スローライフ瓦版  2026.9.22 第767号、増田寛也さんらコラム多数。

 雨、雨、雨また雨、雨、雨。東京はほぼ連日の雨により、9月の降水量は半月弱で平年値を超えました。線状降水帯による豪雨被害に比べれば、洗濯物が乾かない難儀さなど取るに足らぬ話ですが、これも気候危機の表れではないでしょうか。この瓦版が届くころ、列島各地に台風25号が大きな爪痕を残していないかどうか、心配です。

*写真は北海道池田町河川敷で放牧される「ばん馬」=会員・金井紀光さん写す。

=================================================================

●感想を下記までお寄せください。

slowlifej@nifty.com

  • 会員の方からの投稿をお待ちしています。次回は10 月8日(木)が締め切りで、10月13 日(火)に配信します。

『緑の絆と木陰』

農業改革を

  増田寛也 (野村総合研究所顧問 スローライフの会共同代表)

 東京は雨続きの毎日ですね。豪雨や日照不足で野菜の生育が遅れ、これからかなり値が上がるとのこと。生産者も消費者も苦しい日が続きそうです。異常気象で農産物の価格が上昇するのはわかりますが、最近の米の価格は不思議な動きをしています。スーパーでは今年の早場米の新米より、昨年の古米(銘柄米ではありますが)の価格がかなり高いとか。民間の倉庫には、一昨年からの米騒動の際に高い価格で仕入れた米が大量に残っており、少しでも高く売りさばくために、価格が逆転してしまったようです。

 政府は備蓄米を増やすとの理由で米を買い入れるようですが、明らかに米価格の高値維持のために税金を使って介入するとしか思えません。2年前に米の増産を打ち出したのにすぐに逆戻りしてしまい、まさに「猫の目」行政です。

 日本の農村は生産の場と生活の場が混然一体としており、がむしゃらに生産性ばかりを追求するわけにはいきませんが、それにしても、産業としての農業を強くすることは重要です。今この時期に、本格的プロ農業者が農業生産の相当部分を担う、そこに農地利用の集積集約化を図る、政府は価格政策から経営安定対策に移行する、そして国内需要だけを見た生産調整を止めて、輸出を本気で進める、と言う大きな方向性を打ち出すべきと思います。

 もちろん、農業界にも反対論は強いと思いますが、年々、耕作放棄地が増え、所有者不明農地も増加傾向にある現状を見れば、じっとばかりはしていられません。「国論を二分する問題に取り組む」ことを標榜する内閣であれば、明日の農業の方向性についても、大胆に問題提起してもらいたいと思います。

senryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryu

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

スローライフ川柳 7  題「読書」

 

三ページ戻ってからの読み始め     昌善

 

(評)これも「読書あるある」。読んだことを忘れて再読した本もあります。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

senryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryusenryu

<あっちこっちで多事争論>

一人暮らしの食卓を『21食』でデザイン

  ほんだゆかり (静岡市 タクシードライバー)

 料理好きで機材もプロ並み。というのは、以前のハナシ。小学生のころから家事を任され、弟と妹の世話をしていた。その後、3人の子どもを育てた30年、三食、弁当、おやつもはりきって手作り。「おいしい」と言ってもらえるのが何より嬉しかった。

 ところが一人暮らしになって7年ほど。困ったことがある。食材を買っても余る。料理をつくっても余る。そして捨てる……。繰り返すうちに自炊をしなくなり、買い食や外食も増えて、なんだか自己嫌悪に。食がそんなだと、暮らしも楽しくない。

 転機は三連休。ずっと自宅で過ごすタイミングで、あらかじめ3日間・9食分の献立を計画してみた。自宅の食材を洗い出し、AIと一緒にメニューを考え、足りないものだけを買い足して使い切る。これが、ピタリとハマった。

 考えてみれば、自分は無類の記録魔だ。情報を整理するメディアで働いてきたせいか、暮らしをアーカイブするのが好きなのだ。記録すると、見えなかったものが見えてくる。1週間21食の計画を立てるようになって、捨てるものがなくなり気持ちが晴れ晴れとしてきた。

 誰かのためではなく、自分のための料理が、記録と計画によって「楽しい企画」へ姿を変えた。企画してこそ人生は楽しい。暮らしに美味しいわくわくが帰ってきた。

 

スローライフな「死」

  笠原俊典 (滋賀県長浜市 持専寺住職)

 筑紫哲也さんは、「がん」で亡くなりました。私は、緩和ケアで「チャプレン」というお仕事をしています。仏教僧侶として、患者さんの苦しみを聞かせていただいたり、ご家族が居たたまれないときにご一緒させてもらったりもします。

 患者さんは、数時間で亡くなることもありますが、数週間から数か月以上にわたって入院される方もあります。その多くが自分は死に至る病であることを知っています。でも、知っていることと病気を受け入れることでは全く違います。身体的苦痛だけでなく、「なぜ苦しまなければいけないのか」「どうして今なのか」など、たくさんの「なぜ」「?」に苦しみます。

 それは、とてもお辛いことですけれども、深く自己を見つめられるきっかけでもあります。「死」とは、仕事や肩書だけでなく、立って歩くことや排泄することさえ失っていくことですが、ほんとうに大切なものと出会うことのできる場所でもあります。患者家族にとって、「奪われるもの」だけでなく、「与えられるもの」だと思います。そこにあるのは、「無」ではなく、緩急自在なスローライフの地平です。

ある日の悲劇

  柏原安子 (京都府綾部市 和宿オリジン)

 暑いけど、今年も小豆は何とか育ってくれてるなー。運転しながら畑を眺めて、青々と茂る葉っぱを見ては秋の収穫を心待ちにしていました。

 それが先日、あれ? いつも視界に入るはずの葉っぱが、目に入って来ない。もしや……。

 畑の柵の1箇所のポールが折れていたようで、ネットが下がっていました。見てみると、二畝植えていた小豆は見事に葉をきれいに食べられて、茎だけが立ったまま。犯人の目星はついています、明らかに鹿。私の畑の周辺は鹿たちの「夜の銀座」で、住民より多い数の鹿たちが毎晩、我が物顔で歩いています。超危険エリアではあるので、これが二度目です。

 あー、このやり切れなさ……。これが田舎あるある、なのです。

 

 

子どものお小遣いで買えるものを

  小松崎いずみ (埼玉県越谷市 スローライフの会会員)

 中島プレス工業は、やわらかな素材の型抜きを得意とする越谷市の町工場です。現在、道の駅「おがわまち」で、小川和紙を使ったシールやミニバッグ、遊べる商品などを販売しています。

 大切にしているのは、物価高の今でも、子どもたちが自分のお小遣いで選べる価格です。150円のミニバッグ、200円の和紙シール商品を中心に、手に取ったときに心が少し弾むようなものを考えています。

 試作品を作り、お客様の反応を受けて改良する毎日。販売開始から10カ月、売上0円の月もありました。でも徐々に上がり、8月には月間売上目標の1万円を達成しました。ミニバッグは専用の抜き型を作り、生産性を高めて店頭にたくさんの商品が並べられるように頑張っています。

 一方で、材料費や手間、越谷から小川町までの交通費を考えると、まだ利益は十分ではありません。それでも、子ども達の喜んでくれる姿や売れる商品を知る機会があること、町工場の加工技術を多くの方に知っていただけることは本当に嬉しいです。

 この小さな売場から、自社技術がいつか広く知られ、商品づくりの相談や新しい出会いにつながることを願っています。「ものづくりを通して美しい関係をつくること」をモットーに、私が代表取締役の町工場の小さな挑戦は続きます。

 

「さんか・さろん」の感想

  川竹大輔 (高知大学客員准教授)

 いろんな新しい言葉が誕生しては消えていく世の中で、「ユニバーサルデザイン」という言葉は根強く頭に残っている理由、共感する取り組みの広がりがある背景に、関根さんらの長年のご尽力があることを実感した学びでした。また、学校教育の現場を見る際には、教員そのものがいわゆる健常者だけしかいないことの違和感を忘れないようにしたいと思いました。(9月15日の関根千佳さんのお話を聞いて)

 

厳しい一言で知る地域のこと

  太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)

 「地元の人々は自分たちをこんなふうに見ているのか」。鞆の浦(広島県福山市)で宿泊業を営む村上達彦スコレ・コーポレーション社長は強烈に感じたという。2009年、勤めていた旅行代理店を辞めて、旅館を営む実家に帰った時だった。

 町内会の人から「鞆の町に観光客があふれると困る。ごみを捨てる、狭い県道を横並びで歩く、個人の敷地に断りなく入ってくる」「そんな観光客相手に商売をして儲けている」と言われた。地元の声を無視して一人で儲けるなよ、との警告だった。

 40歳で父から社長を継いで、およそ6年半。最近、視察に行った九州の有名な温泉地で、押し寄せるインバウンド客や京都の業者によるどこの観光地にでもあるようなTシャツ屋を見て、「改めてオーバーツーリズムを目の当たりにした」。

 村上社長は「ユニバーサルツーリズム」をめざしており、この2月に宿泊施設のひとつ、鷗風亭5階をバリアフリー対応に改修した。車椅子の操作や声掛けなど従業員の教育も強化している。全体の10%ぐらいのインバウンド客は、「今後もむやみに増やさない」という。地元の厳しい声を肝に銘じているようだ。

 能に「離見の見」という言葉がある。客席から見る(客観的)観点から自らが演ずる、という意味で、世阿弥が著書「花鏡」で表した。企業も国も自らの立場からだけで世間や世界を見ることに対する戒めでもある。「データ不正の要因は自社の論理を優先する『独自の正当化理論』」と断罪された電力会社は、いまそこにある現実だ。

*写真は狭い街並みの鞆の浦。

【廃炉のこと Q&A】 その2

Q: 普通の原発と福島第一原発(1F)の廃炉はどう違う?

A:1F は廃炉の大前提である「核燃料の取り出し」ができない状態です。

 1F では1~3号機で核燃料が溶け落ちて「燃料デブリ」となってしまいました。廃炉の前段階である「核燃料の抜き出し」ができない特殊な状態にあります。

 通常は廃炉を始める前に、原子炉の中にある核燃料を取り出すことが大前提です。原子炉の中に核燃料が入ったまま、原子炉を解体しようとしたら大事故になります。

 そもそも、高いレベルの放射線を発する核燃料には、解体のための作業員が近づくこともできないでしょう。だから通常の原発廃炉では、原子炉から核燃料を取り出した後に廃炉のプロセスが始まります。

 しかし、1Fでは廃炉のプロセスが始められない状態にあるのです。

〈ぶつけてみたいこの質問〉

 通常は廃炉を始める前に「廃炉計画(廃止措置計画)」を提出して、原子力規制委員会が了承しないと廃炉開始できません。

 実は1Fの「廃止措置計画」は提出すらされていません。1Fでは「廃炉」は行われていない、というのが事実です。だから東電も「廃炉〈に向けた〉ロードマップ」としか言わないのです。

 「1Fの廃止措置計画は提出されているか?」と聞いてみてください。「代わりに実施計画の中に廃炉の計画も示してある」と回答がくるでしょう。これはまやかしの回答です。「実施計画」とは汚染施設や核燃料の安全保護の計画であり、廃炉計画とは全く別です。1Fを更地に戻すことや規制解除(前号のQ&A参照)することを約束する計画ではありません。

*出典=「知らなきゃ騙される廃炉のこと Q&A」(尾松亮著、東邦出版)

『スローライフ曼荼羅』

宿根草

  野口智子(ゆとり研究所、スローライフの会共同代表)

 都会の歩道の花は、季節ごとに植え替えられます。業者さんが、まだ花が咲いているのに抜いてゴミ袋に入れ、次の花を植えます。花は消耗品です。先日うかがった北海道東神楽町では、まちなかの花壇に宿根草(しゅっこんそう)を植え、その世話を町民ボランティアがされていました。いつも花盛りでなくていい、そんな美意識を持てば、枯れ姿も美しく感じ、春の芽吹きがうれしいものです。自分が世話をしていればなおさらでしょう。まちづくりの心が宿り、根をはっていると実感しました。

https://noguchi-tomoko.com/?p=11367&preview=true

 

■■つべ小部屋■■

G7で最下位を独走中

  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 第2次高市改造内閣の女性閣僚は首相を含めて、また3人だけ。これは自民党の女性人材の枯渇ぶりとともに、この国の「ジェンダーギャップ」の大きさを象徴する。

 内閣改造の前日、9月16日付の朝刊各紙は世界経済フォーラム(WEF)の2026年版の報告書を報じていた。ことしも日本は主要7カ国(G7)の中でぶっちぎりの最下位。調査対象145カ国のうち、あぁ堂々の117位だった。初の女性首相が誕生したとはいえ、前年の118位とほぼ変わらない。

 毎年、同じような新聞記事が出るのは、報告書が最初に出た2006年から20年間、日本では男女平等の達成率がほとんど伸びていないからだ。男女が完全に平等な状態を100%とした場合、06年は64.5%で、26年は67.0%。分野ごとに見れば、教育や健康分野は世界トップクラスなのに、政治、経済が著しく見劣りしている。

 なかでも、政治分野の達成率は10.5%(前年は8.5%)にすぎない。企業での管理職・役員への女性登用などを反映した経済分野は60.9%(同61.3%)と低下するありさまだ。

 ジェンダー問題で、筆者の記憶に強く残る光景がある。2019年7月、参院選前の日本記者クラブでの党首討論だった。筆者が「選択的夫婦別姓を認める方は挙手してください」と問うと、自民党の安倍晋三総裁だけが手を挙げなかった。立憲、公明、国民民主、日本維新の会、共産、社民は、さっと手を挙げており、制度創設への方向性を示していたように思えた。

 それが、どうだ。いまや改正皇室典範で男女平等を真っ向から否定し、選択的夫婦別姓制度も遥かかなたに遠のいた。10月5日からの臨時国会には旧姓の通称使用の法制化案が提出される雲行きである。この国は、どこへ向かっているのだろう。

【参考】 G7各国の順位 5位・イギリス(84.2%)、9位・ドイツ(81.7%)、22位・フランス(77.9%)、24位・カナダ(77.7%)、47位・アメリカ(74.9%)、83位・イタリア(70.8%)、117位・日本(67.0%)

<編集室便り>

関根千佳さんからユニバーサルデザインを学びました。

 9月15日は「あなたが創るユニバーサルデザインの未来」という題で、(株)ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)会長、スローライフの会会員である関根さんのお話をうかがいました。26人がお申し込みでした。詳しくはこちらから。

https://www.slowlife-japan.jp/2026/09/19/%ef%bd%93-399/

▽10月20日の「さんか・さろん」は神野直彦さんです。

 財政学、地域経済論で知られる神野直彦先生(東京大学名誉教授)は、NPOスローライフ・ジャパン発足時から理事として、また、当会では顧問としてスローライフの推進に関わっておいでです。「さんか・さろん」へ初めてのご登壇です。お楽しみに。

【告知板】

企画展「パレスチナのいま―ガザ、ヨルダン川西岸2023ー26」 

 10月6日(火)~12日(月)10:00–18:00 東京・目黒区美術館 区民ギャラリーにて

2023年10月以来のガザの死者は7万人を超え、そのうち子供が2万人以上の惨状となっています。昨年10月の停戦後もイスラエル軍の攻撃が繰り返され、人道危機は続いています。一方で、ヨルダン川西岸でもイスラエル軍の侵攻や入植者の暴力で状況は悪化しています。ガザ攻撃3年、停戦1年を機に「パレスチナのいま」に焦点をあてます。

 (実行委員会)川上泰徳(中東ジャーナリスト・元朝日新聞記者)、白川優子(国境なき医師団)、藤屋リカ(慶応大准教授)、綿井健陽(ジャーナリスト)ほか。

=====

〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目12番13号

新宿アントレサロンビル2階「スローライフの会」

メール slowlifej@nifty.com 電話090-7433-1741(野口)

 

※ご連絡はなるべくメールでお願いします。

※活動詳細はホームページからご覧ください。

http://www.slowlife-japan.jp/