ことしも、あと1週間です。年齢を重ねるごとに、時の経過を速く感じるのは、なぜでしょう。諸説がある中で、お気に入りを一つ、ご紹介します。「人生レコード盤」です。針をおろすと、最初のうちは大きく回るので時間がかかるけれど、中盤から終わりに近づくにつれて、だんだん円周が短くなり、回転時間はどんどん縮んでゆく、という話です。さて、みなさんのレコード盤は、いまどのあたりを回っていますか。年の瀬、まったく月並みなご挨拶ですが、「よいお年をお迎えください。来年も投稿、よろしくお願いします」。
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『緑と絆の木陰』
クリスマス・イブ
川島英樹 (せたがや文化財団)
朝、台所の蛇口をひねる。水が冷たい。たまらず、1週間くらい前から給湯器を使うようになった。温かい。極楽である。しばし、手にお湯を流しながら、ふと思った。温暖化前は、もっと寒かった。水ももっと冷たかったろう。でも、給湯器はなかった。昔は、それでもなんとかやっていたはずだが、もうとても後戻りはできない。お湯の出ない台所は考えられない。進歩に感謝である。
進歩の象徴のようなスマホ。その電話のマーク、受話器の形をしているが、若い人には意味が分からないらしい。物心ついた頃から携帯電話で、固定電話を見る機会がなく、受話器という存在を知らないのだそうだ。つくづく時代が変わったものだと思うが、スマホも思いのほか旧世代に配慮されている。分からない人が増えても、受話器マークが残っていく。記憶やイメージというものが、こうして継承されていくのかと思うと、ちょっとおもしろい。
このところの世の中のひどい話の数々を耳にするにつけ、災害や戦争、環境問題といった大きなことから、保険証や貯金・年金といった個人的なことまで、自分が生きている間が無事ならいいや…とつい思ってしまうことがある。
小・中学生とワークショップをやったとき、みんなに「最近腹を立てたこと」を披露するというお題があった。ぼくは「電車のホームでの横入り」をあげた。ペアを組んでいた小学生は「中東の紛争」と言った。会場中から、厳しい視線を向けられてるような心地だったが、それ以上にそんなことを思わざるを得ない小学生の心中を思った。
今日は、クリスマス・イブ。キリスト教のことなど考えると、クリスマスはまたいろいろだが、拡大解釈して、人を思いやる日と考えたい。知っている人、知らない誰かを思いやる日にしたいと思う。
<あっちこっちで多事争論>
アイスワイン
安井美裕 (北海道池田町長)
皆さんはアイスワインを飲んだことがありますか?
樹上凍結させたブドウから造られ、「奇跡のしずく」と呼ばれる極上の甘口ワインです。
国内では本町を含めて北海道の数か所でしか造られていません。何故なら、一般的なブドウ栽培地では、水分が取り除かれ、ややレーズン状になったブドウが凍結する寒さにならないからです。
本町でも多くの課題がありました。最初の年は収穫直前に一日にして、ムク鳥にブドウを食べつくされ、翌年は製品化までこぎつけたものの、ワインがろ過不足で再発酵しているのが判明。製品回収という結果でした。その後、生産体制が整い、少量ながらも毎年、販売できるようになりました。
しかし、ここに来て新たな課題が現れています。地球温暖化です。これまで12月中にはブドウは確実に凍結していましたが、最近、年によっては越年したり、凍る前に完全なレーズンとなってしまいアイスワイン製造を断念したりと。
幸い今年はすでに-15℃を下回る寒さとなり、12月18日、収穫の時を迎えました。まだ真っ暗な朝5時半、凍てつく寒さの中、畑に集合した町職員らは重装備で収穫に臨みました。「確かに寒かった」。でも、今年も無事収穫できた喜びで、なんだか温かい気持ちで始まる一日となりました。
(下の写真は収穫する安井さん)
クマ鈴に思う
小室浩幸 (長野市 朝日新聞長野総局長)
この春、長野市でひとり暮らしを始めてから、山を訪れる機会が増えた。友人と山道を歩いたり、ひとり紅葉を楽しんだり。
山の中で、しばしば耳にしたのがチリンチリンというクマ鈴の音だ。8月、長野県が初めて「ツキノワグマ出没警報」を出すと、その音はさらに身近になった。音で人間の存在を知らせ、クマとの遭遇を防ぐためのものだとは理解しつつ、耳についた。
新幹線が発着する長野駅でさえ、鈴の音が響く。バスの車内には「クマ鈴の音にご配慮ください」と書かれた紙が張り出された。消音機能つきのベルが人気と聞いて、なるほどと納得した。私は鈴に頼らず、山道を歌いながら歩くことが増えていった。
その思いがすこしだけ変わったのは、11月のことだ。長野と富山の県境に近い渓谷を訪れた際、偶然出会った70歳代のご夫婦と2時間ほど一緒に歩くことになった。
70歳過ぎの女性が先を行き、少し離れた後ろを80歳近い男性が進む。その歩き方には、クマ鈴の音が重要な役割を果たしていた。鈴の響きが遠ざかると、女性はゆっくりと歩を進め、音が途絶えると立ち止まる。鈴はクマを避けるためだけでなく、ちょうどよい距離感と安心感を教えてくれる道具にもなるのだと知った。カラカラとした音色は、いつのまにか心地よく耳になじんでいた。
そして寒さが厳しくなるころ、ツキノワグマ出没警報は解除され、白い季節がやってきた。雪の降り始めた山あいを歩きながら空を見上げると、カバンにつけた鈴が小さく音を立てる。ジングルベルの音色とは違った静けさを感じさせる。
移り住んだばかりのころには戸惑った静寂さが、穏やかに心に刻まれてゆく。
学校給食と食習慣
村井康人 (新潟市 REBIRTH食育研究所)
1人当たりの米消費量は、1962年の118.3キロをピークに、2022年には50.9キロまで半減しました。よく言われているのが「若者のコメ離れ」ですが、実態は異なります。米の消費減少は、50代以上の中高年層が主な要因なのです。食の洋風化と消費傾向の変化により、60代の消費減少が最も顕著で、次いで50代、70代と、むしろ中高年層でコメ離れが進んでいることが明らかになっています(農林中央金庫「『世代をつなぐ食』その実態と意識」調査)。
一方、19歳以下と30代では、コメの消費が増えています。特にZ世代の高校生は、昼食の弁当にご飯とおかずを選ぶ傾向が強まり、朝食でもパンよりご飯を好む生徒が増えています。
この世代間格差に、学校給食が大きく影響していると考えられます。50代以上の世代の給食は、コッペパンと脱脂粉乳が定番でしたが、1976年に米飯給食が導入され、1980年代には全国へと広がりました。2009年には文部科学省が「週3回以上」の米飯給食を目標に掲げ、この時期に給食を経験した世代が、いまの30代以下です。
子どもの頃の食習慣は、その後の生活習慣に大きな影響を及ぼします。時代とともに大きく様変わりしてきた学校給食の経験が、中高年になっても影響を与えているとすれば、学校給食の在り方をより深く考える必要があります。お子さんたちがどんな給食を食べているのか、冬休みに家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
中村桂子さんの「さんか・さろん」を聴いて
大山皓史 (千葉県松戸市 弁護士)
先生の近著「人類はどこで間違えたのか/土とヒトの生命誌」の延長線上にあると思いましたが、生命誌に基づく世界観から、(機械論的世界観による)科学の拡大、とくにAI(人工知能)が人間を超えるという言説に疑問を呈し、批判されたことに共感しました。
AIは膨大なネット情報を元に推論し回答を出すようですが、ネット情報の正しさを確認しているのでしょうか。判断の前提になる情報や推論の過程に間違いがない(無謬性)という保証はあるのでしょうか。また人間の健全な心には、自分が正しいと判断した結論(回答)であっても、どこかで懐疑し反省する謙虚さがありますが、AIにそのような謙虚さ、反省する心が具わっているのでしょうか。AIには誤ることや(強欲な人間に)悪用される危険もあるのではないでしょうか。
混迷する今の世界を主導的に動かしているのは、権力的地位ないし社会的経済的に優越的地位にある人たちです。彼らが、もっぱら自己利益の効率的な実現の手段としてAIなど科学技術を使い、それにより私たちの暮らしや地球環境の健全性を損なうようなときには、それを抑止できるかどうか。それは民主主義社会で、主権者たる私たち国民が為政者の権力の濫用を抑止すべき局面とも、どこかで通底しているかもしれませんね。
人間が幸せに生きる目的と、その手段であるおカネや、AIさらには科学技術との適切なあるべき関係性を考えるにあたり、あらためて「自然」から学ぶべきことが多いこと、それにより様々な「異常」を異常と感じなくなっている現在の危うい人間社会のありようを見直して、本来のあるべき人間社会の健全性を取り戻していくことが大事であること等、先生の講話は、教わること、考えさせることが多く、大変勉強になりました。
「フォーラムinゆすはら」に参加して
川久保可不可(高知県香南市 山の郵便配達員兼市議)
高知大学の川竹大輔氏からお誘いを受け、「集落と、若者と。」へ。
かつて県内でも特に青年団活動が盛んだった梼原町。私も地元の元青年団長として見ておきたいと前乗りで参加した。集落活動センター越知面での上田会長の「自分たちのことはできるだけ自分たちでやる」という言葉と実践には、県や町に頼るだけでなく自立した集落として町や社会に貢献していく誇りを感じた。
夜なべ談義では町内6ヶ所の区長さんとも盃を酌み交わし、集活センターが互いに支え合い、競い合い、励まし合いながら更に骨太い取り組みとなっていることを知った。集落の元気な高齢者もまたその上の世代の先輩たちに鍛えられた方ばかり。飲ませたらなんぼでも出てくる武勇伝に「取材ノートを持ってくりゃ良かった」と後悔した。
泊まりは農家民宿「ゆうちゃん家」。朝食は台湾からの四国旅行中のカップルと共に。集落に伝わる「おごけ神楽」の伝承者だという宿元の主人と話が弾む。地域に伝わる伝統文化を子どもたちに伝え、絶やさず長く続け、地域の繁栄に繋げていく決意を聞く。もてなしもご飯も大満足な宿であった。
私も深刻な少子高齢化が進行する地方で暮らす大人として、若者に選択されるまちになるために新たな価値を生み出すことに勝負しよう。まだまだできることはあるのではないか。そんな気持ちになった2日間であった。
純米酒「谷瀬」のお話
馬場健一 (奈良県十津川村 スローライフの会会員)
奈良県十津川村谷瀬(たにぜ)集落での都市部住民との交流がスタートして10年を迎えました。
米づくりをやめるとの声がちらほら出はじめ、このままでは休耕田が一気に拡大するのでは、集落人口も減り、うるち米を作っても余るばかり、という話が出ているころでした。そこで、休耕田解消と特産品開発としてお酒「どぶろく」を作ろうとの声が上がり、作るなら売れるお酒をと酒米を、都市部住民や大学生の力を借りて栽培を始めました。
10枚余りの小さな水田(30a)で採れたお米を無駄なくお酒にするため、精米70%で仕込んでいます。清らかな谷水でじっくり実らせ、天日干しで旨味を凝縮した米で仕込んだお酒です。米の味を感じていただくには“ぬる燗”がおススメ!
販売やふるさと納税の返礼品として、地域の産物にようやく定着し始めています。
(下の写真は酒米の稲刈りのようす)
電気の田んぼ
金井紀光 (東京都 写真家)
福島県浪江町の山間地に広がるメガソーラー。もとは田だったが福島第1原発事故・放射能の影響で耕作放棄地に。いま20年間の契約で「電気の田んぼ」になっている。ここで作られる電気は東京のイルミネーションとなるのか。20年後には、どんな風景になっているのか。(2024年10月撮影)
『スローライフ曼荼羅』
テンちゃん
野口智子(ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)
前回に続き、ことし泊った京都府綾部市の印象深い宿、2つ目です。名は農家民宿「今や」ですが、私には「テンちゃんのいる宿」です。テンちゃんはこの宿の座敷犬。食事のお相手をしてくれたり、頭を撫でさせてくれたり。愛犬と泊まれる宿ではありますが、私のように飼えない身としては、久しぶりにワンちゃんとの時間を過ごせるうれしい宿でした。散歩に同行すると「テンちゃん、何を注視しているの?」と、私も一緒に遠くを見て、鼻をクンクンさせてしまう。何でもない田んぼの風景が、犬目線で観察できました。https://noguchi-tomoko.com/post-10641/
■■つべこべ屋■■
まさに裏金 萩生田氏の場合
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
衆院議員会館の事務所の引き出しに現金2728万円を置いていた萩生田光一氏の政治倫理審査会での説明は、よくもまあ、いけしゃあしゃあと、だった。
新聞記事は、そのバカバカしさの本質を突いていなかったので、ここで詳報してお く。
彼の説明によると、派閥パーティー券の萩生田事務所の売り上げノルマは2018年には500万円だった。その後、コロナ禍でノルマは210万円、130万円と下がったが、自分は大臣や党の要職にいたこともあってコンスタントに500万円前後は売っていた。だからノルマ以上の分が積み重なって5年間で2700万円を超えたのだという。
「ふざけんじゃないよ」と思うのは、ここからだ。
彼いわく、①派閥パーティー券の売り上げは、それ専用の銀行口座を設けて管理していた②その口座からノルマ分を派閥に入金した③そのあとは毎年、残金を全額引き出して、現金で事務所に保管していた。つまり、せっかく作ったパー券専用口座を毎年、いったんカラにしていた、というのだ。
いったい、なぜ、と問われても、説明はなかった。2728万円は安倍派5人衆の中でも突出した多さだ。要するに領収書の要らない金を手元に置き、自由に豪勢に使っていた、ということなのだろう。まさに、これを裏金と言わずして、何というのか。「裏金、裏金と言われ心が痛んだ」などと、どの口が言うのか、である。
同じ日、ニュースの主役は「103万円の壁」だった。ちまちまと課税最低限を上げる議論より、もっと富裕層の金融資産に課税しろよ、と思いながら、「事務所に2728万円」の話を聞いたものだから、余計にムカついた。
さきの衆院選で、萩生田氏の東京24区には、国民民主も維新も候補者を立て、結果として萩生田氏の小選挙区当選を「アシスト」する形になった。維新では創業メンバーの松井一郎前代表が維新候補ではなく萩生田氏の応援演説に駆け付けていた。根っこの腐り方が似ているのだろうと思える面妖な光景だった。
<編集室便り>
▽中村桂子さんの「さんか・さろん」盛況
12月17日の「さろん」には37人がお申込みでした。全員からのご意見ご感想をいただけずに時間切れでしたが、「生きものとして考えるスローライフ~土木、農業、教育~」、この中村先生のお話は、年末にうかがうべき尊い時間とありました。
下記スローライフの会のホームページから、YouTubeをご覧いただけます。中村先生のお話だけになりますが、ゆっくりご覧ください。
https://www.slowlife-japan.jp/?p=14427&preview=true
▽次回の瓦版は
新年最初の瓦版は1月14日発行です。<あっちこっちで多事争論>への投稿原稿(500字程度)締め切りは1月9日(木)です。お待ちしてまーーーす。
▽新年の「さんか・さろん」は共同代表の増田寛也さん
1月21日(火)19時から、タイトルは「スローライフとの出会い」です。ご予定ください。
(PR)クオリティソフトから・・・
【たまな商店】暖かな日差しが降り注ぐ和歌山県・田辺で、岡本豊穂さんが自然栽培で育てた宮川早生みかん。12月まで木成りのまま完熟させた濃厚な甘さと酸味が楽しめる極上のみかんです。 https://tamana-shop.jp/okamotomikan/
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