12月の「さろん」は、奈良女子大の皆さんでした。

第124回「さんか・さろん」は12月20日、奈良女子大学の室崎千重さんと、その研究室に通うゼミ生7名がスピーカーで、『学⽣が語る⼗津川村⾕瀬とむらづくりの魅⼒』が語られました。

<写真はスピーカーの皆さん>※奈良市にある奈良女子大学室崎研究室から

奈良女子大学准教授:室崎千重さん

大学院1年生/安藤奈名彩さん、重久絢音さん

3回生/内野麗さん、大沼美空さん、川口翔子さん、吉村陽彩さん、青木結香さん

~以下、事務局からの報告です~

奈良⼥⼦⼤学⽣活環境学部住環境学科は、インテリア、住宅から地域計画・都市計画、地域コミュニティ、ランドスケープまで学んでいます。特に室崎ゼミでは、⽣活者の視点から、住まい・暮らしを考え研究しています。“フィールドワークが多いゼミ”だそうです。

 

室崎さんは、2011 年 9 ⽉に発生した「紀伊半島⼤⽔害」後の暮らしの復興がどうなっているのかが気になり、奈良⼥⼦⼤学に着任後、福祉住環境学の視点から、仮設住宅の居住者や⾕瀬集落の暮らしの聞き取り調査に加わりました。2013 年のことです。

一方、スローライフ・ジャパンの野口智子事務局長は地域づくりアドバイザーとして、十津川村谷瀬に通い、2014年4月、谷瀬に『ゆっくり散歩道』を集落の皆さんとオープンにこぎつけました。集落には『寄合』という住民自ら村づくりをする集まりの慣習があり、室崎さんは、「ここに小さくても学生とできることで関わろう!」と参画しました。主旨は「ふだんの暮らしに混ざる」ことだったそうです。

2015年、ゆっくり散歩道に⽔⾞が完成し。同じ年、谷瀬で作った酒米を使った『純⽶酒⾕瀬』づくりが始まり、作業に学⽣さんの参加が始まりました。山仕事の合間にちょっと休む場所をこの土地では「こやすば」と呼びますが、その名をつけた休憩所・交流の場『こやすば』も学生さんの大活躍でオープン。こうして、どんどんいろんな事が実現する谷瀬の動きに、室崎ゼミは3回生になったらプロジェクトを行う仕組み『谷瀬×3回生プロジェクト』を作り、活動を恒例化していきます。

~学生さんから報告された活動の流れです。~

2015年、『ゆっくり散歩道』に手書きの案内板を設置。

2016年、案内板に、『⇒』を加え順路の提案。温かみのある木製で改良。

2017年、散歩道と『こやすば』のリーフレットを作成。

2018年、散歩道でスタンプラリー、廻りながらかわいいマップが完成する仕組みを。

2019年、『谷瀬の吊り橋』の『茶屋』のロゴデザインを考え、お土産用に使う紙袋やタグ・シールにして、ラッピングデザインを作成。

2020年、散歩道のリーフレットを持ち歩けるように改良。マップの色つけ・谷瀬のおいしい空気が伝わるクイズと回答・プレゼントの仕組みを考える。茶屋に、土地の人の声が伝わるウエルカムボードを製作。

2021年、SNSで情報発信『#谷瀬おさんぽ日和』、facebookでは『とつかわくわくプロジェクト』で谷瀬が観光の目的地になるような仕掛けを。

2022年、訪れた人をどう楽しませるか、フォトフレームなどの手法を考え中。

~これらを分野でまとめると~

『こやすば』:奈良県立大学と組んで、場づくりや写真展・道具展を展開

『ゆっくり散歩道』:看板のバージョンアップや、散歩道のソフト展開

『純米酒谷瀬』:田植えや稲刈りなど作業の手伝い、酒蔵体験、説明文作成、杉玉作り、大学での販売応援

『食べる谷瀬シリーズ』:提案、酒かすアイスの商品化、シリーズ化、キャラクター、「干しかいも」(乾燥芋のこと)の作業手伝い

『田舎体験ハウス玉岡』:移住定住を目的にDIY

 

学生さんからは、「谷瀬には年間スケジュールを組んで、年4、5回程度訪れています。訪れると前回の実施後の村人の反応が実感でき、生の声が聞けます。例えば、ウエルカムボードの黒板には旬の話題や、新しいリーフレットが補充されていたり、お土産用のスタンプがいろんなものに活用されていたり…と。仲間と協働した物が、谷瀬の人の役に立っていると実感できることが何より嬉しいです」とのことでした。

 

~「さろん」参加者からもいろいろな意見が出ました~

・集落住民として参加した役場の馬場健一さんは、「学生さんが通って、実施してきたことが形に残っている。受け入れ側は慌ただしく、可能な事と無理な事がわかってきた。谷瀬ファンも育ち、地域の空気が明るくなった。特にお爺ちゃん達はイキイキしてきたように思う。この変化が周囲の集落にも広がって、谷瀬に対する期待が高まっている」

・「実績に感心した!」「自然と住民の営みの中で、一つ一つが手作りされている」「アイディアが実践的で現実的」「“やわらかく”“しなやかに”だ」「命の根源的な事をやっている」などなど。

・将来・進路・2050年の姿に質問が及ぶと、学生さんからは・・・。「人と協働した経験が、今後、“独りよがり”を避けられそう」「自然環境の良いところで、PCを活用して、地域活性化に取り組みたい」「協働生産性の上がる社会になっていてほしい」「谷瀬に通うことは、非日常を体験できた。こんなに穏やかな気持ちになれることも知った」「地方創生は重要」「自然豊かな地方を体験できて、働き方や暮らし方のヒントになっている」「反応のある仕事に魅力を感じる」「都市開発の視野を広げたい」

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学生さんの話に何度も出てきた『先輩』のことば。数年間のゼミ活動の足跡と、地域住民へのリスペクトを感じる報告に、あらためて室崎さんの指導力に感心します。2022年最後の「さんか・さろん」は、希望を感じる締めくくりとなりました。31名のご参加でした。

2013年から十津川村に関わっているスローライフ・ジャパンは2022年には「スローライフ・フォーラムin十津川」も開催。今後も、十津川村、谷瀬を、奈良女子大学の皆さんとともに応援していきたいものです。