所見でした。
 他にも、「森友問題の政治腐敗へのまなざし」「平成の大合併とは何だったのか」「2024年改正地方自治法に要注意」など、出席者一同にとってたいへん有意義なご講演でした。
 誠にありがとうございました。

『スローライフ曼荼羅』
2045年
  野口智子 (ゆとり研研究所 スローライフの会共同代表)
 先日の「さんか・さろん」で、いわゆる「除染土」(汚染土)を、「国は2045年3月までに、福島県外で最終処分すると法律で決めている」とのことでした。理解している国民は少ないとも。その一人が私、切羽詰まっている実感がなかったのは事実です。一方、2045年といえば、AIが人間の知能を追い越すといわれる年。汚染土や、まして880トンの燃料デブリはどうするのか。AIが解決できるのでしょうか。(写真は福島県浪江町の汚染土仮置き場、2020年3月10日金井紀光さん撮影)
https://noguchi-tomoko.com/post-11128/

■■つべ小部屋■■
さもしい国へ
  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
 「貧すれば鈍す」。最近、この言葉が頭から離れない。二つの事例をあげる。
 一つは、政府が武器輸出の制限を撤廃し、殺傷能力のある武器輸出の全面的な解禁に踏み切ること。
 1976年の国会で、外相だった宮沢喜一氏が「たとえ何がしかの外貨の黒字が稼げるとしても、我が国は兵器の輸出で金を稼ぐほど落ちぶれていない」と答弁していたことを指摘された高市首相は、「時代が変わったと感じる」「(防衛)産業につなげ、お金を稼ぐことが『落ちぶれたこと』だとは思わない」と応じた。この首相を、さきの衆院選で多くの有権者が支持したのだ。
 実はこの宮沢答弁を、筆者は3月10日の新潟市での講演で引用し、「かつて、こうした高邁な国会答弁があったことは記憶しておくべきだと思います」と述べていた。せめて歴史は知っておいてほしい、という思いだった。
 だが、驚いたことに、参加者の中に「宮沢さんを知らない」という青年がいたのだ。本当に知らないのかは確かめようがなかったが、首相の言った「時代が変わった」ことを実感させられる一幕だった。
 もう一つは、文化庁が国立博物館・美術館に、「自力で稼ぐ」ことを求める中期目標を示したこと。展示費用に対する入場料など、自己収入の割合が4割を切ったら、再編の対象にするのだという。この目標には、常設展や企画展にかかる費用に対し、入場料などの自己収入の割合を5年後までに65%以上にし、10年後までには国費に一切頼らないようにすることが明記されている。
 まさに「さもしい国」の成れの果て。これはつまり、博物館などが「鈍だから貧した」という発想なのか。「文化芸術立国」の現実が、悲しくて悔しい。

〈編集室便り〉
▽古川さんの「さんか・さろん」資料
 3月17日の「さんか・さろん」は福島県郡山市の会員、古川伝さんによる「もう15年か、まだ15年か~ふくしまの今~」でした。元朝日新聞記者(現在はテレビ会社の社長)らしく、綿密なデータに基づいて、原発被害地の現在を語られました。説明に用いたパワーポイントのデータを、会員限定で公開してくだいました。「参加できなかった会員のみなさん、福島県外の方々にもご覧いただき、何らかのきっかけにしていただければ幸い」という、ご本人の意向によるものです。ぜひ、ご覧ください。
https://kfb002-my.sharepoint.com/:p:/g/personal/aita_kfb_co_jp/IQBOisB19tfcSYCguog-JfGtAab8vZHbg-kxR7Z2i9x6_tc?e=ZQThki

▽編集長がブックレットを発刊
 つぼいゆづる編集長が在籍する(公財)地方自治総合研究所の「総研セミナー」の記録をブックレットにまとめ、刊行しました。2024年に改正された地方自治法で自治の現場はどう変わるのか、がテーマです。一昨年に刊行した『「転回」する地方自治(下)』では、新たな「国の指示権」に警鐘を鳴らしましたが、今回は改正法で新設された「指定地域共同活動団体制度」に焦点を当てています。人口が減ってゆく社会で、この制度によって住民の地域活動が自治体(行政)の下請け化されてしまうことへの懸念と、制度をうまく使って活路を見いだそうという見解が、それぞれ具体的にわかりやすく語られています。地方制度調査会(首相の諮問機関)では、ほとんど議論されずに法制化されただけに、現場での対応が注目されています。
 『2024年改正地方自治法は地方自治をどう変えるのか』(公人の友社、自治総研ブックレット30)、1500円、4月以降大型書店やネットで入手可。

▽新年度の会費をお願いします。
 スローライフの会の年度は、4月~3月です。年会費は5000円、毎月の「さんか・さろん」に年間参加の方はプラス3000円、合計8000円となります。たまにしか「さろん」に出ない会員の方は、1回1000円。一般の方は2000円となります。
会費と皆さんのボランティアで運営している会です、会費と合わせてご寄付も大歓迎です。
【振込先】
ゆうちょ銀行 振替口座 00190-4-595293 スローライフの会
※他金融機関からのお振込みの場合は
店名:〇一九(ゼロイチキュウ)店、預金種目:当座、
口座番号:0595293、スローライフの会 まで。

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