瓦版2019.11.19 第491号

街からも村からも、学会の諸兄姉からお便りをたくさん頂きたい、という欄が
この「瓦版」の『街道から畦道から』なのですが、近ごろは賑やかです。それ
ぞれに味わい深く、楽しく拝見させていただく。ありがとうございました。

 

コラム<火曜日の鐘> 吉田俊実(東京工科大学教授)

ハンガリー映画『サタンタンゴ』

 

一か月ほど前にある映画を観てから、折に触れその白黒の映像が脳裏によみ
がえる。長い映画だった。タル・ベーラというハンガリーの監督作品で、上映
時間は7時間18分の「サタンタンゴ」。原作はノーベル文学賞候補に名前が挙
がるクラスナホルカイ・ラースローで、脚本も担当している。社会主義時代の
末期、最底辺の生活をおくる農民たちの、先の見えない社会が描かれ、希望の
ない世界を静かに深く突き付けてくる。
解説パンフレットを読むと、当時の実際のハンガリーがそんなに夢も希望も
ない社会であったわけでないとある。想像の「デストピアの世界」ともいえる
らしいが、その生々しさは、観た者から容易に離れない。人々の輪からはじき
出される「知恵遅れの少女」は死んでしまい、「救い主」として農民の前に現
れた青年が人々を導いていくが、その先にもやはり希望はない。まあ、こんな
映画をよく7時間18分も見続けたかと思うと、自分でも呆れるが、寝る前など
に情景がよみがえるのだから、映画の力はすごい。
弱者は死に追いやられ、人々はいかさまの「救い主」を求め、従う。あらゆ
るところで貧富の二極化が加速している私たちの現実社会に、すでにタル・ベ
ーラの世界が紛れ込んでしまっているのかもしれない。そんな不安を抱えてし
まうのは私だけだろうか。

 

学会コラム<緑と絆の木陰> 中村桂子(JT生命誌研究館館長)

 

はっきりしないけれどどこかおかしい

 

11月13日の新聞各紙に「里山のチョウ激減」という記事が見られ、「ああ、
やっぱり」と思いました。日本自然保護協会が身近なチョウ87種を調べたとこ
ろ、国蝶とされるオオムササキをはじめ、約4割にあたる34種が「絶滅危惧種」
と言ってもよいレベルにまで急減していたというのです。私の場合、これほど
定量的に調べているわけではありませんが、我が家の庭(東京都世田谷区)を
飛ぶチョウがこの数年で急激に減っていると実感しています。
チョウだけではありません。庭のいたるところに巣を張りめぐらしていたジ
ョロウグモも激減。タイガースのような黒と黄のシマ(最近ユニフォームが変
わりましたけれど)が好きなのですが、数えるほどしかいなくなりました。日
本自然保護協会の専門家は「減少の理由ははっきりしない」と言っています。
自然に関しては「はっきりしない」ことが多く、はっきりしないのなら知らん
顔をしましょうとなるのが現代です。大きな話では地球温暖化とそれに平行し
て起きている自然災害についても、「はっきりしない」から無視するとおっし
ゃる方が少なからずおられます。
はっきりしないけれど、どこかおかしい。私はこれを「生きもの感覚」と名
づけて大事にしています。この感覚は地球の今、つまり今の社会のありようを
「やはりどこかおかしい」と教えてくれているのですが、どうしたらよろしい
のでしょう。

 

▽▽▽▽▽▽▽▽

 

【逸村逸品】ひとこと紹介 ? http://www.facebook.com/slowlifej
長崎県雲仙市「雲仙ポークソーセージ」。“雲仙ハム”の愛称で知られる、地
元の定番品。そのままでも焼いても美味。今やおみやげに引っ張りだこです。
△△△△△△△△△△△

 

■街角から畦道から

 

乾 正博(シン・エナジー(株)代表取締役)ラグビーは進化する

 

世阿弥が「初心忘るべからず」という言葉を残しています。世阿弥が能という
芸能を生き永らえさせるためのキーワードです。詳しくは、世阿弥が親から引
き継いだ能の奥義を伝えるべく書かれた『風姿花伝』に書かれています。
初心というのは衣偏に刀というところに着目いただければ意味が分かります。
いわゆる衣に刀を入れるというのは、新たなものになる。よって、新たな芸能
のかたちに変化することを忘れるな、というものです。実際に、能は、室町、
戦国、江戸など時代時代で変化したからこそ長く続いています。
さて、ラグビーは、この30年で大きく変化しています。特にルールです。私は、
C級レフリー資格を持っていますが、本当に良く変わります。例えば、トライ
の点数ですが昔は1トライ4点でした。今は、トライの重みをつけるために5
点です。ディフェンスのオフサイドラインもスクラムの時は、昔より5m下げ
ることでオフェンスを優位にしてプレーに躍動感が出るようにしました。
ここでお気づきと思いますが、スポーツは、我々の生活に必要な文化、といえ
ます。なければ芸能や絵画と同じように何か物足りない。でもつまらないもの
に時間を使いたくない。
一方、変化は弊害も招きます。あの時のほうが良かった。しかし、変化をしな
ければ生き残れない。これが進化なのでしょうか。進化しようとして日々脱皮
したり躓いています。

 

小牟田弘子(長崎県雲仙市) 紀の川市との交流

 

今月1日から二日間、和歌山県紀の川市へ行ってきました。メンバーは、同じ
職場の方とご家族、雲仙市内で農業をされている方の計8名でした。紀の川市
へは、昨年に続いて2回目。紀の川市特産のフルーツ収穫や、パラグライダー
(今年飛んだのは同じ職場の方でした!)、猫の駅長で有名な貴志川駅の訪問、
高野山お参りなど、今年もたくさんの思い出が出来ました。
懇親の夜、私は紀の川市市歌を準備してきて、クラリネットで演奏しました。
このサプライズを皆さんが喜んでくださいました。
前回、そして今回の旅行でお世話になった紀の川市の方々との交流は、2016年
に長野県飯山市で行われたスローライフ・フォーラムでの出会いがきっかけで、
フォーラムの翌年から紀の川市、雲仙市をお互いに訪問しています。
些細なきっかけが、このような関係へと繋がり、とても嬉しく思っています。
次回は、雲仙市へ来てくださることを楽しみに、これからもこの交流を大切に
していきたいと思います。

 

■まち・むらニュース

 

・奈良県宇陀市 室生寺国宝五重塔と紅葉ライトアップ

 

女人高野、で知られる室生寺。その国宝の五重塔が紅葉とともにライトアップ
される。五重塔は屋外のものとしては最小で、法隆寺の塔に次ぐ古塔だ。声明
コンサートなどもおこなわれ、期間中は臨時バスも。
夜間拝観日:11月22日(金)?24日(日)、29日(金)?12月1日(日)
拝観時間:17時?20時 夜間拝観料:大人500円、小人300円
問合せ:室生寺 TEL0745-93-2003
http://www.city.uda.nara.jp/shoukoukankou/kankou/kankou/murouji-lightup2019.html

 

・青森県南部町 あおもり鍋自慢&南部町農産物フェア

 

青森県内各地の自慢の鍋が23種も集まる。弘前市のカニ汁鍋、八戸市のせんべ
い汁などなど。鍋は一杯200円?300円。昼頃には売り切れる鍋も続出する人気
だ。同時開催の農産物フェアは23日もおこなわれる。
開催日時:11月24日(日)9時?
場所:三戸郡南部町「ふるさと運動公園」駐車場
問合せ:南部町観光協会事務局 TEL0178-84-2119
http://www.town.aomori-nanbu.lg.jp/index.cfm/10″1137141177html

 

コラム<象さんの散歩>

 

「元禄村」の友人逝く

 

先週、筑紫哲也の命日に“献杯”を書いた。偶然だが、翌日、後輩の訃報が
届いた。その奥方から「主人が10月に・・」と。訃報の主は、井谷泰造くん。
タイちゃん、と呼ぶ。早稲田大学の後輩。和歌山県人だ。私は、紀州の有田に
疎開していたこともあって意気統合。彼は、卒業して家業を継いだ。
県内一の繁華街・和歌山市ぶらくり丁に「築映」という映画館を持ち、関連
の店も経営した。県内の辺地にもいい映画を見せるとか、政治経済に発言力を
もったし、社会貢献に頑張った。友人ともよく飲んだ、よく語った。
だが、私など知る余地もない展開で、映画館も他の仕事も、また邸宅、財産
も手放すことになった。でも、多くを語らない。「先輩に恥じる」「合わせる
顔がない」。時代がかった言葉で。タイちゃんらしい。あと、再起を待つこと
に。約束したように年賀状のやりとりだけ。顔を合わしていなかった。
タイちゃんとは、だれよりも「元禄村」での無二の親友だ。元禄村とは・・。
和歌山県の日高・有田地方のテーマパークを造れないものか、私が提唱した。
日高は、歌舞伎の女形の始祖・芳沢あやめが育った。道成寺もある。有田は、
木材とミカンでご存じ・紀伊国屋文左衛門の生まれ故郷である。
「村」の構想を、タイちゃんと語り合った。村を歩き、同志を求めて。この
井原西鶴と忠臣蔵との元禄時代を偲ぶ村おこしは、岩波講座『自治体の構想』
全5巻(松下圭一、西尾勝、新藤宗幸編集)に載った。「イベントと伝統文化」
の項目が私の担当だったので、まちづくり構想の一例として書いた。
友への命日に“献杯”が来年から、一人ふえる・・ <川島正英>

 

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「奈良県十津川村」から・・
国道168号線沿い、役場付近、そして「21世紀の森・森林植物公園」の紅葉が
見頃となりました。秋深まった十津川村へ、紅葉見物ドライブをして源泉かけ
流しの温泉旅館に泊まる旅はいかがでしょう? http://totsukawa.info/
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コラム 野口智子<スローライフ曼荼羅> 越谷でロケットストーブ

 

ペール缶や一斗缶をつなぎ、煙突を通して作るロケットストーブ。少量の薪で
も気流でロケットのように、勢いよく燃え上がり、災害時やキャンプの時に役
立ちます。何より手づくりできる。以前もご紹介しましたが、先日、埼玉県越
谷市で作る機会があり、あらためてその威力に感心しました。このストーブ、
お米を炊いたり豚汁を作るだけでなく、人と人、地域の関係も温めてくれます。
http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=544

 

■編集室便り

 

▽スローライフの本!
『おひとりさまのケチじょうず』

 

2009年「筑紫哲也賞 スローライフの眼 作文コンクール」を開催した際に、
『うさぎとかめ逍遥』という作品を寄せられ、「スローライフ賞」に選ばれた
小笠原洋子さんから「本を出版しました」と、ご連絡がありました。

 

エッセイストである小笠原さんが書かれたのは、地球にもお財布にもやさしい
“ケチ道”の話。理屈だけでなく、実践されている具体例が書かれていて、笑
いながらうなずくことばかり。

 

・パーマやヘアカラーなど髪にお金をかけない。白髪のショートを素敵に。
・透明プラスチック容器は何度か使ってから捨てる。
・レジ袋を断ったとき、商品に貼られたテープをもう一度何かに使う。
・中身が出なくなったチューブの物は、カットして残りを掻き出し使う。
・鍋はいろいろな材料を足して変化させ、何度も何度も食べる。

 

皆さん多少はしていることだとは思いますが、ズバリと書かれていて潔い!
年金生活でも、無駄をなくし、物質から解放されてエレガントに生きる志と知
恵にあふれていました。

 

『おひとりさまのケチじょうず』小笠原洋子著 ビジネス社 1300円+税

 

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■私たちはいつもスローライフの動きを応援しています。

 

岩手県遠野市
http://www.city.tono.iwate.jp/
奈良県吉野郡十津川村
http://www.vill.totsukawa.lg.jp/www/toppage/0000000000000/APM03000.html
奈良県
http://www.pref.nara.jp/
雲仙市
https://www.city.unzen.nagasaki.jp/
飯山市
http://www.city.iiyama.nagano.jp/
出雲市
http://www.city.izumo.shimane.jp/www/toppage/0000000000000/APM03000.html
丹波篠山市
https://www.city.sasayama.hyogo.jp/
日本テレネット株式会社
http://www.nippon-tele.net/
シン・エナジー株式会社
https://www.symenergy.co.jp/
クオリティ株式会社
http://www.quality.co.jp/
アース・デザイン・インターナショナル(edi)株式会社
http://www.edi.ne.jp/
株式会社サンクス・ツー
http://www.thanks2.jp/

 

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