スローライフ瓦版 2026.10.13 第768号、中村桂子さんらコラム多数。


 「IDCFクラウドにランサムウェア攻撃。大規模な障害。495の企業・自治体に影響」という記事を横目で見ていたら、他人事ではありませんでした。なんと、スローライフ瓦版の一斉配信もできなくなってしまったのです。なので、今号はいつもと違う編集方法でホームページに掲載し、それを会員にお知らせしています。無事に読めますでしょうか。
*写真はカンボクの実=北海道旭川市で
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●感想を下記までお寄せください。
slowlifej@nifty.com
●会員の方からの投稿をお待ちしています。次回は10月22日(木)が締め切りで、10月27日(火)に配信します。

『緑と絆の木陰』
〈人間は機械じゃない〉
  中村桂子 (JT生命誌研究館名誉館長 スローライフの会共同代表)
 私にとってのスローは、「生きものの速度」です。そこで気になるのが生成AIです。
●生成AIのはたらくメカニズムは、誰にもわかっていないのです。機械は全てわかっているもの。どうして動くのか誰も知らない自動車を走らせますか。
●「AIが人間を超える」という言葉が聞かれます。自動車もジェット機も人間とは比べ物にならない速度で走っても、誰も人間を超えたとは言いません。なぜAIにだけそんなことを言うのでしょう。ただ猛烈な速度でデータ処理ができるだけ。意味は分かっていません。人間にとって大事なのは言葉の意味ですのに。
●莫大なエネルギーを使います。マイクロソフト社がスリーマイル島の原発1基を買いました。半導体がきれいな水を大量に使います。地球での暮らし方としてとても気になります。
 ここで「人間は機械じゃない」として生成AIを一度止めて考えないと、とんでもない社会になると思います。専門家の中にはそれを考え始めた人がいるようですが、トランプ・習会談は、競争加速の方向を示しました。AI(Artificial Intelligence)でなく、SI(Super Intelligence)と名付けて。恐らく本質は知らずに、ただ競争に勝ちたい、お金が動いて欲しいだけでしょう。
 「生きものの速度」をよしとするなら、一人一人が生成AIについて考え、使い方を慎重にしなければならないと思います。AIのすべてを否定するものではありません。けれども兵器にまで使ったら破滅の道になるとお思いになりませんか。

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スローライフ川柳  8  題「力む」

 力むのはよせと風船飛んでいく     聖子

 (評) ひとりで力んでいても問題は解決しませんよ、と。

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〈あっちこっちで多事争論〉
ふっわふわのやわらか〜い綿!
  坂田啓子 (佐賀市 スローライフの会会員)
 昨年の夏、長崎県雲仙市でいただいていた綿の種。
 10月の「スローライフ・フォーラムin雲仙」の準備でうかがった際に、「めぐり綿プロジェクト」を主宰されているアイアカネ工房さんから受け取りました。フォーラム本番でも配られたので、参加者のみなさんも受け取ったでしょう。
 蒔きどきは5月ということで、待って待って、今年の5月の終わり頃ベランダのプランターに種を蒔きました。
 芽が出て、葉が出て、ちょっと葉の色が薄かったり、虫に食べられたりしながらも、頑張って育っていってくれました。そして、暑さ厳しい7月、薄黄色の可愛い花が咲いたのです。
 「お母さんは観葉植物も枯らす」と言われ、昨夏は全ての植物を枯らしてしまった私ですが、今年は綿の成長が楽しみで朝イチの水やりを怠ることはありませんでした。
 1日だけしか咲かない花は、その後しっかりと実を結び、大きく膨らんで、9月に入ってパンっと弾けたように割れ、真っ白な綿が顔を出しました。
 とっても嬉しい! 本当にふわふわなんです。感動です。綿の中から種も取り出すことができたんです。
 さてさて、まだいくつか実がなっている上、少し時間を空けて蒔いていた種からも花が咲きそうなので、これからもふわふわな綿の収穫が楽しみです。
 アイアカネ工房さんへ綿を送り届けるのが待ち遠しい。

ど根性小豆
  柏原安子 (京都府綾部市 和宿オリジン)
 忙しい秋です。通りがかりに畑を見ると、な、な、なんと、先日きれいに鹿に食べられていた小豆が、前回以上に元気に葉を再生し、お花もたくさん咲かせているではないですかー。
 かつて同じように食べられた時は収穫間際だったので、復活の兆しは無かったですが、今回は早めに食われてて良かった⁉️
 ただこれからは寒くなる一方なので、今から実が大きくなってくれるかどうか……。気長に見守るしかないですが、この素晴らしき生命力に感動しました。
 収穫できても出来なくても、何か神様から「あずきを見習え!!」と喝を入れられたような、そんな出来事でした。

今年も自然の恵みに感謝
  宇都野淳 (栃木県那須塩原市 スローライフの会会員)
 今年は夏以降に雨が多く、米作りも苦労してきた。先日ようやく田植してから140日目で稲刈りが終わった。毎日続く雨に、わが子のように育てた稲穂が倒れて実が水に浸かった。倒れると品質の低下と共に刈り取りが難しく、米の価格下落も追い打ちをかけるため、不安を抱えながらの日々が続いた。今も、倒れた稲穂が静かに刈り取りを待つ姿は虚しい。
 しかし、新米を食べるとその思いは少し消え、仲間に米を送った時の「おいしかったよ」の言葉にぬくもりを感じる。長く米作りをしていても栽培の正解が見いだせないが、正解は望まなくてもよいと思う。正解を知ったら米作りの面白さはなくなるだろう。
 父は小さいころから米作りを教えてくれた。当時は機械もなく、全て人の手で作業を行っていた。私も刈り取った稲を束ねて、長竿に掛けて天日干しをした。また、祖母と落穂拾いをしたが、中学の美術で「ミレーの落穂拾い」を見たときに何か気になった。
 職場では「誰一人取り残さない」の思いで福祉と向き合っている。祖母と一緒に拾った落穂の思いは、今も活かされているかもしれない。全ての経験はどこかに繋がっていると思う。

元祖イケメンのイラストレーター

  小笠原洋子 (東京都 エッセイスト)
「挿絵」に関する投稿の第四話です。
 日本画史上、美人画が確固たる地位を治めているのに対して美男画は、現代漫画の出現まではぱっとしませんね。平安時代の絵巻物には光源氏や在原業平が描かれたものの、その後の肖像画は人格表現であり、美貌表現ではありません。江戸時代、17世紀後半の菱川春信の浮世絵には女性と見まがう「綺麗処」が見られるようになり、やがて大正末期に突如、美しき少年が話題をさらいました。
 大正3年発行の月刊誌『少年倶楽部』などで圧倒的人気を誇ったのが高畠華宵(たかばたけ・かしょう)でした。すでに「中将湯」の広告絵で有名な美人画家でもあり、「銀座行進曲」にも「華宵好みの君が行く」と歌われるほどでした。「君」の性別は不詳ですが、先達の夢二式美人は容姿全体がムーディーなのに対して、華宵好みはその「まなざし」にありました。線の流麗さなど絵画的テクニックを別にすれば、その絵は眼つきにこそ、妖艶でいささか「妖しげ」な魅力が光彩を放っていたのです。純粋絵画が観る者や画家自身の精神を高める芸術であるとすれば、大衆アートには官能を捉える要素が必要であり、そうした要素が、今も昔も読者を夢中にさせるのでしょう。

スローなつながり
  大原興太郎 (三重県松阪市 松阪農業公園ベルファーム)
 9月の半ば、今年も松阪農業公園ベルファームの農家市場(農産物直売所)に、りんごを始めとした果物を納入していただいている長野の農家さんを幹部スタッフ4人とともに訪問してきた。長年続く取引先のリンゴ農家への訪問である。
直売所の野菜等は基本的に松阪及び三重県内の生産物を並べているが、果物は地元農家さんや県内産で賄うことは困難である。そこでいろんなツテを頼って、りんごは長野と青森から、みかんや河内晩柑は愛媛から、じゃがいもやとうもろこしなどは北海道から仕入れている。
 長野のアップルファームさみず(三水)の山下勲夫さんとは、私たちが直売所を作って以来のお付き合いで、りんごを始めとした果物を送ってもらっている。そのため毎年スタッフがお礼がてら現地を訪ね、ついでに長野のあちこちの直売所でりんご、ぶどう、桃などを購入し、少しでも周りの店舗よりお値打ちに販売させてもらっているのである。
 もう一つ、今回改めて感じたのは大家族の良さと力である。高度成長期を経て物的豊かさを享受し、個の自由度を極大化させてきた結果として、1人世帯や孤独死が増えた現代社会は果たして総合的に見て良い社会だと言えるのだろうか。

関根千佳さんの「さんか・さろん」をお聞きして
  前原信也 (東京都杉並区 スローライフの会会員)
 関根さんの「さんか・さろん」を録画で拝見しました。このご時世に、何より大切なことを改めて気付かされた思いです。
 暮らしの中のユニバーサルデザインとともに、僕が身を置く放送業界では、ユニバーサルアクセスが重要な課題になっています。視覚や聴覚に障害のある方々への配慮だけでなく、オリンピックやサッカー・ワールドカップといった世界的・国民的なスポーツイベントを、誰もが無料で楽しめるようにすることまで含まれます。
 関根さんのレクチャーをきっかけに、みなさんの議論がどんどん深まっていったのもよかったです。なぜ、経済大国と言われた日本が遅れを取ってしまったのか。「税金を減らして、手取りを増やせ!」。確かに、自分ファーストが過ぎますね。「公」よりも「私」。そんな社会の空気が、いちばんの妨げになっているように感じました。
 結局のところ、誰一人取りこぼさない社会をつくることが、自分の老後や若い世代の未来を豊かにしてくれるのだと、心から納得した「さろん」でした。こうした貴重な仕事を「目の前は青い海だった」という時代から切り開いてこられた関根さんに、敬意を表します。

身近な食品トレーを追う
  太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)
 スーパーでは肉、魚、総菜を食品トレー容器に入れて売っている。その食品トレーが全国をほぼカバーする巨大な生産・リサイクル・物流ネットワークで動いている、ことはあまり知られていない。
 スーパーの回収ボックスで回収し、それを洗浄し粉々にして原料のペレットをつくり、再び食品トレーにして、スーパーに出荷する。この一貫システムを自社で完結しているのがエフピコ(広島県福山市)。食品トレー生産工場、リサイクル工場、選別センター、配送センターなど全国に57拠点を展開する。
 同社の売り上げは2405億円(連結決算、2026年3月期)。そのうち、回収・リサイクルした再生トレーなどの売り上げが970億円(同)と全売り上げの40%を占める。再生材料を使うことで原油-ナフサ-石油化学製品をつくる工程を省くため、CO2が約3割削減された、としている。
 現在、使用済み容器の回収拠点は1万1600カ所(スーパーの全店舗数は約2万3000店)、トレーなど回収量は年間約9万トンにのぼる。
 福山市にある同社のリサイクル工場を訪ねた。見学者用のレクチャー室で後谷直秀さん(コミュニケーション推進課)が、食品トレーのリサイクルにいかに力をいれているのか、を熱弁。全国のリサイクル工場には昨年度約1万4000人の見学者が訪れた、という。同社には1万2000種類の食品トレーがあり、毎年1000以上の新製品を開発している。食品トレー技術を応用して新素材を開発し、自動車など新たな分野へ進出する計画もある。
 毎日のように接しているがあまり気にしない食品トレー。実は奥が深く、広がりがあるのだ。


【廃炉のこと Q&A】 その3
Q: 廃炉の「最終形」を住民と議論するというけど、どう進めるの?
A: 東電と住民で決められることではありません。
 廃炉は規制解除(敷地外の普通の土地と同様の扱いにする)のための活動ですから、規制解除できる状態にならなければ廃炉の終了(最終形)ではありません。
 その要件は法規則で決まっています。東電は「1F廃炉の最終形は地元の関係者などと話し合って決める」と言い、政府も「最終形」の問題を対話集会や自治体との協議で話し合うと言います。話し合いで「作業が中途半端でも廃炉終了で良いよ」と住民と東電が合意したとしても、それは規制解除できる状態ではありません。汚染施設やデブリが残ります。
 つまり「廃炉の最終形」ではないのです。東電や政府は「何の最終形」を話し合いたいのか。東電や政府が「責任を負う作業の最終形(手を引くポイント)」を決めて合意したいだけなのです。
〈ぶつけてみたいこの質問〉
 通常の原発の廃炉の場合、廃炉(廃止措置)の終了を確認する要件が原子力規制委員会規則で定められています。
 その要件は、
 ・使用済み核燃料を再処理事業者に引き渡す
 ・放射性廃棄物の処分完了
 ・残る放射線のレベルが基準を下回るよう除染すること、などです。
 1Fもこれらの要件を満たさなければ廃炉の終了と認められないはず。しかし、1Fは「特定原子力施設」と呼ばれており、通常原発のルールの一部しか適用されません。これを利用して勝手な「最終形」を決めようとしているのです。「1F廃止措置の終了確認要件は法規則でどう定められていますか?」と聞いてみてください。

『スローライフ曼荼羅』
あきまよもやま
  野口智子 (ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)
 群馬県安中市秋間という地域でよもやま話をしましょう、ということで「あきまよもやま」という地域おこしのワークショップをお手伝いしています。交通や買い物、景観や防災など、話すテーマは据えているのですが、脱線がはなはだしい。生き生きと夢中で話している方々を見ていると、本当に誰かとよもやま話をしたかったんだなあ、と思います。

https://noguchi-tomoko.com/post-11378/

 

 

■■つべ小部屋■■
やな問題のやな展開
  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
 簗和生農水相の「道路予算カット」発言に、さほど驚かない。しょせん選挙は補助金のぶんどり合いだなどと訳知り顔で言うつもりはないし、この程度のさもしい人物が首相の知恵袋である事実に、うんざりはしている。
 だが、政治記者の端くれとして、予算配分の「えげつなさ」は見てきた。とくに政権の意に沿わない自治体が、どんな目に遭ってきたことか。それだけに、行政の予算配分に「政治的な支持、不支持を持ち込まないのは当然」と高市首相が答弁したことの方に、何を今さら、いけしゃあしゃあと、と大いにムカついている。
 たとえば、沖縄県。2015年末、安倍政権は辺野古移設に反対する地元の名護市への交付金を減額しただけでなく、市の頭越しに現場の自治会への補助金を創設。「辺野古区」(約2000人)に1200万円、隣の「豊原(とよはら)区」(約400人)に1100万円の交付を決め、賛否が割れる市民の分断をあおった。
 2018年、名護市長が移転容認派に変わると、すぐに交付金を増額。反対を貫く沖縄県への態度とはまったく違う対応をしてきた。だが、残念ながら沖縄以外の有権者に、こうした政治的な「予算増額」への批判は広がらなかった。世論は黙認してきたのだ。そうやって、政権の恣意がまかり通ってきた先に、9月の沖縄知事選挙もあった。
 いま、「予算カットは恫喝だ」という大ブーイングが起きている。だが、果たして大臣罷免まで行き着くのか。
 古い話で恐縮だが、1990年代のある建設相を思い出す。夜回りをした筆者に彼は言った。「不思議ですよ坪井さん、大臣になった途端、選挙区の3つの国道予算がどんと増えたんです」。わかりやす過ぎる官僚の忖度に、笑いが止まらない表情だった。
 あれから30年余り。この間に衆院小選挙区制や政党交付金を設ける政治改革があった。政治家による地元への利益誘導を抑える目的が高らかに語られていたのだが、あまり変わらない政治の風景がいまも広がっている。

<編集室便り>
▽10月の「さんか・さろん」は神野直彦さんです。
 神野さんは当会の顧問で、「スローライフ瓦版」創刊以来、ずっとコラム「緑と絆の木陰」をご担当されています。「さんか・さろん」へは初登場になります。
 今回は、坪井ゆづるさんとの対談方式です。どんなお話になるのでしょう。お楽しみに。
・日時:10月20日(火)19時~20時30分、zoomで。
・タイトル:「未来の見えない時代に、私たちは」
・講師:神野直彦さん(東京大学名誉教授)
・聞き手:坪井ゆづる(スローライフ瓦版編集長)
・参加費:会員1000円(年間分3000円お支払いの方はそれで結構です)、一般2000円
・申込:10月17日(土)までにメールで  slowlifej@nifty.com
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神野直彦(じんのなおひこ)さんのプロフィール
1946年埼玉県生まれ。大阪市立大学経済学部助教授、東京大学大学院経済学研究科・経済学教授、東京大学大学院経済学研究科科長・経済学部学部長、関西学院大学人間福祉学部教授、地方財政審議会会長、日本社会事業大学学長を経て、公職として税制調査会専門家委員会委員長、税制調査会会長代理、社会保障審議会年金部会長、地方分権改革有識者会議座長などを歴任。現在、東京大学名誉教授、日本社会事業大学名誉教授。著書として『財政と民主主義』(2024年)岩波書店など多数。2009年紫綬褒章受章、2025年瑞宝中綬章綬章。