瓦版2024.08.27 第717号 増田寛也さんら9人のコラム掲載。

 突然のゲリラ雷雨でずぶ濡れになるわ、台風がくねくねとやって来てハラハラさせられるわ。ようやく炎暑が終わりかけているのかな、と思いつつも、荒っぽい天候に右往左往する日々が続きます。心穏やかに、ちょっと涼みたいみなさんに、珠玉の写真をお届けします。水浴びするオオルリです。8月、神奈川県内にて。撮影者はHira-san。

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『緑と絆の木陰』

続く残暑

  増田寛也 (日本郵政社長、スローライフの会共同代表)

 昨日(22日)はニ十四節気の処暑、「暑さがやみ、涼しくなりはじめる頃」とされるが、その気配は全く無い。都心のゲリラ豪雨に次いで、今度は台風が再び日本列島を襲うとの事。異常気象がもはや異常ではなく日常化、定着化したことを実感する。
 コロナ以前は、9月第1週に目黒駅前で開催される「さんま祭り」で東京への秋の訪れを楽しんでいた。目黒駅をはさんで品川区側の祭りは岩手県宮古市がさんまを7000匹提供、付け合わせの徳島県神山町のスダチ、栃木県那須塩原市の辛味大根おろしでいただく焼きたてのさんまは本当に美味しい。
 ところが、コロナで開催が困難となり、コロナがほぼ終了した今年こそはと思ったら、今度はさんまの不漁で中止となってしまった。猫が見向きもしない「猫またぎ」と言われたさんまも、今や高級魚。9月の初めの時期に祭りに提供する量の確保は到底望めないようだ。であれば、来年は時期を遅らせて開催すればとも思うが、実は主催者メンバーの高齢化で簡単に開催とはいかないとのこと。むしろこちらが中止の真の理由と聞く。
 全国で担い手不足により、夏祭り、秋祭りの縮小や中止が相次いでいる。かつては四季の推移を暦ではなく祭りで感じとることができた。しかし、四季の変化が乏しくなった日本列島では、同様に各地の祭りも徐々に姿を消す運命なのかもしれない。

<あっちこっちで多事争論>

蜂は怖いけれど、味方でもあり
  遠藤夏緒 (長野市 農楽里ファーム)
 日中、黒みを帯びて迫って来る草に囲まれ、汗だくになって畑仕事をしていると、まるで亜熱帯地方にいるような気分になっています。
 先日、草刈りをしていたところ、いきなり左手に激痛が走りました。激痛は瞬時に2,3カ所に増え、ブンブンと蜂が飛んでいるのが目に入りました。刺されたのです。
 今年2回目なので、アナフィラキシーショックが起きないか心配になりましたが、なんとか無事でした。
 蜂の巣(下の写真)の形状から、コアシナガバチだと判りました。攻撃性、毒性ともやや強いそうで、刺されたのが2,3か所で済んだというのは不幸中の幸いなのかもしれません。
 肉食性の蜂は、農家にとって害のある芋虫を食べてくれる益虫でもあるので、蜂を殺さずに巣を撤去できれば一番良いのですが危険を伴います。殺虫剤を使えばことは早いのですが、生態系の中で蜂全体が減っていることを考えると、簡単には使えません。
 思案の挙句、このまま自然に任せていても台風で巣が落ちたり、スズメバチの襲撃を受けて一網打尽にされる可能性もあるな、などなどと考え、これはせっかくの観察の機会と思い直し、注意をしながら観察を続けてみることに決めたのでした。

断食で心身のリセット(上)
   大原興太郎 (津市 松阪農業公園ベルファーム・指定管理者)
 私は50歳の頃からこれまで30年で25回の断食をしてきました。その最新回が先週でした。断食にもいろいろな仕方があるようですが、私が習ったのは奈良・生駒の静養院断食療養所のやり方です。 一週間の断食期間があるとすると、1-2日間予備断食で毎食減らしていき、水だけの本断食を3日間、そしてお粥や消化の良い野菜煮などの回復食2-3日の配分です。
 断食をするというと、1食抜いてもお腹が空くのにとても無理、とかの反応をされます。1食抜くのはお腹が空くけれど、2、3日抜くなら平気よ、と答えたりするのですが、要は体(生物としての人間)の適応力を如何に活用するかなのです。その時の体調などで、きゅーとお腹が空いてくる経験もありましたが、今回は快調でした。
 断食は人も生きものだと感じられる小さな仕掛けだと思います。断食の仕方の勘どころは「ゆっくり」(スロースタイル)なのだなと感じます。特に回復食の過程は断食の成否にも関係してきます。重湯、三分粥、五分粥と徐々に慣らし、おかずも消化の良いものを少しずつ増やしていきます。そうするとご褒美がついてきます。 (続く)

もうひとつのライフワーク (上)

  舟越隆裕 (栃木県日光市 珈琲CoCom)
 新しい道を求めて、キッチンカーを始めて早5年。年金をもらう歳になりました。
 そこで、まだまだ「老い」に負けないために何か始めようと思い立ち、「通訳ガイドボランティア」の仲間入りをしました。
 キッチンカーにも、たくさんの海外の方が見えます。そんな時、できる限りのコミュニケーションをとるようにしています。拙い英語でも笑顔があふれます。
 旅の思い出って、観光スポットや食べ物ももちろんですが、その地での「人」との出会いが何より心に残るもの。カフェは飲食の場でなく交流の場なのです。その延長線上が、今回選んだもうひとつの道です。
 今まで培った観光の知識を活かして、日光の魅力をたっぷりご案内するのと合わせて、しばしの雑談を思い出に残してもらえれば、と。

初めての韓国旅行
  小牟田弘子 (長崎県雲仙市 スローライフの会会員)
 今年7月、友人と2人で韓国を旅行しました。2人とも韓国は初めてで、明洞(ミョンドン)や弘大(ホンデ)をメインに色んなところを巡り、買い物のほか、韓国料理を楽しみました。
 食べたのは、サムギョプサルやトッポキ、カンジャンケジャン(下の写真)、ヤンニョムチキン、キンパなど…。行きたいところ、買いたいもの、食べたいものをほぼ全て叶えられ、とても楽しい旅行となりました。
 韓国も蒸し暑かったのですが、日本とは違う(少なくとも地方にはない)光景を目にしました。色んな場所の横断歩道で信号待ちをするスペースに大きな日傘が設置されていました。熱中症予防のためだと思いますが、同じ日傘の下で多くの人が一緒に待機している様子はなんだか微笑ましく、日本でもこういうのがあれば良いなと思いました。
 初の韓国には不安もありましたが、想像していた以上に身近で行きやすかったです。また近いうちに行ってみたいと思います。皆様の中で、旅行におすすめの国や印象的なエピソードがありましたら、ぜひこの瓦版でお教えいただけますと幸いです。

息子の中学最後の大会が終わった
  南條青志 (和歌山県紀の川市 スローライフの会会員)
 2年半前、地元の硬式野球チームに入った。体もかなり小さい方だったので、小学校の時は9番バッター。ホームランなんて夢のまた夢だった。入ってしばらくは、レギュラーと補欠を行ったり来たりしていた。
 1年生の秋、コーチは「2年の秋に体重が55キロないと試合には出さない」とメンバー全員に告げた。息子は10キロ以上増やさないといけない。そんなの無理。でもあきらめたら終わり。朝も昼も晩も寝る前も必死に食べた。ついに2年の秋には55.8キロになっていた。ある時、コーチから「将来の4番バッター候補やな」と冗談半分で言われた。その言葉にのせられ、信じて、毎日バットを振った。
 最後の大会は4番バッターでタイムリーヒットを打った。これまで理不尽なことで試合を外されたこともあった。しごかれ過ぎて怪我したこともあった。でも、やめたいとは言わず、最後までやり切った。そんなに野球が好きなん? こっちにはそうは見えなかったけど、まあ、よくやったわ。
 やれば出来る。その経験を高校受験にも少しは生かしてよ。

「さんか・さろん」で
  片岡凌  (群馬県安中市 政策・デジタル推進課)

 浦聖治さん(クオリティソフト株式会社CEO)のお話は非常に刺激になりました。特に、「チャレンジ48」(有給で地域貢献やボランティア活動を年間48時間する仕組み)は自治体にこそ必要な取り組みであると感じました。良い人材に来てもらうための工夫として 「綺麗な職場」にすることもしっくりきました。
 アドレスフリーの働き方は「密接な組織連携」と逆行している、との「さろん」参加者からの意見もごもっともだと思いましたし、それに対しての浦さんの「使い分けだ」という解答もなるほどなと感じました。
 適切なアドレスフリー、でも結局は「対人」に勝るものはない、ということを念頭において、これからのテレワーク、ワーケーションなども推進していきたく思います。

スローライフ曼荼羅
「スーパーよさこい」で
  野口智子 (ゆとり研究所)
 東京・原宿の「スーパーよさこい2024」をのぞいてみました。106チームが参加、次々とオリジナルの曲・踊りが披露され、炎天下で若い力が炸裂します。大音響と熱気に、私はすっかり元気になり。同行の夫は、迫力負けして夜に熱を出しました。それにしても、こんなにたくさんエネルギッシュな若者が、目の前にいるのに。なんで地方の集落再生の現場に若者はいないのだろう?そのことばかり考えました。https://noguchi-tomoko.com/post-10496/

つべ小部屋
あぁ、燃料デブリ
  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
 この拙文がお手元に届くころ、作業はどうなっているのだろうか、と思いながら書く。などと書き始めたら、いきなり止まってしまった。東京電力福島第一原一2号機での溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し試験のことである。22日から約2週間かけて実施するはずだったが、初日にとん挫した。
 「燃料デブリの取り出しは廃炉の『最難関』とされ、今回が原発事故後初めての試み」「取り出す予定の燃料デブリは最大3グラム」などと新聞には書いてあった。
 政府と東電は当初、燃料デブリの取り出しは「20年度上半期までに始める」としていた。国費も投入して開発したロボットアームで21年に取り出し開始、という発表もしていた。だが、アームの開発の遅れなどで3回延期され、取り出し実績ゼロで今日に至る。
 燃料デブリは1、2、3号機合わせて、推計で880トンある。3グラムという今回の分量の少なさに卒倒しそうになるが、それでもできれば、初めてのこと。どうなることやらと、注目していた。
 しかし、冷静に考えて、もしも順調に作業できるようになったとして、1日にどれくらいの量のデブリを取り出せるのか。それで、どのくらいの期間で作業を完遂できるのだろうかと考えてみる。取らぬ狸の皮算用ではないが、3グラムから始めて、10グラム、100グラムとうまく増やしていければ、いずれ1キロも夢ではないのだろうか。
 では、たとえば1日に10キロも処理できたとしたら、と計算してみて、わが目を疑う。
 答えは、なんと240年かかるのだ。
 そもそも、デブリをどこへ持ってゆくのか、などと考え出すと、「廃炉完了は30年から40年で」という計画の虚構性に改めて腹が立つ。すでに事故から13年半になる。

<編集室便り>

▽11月9日(土)・10日(日)フォーラムです。
 この秋、11月は高知県梼原(ゆすはら)町でフォーラムです。取り急ぎ、早めに航空券などを確保なさってください。
・名称:「スローライフ・フォーラムinゆすはら」
・場所:高知県梼原町「ゆすはら座」で
・テーマ:「集落と、若者と」
・11月9日(土):町内「集落活動センター」2カ所、隈研吾設計・図書館、「茶堂」などを見学。夜は「夜なべ談義」で交流。
・11月10日(日):午前中「分科会」川竹大輔、坪井ゆづる。午後「シンポジウム」高知県知事、梼原町長、増田寛也、中村桂子、神野直彦らが登壇。(敬称略)
詳しくはこちらから⇓
https://www.slowlife-japan.jp/2024/07/02/%ef%bd%93-309/
※空港と梼原町の往復は、事務局が大型バスをチャーターします。
※陸路の方は、JR高知駅に上記のバスを往復つけます。
※宿泊は、事務局が確保した梼原町の民宿など、安価な宿泊施設となります。10日もう一泊高知市内に泊られる方もあります。こちらはご自由に各人で。
※ご参加、お問合せはまずメールでご連絡ください。メール slowlifej@nifty.com

▽9月17日の「さろん」は梼原町長です。

 上記のフォーラムにぜひご参加いただきたく、梼原のまちを吉田尚人町長自らご案内いただく「さんか・さろん」です。ぜひ、ここで予習しましょう。ご予定ください。

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