1月の「さろん」は、新年恒例の増田さんでした。

第125回「さんか・さろん」は1月17日、年頭恒例の増田寛也さん(写真)のスピーチでした。

増田さんは日本郵政社長。我がスローライフ学会会長でもあり、お話は「今年もスローライフを考えながら…」をテーマに、地方創生や日本郵政での新しい取り組みなどもお話下さいました。

増田さんのお話の要約です。(事務局)

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実は年男、72歳です。今年はまず第一に5月20日(土)・21日(日)に、京都府で「スローライフ・フォーラム」を開催するのが一番大きな仕事。これから詳しく詰めますが、皆さんご予定ください。もう一つは、組織について。スローライフ学会の母体『スローライフ・ジャパン』はNPOになって20年の節目を迎えます。考え方は継承しながらもその在り方を、もっと身軽にと変身を考えなければならないと思ってます。

年始にあらため筑紫哲也さんの著書『スローライフ~緩急自在のすすめ~』を読み返して、その精神に触れました。2006年出版なのに、16年経った今の時代に合致する考えだと感心しました。

テクノロジーが進むにつれ、社会全体は利便性を追求しています。年賀状の配達数が年々減少している様に、相手を思う時間は減り、簡単に誰かを全否定して傷つけたり、SNSや匿名で、身勝手な発信をすることがまかり通っています。情報は、活字や紙の持つ“間”を省いて、映像の早送りで余韻もなく結論を急ぐ傾向になっています。一方、社会はマニュアル化やルールで管理しやすい事が優先され、殺伐とした社会で“分断”が広がっています。

筑紫さんが説いた“緩急自在”の精神は、「両義性」、多様な価値観を尊重し、一方的に白黒をつけず、こちらの考え方を伝えながら、相手を理解して、主張の奥深さ聞く。このことがとても重要だと思います。

アメリカには電気や自動車の暮らしを拒否する「アーミッシュ」という人達がありますが、スローライフは利便性を全否定するのではない。私は飛行機や新幹線、最もファストな移動手段を選びます。そうやって生み出した時間を、地方を訪ね、その土地の良さや背景をじっくり見てきます。スローライフの実践の仕方は“それぞれ流”であると思います。

地方の郵便局には一年間で70か所位訪ねています。先日も高知の四万十市で、若い局員の生の声を聞いてきました。高知大学では地方創生を実践する全国初の学部『地域共同学部』が創設されましたが、ここを出た学生がいるとのことで訪ねたのです。地域に役立ちたいと張り切っておいででした。日本郵政では、新しく地域のお手伝いをする制度で希望者を昨年から募集したところ、8名の社員が手をあげ、今、見ず知らずの土地で頑張っています。これは、社員には勉強になり、地域と双方に刺激になっているようです。

高知大学の地域共同学部のようなところは、その後他県にもできましたが諸問題は抱えているようです。私自身、大学などで若者を鍛えるようなところには、今後も顔を出したいと行動しています。

全国共通の問題は、人口減少により、コミュニティが弱くなっていることです。コミュニケーションの場づくりと、移動手段の解決が地方の共通の課題でしょう。地域を維持していくには地域自主組織が重要で、以前フォーラムで訪れた島根県の雲南市には「小規模多機能自治」というものがありました。機能を“分ける”のではなく、大まかな制度や枠組みだけを作っておいて、臨機応変に機能を“兼ねる”ことができる仕組みです。北海道にも沖縄にもそうした歴史や文化が残っています。ぜひ“分けるより兼ねる”をしてもらいたいですね。また、伝統野菜のように昔からの知恵が生き残っている事も重要に捉えて、効率が悪くても“伝統の知恵”を守り受け継いでほしいと思います。

2023年年始に、気になったキーワードは“つなぐ”と“架ける”です。スローライフの精神もそうしてゆきたいと考えています。

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スピーチ後は自由に意見交換となりました。

“兼ねる”キーワードには…

「地方は兼ねざるを得ないのが現実だが、発展的に兼ねるのが大事だと思った。」「明治時代、日本はドイツやフランスを手本に地方自治体を作ってきた。総合的に権限を与える“多機能自治”の話が聞けて良かった」「移住コーディネートをしながら、幅広い職務知識を身に着けた”ジェネラリスト“の様な存在が大きいと感じている。”兼ねる“の考えに共通する」「農業はまさに兼ねるだ!」

”場づくり“のキーワードには…、

「コミュニケーションは場づくりと世話役が大事だと思う。」「同じ経験をした同士・仲間の繋がりが大事」「“繋がりコーディネーター”」「距離を超えられるオンラインの活用も」

日本郵政への期待は…、

「地域の応援制度の話を聞いて、全国津々浦々を元気にしてもらいたい」「 “お客様と地域を支える共創プラットフォーム”“進化するぬくもり”これは、まさしくスローライフですね!」

他にも…

「学生はインフレの煽りを受けている。地域系の学部は、現地へ行って学ぶ事が大事なので、支援を考えたい。」「美しく加齢し、終生自立を目指す“スローエイジング”」「スローライフの実践は“それぞれ流”を大切にしていきたい」

阪神淡路大震災から28年目のこの日、被災された参加者は「震災を子供に語ったことが無かった。戦争を語りたがらなかった大人と一緒だと気づいた。“つなぐ”ためにも語ろうと思った」との発言もありました。

46名の参加者でした。