「あっちこっちで多事争論」のコーナーに、たくさんの会員から投稿が届いています。寄せられた玉稿を拝読しながら、膝を打ったり、何度もうなずいたり、現地へ行ってみたくなったり、ひたすら感心したり。編集作業がとっても楽しいです。さあ次は、あなたの番です。じめじめした季節に向かうなか、さくさくっと書いて気分転換してみませんか。
========================================
『緑と絆の木陰』
手の感触が脳に伝わり
中村桂子 (JT生命誌研究館名誉館長 スローライフの会共同代表)
草木染めと紬織で人間国宝の志村ふくみさんが、「手仕事がなくなったら人類は滅びるのではないでしょうか」と言っていらっしゃいました。そんな気がします。文化も文明も手が作ってきたのですから。身近な話にするなら、食事も外食やレトルト食品、冷凍食品の利用が増えていると言われます。私の周りにはお料理好きの方が多く実感はないのですが、流れはそちらに向いているのでしょう。
そんなことを考えている時、テレビでハンバーグとおにぎり作りが放映されました。あれこれ工夫をしながら楽しそうなのですが、気になったのは、皆さん「使い捨てのプラスチック手袋」を使っていることです。清潔にということでしょうが、これでは本当に手を使っていることにはなりません。お肉の感触、ご飯の手触りが脳に伝わり、それぞれの違いを知ることが大事でしょう。手は小さな違いも見つける機能を持っていますので、手で感じながら作るのが楽しいのにと思います。手はきちんと洗えば清潔で問題ありません。
こうして、毎日たくさんの手袋が捨てられているのだろうなと思うと、とても気になります。小さなことのようですが、これの積み重ねが異常気象の原因なのですから。
脱炭素などと言わずとも、これってちょっと違うなという日常感覚をもつことで、手からの信号を受け止めた脳が、志村さんの心配をなくしてくれるのではないかと思っています。
<あっちこっちで多事争論>
「時の記念日」に「眞暦」ライフをめざす (上)
山下茂 (東京都 スローライフの会会員)
昨日は「時の記念日」でした。子供の頃には、「そうか!」と気を引き締めましたが、定年退職後で「スローライフ」実践中の昨今では、「時」に縛られるのは窮屈に感じます。
我国の現行官暦(=耶蘇教暦)では、年の始め(=歳首)がイエスさんに関係していて、異教徒の小生にはピンと来ないし、我国の気候風土とはマッチしません。それで旧和暦を大切にしていますが、太陽の運行との関係が毎年違うのが難点です。
あれこれ想い巡らすうちに、江戸時代の本居宣長『眞暦考』を思い出し、改めて読んで、「眞暦」はスローライフを導く暦法だと感得。宣長先生が考えたのは大まかには次のような暦法です(以下「引用」は筑摩書房・昭和47年刊『本居宣長全集・第8巻』の203~213頁より)。
昔々のご先祖様たちは、年月日を「こちたく」(=細々コマゴマと煩わしく) は決めずに、季節を春夏秋冬に分け、各季を「はじめ」「なかば」「すえ」に三分する程度の「大らか」な定め方をして、折々の「天(ソラ)のけしき」と「天地(アメツチ)の間の物のうへ」つまり木や草、花や実、鳥や虫、稲や麦、日や月など、「見聞く物によりて、その時を知れる」暮らしぶりでした。(つづく)
「田子町にんにく収穫祭」へ、ぜひ
川名美夏 (青森県田子町 カフェ「Takkocafe」経営)
青森県も木々が芽吹き新緑の美しい季節となりました。でも田子町は6月になっても朝晩は冷え込み一桁の気温になることもしばしば。一日の気温差が10度、15度は当たり前と言うかなり厳しい地域ですが、その寒暖差で野菜がおいしく成長します。
6月は、にんにくの収穫の時期を迎えます。幹を切ると大量の水分とにんにくの香りが町全体に香ります。車に乗っていても外気から、にんにくの香りがしますよ。
それは嘘だろう~って思う方は是非この時期に田子町に遊びに来て体験して欲しいものです。
収穫した生にんにくは、一カ月くらいは町内のみで販売されています。水分をタップリ含んでいるので、保管状況が悪いとカビてしまうからです。なので、風通しのいい日陰に吊るしてください。通常販売しているのは収穫後に乾 燥機で乾燥されたもの。収穫されたばかりは、言うなれば「新玉ねぎ」みたいな状態です。
料理の仕方は同じですので、新鮮なにんにくを各種料理に使って楽しんでいただきたいです。私は「Takkocafe」でペペロンチーノを出しています。加熱されて甘くなった芋のようなホクホクのにんにくを喜んで食べていただいています。
6月の15、16日は「田子町にんにく収穫祭」で、現場で畑からにんにくを掘り取り体験をできたりもします。旬なにんにくを是非食べに来てください。
ジャガイモの季節
南條青志 (和歌山県紀の川市 スローライフの会会員)
長崎雲仙から和歌山の紀の川市へ、ジャガイモが届いた。また、そんな季節が来たんやなぁ。ダンボール箱一杯に詰められた雲仙じゃが。デジマとデストロイヤー。それぞれ食感や香りに特徴があるんだよね〜。
一個一個数えながらメンバーに小分け。うちの奥さんが、早速、デジマで肉じゃがを作ってくれた。次の日はポテトサラダ。そのうち出てくると思うけど、チーズをのせたデストロイヤーのオーブン焼きが大のお気に入り。
味が濃い。食べた時に鼻を通るジャガイモの香り。うーん、これぞ雲仙じゃが。いつも食べてるじゃがとは全然違う。雲仙じゃがを食べると、送ってくれた方が畑で作業している様子を想像してしまう。実際に作業してるのを見たこともないのに。
うれしい。ますますおいしい。やっぱ特別やわ。もう何年になるかなぁ、雲仙におじゃました時に見た、じゃが畑や石積みに田んぼの風景、出会った方々の姿がよみがえってくる。その時のたくさんの楽しい思い出。あー、また雲仙に行きたい。来年は少しは時間ができないかなあ。
今度は紀の川から送る番。季節が来たら、また紀の川からフルーツ送りますね。
ダイアログ・ダイバシティミュージアム
竹内玄 (東京都 スローライフの会会員)
都内で、ダイアログ・ダイバシティミュージアムを訪問した。ミュージアムといっても、絵や彫刻を見るところではなく、参加型である。日本では2000年ごろから活動されているようで、私は今回が2度目の体験だった。
前回は「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」で、視覚障碍者のガイドさんに連れられ、完全な闇の中を歩いた。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感の中で、我々はいかに視覚に頼って生きているのかを思い知らされた。
まず、歩き出す一歩が出ない。手を広げ、爪先で前方に障害物がないことを確認しながら、そろりそろりと進む。そうこうしていると、ほかの参加者がどこへ行ってしまったのかわからない。「おとうさん、こっちこっち」と娘が迎えに来てくれて、手を引いてくれたが、これがとても速い。「そんな速く進むと、壁にぶつかるよ」というと、娘は「部屋の真ん中だから大丈夫」とのこと。ガイドさんもすごかったが、娘も負けず劣らずであった。
今回は、「ダイアログ・イン・ザ・サイレンス」。聴覚を制限された中で、ガイドさんがジェスチャーで話しかけてくるが、はじめはさっぱりわからない。ジェスチャーだけで説明を受け、ジェスチャーだけで返答する。これがいかに難しいことか。言葉を使えないことに悪戦苦闘、汗だくになってプログラムを終えた。
自分は五感を研ぎ澄まし生きている、と思ってはいても、移動には視覚、コミュニケーションには聴覚と、如何に固定化された感覚だけで生きているのかを思い知らされた。皆様も機会があれば是非ご参加ください。
※ダイアログ・ダイバシティミュージアム https://taiwanomori.dialogue.or.jp/
世界とつながる静岡のお茶ツーリズム
坂野真帆 静岡市 株式会社そふと研究室)
地方都市の静岡では「オーバーツーリズム問題」も、どこか他人事のように思っていましたが、最近その状況に変化を感じます。
弊社では、静岡のブランド力ある地域資源の「お茶」をテーマにしたツアーを行っています。長年連携している茶農家で、茶園見学と自園のお茶飲み比べを通年で体験できます。しかし夫婦二人の茶園ですので、一番の繁忙期である新茶シーズンは、受け入れをお休みせざるを得ません。
でも、お茶に注目が集まるのは、まさにその時期。ここに昨年より海外からのオファーが急増してしまったのです。農家からのヘルプ要請を受け、4~6月のみ弊社でガイドの手配、当日の実施までを行うことにしました。
今年は昨年以上に多様な国からお客様が訪れます。リトアニア、ルクセンブルク、スロベニア、モーリシャス。自国で日本茶を飲まれている方も増え、「どんなふうに作られているのか見てみたかった」「品種の飲み比べができるなんて感激」「これからは淹れ方にも工夫して飲んでみるね」と、日本人顔負けの感想をくださいます。
対応するガイドも、報告を聞く農家や私たちもうれしく、誇らしい気持ちになります。お茶を間に、よい関係性を築けるお客様には、お国を問わずたくさん来ていただきたい、と思う毎日です。そふと研究室 https://soft-labo.net
丹波篠山便り (下) 「市民参加の国際博」
竹見聖司 (兵庫県丹波篠山市 たけみ農園)
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに「2025大阪・関西万博」が開催されます。多くの来訪者や経済効果が期待されていますが、会場の大阪・夢洲から1時間圏内にある丹波篠山市では、この機会に丹波篠山の素晴らしい資源や取組を市民・国内外の多くの方々に知っていただけるよう、オール市民参加で「丹波篠山国際博 日本の美しい農村、未来へ」を開催します。
会場は市内全域。見て、体験してもらいたいものは、日々の丹波篠山の暮らしそのもの。地域のお祭りや伝統行事、各種団体の取組やイベントなどの催事に、桜街道やホタル、朝霧、紅葉の山なみ、黒枝豆、お苗菊、ぼたん鍋など四季折々に楽しめる自然や食、年間を通して楽しむことができる城下や宿場のまちなみ、丹波焼の作陶体験、工芸のギャラリーめぐりなどです。
丹波篠山市に行けば、いつでもどこかで何かがやっていて、体験することができます。「また行ってみたい」「何か関わってみたい」と思う市の魅力をぜひ見つけに来てください。公式HP https://expo.sasayama.jp/ja/about
「ケチ」、モノを活かし切るということ
大原興太郎 (津市 松阪農業公園ベルファーム・指定管理者)
先月の「さんか・さろん」の小笠原さんのお話に触発されて、自分の生きてきた過去とそのスタイルの淵源を考えてみた。「さろん」でも述べたが、私も1カ月の飲食費は平均で3万円以下。別に我慢しているわけでもなく、一人で自然体で暮らしていると、そうなる。
振り返れば、農家の生まれで小さい頃は基本的に自給的生活をしており、そのスタイル(もったいない、モノは可能な限り活かして使う)が身についている。食べられるかどうかは賞味期限ではなく、モノの状態を見て判断する。子どもの弁当を毎日作っていたころは賞味期限も見たが、一人暮らしの今は期限切れの近いものから買うようになり、結果として値引き品が多く節約になる。「メニュー」ありきでなく、ほとんど「素材」ありきで調理するので、旬のものが多くなり、食材費も低くなっている。
なかなか物を捨てられない理由の一つに、自分には基本的にモノを活かしきりたいという思いがある。タオルが古くなれば雑巾にするといった「カスケード利用」をしてでも使えるものは活かしたい。
いまの悩みは蔵書である。大学の退官時に在職36年間に買った数千冊の本を、退職金の半分を使って建てた書庫に持ち帰った。定年後にゆっくり読もうと考えていたが、農業公園に携わるいま、その夢の実現も怪しくなっている。あちこちの図書館も書庫が一杯で寄贈も受け入れできないとのこと。学生や留学生たちに時々もらって頂く以外、活かしようが思いつかない。
ミクロからマクロの改革へ (上)
大山皓史 (千葉県松戸市 弁護士)
私たちは(普段あまり意識していませんが)マクロ経済の中で生きています。いまのマクロ経済における「資本主義」とは、利子を容認する貨幣経済の下、資本の無限の増殖を目的として利潤を永続的に追求していく経済活動の総称(岩井克人「二十一世紀の資本主義論」ちくま学芸文庫80頁)です。
1973年のオイル・ショック等を契機に、その頃から(マネー獲得の取引機会を世界中に拡充する自由を追求する)新自由主義に基づく市場原理主義が先進諸国の政治を吞み込むようになりました。日本も「構造改革」と称し規制緩和、自由化を(無思慮に)進めました。その結果、いわゆる社会的共通資本も含めた社会の多くの領域は、マネー至上主義者のために開放されてマーケット化されたのです。
マネー至上主義者は(人類全体から見ると)少数なのですが、その少数者が国の政治と経済の実権を握り、多くの国の制度を、国民の生活よりも自己の利益を優先する制度に変えてきました。 (続く)
『スローライフ曼荼羅』
たこ足直播機
野口智子 (ゆとり研究所)
昔の暮らしを知る資料館が好きです。どっぷりと見ます。最近、心が動いたのは北海道「池田町郷土資料館」に展示されていた稲作の道具。タコのようにパイプ状の足が伸びた種まき機です。寒冷で内地のような苗を植えるやり方は無理、広大で水の冷たい田んぼ。そこで立ったまま種もみを直播できる便利な装置、これで、北海道の稲作が進んだそうです。北海道の発展には、こんな道具の存在があったのですね。身体をはって食べ物を作ってきた人々のことを考えました。https://noguchi-tomoko.com/post-10380/
『つべ小部屋』
食料供給困難事案対策法って、何なの
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
政治資金ザル法の穴の大きさをめぐる茶番劇の陰で、また一つ、おかしな法律ができそうだ。710号(5/14付)の小欄で取りあげた地方自治法の改悪(衆院を通過し参院へ)の話ではない。5月に成立した「改正食料・農業・農村基本法」に付随する食料供給困難事案対策法のことだ。
「農政の憲法」といわれる基本法の改正は四半世紀ぶりだった。気候危機や戦争による世界的な食料需給情勢の悪化、国内の後継者不足などを「歴史的転換点」ととらえ、初めて基本理念に「食料安全保障の確保」を掲げた。
その中で危機的な日本農業の将来像を描くのかと思いきや、何のことはない事実上、自給率低下をこれまで以上に容認する内容になった。そのぶん、農業への企業参入を促し、輸入先との関係強化と海外での日本向け生産への投資に努めることなどが強調されている。
そんな輸入頼みを踏まえて制定されるのが食料供給困難事案対策法だ。「供給不足を事前に予想」して措置を講ずるというのだが、その中身に驚く。首相が本部長の対策本部をつくり、出荷・販売の調整や、輸入拡大・生産拡大の要請をする。それでも「最低限度必要とする食料が不足するおそれのある場合」は「生産転換や割当て・配給を実施する」という。
有事になったら急に「花から芋や小麦へ」と転換させて増産を命じ、供出を義務づけるのか。スイッチひとつで増産できる工業製品ならいざ知らず、農業の現場でそんなことできるわけがない。
国は号令一下で何でもできると思っているらしい。保険証の廃止や、6月の所得税減税での現場の混乱しかり。それを農業分野にまで持ち込むとは、どこまで、お気楽なのか。
<編集室便り>
▽6月18日(火)は「スローな視点でJ1を語る」
6月の「さんか・さろん」は、大のサッカーファンでもあり、地元の「サガン鳥栖」の強烈なサポーターでもある坂田啓子さんの登場です。J1の世界に、坂田さん独自の視点でスローライフを見出すというお話。これは面白いですよ、ご予定ください。
・日時:6月18日(火)19時から、zoomで。
・テーマ:「スローな視点でJ1を語る」
・講師:坂田啓子(佐賀市在住、スローライフの会会員)
・参加費:年間参加費3000円をお支払いでない会員は1000円、一般2000円
・申込:6月15日(土)までに、メールで slowlifej@nifty.com まで。
詳しくはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2024/06/02/s-142/
▽5月の「さろん」報告はこちらから
5月の「さんか・さろん」、小笠原洋子さん(エッセイスト)の「エレガンスに『ケチ上手』」は、講師のスピーチのみYouTubeに載せています。ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=iXTruKioDSU
▽11月9日(土)、10日(日)は「スローライフ・フォーラムinゆすはら」です。
高知県梼原町でおなじみのフォーラムです。テーマは「集落」と「若者」と。
今からご予定ください。近々、往復の航空便時間をお知らせします。高知空港、高知駅からはバスを仕立てて現地まで往復です。ご安心を。
▽会費お待ちします。
今年度会費がまだの方、お待ちしております。この際、新規会員ご希望の方は、まずメールを。 slowlifej@nifty.com
・年会費:一口 5000円(何口でも)
・「さんか・さろん」参加費:年間 3000円(年間支払いでない場合、会員は一回1000円、非会員は2000円です)
※「さろん」年間カリキュラムはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2024/03/28/%ef%bd%93-297/
会員は「スローライフ瓦版」に投稿できるほか、「さろん」「フォーラム」などの催しに安く参加できます。
この会は皆様の会費とボランティア作業で運営しております。今後の活動に向けてぜひご協力ください。
・振込先
ゆうちょ銀行 振替口座 00190-4-595293 スローライフの会
※他金融機関からのお振込みの場合は
店名:〇一九(ゼロイチキュウ)店、預金種目:当座 口座番号:0595293、スローライフの会 まで。
===================================== PR ====
クオリティソフトから・・・
【たまな食堂】南紀白浜たまな食堂と東京表参道の人気ヴィーガンレストラMUSHROOM TOKYOがコラボイベントを行います。龍神しいたけ三昧の至極のディナーで和歌山の魅力を発信します。 https://tamana-shop.jp/info20240601/
=============================================
…………………………………………………………………………
「NPOスローライフ・ジャパン、スローライフ学会」は昨年12月、名前が「スローライフの会」に、住所も変わりました。よろしくお願いいたします。
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目12番13号
新宿アントレサロンビル2階「スローライフの会」
メール slowlifej@nifty.com 電話090-7433-1741(野口)
※ご連絡はなるべくメールでお願いします。
※活動詳細はホームページからご覧ください。
http://www.slowlife-japan.jp/
…………………………………………………………………………