瓦版2024.09.24 第719号 川島英樹さんら11人のコラム掲載。

   暑さ寒さも彼岸まで。ようやく、酷暑から解放されるのかなと呑気に思っていたら、悲惨な光景が目に飛び込んできた。能登豪雨での河川の氾濫、街を襲う濁流に息をのむ。なぜ、天は大地震の被災地に、これほどむごいことをするのか。そんな思いを抱いた方は多かろう。一難去ってまた一難。ままならぬ復興が、さらに遅れてゆく現実が広がる。

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『緑と絆の木陰』

シルバー・ウィーク、2週続きの三連休が終わった
  川島英樹 (せたがや文化財団)
 いつまでも暑いことを除けば、変わりやすい天候のことを思うにつけ、ほんの数日間の変化に驚くことが多い。今年の夏にあった、都知事選やパリ五輪、新札発行、南海トラフ地震臨時情報……、もうずいぶん前のことに思える。
 そんなことを思ったのも、安倍元首相と旧統一教会会長との面談写真が報じられたから。裏金問題も過去のことにしたい総裁候補たちの話に慣らされ、教団の問題などすっかり忘れてしまいそうになっていた。モリ・カケや福島第一原発の事故に至っては、歴史上の出来事の領域ではないだろうか。
 そんなとき、過去にしっかり向き合っている人の展覧会をみた。
ポール・マッカートニー写真展 Paul McCartney Photographs 1963–64 Eyes of the Storm <オフィシャルサイト>
 ポールを撮った写真ではなく、ポールが撮った写真の展覧会だ。ごく身近な被写体ばかりだが、写っているのが、ビートルズだったり、熱狂的なファンたちや警備するスタッフたちだったりするから、おもしろい。みんなプロの写真家には見せないような、というより、ポールにしか見せないような表情をしている。
 約60年前、ビートルズの人気絶頂期。当り前だが、白黒のフィルム写真だ。途中からカラーに変わる。オートフォーカスではなく、自分でピントを合わせるので、スマホの写真とはひと味違う。音声ガイドも務めるポールの考えは、こんな感じ。
〈大学時代の自分の写真を見て、「なんてこった。自分はルックスが悪いと思ってたけど、そんなことなかったな。かっこいいじゃん」って思うだろう。僕はそう思うことは全く悪いことだとは思わない。〉
 こちらの方は、とても素敵な歴史上の出来事。展覧会の会場は、東京シティビュー。六本木ヒルズの天辺で、過去に向き合うのも悪くない。みなさんにおすすめしたいところだが、期間が今日まで……。
 お近くの方は、ぜひ!ぜひ!ぜひ!

 

<あっちこっちで多事争論>
老馬道を知る
  遠北 剛 (広島市 スローライフの会会員)
 残暑厳しいが秋の気配である。草や木に露の宿る季節、敬老の月でもある。従来の「老人の日」を改めて15日を国民の祝日と制定されるも、いつの日か第3月曜日と3連休となり、3日に渡りお年寄りを敬い、長寿を祝う行事は疲れる。
 現在卒寿、高齢化社会に生きる一人としては複雑な気になる。気分は青年であり、あるときはまだ壮年を自負している。しかし世間では超高齢者あつかいである。「老人」辞典の定義では「すでに若さを失った人、逞しさはなくなったが、思慮、経験に富む点で社会的に重んじられる者とされる」とある。これだっ、と思わず膝を打つ。若者に疎んじられ、疎外される風潮であるのも時代の流れ。もう若いものに任せば良いんだ、いや、それで良いのか。年寄りには若者に負けない知恵がある。
 冒頭の言葉、「若い駄馬よりも老馬の知恵」。老人の愚痴、叱り言、戯言を吐きながらも、若い世代と共生する羅針盤役でありたい。

 

SUP初体験で海辺暮らしの夢が広がる (上)
  西川展子 (和歌山県海南市 「げんき大崎」理事)

 昨年、大崎地区にUターンで移住した方が、シーカヤックとSUPのレンタル&体験教室を起業されました。SUPはStand Up Paddleboardの略。ボードの上に乗り、パドルを使って漕ぐスポーツです。その教室がきっかけで、休日の大崎湾では、カヤックやSUPを楽しむお客様の姿がよく見かけられるようになりました。
 穏やかな海上を気持ちよさそうに進む姿を見ていると、俄然、自分も体験したくなり、この夏、初めて息子と2人でSUPにチャレンジしました。
 バランスを崩して海に落ちたときのリカバリー方法など、簡単な説明を受けた後、いよいよ浜から出発! ボードに乗ると、結構安定感はあり、パドルで漕ぐとすーっと進み出しました。始めは立ち上がるのが怖くて、しばらくは座ったまま。漕いでも自分の思う方向にはなかなか進めず、沖へ出られませんでした。それでも30分程で慣れて、浜から400m程離れた弁天島や向かいの磯など、自分で目標を決めて、立ち漕ぎで行ったり来たり、自由に進めるようになりました。
 昔、舟に乗せてもらった時にしか体験できなかった、海上の風、海から見る大崎の景色を、再び自分の力だけで進むSUPで感じることができると分かったことが大きな感動でした。(つづく)

『南海トラフ地震』が来る! (上)
  佐藤義孝(長野県御代田町にて、スローライフの会会員)

 各党の次のリーダーを選ぶ選挙がかまびすしいが、防災省設置を公約の柱にしている候補はI氏一人のようだ。わが国は、今年も地震、台風に集中豪雨、猛暑と矢継ぎ早に災害に襲われ、対応に忙しい国であるのに。
 そんな中、8月8日には、日向灘を震源とするM7.1の地震が発生。直接的には大きな被害はなかったが、すわ、【南海トラフ地震】襲来か!となった。
 と言うのは、政府の方針を受けて気象庁が2019年に策定した「南海トラフ地震臨時情報」(南海トラフ地震の想定震源域でM6.8以上の地震が発生した場合に注意報、警報を出す)が 初めて発表された事が発端となって、日本国中が大騒ぎとなったのである。
 そもそもこの「臨時情報」、現在の科学的知見では「地震の予知は不可能」とする一方で、作られた一種の「予知情報」と言えよう。もとはといえば東日本大震災の2日前に三陸沖を震源とするM7.3の地震(前震)が発生したことを根拠としているようだ。
 しかし、大地震の前のいわゆる「前震」が大震災に連動する確率は、臨時情報を100回発出しても、98回は空振りになってしまう計算(注1)。最初は緊張感を持つとしても、そのうちに聞き流してしまうことになりはしないだろうか。
このような「予知情報」には、却って危険を感じるのだが、如何なものであろうか。
(注1) 中央防災会議の2017年9月の報告書によると、1900年以降全世界で発生したM7.0以上の地震は1368回、その1週間以内にその近辺でそれ以上の地震が発生したのが24回。100回あたり、1.75回が根拠。

 

「240年」と「150年」(下)
  古川 伝(福島県郡山市 スローライフの会会員)
 13年前の東京電力福島第一原発事故でばらまかれた放射性物質は、風向きや地形、原発からの距離によって濃淡はあるものの、広範囲に及びました。阿武隈山系にあり、原発から約20キロの福島県田村市都路地区も例外ではありません。
 「あぶくま山の暮らし研究所」は、都路地区をはじめ、隣接する自治体などの林業関係者や会社員、自治体職員、教育関係者らが4年前、任意団体として立ち上げ、昨年、NPO法人となりました。ばらまかれた放射性物質のひとつ、セシウム137が約3%まで減る150年後をめざして、息長く里山の再生を図っていくことを目標にしています。
 セシウム137の半減期は約30年で、ほぼゼロに近づくには150年かかるというわけです。また、これまでの開発優先の地域づくりからの脱却もめざしています。
 広葉樹林が広がるこの地域は、かつて良質の薪炭の産地として都市部の暮らしを支えました。それが常磐炭鉱の石炭に取って代わられ、水力や火力を経て原発へとつながっていきます。メンバーたちは、一般の参加者も募って勉強会を開き(下の写真)、そうした歴史や山林の持つ役割を学んだり、地区内にある耕作放棄地にせっせと植樹を続けたりしています。薪炭業が細った後、有数のシイタケ原木産地となったものの、原発事故が影を落としたことを描いたドキュメンタリーの上映会も開きました。
 自分たちの目の黒いうちには確認できなくとも、子や孫よりも先の時代に向かって目標を定め、一歩ずつ近づけていこうとする姿勢。それは、スケールの違いがあるとはいえ、原発を巡って問題の先送りを続ける国の姿勢の対極にある気がしてなりません。

令和の米騒動に思うこと
  村井康人 (新潟市 REBIRTH食育研究所)
 令和の米騒動がメディアを賑わせました。平成の米騒動と比較されましたが、今回はコメの不作が直接の要因ではありませんでした。
 なぜ、コメ不足が起きたのか。先月、朝のワイドショーに出演した米の流通の専門家、伊藤亮司先生(新潟大学農学部助教)に話を伺いました。番組では、昨年の猛暑による米の不作、インバウンドの増加、政府の対応などが強調されていましたが、興味深いことに、大手の外食産業では米不足が起きていません。
 これは、農家が収穫後すぐに大部分を農協や卸業者に出荷し、業者が数年先までの予約契約を結んでいるためだそうです。一方、短期契約の業者は昨年の米在庫に余裕がなく、今回のコメ不足に対応できませんでした。
 大手企業にとって長期契約は、安価で農家から米を買い取れるため、今回のような米不足で価格が高騰すると利益が増加します。一方、農家は契約に縛られているため、安価での販売を余儀なくされます。その結果、肥料などの資材費の高騰が続く中、農家の稲作時給は、最低賃金985円を下回る320円という厳しい状況です。市場の米の価格は昨年の倍近くに高騰し、困窮世帯にとって頼みの綱とも言えるフードバンクも、お米の支援が追いつかない状況です。食生活を支える農業、そして未来の子どもたちに私たちは何ができるのか。考えさせられる機会となりました。

 

私の好きな佐賀の焼き物 (下)
  坂田啓子 (佐賀市 スローライフの会会員)
 私の好きな焼き物、今回は唐津焼です。唐津焼にもたくさんの窯元がありますが、その中の一つ健太郎窯について。
 健太郎窯の健太郎さんは、まだ40代の若い方です。なんと、「土を掘る」ところから創作を始められるそうなんです。山を歩いて原料を採り、粘土と釉薬からご自分で作り出すと聞いてびっくりです。
 土の特性により精製方法も焼成温度も違い、とても手間がかかるそうです。「日常に溶け込む素直な器」であることを大切にされているということで、まさにそう感じる素敵な小皿を私は3枚選びました。和菓子でのティータイムが、とてもいい時間になります。
 健太郎窯は唐津で有名な鏡山の中腹で、唐津の海や虹の松原を望むことができる素敵な場所にあります。ちょっと独特な陶芸体験もされているようで、いよいよ涼しくなってきた佐賀への焼物巡りのひとつにおススメです。

幻の枝豆、丹波篠山黒枝豆解禁へ
  竹見聖司 (兵庫県丹波篠山市 たけみ農園)
 人気漫画「美味しんぼ」でも取り上げられ、関西圏はもとより首都圏でも人気の丹波篠山黒枝豆。
 いよいよ10月5日解禁予定です。
 スローライフの皆さまにはもうお馴染みですが、お節料理の定番「黒豆煮」の最上級種「丹波黒」を10月の2~3週間限定で枝豆として食する黒枝豆。地元丹波篠山で秋まつりの酒の肴としてひっそり食べられていた知る人ぞ知る美味が口コミで拡がりました。
 市役所の仕事で普及販売に関わるなかで、50歳を過ぎた頃から「たけみ農園」として、私自身も早朝や週末の時間を使って育ててます。今年も猛暑で生育が心配されましたが、水や肥料の管理に努め、大きく育ってくれました。
 是非ともご賞味ください。
 枝豆は少しずつ熟していく過程で、10月上旬、中旬、下旬とじんわり味を変えていきます。フレッシュな味から濃厚な味まで、発送時期をご指定いただければ収穫時期の対応も可能です。下記のショップ、または直接お申し込みください。
ショップはこちら⇒https://takeminouen.base.shop/

E-mail:takechan661227@yahoo.co.jp

 

梼原のサロンに参加して

  山下 茂 (東京都、スローライフの会会員)
 先日の梼原(ゆすはら)のサロン、今夏+秋の残酷暑続きでボケかかったアタマに心地よい刺激を頂き、有難うございました。小生、梼原は、十数年前に若手地方公務員のグループを引率して訪問したことがあり、「雲の上」での宿泊もしましたので、その後も現町長はじめ皆さんが頑張っておられることを拝見し、なつかしくあれこれ思い出しつつ、プレゼンや意見交換など楽しみながら拝聴しました。
 サロンのPC画面で梼原町長と北海道池田町長が横に並んでおられるのを眺め、梼原のジビエを十勝ワインと一緒にスローに楽しめたら、さぞかし美味だろうな・・・、ワインに添えるミネラル水は日本一の清流・四万十川の源流域の水とし、山間部産のジビエに十勝の赤ワイン、四万十川の水産資源には白ワイン、そして果物と乳製品の食後デザートにブランデー・・・。
 それと、梼原の水が四万十川の源流だということを来訪者に印象づけ、その価値を十分に体験し認識してもらうような仕掛けをいろいろ考えれば・・・、などとも思いました。
 今度の現地イベントに参加される皆さんが、明るいお天道様とさわやかなそよ風にも包まれつつ、心身共に寿命が延びるような経験と談議を楽しまれることをお祈りします。ご盛会を!

 

『スローライフ曼荼羅』
「わかてい」

  野口智子 (ゆとり研究所)
 11月にフォーラムを開催する高知県梼原町には、「若者定住対策審議会」という会があります。単なる若者グループというより、町が委員を委嘱し、町長からの諮問事項に対して答申するという少々固めの集まり。略して「わかてい」と呼ばれている。40歳以下の皆さんが、若者定住のために何を考えているのか? お会いしてみました。

https://noguchi-tomoko.com/post-10524/

 

つべ小部屋

「知事クイズ」
  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 兵庫県知事の醜態を見ていたら、かつて自分がつくった「知事クイズ」を思い出した。取材していて気づき、へーっと思った話である。
【問】初当選の順番に並べると、高知の橋本大二郎、宮城の浅野史郎、岩手の増田寛也、三重の北川正恭、長野の田中康夫の各氏。この5人の知事の共通点は何でしょう。
【ヒント】分権改革で「改革派知事」と呼ばれた理由にもなっています。
 答えは後回しにして兵庫県の話に戻すと、3年前の知事選には知人が立候補していた。知人とはスローライフ・フォーラムに3度、兵庫県知事として登壇いただいた井戸敏三さんの下で副知事だった金澤和夫さん。井戸さんと同じ旧自治省(現総務省)の官僚で、地方分権改革の取材でお付き合いがあった。腰が低く実直で、どちらかと言えば地味めな方だった。
 2010年から副知事で、17年に井戸後継候補かと思っていたら、井戸さんが続投したため、21年まで待って満を持しての登板だった。だが、かなり派手めの斎藤元彦氏に敗れ去った。
 兵庫の知事は1962年からずっと内務省、自治省系。同じ系統の金澤氏への反発もあったのだろう。実は斎藤氏も総務省なのだが、若くて日本維新の会に担がれた点がマンネリ打破の印象を与えたか。
 さて、冒頭のクイズ。【答え】は、5人とも前任知事の副知事だった相手候補を破って初当選した、である。旧態依然の地方政治を根っこから刷新する期待を担っての当選だった。斎藤氏も前任の副知事を撃破したのだから、新たな県政をめざし、前例打破に躍起だっただろう。だが、5人の改革派知事のように国に率直にモノ申すのではなく、部下に厳しくモノ申す人であったらしい。維新らしいといえば、それまでだが、荒涼とした自治の現状が悲しい。

 

<編集室便り>
▽「スローライフ・フォーラムinゆすはら」へご参加を

・日時:11月9日(土)10日(日)

・場所:高知県梼原町
・会場:シンポジウム会場は「ゆすはら座」(昔の芝居小屋)
・主催:「スローライフ・フォーラムinゆすはら」実行委員会
・シンポジウム:<パネリスト>濵田省司(高知県知事)、吉田尚人(梼原町長)、中村桂子(JT生命誌研究館名誉館長、スローライフの会共同代表)、神野直彦(東京大学名誉教授、スローライフの会顧問)、増田寛也(日本郵政社長、スローライフの会共同代表)<進行>野口智子(ゆとり研究所、スローライフの会共同代表)
・分科会:<進行・アドバザー>川竹大輔(高知大学理事特別補佐)、坪井ゆづる(地方自治総合研究所客員研究員、「スローライフ瓦版」編集長)

・申込:10月10日厳守 スローライフの会まで メール  slowlifej@nifty.com
・詳しくはこちらから
フォーラムチラシ⇒https://www.slowlife-japan.jp/2024/09/12/%ef%bd%93-318/

行程詳細 ⇒https://www.slowlife-japan.jp/2024/07/02/%ef%bd%93-309/
※飛行機利用の方は9日11時高知空港に、JR利用の方は9日11時30分高知駅に。チャーターバスがピックアップします。

 

▽次回の瓦版投稿締切は

月2回配信の「スローライフ瓦版」、次回は10月3日(木)締め切りで8日(火)に配信。その次は10月17日(木)締め切りで22日(火)配信です。少人数で編集作業をしていますので、余裕をもって投稿いただけますとありがたいです。お待ちしております。

 

(PR)クオリティソフトから・・・
【ISアカデミー】10月26日開催。楽しく美味しくワクワク「塩炊き体験ワークショップ」開催します。浜から汲んだ海水で自分だけの塩を作って、幻のお米の新米を味わいます  https://innovationsprings.hp.peraichi.com/soltwork

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