瓦版2025.2.11第728号 室崎千重さんら、9人のコラム掲載。

 立春が過ぎたとたん、今季最強の寒波の襲来です。しんどそうな除雪作業の光景を見ながら、ふと思いました。豪雪地のローカル線では運休、間引きが続出しているのに、新幹線はほぼ平常運転を続けているではないですか。疲れ切った地域を横目にひた走る姿に、高速・大量輸送を最優先にする社会の一断面がくっきりと浮かびます。

(写真はJR福井駅前で雪の積もった恐竜くん)

=====================================

感想を下記までお寄せください。

slowlifej@nifty.com

『緑と絆の木陰』

30年。長いようであっという間のようで。

  室﨑千重 (奈良女子大学准教授)

 この1月17日は、阪神・淡路大震災から30年目。神戸で地震にあった私にとって、30年経っても忘れない日。同じ想いを共有する場でこの時間を過ごしたくて、追悼行事が行われる神戸市の東遊園地へ行きました。

 夜明け前の公園はとても多くの人で、子どもを連れたご家族もたくさん参加されていました。涙する方も多く、なお癒えない悲しみもまた同居していました。

 数年前、たまたま1月17日が担当する授業日となった年、その日に震災に触れずに過ごすことができなくて授業冒頭に阪神・淡路大震災について話をしたことがあります。その授業の感想に「私は神戸出身です。生まれていなかったので震災は体験していません。でも、親からや学校で震災の話を聞いて育ってきて、私にとっても今日は大事な日です。大学進学で神戸から離れたので今年からこの日について語ることがないことを寂しく思っていたので、先生が話してくれたことが嬉しかったです」とありました。神戸で、震災後に生まれた世代にも「1.17」の想いが継承されていることに深く感銘を受けました。

 明るくなってからもう一度、東遊園地に足を運ぶと、引率の先生の熱心な説明を真剣に聞きながら、竹灯篭や慰霊と復興のモニュメントを幼稚園か保育園のこどもたちが見学する場面に出会いました。こんな風に、それぞれが継承していくのだなと、その一端を見ることができました。しかし、記憶の風化、災害教訓が活かされない、といった課題はあり、自分ができることは何かを改めて問い直す日でした。

<あっちこっちで多事争論>

子育てママ熱狂! がんばれ越谷アルファーズ

  小松崎いずみ (埼玉県越谷市 スローライフの会会員)

 私が経営する中島プレス工業有限会社は、従業員の75%が女性です。子育て中のママたちが多く、私自身も母として働きやすい環境づくりを進めてきました。

 朝から晩まで自分の時間がない……。そんな日々を過ごすママたちと一緒に、福利厚生の一環として、2月1日にプロバスケットボール「越谷アルファーズ」の試合観戦に行きました。

 アルファーズは、B1リーグに昇格した越谷市初のプロクラブ。地元の駅やショッピングモールには選手のポスターが貼られ、熱狂的なファンが増えています。

 当日は約3800人が詰めかけ、累計でクラブの年間入場者数の史上最多を更新しました。私たちも子どもたちと一緒に、ネギ型メガホンや光るネギなど個性的な応援グッズを手に、「Let’s go アルファーズ!」と大声で応援。試合が白熱するほど、子どもたちも夢中になり、「ユニフォームが欲しい」と憧れを抱く子もいました。

 試合には負けたものの、帰宅途中に「また観たい」と子どもたちのリクエストが続出。翌日、従業員からも「楽しかった」「旦那も行きたがってる」と笑顔の報告がありました。地元にプロスポーツがあることの素晴らしさを再認識し、これからも越谷アルファーズを応援していきたいと心から思った一日でした。

「しぞ~かおでん」と「陸前高田漁師のおでん」(上)

  ほんだゆかり (静岡市 静岡スタイル代表)

 「ほんとうのしずおかおでん」をご覧になったことがあるだろうか。

 その一番の特徴、真っ黒な汁は、「本当に真っ黒」で、おでん鍋の中をみることはできない。ところがこの真っ黒汁で煮られたおでんがめちゃ美味い! だし粉と青海苔を振りかけていただくのが静岡流だ。この「しぞ~かおでん」のみならず、全国各地のおでんが集まって「静岡おでん祭」なるグルメイベントが開かれるようになって20年弱。毎年3月の初めの週末、静岡市の中心街は、「おでんで一杯」という人たちで賑わっている。

 友人のMが、このおでん祭りで、陸前高田市の海産物を材料にしたおでんを販売するようになって7,8年だろうか。自分も仕込みを手伝ったり、屋台でビールを売ったり、この時期になると、おでん祭りで大忙しだ。このときだけ集まる仲間のHはじめ、1年に1回会えるおでんチームとの再会も楽しみ。

 なぜ、真っ黒な「しぞ~かおでん」ではなく、岩手県の海産物おでんを売っていると思いますか。その理由は次号に。(つづく)

スローライフとスピードのウォール街

  太田民夫 (神奈川県、スローライフの会)

 鞆町取材の過程で広島県立博物館に守屋壽(もりや・ひさし)コレクションがあることに気づく。守屋さんには、1986年の二ューヨーク出張時にインタビューしたことがあった。同博物館から連絡してもらったところ、翌日朝、本人からメールで「久し振りです。今回は妙な事で繋がりました。連絡ください」とのメッセージ。早速電話をする。

 守屋さんの取材はニューヨークのウォール街近くのオフィス。メリルリンチ・キャピタル・マーケットの副会長をしていた。「企業の資金調達を引き受けるうえで、それを瞬時にさばく能力が今ほど求められていることはない。資本力はもちろん、情報力がきわめて重要な競争要因になっている」との証言を記事にした。 ウォール街のスピードと興奮を肌で感じた。

 同氏のコレクションは42歳ごろからという。ニューヨークの古地図から始まり、内外の古地図を集めるようになり、近年相次いで1700点以上の地図を中心とした収集品を同博物館に寄贈している。電話では「それなりに稼いだが、かなり地図の収集に費やした」という。福山市出身のふるさと想いがコレクション寄贈につながった。スローライフ鞆の取材と40年と変わらない守屋さんのスピード感にすがすがしくなった。

※写真は、長崎で出版された日本初の印刷世界地図「万国総図」の一部(広島県立博物館ホーム・ページ・守屋壽コレクションから引用)

シカのフンにため息をつく

  遠藤夏緒 (長野市 農楽里ファーム)

 長野市大岡地区(旧大岡村)に移住をしてきた20年前には、電気柵に囲われた田畑を目にすることはありませんでした。移り住んで直ぐに、当時70代半ばのおばあちゃんから「なにを作っても獣に食われちまうぞ。悪いことは言わねえ、直ぐに街へ働きに出ろ」と忠告されたのですが、その言葉を一笑に付していました。

 しかしその5年後には、もう電気柵がないとシカやイノシシに作物が食べられ放題になってしまうようになりました。おばあちゃんの忠告の通りになったのです。中山間地直接支払いという補助金制度を使い、集落全体で電気柵を張る取り組みも始まり、今では電気柵がない圃(ほ)場は耕作放棄地くらいです。

 シカは田畑だけでなく母屋のすぐ傍にも現れます。落ちているフンを見つける度にため息が出ます。何しろ、庭のバラの蕾や山野草も食べられてしまうのですから。

 長野県のシカの生息数は推定21万頭(2019年)。年間捕獲目標は4万頭ですが、実際の捕獲頭数は3万頭に届きません。輸入畜産物がストップするような事態になれば、今は厄介者扱いされる山の獣たちが貴重なたんぱく源として見直され、ジビエ食が進み、捕獲頭数も増えるかもしれません。でもこのままでは、そのうち日本はシカ国(島国ならぬ)になるのかもしれませんね!?

※チラシは3月1日に飯綱町で開かれる長野県有機農業研究会主催のイベントのお知らせです。私が司会進行を務めますので、よろしければ遊びにいらして下さい。

心の冬は

  松井悠夏 (東京都 スローライフの会会員)

 立春とは言えまだまだ身を切るような寒さに襲われ、暖かな春が待ち遠しいこの頃だ。この時期になると、数年前に読んだ本の一節を思い出す。『神道の本―八百万の神々がつどう秘教的祭祀の世界』(学研)によると、春の語源は「張る」というらしい。ちなみに夏の語源は「泥む(なずむ)」で、秋が「飽き」、冬は「殖ゆ(ふゆ)」と書いてあった。

 もちろん諸説あるが、夏は草木が生い茂り足が取られて、なかなか前に進まない。秋は木の葉が落ちてやっと前に進み、恵みの実を飽きるほど食べる。冬は眠って力を蓄え増やす。春は蓄えたエネルギーを使って草木も自分もピンと張り出す、という意味があるという。

 これは人の心も同じではないか。辛いとき、悲しいとき、苦しいときは「冬の時代」や「人生の冬」などと冬に例えられる。だが、果たして「心の冬」がネガティブなものなのだろうか。辛いことがあったから人に優しさを分け与えられる。苦しいからこそ乗り越えようとして、思ってもみない素敵な自分に出会える。自分の苦しみが心の豊かなエネルギーとなる。悲しみが落ち着けば、まだ見ぬ春にふさわしい新たな自分になるかもしれないし、大切な人を暖める穏やかな春のような自分になるかもしれない。きっと心の冬が自分自身に魅力や優しさの花を咲かせるのだと思う。

 春の訪れは来週からだそう。皆さまの心にも少しずつ暖かな春の風が迎えられますように。

田舎の人の噂好きについて (上)

  小畠 祥 (高知大学3年 地域協働学部地域協働学科)

 私は現在、大学を休学し、高知県黒潮町にある人口64人、高齢化率57%の集落に住んでいます。移住先でよく色んな方が噂話をしているのを聞くので、田舎の人はなぜ噂話が好きなのかについて考えてみました。

 よく「田舎には娯楽がないから噂話が好きな人が多いのだろう」という意見を聞きます。ですが、実際に住んでみると田舎に娯楽がないというのは誤解なのではと感じます。というのも地域に住む諸先輩方は、庭や畑の手入れ、愛車の改造など趣味で忙しい方ばかりだからです。庭が狭くなったからと、ご自身で石垣を組んで庭を拡張されていたおじいちゃんがおり、その遊びの自由さに驚いた記憶があります。

 確かに、田舎にはカラオケやボウリング場などの娯楽施設はありません。でも、みな各々に田舎の特性を生かし自由に趣味を楽しんでいるので、娯楽に飢えているイメージはありません。

 では、なぜ田舎の人は噂話をするのか。自分なりに仮説を3つ考えてみましたので次回の瓦版で読んで下さるとうれしいです。(つづく)

『スローライフ曼荼羅』

高知女性の元気は

  野口智子(ゆとり研究所、スローライフの会共同代表)

 ここ数年、高知県内の地域おこし女性団体の活動発表会にうかがっています。女性たちの工夫や知恵に毎回感心するばかり。発表会後、いつも高知おかみさん会の新年会があり、これがまたダンス披露もあり弾けるほどのパワー。なぜ、こんなに元気なのと?でしたが、このたび「自由民権記念館」を訪れてそのルーツが分かりました。

 明治の初めに初の女性投票権要求をした女性がいた、その頃から男女平等を訴える運動があった、などなど。「自由は土佐の山間より」と石碑にありましたが、元気女性は土佐の山間よりと思ったわけです。

https://noguchi-tomoko.com/post-10711/

■■つべ小部屋■■

「森友問題」の神風

  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 ようやく、当たり前の判決が出た。森友学園への国有地売却に関する財務省の公文書改ざんを巡り、国が存否も明かさずに関連文書を不開示としたことの妥当性が問われた裁判で、大阪高裁が1月30日、国の対応を「違法」と認めた。そして2月6日、国が上告しないことを決め、財務相も文書の存在を認めた。

 改ざんは何のために、誰の指示で行われたのか。なぜ、安倍昭恵さんの名前は、ことごとく消されていたのか。それを知るための扉に手がかかったといえる。むろん、国が「黒塗り」の「ノリ弁当」のような文書を出してくる可能性はある。だが、公文書は国民の財産であり、中身をまったく示さないなどという破廉恥なことをまかり通らせてはいけない。断じて許せない。

 小欄では森友問題を何度も取り上げてきたが、もうお忘れの方が多いだろう。なので、この機に改めて森友の「神風」について記しておく。

 財務省の2016年度までの5年間の公共随意契約は約1200件。そのうち「分割払いを認める特約」と「売り払い前提の定期借地とする特例」という買い手に有利な契約は森友のみ。「契約金額が未公表」も13年度以降の約1000件で森友のみ。三つが重なる確率は1200分の1×1200分の1×1000分の1だから、14億4千万分の1だ。これぞ「神風が吹いた」と言わずして何と言うのか。

 こう書いた2018年の小欄には「すでに麻生太郎財務相の引責辞任は避けられないだろうが、責任がどこまで問われるのか。まずは昭恵さんと佐川前国税庁長官の証人喚問を待つ」などと書いていた。だがその後、まったく違う展開をたどったことはご存じの通り。だからこそ、今度こそ、事態の解明を祈るような気持ちで待つ。

<編集室便り>

▽2月18日の「さんか・さろん」は鞆のお話。

 2月はスローライフの会会員・太田民夫さんから、広島県福山市鞆町(ともちょう)のいまをうかがいます。

詳しくはこちらから。https://www.slowlife-japan.jp/2025/02/05/%ef%bd%93-335/

・日時:2月18日(火)19時から、Zoomで。

・タイトル:報告「鞆はいま」―スローライフ 本当の強さー

・講師:太田民夫さん(神奈川県、ジャーナリスト)

日本経済新聞社、日経BPで記者、編集長(日経パソコンなど)、その後、東海大学で教授(企業家論、経営学部長)。現在、日本広報学会理事。

・申込:2月15日(土)までにメールで。 slowlifej@nifty.com

・参加費:会員1000円、一般2000円。支払い方法はお申込の際お問合せ下さい。

 

▽1月の増田寛也さんのお話がYouTubeに

 1月21日に開催した「さんか・さろん」、増田寛也さん(日本郵政社長、スローライフの会共同代表)による「スローライフとの出会い」のお話を、YouTubeにあげました。こちらのホームページからご覧ください。

https://www.slowlife-japan.jp/2025/02/05/%ef%bd%93-336/

====

〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目12番13号

新宿アントレサロンビル2階「スローライフの会」

メール slowlifej@nifty.com 電話090-7433-1741(野口)

 

※ご連絡はなるべくメールでお願いします。

※活動詳細はホームページからご覧ください。

http://www.slowlife-japan.jp/