あっという間に、まもなく師走です。読者のみなさまには、どんな1年だったでしょうか。ことしのスローライフ瓦版の発行も、あと2回。そこで次号、次々号の「あっちこっちで多事争論」は2024年を振り返る投稿を募集いたします。楽しかった、笑った、辛かった、泣けた、怒った、イラついた、なんでも結構です。どんどん書いて、記録に残しましょう。
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感想を下記までお寄せください。
slowlifej@nifty.com
『緑と絆の木陰』
ゆすはらの集落活動センター
増田寛也 (日本郵政社長、スローライフの会共同代表)
ゆすはらで私が一番知りたかったのは、集落活動センターの活動実態。同様のセンターは全国では「小さな拠点」と呼ばれおり、先進地である高知県内にはそれが67ヶ所もある。濵田知事は以前お会いした時に、調べるのなら、ゆすはらが一番お薦めですよと。越知面地区の活動について、上田会長や瀬戸口代表のお話を聞いて生活支援だけでなく特産品づくりなど産業分野も視野に入れて、地に足のついたスケールの大きな活動をしていることが良く理解できた。
以前、島根の出雲でのスローライフ・フォーラムの際に雲南市の地域自治区(確か市内に30ヶ所)で展開されている廃校利用の物販店を視察した。いずれも小規模多機能自治の一つのカタチだと思う。今回は嬉しいことに川竹大輔さんのお力添えで、高知大学の学生さんが7名も参加された。彼らの目には、センターの活動がどう映っただろうか。高知には地域学習の受け入れを通してセンターと学生を結びつける、縁結びの県事業もあると聞く。住民主体の組織であるセンターが中心となって、多様な人材が交流しながら集落の活性化に取り組む活動が長く継続することを期待したい。
素晴らしい学びの機会を提供して下さった皆さん、本当にありがとうございました。
(下の写真は越知面の瀬戸口さんら「チームシルク」のメンバーらと)
<高知・ゆすはらで多事争論 Ⅱ>
スローライフフォーラムin檮原町
藤本和巖 (奈良県職員 スローライフの会会員)
個人的な興味は隈研吾さんの建築物を直に見ることでしたが、先月の「さろん」での吉田尚人町長のお話が後押しとなり参加させていただきました。風力発電、バイオマス発電に維持費が高そうな建築群で、財政的には大丈夫なのだろうかという関心もあったのですが、まずは、良質な投資によって町を次世代に引き継ごうという取組の素晴らしさだけ知ることができました。
素晴らしかったことの第一はあの図書館(=写真)です。建築も素敵でしたが、館内に入ると書物が立派に見える、書物から語りかけられているようなレイアウトや展示の仕方、特集コーナーの設け方に驚きました。
しかも館内にキッズスペースやボルタリング設備やショップがあったり、子どもが立ち寄りやすい仕掛けになっていて、素晴らしいと思いました。司書のかたに話を聞くと、指定管理(委託)ではなく、開設に向けて司書の方々とアドバイザーとで練ったのだそうです。つくづく地元・住民への愛情・愛着に溢れる施設だと感じました。
感動の二点目は、民宿「ゆうちゃん家」です。日本に何度も来られている台湾のご夫婦が宿泊されていた母屋がとても立派な木造建築でした。太い欅の大黒柱、高い天井と透かし彫りの分厚い欄間など、集落の中心となる家であることを想像させる建築でした。ご当主は長年町会議員を務められ、地元の神楽を伝承し、平成天皇の天覧舞台も務められたとのことです。
2日目のフォーラムで神野先生が集落の重要性を指摘されましたが、檮原町ではまさに集落のまとまりが健在なのだと感じました。
【ゆすはらで大学生が多事争論】
高知大学の学生から寄せられた感想文
(編集部により一部を抜粋しています)
●井本梓 (農林海洋科学部農林資源科学科)
ゆすはらジビエの里では移住者であるオーナーさんからお話をお聞きした。高知県では依然として獣害が問題になっている。狩猟者の減少や高齢化、解体場所までの所要時間などである。梼原町は全国初のジビエカーを導入しており、解体処理を素早く行うことが可能になっている。町の特産品を作ることだけでなく、猟師の支援でもあるため獣害対策も活発になるのではないだろうか。直接的に農家を支援しているわけではないが、獣害が減ることにより間接的な支援になっていると考えた。補助金など町からすべてお金を出すのではなく、外貨を稼ぎ町の産業を支えることができる仕組みが素晴らしいと思った。
(中略)夜の懇親会では、高知のおいしい食事を楽しみながら、スローライフの会の方たちや梼原町の方とお話しすることができた。高知県庁の職員の方とは、進学で高知を離れた若者に高知へ帰ってきてもらうにはというテーマで意見を交換した。高知に魅力を感じてもらう教育はもちろん、職がないと帰りたくとも帰れないという課題を再確認した。梼原町の方からは、ゆすはら牛やワインの生産についてお聞きした。半農半Xができる環境が整っていると感じた。宿泊施設のライダーズイン雲の上では、ロシア人のオーナーと交流したり雲の上の温泉へ行ったりした。温泉の横には隈研吾氏の大きなオブジェもあった。(下の写真は、ジビエに関する説明を受ける参加者ら)
●三浦健悟 (農林海洋科学部海洋資源科学科)
梼原町を訪れ、文化を学べる機会ができたことはとても嬉しかったです。そして他方からの人と交流ができたことにより多くのことが学べました。とくに関根さんとは会社のことなど聞かせてもらいました。また、同じ高知大学生としてみんなと会話をし、仲良くなれました。どの人も目立った特徴があり、面白い人でした。
(中略)茶堂や旧小学校などを大切に扱っており、誰かが孤立していないか、災害が起きたときに対応ができるかなど、地域の輪が強いことを感じました。雲の上の図書館はとても心地が良く、いろんなタイプの部屋があり、何回訪れても飽きないほど楽しい場所でした。木の温もりが肌から感じられて気持ちよかったです。 (下の写真は茶堂)
●小畠祥 (地域協働学部地域協働学科)
特に印象に残っているのは集落活動センター越智面の瀬戸口さんの講義だった。(中略)高齢者宅訪問についてはチームシルクの皆さんはあんぱんをもって訪問に行くと述べられており、これは訪問の目的をあくまで「あんぱんの販売」とすることで高齢者の方の心理的なハードルを下げる狙いがあるとのことだった。確かに、訪問となると高齢者にとっては自分は戸別訪問が必要になるほどボケてはいないと反発したくなる気持ちが生まれそうだが、あんぱんの訪問販売が目的だとなると強く反発する理由もないので簡単に玄関に入れてくれそうだと思った。
自分のアルバイト先で独居高齢者の訪問をするのだが、人によってはなかなか姿を見せてくれない人もいるので、いかにも仕事で訪問をしに来たかのようなかしこまった様子で訪問するのではなく、雑談をしに来たかのようなくだけた様子で訪ねてみようと思った。
(中略)焼き肉のたれ開発についてのお話からは行動に移すことの重要さを学んだ。(中略)自分は案があっても、細かいことで悩んでいる期間が長く、少しずつ熱が冷めていき、結果やらずじまいとなるケースが多い。なので、次はアイディアが生まれたら大枠だけサクッと決めてしまい熱があるうちに形にしてしまおうと思った。
(下の写真は、瀬戸口さんらがつくった、おいしいシフォンケーキ)
●谷口紗奈 (人文社会科学部)
いつも、「この先も続いていける持続ある取り組みが必要である」と言っても、あまり自分の経験と結びつかず、持続性の重要性を実感できることが無かった。しかし、今回図書館の維持の話や十津川の熱しやすく冷めやすい地域性がありお酒を販売することが難しい話、キジの世話をすることが難しく建設会社に引き受けてもらった話など、問題は意外と自分の身近なところから考えられるということに気づいた。そして、名案であっても、持続性がないといけないと思った。2日目に知事が仰っていたように、私たちは目先に捉われやすくなるが、長い目で成果を見ることも大切であると思った。
2つ目は神野さんが仰っていた、ないない話ではなく、あるある話をすることも大切であるということが印象に残った。地元出身であると、県外から来た学生に、「高知に来たけど何もなくてびっくりした」や「高知県は○○(ファストフード店)もないんだね」などないことに焦点を当てて話されることが多い。無いものが多く不便なことも分かるが、高知県にはおいしい食べ物や自然だけではなく、地域の温かさや穏やかさがあると思う。あるものに気づいている自分が無いものが多いと感じる人や、高知県での生活に慣れていない人に、あるものを紹介することも小さな地域貢献につながるのではないのかと考えた。
●川口まい (地域協働学部地域協働学科)
おちめん集落活動センターで活動しているメンバーは、自分たちの仕事と両立して第2の人生を楽しむために、助け合って和気あいあいと活動しているように感じ、これこそ、スローライフなのではないかと感じた。
(中略)宿泊先(ライダーズイン雲の上=下の写真)の管理人の方は、ロシアから来た方で、海とサーフィンが好きなため、高知に来たとおっしゃっていた。なぜ県境の梼原町で過ごしているのか伺うことはできなかったが、海やサーフィンと同じぐらい梼原町のどこかに魅力を感じていることが理由なのではないかと思う。このように、梼原町では、空間と人がうまく利用しあいながら、人を呼び寄せるための工夫が凝らされていると感じた。
(中略)人口減少が進む現代社会で、私たち「若者」に求められることは、地方で働くことを将来の働き方の選択肢に入れることだと思った。そのためには、この学生のうちに、様々な地域についての情報を常に収集したり、実際に可能であれば足を運んでみたりして、まずは、どのような形でもいいので地方で過ごすことを自分の中で想像してみることが必要だと考える。フォーラムで「若者が住みたいと思う地域を若者が作っていくべきだ」という意見があったように、私たち若者が自発的に地方に対して興味を持ったり、積極的に関わっていく姿勢を取ったりするべきだと思う。
●長沼福果 (人文社会科学部人文社会科学科)
川のせせらぎ、満点の星、美味しい食文化に触れつつ、梼原町で行われている林業やジビエ文化を活かした様々な事例を知ることが出来ました。全体的には若者が定住することに着眼点を置いていましたが、私は今ある文化を継承することを忘れないように保護していく必要性も感じました。今に至るまで、この梼原という地の伝統文化を築き上げてこられた諸先輩方からインタビューをして、ひとつひとつの文化を形あるものにして大切に残していくべきだと思います。
そして、最終的には全世代が共通で求めている需要と供給を考えていき、そこにどのようなインセンティブが存在するのかを検討することが重要だと思いました。
(下の写真は津野山神楽に使われるお面)
<あっちこっちで多事争論>
『いらっしゃい』を言わない店
舟越隆裕 (栃木県日光市 珈琲CoCom)
私の店では、『こんにちは』の言葉でお客様をお出迎えします。
起業の時に、スタッフといろいろルール作りをした中のひとつが出迎えのあいさつでした。
『いらっしゃいませ』ではなく、『こんにちは』にしよう! (決して『いらっしゃいませ』を否定するわけではありませんし、T.P.O.によっては使います)
なぜ『こんにちは』を選んだかと言うと、お客様との距離を縮めて、コミュニケーションを図りやすくしようと思ったからです。おかげで、海外の方を含めたお客様と、売り手買い手の関係だけでなく、心もふれあい、笑顔で帰られる顔をたくさん見られるようになりました。
『いらっしゃい』を言わないこんな店があってもいいと思いませんか。
(写真は舟越さん・右と、相棒)
ぞうさんのこの頃
川島宏子(東京都 スローライフの会会員)
毎月一回づつ内科、整形外科、泌尿器科に健診に行っています。「川島さんどうですか」「相変わらずです」「歩いてますか」「三食しっかり食べていますか」。三人の専門医から合計朝六種、夜三種、月一回一種の投薬指示をうけ、食後の甘味かフルーツのようにわすれず飲みつづける毎日です。血液検査の結果はほどほど。どの先生からもまずまず合格点をいただきます。感謝感謝です。
第二の人生、たくさんの方々の協力をえて思いを重ね、歩み、走りつづけ、時代も後押ししてくれました。スローライフを唱え、己は動くこと。今思えばゴーイング・マイ・ウェイ(going my way)そのものです。家人である私、常にハラハラ状態、ちょっとずつ背後から覗き見していました。
第三の人生、揃って食事、揃って散歩、うれしい日々を過ごしています。テレビであちこち景観を楽しみ、スローライフ・フォーラムで訪れた場を想い出し、喜び合っております。みなさま、ほんとうにありがとうございました。
(ぞうさん=川島正英さん)
『スローライフ曼荼羅』
フォーラム応援隊
野口智子 (ゆとり研究所)
スローライフ・フォーラムは、毎回皆さんの善意で実現しています。今回も応援隊4人組、彼女たちの下支えがなくてはできなかったでしょう。名札や荷札の用意からはじまり、夜なべ談義の司会、分科会で事例発表、記録の写真撮影、録音、バス内での集金、お弁当分け、人数確認などなど。自費で梼原町まで来てくださって、これだけやってのける。フォーラムにお客様ではなく、自分ごととして関わってくれる。さらに「次はいつ、どこでですか?」と声が。感謝しかありません。
https://noguchi-tomoko.com/post-10599/
■■つべ小部屋■■
兵庫県知事選、三つの理由
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
米国での「またトラ」に憂鬱な気分になっていたら、日本でも絶句する事態が起きた。兵庫県知事選である。
県議会の全会一致での不信任決議を受けて、知事辞職に追い込まれた人物が当選した。それも投票率は前回の初当選時の41.10%を大きく上回る55.65%で、獲得票数も前回より25万票以上も多い111万票に達しての圧勝だった。SNSや街頭で虚偽情報や威嚇があふれ、ネット上で誹謗中傷にさらされた県議が辞職するなど、とんでもない選挙戦だったことが報じられている。
だが、それにしても100万を超す得票は「嘘」や「デマ」にあおられただけでは集められるはずがない。なぜ、こうなったのか。三つの理由を考えた。
一つは、ネット選挙戦術が奏功したこと。投票率の上昇は無党派層が動いた証だと見る。この夏の東京都知事選でも見られた現象だが、選挙中の政治的中立を保とうとする新聞やテレビにはない話がネットを通して多くの有権者に届いている。そこには事実誤認が紛れている、あるいは溢れているにしても、有権者に投票所まで足を運ばせる契機になっている事実は重い。
新聞育ちの私には、見たいものだけに偏りがちなネットの特性への不信感、警戒感が強いが、すでに新聞はおろかテレビも見ない人々が、ネットから選挙の判断材料を得ていることを実感する。
二つ目は、9月24日号の小欄で触れたように、長年続いた前知事直系の副知事を破って当選しており、旧態依然の地方政治を根っこから刷新する期待を担っていたこと。パワハラ批判で知事失格の烙印を押されても、有権者にはまだ変革を望む思いが残っていたのではないか。
三つ目は、二つ目の裏返しだが、県議会への不信感の大きさだ。全会一致で知事を追い込んだ組織がもう少し信頼されていたのであれば、ここまで県議会と民意が乖離(かいり)することはなかったに違いない。
こんなことを考えながら地下鉄丸の内線に乗っていたら、私の座る8人掛けシートと、向かいの8人掛けシートの計16人のうち、13人がスマホを見ていた。2人がうたた寝で、文庫本を手にしていたのは私だけ。ちなみに私の右隣りの中年女性はゲームに興じ、左隣の青年はマンガを見ていた。
<編集室便り>
▽12月17日(火)は中村桂子さんのさろんです。
今年最後の「さんか・さろん」は、中村桂子さんの「『土』のお話」です。 中村桂子さんは JT生命誌研究館名誉館長、スローライフの会の共同代表。いつも、私たちに根源的な気づきをさせてくださいます。19時からzoomです、ご予定ください。
▽フォーラムの写真記録です。こちらからどうぞ。
詳しい報告はのちほどになります。まずは写真のピックアップをご覧ください。
https://www.slowlife-japan.jp/2024/11/20/%ef%bd%93-326/
▽11月19日(火)の「さんか・さろん」ではフォーラムを振り返りました。
「スローライフ・フォーラムinゆすはら」の振り返りを皆さんでワイワイと語り合いました。その抜粋です、ご覧ください。
https://www.slowlife-japan.jp/2024/11/25/%ef%bd%93-327/
▽フォーラムの写真記録です。こちらからどうぞ。
詳しい報告はのちほどになります。まずは写真のピックアップをご覧ください。
https://www.slowlife-japan.jp/2024/11/20/%ef%bd%93-326/
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