瓦版2024.2.27第705号 増田寛也さんのコラム掲載

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春一番のあと、初夏を思わせる風に当たった翌日、真冬へと引き戻される。
何とも乱暴な天候に戸惑うばかりです。いったい、「三寒四温」はどこへ行っ
たのでしょうか。もうしばらくは体調管理に苦労する日々が続きそうです。さ
て、改訂第2弾の今号にも新しい筆者が登場しています。次は、あなたです。
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ご感想を下記にお寄せください。

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■コラム 緑と絆の木陰

未来へのシナリオ
増田寛也(日本郵政社長)

現場を知ることが大切と、昨年は離島の郵便局を中心に数多く回ったが、12
月に長崎県の五島列島を訪れた際に腰が悲鳴をあげて、とうとう左足に激痛が
走るようになってしまった。MRIの画像を見て、かかりつけの先生が椎間板ヘ
ルニアと診断。会議でじっと座っていると堪えるため、しばらく痛み止め薬に
頼る生活となった。こうなると治療薬や痛みを和らげる体操など数多くの新聞
やテレビ広告が目に入ってくる。この歳になるまで幸い健康を保ってきたので
気がつかなかっただけで、同じ悩みを抱える人が世の中にはとても多いことを
知った。こうした間にも世の中は容赦なく進んでいく。能登半島地震や羽田で
の航空機事故。寒暖差の激しい日々。先週は、東証の株価が市場最高値を更新
したが、その映像に引き続き能登半島やウクライナ、ガザの現地の様子が映し
出され、何ともやり切れない思いが募った。
こんなもやもやした時に神野直彦先生の最新刊(2月20日出版)『財政と民主
主義-人間が信頼し合える社会へ』(岩波新書)を手にした。新自由主義の「政
府縮小-市場拡大」が人間と人間との「連帯」や「協力」という絆を分断して
しまったという問題意識を主軸に、社会の構成員の共同負担で社会の共同の困
難を克服するために共同事業を実施する、という財政民主主義を取り戻し、「賢
い財政」を築くことを説く。そこでは、先生御専門の財政論を超えて人間愛に
あふれた奥深い神野哲学がページ毎に語られている。「根源的危機の時代」にあ
っても「人間を人間として充実させる」希望のヴィジョンを描く意欲を阻喪して
はならず、「人間を人間として充実させる」未来へのシナリオを描き、努力を重
ねることが私たちの責任、との先生の結語にとても勇気づけられた。幸い左足
の痛みも治まり、落ち着いてきた。「未来へのシナリオ」としてどのようなヴィ
ジョンを描くか。新たな使命を教えていただいた。

 

 

■あっちこっちで多事争論 (会員投稿)

「感じること、教わること」
松下隆 (長崎県雲仙市 スローライフの会会員)

例年よりも早く吹き荒れた春一番。「異常気象」と呼ばれて何年経つのか。
そんな事を意識しつつも、花が咲けば人の心を穏やかにするのは事実。
昨年末から、父は車の運転が出来なくなり、たまに一緒にドライブに行く。
昔一緒に行った海、守り・継承してきた田畑など、父が好きな場所を回る。
冬の穏やかな天候は気持ちを明るくしてくれるし、特に梅、椿、菜の花、桜
など、一片の花は感動を与えてくれ、車中の父は微笑んでいる。
ドライブを終え、父と一緒に風呂に入る。親子で入るのは約45年ぶりの再開
である。平日は私の息子が一緒に入ってくれるが、休日は可能な限り一緒に入
っている。父の背中を流しながら「自然は、よかね。幸せだ」と父が喜んでい
た。父の喜ぶ顔を鏡越しに見て、私も喜ぶ。
ただ風呂から出ていくとき、背中越しに「トラクターの耕耘(こううん)は
下手くそ。今年は暑かけん、次は5月に耕耘せろ。そん時は・・・・」と小言
を云っていく。農業は季節を感じながら対応するもんだと、改めて教わる。
さてさて、今度は何処を回ろうか。季節・自然の息吹を発見し、父に見せた
い!

「ビーツを収穫!」
栗生尚子 (兵庫県宝塚市 スローライフの会会員)

昨年、ビーツを種から育て、少し小ぶりのものを収穫できた。
カブのような形で黒っぽい赤色(写真)。ビーフシチューに入れると鮮やか
な濃いピンク色になり、思わず「わあ~綺麗、美味しそう」との言葉が出てし
まった。もちろん美味しく実食してホカホカに!
このビーツ、ウクライナではボルシチに使われるのはよく知られている。
思いがけなく昨秋、ウクライナから避難された家族に会う機会があり、戦禍
も含めて色々話を聞いた。幼稚園児の男の子と母親、祖母の3人。夫は国に残
っているので毎日ビデオ通話で無事を確認しているとの言葉に胸が痛んだ。
今は宝塚市内のコープで、日本語は難しいけれど翻訳機能を使いながら仕事
をしている、という。幼稚園に通う息子が一番早く日本語を覚えている、と笑
顔で話したくれたことにほっとした。
ウクライナのボルシチは、豚肉を使うとも教えてくれたので、次は畑の人参
や野菜と一緒に作ってみたい。

 

「理容室難民」
竹内玄(東京都 スローライフの会会員)

東京に居を移して早1年、いよいよ理容室を見つけなければならなくなった。
そこでスマホを手に近隣の理容室を探し電話をしてみる。しかし「今週、来週
はここしか空いて無くて」などと言われ、なかなか予約を入れられない。近隣
の何件かにも連絡を入れてみるものの、みな予約できない。
仕方なく理容室をあきらめ、美容室を表示させると、こちらはWebサイトで
予約できる。混んではいるが、すぐに予約を取れた。ホッとすると同時に、私
はこの違いが気になった。理容室にはWebのないところも多いのに、美容室に
はWebはもちろん、オンライン予約の体制まで整っている。
そこで私は統計を紐解いてみた。理容室数は資料のある1995年から3万
軒減少し11万件に、対する美容室数は7万6千軒増加し27万件と倍以上の
開きがある。ここから美容室は成長産業で、顧客の獲得に熱心なのかと考えた。
こんな仮説を早速に美容師にぶつけてみたところ、「私たちの若いころに、キ
ムタクが美容師のドラマがあり人気が出たんですよ。そのため、美容師と美容
室が右肩上がりでしたが、そろそろ打ち止めです。どちらも楽じゃないですよ」
とのこと。この見立ての成否はさておき、個人商店を応援する私としては、ど
ちらにも頑張っていただきたい。

 

「問いの光り」
戸塚久美子 (静岡県掛川市 NPO法人冀北の杜 理事長)

まずもって、先日の増田寛也様のご講演に心から御礼申し上げます。人口減
少社会のくだりを拝聴していた私の脳裏には、明治大正の近代から現代までの
女性活動が、走馬灯のように現れてきました。これまで、女性活動家は「子供
を産み育む社会づくり」を目指してきたか? そのベクトルよりも女性達は、
社会的地位の平等と、就労を通じての社会貢献と、自己実現を政治的目標にし
てきた歴史だったのでは?、と。(講演は1月の「さんか・さろん」)
140年も前の自由民権運動から参加した女性たち。女性参政権を得るまでに
は、戦後までの時間を費やすことになりましたが、政治参加を成し遂げた90歳
以上の女性達。80歳以上の女性達は1985年制定の男女雇用均等法を導くアプ
ローチを。70歳以上の女性達は介護保険制度を。そして60歳以上の私世代は、
仕事と家庭の両立支援と子育て支援を整えてきました。
今回のご講演は、人口減少時代を生き抜く女性たちの次なる活動は、どのよ
うな目標を設定するのか?、という「問い」を導きました。この新春に「問い」
を持つことが出来た私は、春から朗らかです。

 

「美味しいが一番」
濱手英之 (岡山県鏡野町 薪ストーブ屋さん)

『備前軍記』という本を読んでいる。豊臣政権五大老の宇喜多家の興隆を記
した本だ。その名を掲げる備前市に旬の牡蠣を食べに行ってきた。弟夫婦と姪
っ子に連れられて、いざ牡蠣小屋へ。
どうやらインスタとやらで流行っているらしく、客の大半が若者だ。食材は
隣接の直売所や「五味の市」(漁協の魚市場)で購入してくる。焼き場にはトン
グや箸、小皿、たれ、そして火の起こされた炭も用意してある。小1時間ほど、
たっぷりと食べごろの牡蠣や海鮮を堪能することができた。
備前市は人口が減り続け、2004年には「財政再建団体へ転落の可能性」
が公表されていた。町の中心にあった大型(?)商業施設も撤退。製造業とい
えば備前焼など、焼き物イメージの町だった。しかし、この牡蠣小屋周辺は3
連休の初日ということもあり、大変な賑わいで活気があった。
そして備前市には最近、もう一つ自慢ができた。大リーグのドジャースと契
約した、あの山本由伸選手が生まれ育った地なのである。
置いてきぼりになったような土地にも局所的(?)には賑わいが戻って来た
よなぁ、などと「牡蠣づくし」を思い浮かべつつ考えている。次はカキオコ(牡
蠣の入ったお好み焼き) もいいなぁ。

 

「スローライフな社会へ」(下)
大山皓史  (千葉県松戸市 弁護士)

「スローライフ」という概念の定義、その意味内容は何か。いまさらの堅苦
しい問いですが、1980年代頃から本格化し始めたグローバリゼーションの
流れにのって、アメリカのライフスタイル(マクドナルドに代表されるファー
ストフード)が勢いを強めて伝統的な食文化が崩れていくことを危惧したイタ
リアから1986年に、その土地の伝統的な食文化を守るスローフード運動が
始まったことが始まりです。その後、その運動は発展して地球と人々を正しく
扱うという理念に基づき、グローバル化した新自由主義経済や、そのファース
トライフの流れに抗するスローライフ運動として世界に広まりました。
この歴史から、「スローライフ」とはグローバル化した新自由主義経済や、
とかくファーストなライフに呑み込まれることなく、地球環境やその生命の生
態系に配慮しながら、「皆が幸せに生きることができる社会」をめざす、その
ライフスタイルをいうものと私は理解したいと思っています。

 

 

■まちむらニュース
・奈良県高取町  ありがとう、そしてさようなら「町家の雛めぐり」

奈良県高取町で18年に亘り開催されて来た、住民主体の雛まつりイベント。
土佐町と呼ばれる、石畳みの城下町筋の家々で通りに向けて展示される雛人形
は、それぞれの家に伝わる独特の思い出の逸品。都会からの来訪者と、迎える
地元の人々との交流が嬉しい。メイン会場となる「雛の里親館」では、全国か
ら持ち込まれた『天壇の雛』と呼ばれるたくさんの雛人形が圧巻だ。この催し
は、ボランティアの高齢化もあり今年で幕を下ろす。見ごたえのある最後の雛
巡りにぜひお運びを。(チラシ参照)
期間:3月1日~3月31日
問合せ:観光案内所「夢創館」℡0744-52-1150
ライブ:人々の旅情を誘ってきたイメージソング『町家の雛めぐり』の最後
のライブは3月2日正午から雛の里親館前で。新澤が気持ちを込めて唄います!
※情報提供:新澤公康さん(奈良県高取町 スローライフの会会員)

・兵庫県丹波篠山市  meGREEN(めぐりーん)でスローに城下町を

グリーンスローモビリティとは、時速20km未満で走る電動車を用いた小さな
移動サービスのこと。いま、各地で導入されているが、丹波篠山市では市内で
運行するグリーンスローモビリティに「meGREEN」(めぐりーん)の愛称をつ
け運行中。枝豆と黒豆をイメージしたかわいいドット柄のバスが目を引く。これ
から桜の季節、篠山城下町地区の周遊にお役立てを。
運行日:土曜日・日曜日・祝日
運賃:無料
問合せ:商工観光課 観光交流係 ℡079-552-6907
https://www.city.tambasasayama.lg.jp/soshikikarasagasu/shokokankoka/kanko_bunka/22521.html

 

 

 

■スローライフ曼荼羅

「わいわい」はいいな
野口智子 (ゆとり研究所)

5年前、観光計画のお手伝いで、ワークショップに通った北海道池田町です。
その後も、という予定でしたがコロナが邪魔をして、ようやく先日久しぶりに
うかがいました。32人の町民の方々と「わいわいミーティング」。まちを良く
するのに何をやりたい?という質問に、堅い会議では出ないアイデアや笑顔が
山盛り。5カ月の赤ちゃんまで参加してくれて、何よりうれしかったのです。
https://noguchi-tomoko.com/?p=10242&preview=true

 

 

■つべ小部屋

「この2年間、何をしてきたのだろう」
つぼいゆづる(スローライフ瓦版編集長)

2年前、ロシアがウクライナに攻め込んだとき、朝日新聞夕刊「素粒子」に
「軍事力でねじ伏せようとするロシアに、どんな展望がある。茨(いばら)の
道しかなかろうに」と書いた。長く続く戦争ではない、との思いがあった。
だが、戦火はやまず、1年前の同欄には「第3次世界大戦になるのを危惧す
る知人が奇妙な数字の一致を挙げた」として、次の数字を列挙した。
第1次世界大戦の開戦日は1914年7月28日。19+14+7+28=68
第2次世界大戦は1939年9月1日。19+39+9+1=68
そしてウクライナは2022年2月24日。20+22+2+24=68
末尾に「一笑に付したが、終わりの見えぬ戦況への不安は募る」と加えて。
そして3年目に入った。両国が兵士の増員を図り、いまだ停戦への道は見え
ない。「米国でトランプが大統領になったら」などと、ずいぶん先の話を聞か
されながら、きょうも、あすも戦争が無残な殺し合いであることを白日の下に
さらしつつ、命が奪われてゆく。これが21世紀の光景なのかと思う一方で、
自分の胸に手を当てる。この間、私たち、いや私は何をしてきたのか、と。
遠い国の戦争を傍観しながら、日本の武器を海外へ輸出する動きが加速する
のを漫然と眺めていていいのか、と自問しながら。

 

 

■編集室便り

▽3月の「さんか・さろん」はこの「瓦版」についてです。

新装「スローライフ瓦版」について、皆さんから意見やリクエストをいただ
きます。ど~~んと編集長が受け止めます。ぜひ、ご参加ください。

日時:3月19日(火)19時からzoomで
テーマ:「スローライフ瓦版に、つべこべ」
進行:坪井ゆづる(スローライフの会共同代表 スローライフ瓦版編集長)
申し込み:メールで slowlifej@nifty.com (3月16日締切)

▽2月の「さんか・さろん」録画はこちらから

2月20日(火)に開催した、永菅裕一さん(棚田LOVERS)の「さろん」
「美しい棚田を未来の子どもたちへ17年の軌跡」は、講師のお話部分だけ
YouTubeでご覧いただけます。こちらからどうぞ。

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■私たちはいつもスローライフの動きを応援しています。

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丹波篠山市
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日本テレネット株式会社
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アース・デザイン・インターナショナル(edi)株式会社
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中島プレス工業有限会社
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昨年12月、名前が「スローライフの会」に、住所も変わりました。
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