7月の「さろん」は選挙後の政治のお話でした。

7月19日、第120回の「さんか・さろん」は、終わったばかりの参院選を振り返り、日本政治の今後を考える機会にしようと、朝日新聞論説委員の坪井ゆづるさんに『参院選から見る日本政治』と題してスピーチをしていただきました。

 

坪井さんは「日本記者クラブ」の党首討論でも挙手をさせて明確な回答を求める有名な質問者。(写真はかつてのもの)今は朝日新聞の夕刊コラム『素粒子』をご担当。また、日本自治会の理事・企画委員長で、スローライフジャパンの理事でもあります。

 

「記者は起きたことは分析をしながら記事にするけど、今後の予測は意外と当たらないので、そのおつもりで!」と前置きがあって、お話の構成は、選挙を振り返り「3つの特徴」「目についた3点」と、今後の気になる点をしぼって「どうなる、この3点」でお話いただきました。抜粋して報告します。

 

~~今回の選挙は事前の想定どおりの結果だった(画像参照)。女性候補者が増えて当選も多かった。企業献金廃止を目的に始まった政党助成金制度を利用して、金儲けをするN党が現れた。しかも、政見放送で堂々とその事を訴えるさもしい行為をどう思うか。

2013年にネット選挙が解禁になって以降、さらに隆盛になり、参政党に見るような〝イメージ戦略″が影響力を増している。特にSNSは簡単につながり、個人の内面まで現わすから、共感できる話題や、若者の思いの受け皿になるアプローチが有効だと分析す政治家もいる。対照的に、組織票は減り続けている。コロナ禍で集会が開きにくかったことや、支持者の高齢化が背景にはある。昭和の時代、議員は選挙で〝夢と希望″を語ったが、平成以降は有権者の不満・不信を表明する場になった。安倍政権以降、投票率は低く、それは与党に有利に働いている。今回の投票率は52,05%と低かった。

〝一票の格差″は今回3倍にもなった(画像参照)。福井県の一人は神奈川県の三人分にもなる。

安倍政治が遺した負の遺産は、〝無責任な政治″だ。説明責任を果たさないで、うやむやにできる要因には、官僚の忖度・野党の弱体化・メディアの分断があるが、それにしても森友問題を1億円の税金を払って真相解明を逃れた〝認諾″はひどい。

世論調査で、岸田政治に望むものの優先順位は、1物価対策、2社会保障、3景気雇用、4外交安保、5憲法改正だった。しかし、国会では〝自衛隊の明記″が〝改憲4党″で盛んに議論されている。国民は望んでいないのに、だ。

平成時代に野党は2大政党制目指していたが、今は自民党の一強多弱だ。是々非々の議論もあるが、衆院選を決勝戦とするトーナメント制から、多党制を前提としたリーグ戦のような発想も必要ではないだろうか。政権交代のない政治は良くない。国会には緊張感が必要だ、何故なら権力は必ず腐る。~~

 

坪井さんのお話を受けて、参加者からはいろんな質問や意見が出ました。

~~一票の格差は、地域以外に世代の格差でもある。若者の関心の低さ、学校教育の現場で政治を学ぶ機会が少ないのではないか。文科省は自民の言いなりとも受け取れる。そもそも、ニュースや時勢を知る媒体が、新聞などの〝オールドメディア″から、テレビも見ないでスマホばかりになっている。目先の話ではなく、50年・100年後を語るような報道を期待したい。自分の考えをYES/NOで選択して政党を選び出す「マッチングボード」などもヒントになる。どの政党を選ぶか‥だけにならないよう、地方はどんな自治体になりたいのかが大事。地方分権が必要。今のままでは、当選者が自分達に有利な選挙制度が続く。根本的に政治を変えるには、第三者・衆院・参院が揃って選挙制度を見直す審議会を復活するなど、有権者の声が反映される政治へ。~~

 

政治に対する不信感だけにとどめず、前向きな意見がたくさん出ました。こうした議論を気軽にする事こそ大事だと思う回になりました。42名の方にご参加いただきました。

 

なお、今回は音声が聴き難いとのお声がありました。講演部分のみこちらのYouTubeでご覧いただけます。