さて、「暑さ寒さも彼岸まで」でしょうか。なにしろ「100年に1度」とか「かつて経験したことのない」という気象が毎年のように続いていますから。それでも春の訪れには、どこか晴れやかな気分になりませんか。みなさんの周りに春が来ていたら、それを写真や文章で切り取って、ぜひ投稿してくだい。「春眠暁を覚えず」の例もお待ちしています。(写真は横浜ベイブリッジをくぐりゆく大型客船)
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『緑と絆の木陰』
大阪・関西万博の春、東京の片隅で
川島英樹 (せたがや文化財団)
毎日利用している、わが家から一番近い駅は、新宿から私鉄で15分くらい。各駅停車しか止まらない、住宅街の小さな駅である。最近そんな駅のホームで、大きな荷物を抱え、スーツケースを引っ張っている、外国人観光客と思しき人たちをよく見かけるようになった。駅周辺に、もちろん観光名所やホテルなどない。新宿や渋谷などの繁華街では、どこの国かと思うほど、インバウンド客が多いこともしばしば。東京のインターナショナル化には驚かなくなったが、さえないわが町まで訪ねて来ていただけるとは、恐れ入りである。
どうやら、民泊を利用している人たちのようだ。都心が満室だからか、経済的な宿を求めてか、はるばる来ているらしい。彼らをみていて興味深いのは、服装がまちまちなこと。三寒四温が激しいこの頃、Tシャツ姿の人とダウンを着込んだ人を同時に見たりすることもある。また、手にしているレジ袋から、カップ麺やスナック菓子などがのぞいていたりする。いわゆる富裕層には見えず、少し不安そうにも見えるので、なにやら親近感のようなものが湧いてくる。なにかできる手助けでもあればと思うが、彼らもスマホでの情報収集に忙しそうで、目が合うこともないのが、ちょっと残念だ。
だが、ふと思う。自分もどこかの街角で、あるいは家庭や職場で、同じように手元を見続けているのではないだろうか……。掌の中の小さな箱は、大きな可能性を持っているが、小さな可能性を失っているかもしれない。
<あっちこっちで多事争論>
佐賀でウォーキング
小牟田弘子 (長崎県雲仙市 スローライフの会会員)
3月9日に友人とJR九州ウォーキングに参加しました。場所は佐賀市。佐賀駅から出発し、約8キロを歩くコースでした。当日は城下町や神社、博物館前などでイベントが開催されており、多くの人で賑わっていました。
友人とゆっくり歩きながら、途中、イベントに立ち寄りコーヒーを飲んで一息ついたり、有名な「肉まんじゅう」を食べるために1時間近く並んだり、ハンドメイド作家の方々が集まるイベントや美味しそうなパン屋さんに寄ったり……。そうこうしているうちに時間が思ったよりも経ってしまい、終了時刻ギリギリでゴール地点の佐賀駅に辿り着きました。
その日の歩数は19,488歩。普段、車での移動が多い私にとっては充分な運動になりました。そして、今まで訪れる機会のなかった佐賀市ですが、レトロな雰囲気が漂う城下町やおしゃれなカフェ・お店など、色んな発見ができたのも良かったです。
次は5月に別のまちのウォーキングイベントに参加する予定です。また新しい発見ができるのではないか、と楽しみです。

益軒先生『楽訓』式スローライフを楽しむ (上)
山下茂 (東京都 スローライフの会会員)
今日は72候でなら「桜始開」(サクラハジメテヒラク)です。昨今はサクラの開花や盛りが昔より早く、スローな暮らしを目指す我が身には、時の移ろいが早過ぎると感じます。
昨夏(令和6年6月11日)の瓦版でお話ししたように、定年退職後の小生は、旧和暦に、江戸期の本居宣長先生の提唱された大らかな“眞暦”(『本居宣長全集・第8巻』に「眞暦考」あり)を組み合わせて生活指針としています。ただ、この5年、コロナ禍の下では、自然豊かな地域に旅することまでも躊躇され、春夏秋冬、折々の“天(ソラ)のけしき”と“天地(アメツチ)の間の物のうへ”を感得するには、毎日、自宅の近隣地域を散歩するばかりです。
ありふれた山川草木など手近な風物に接するだけで日常生活の質を高めるのに、これも江戸期の貝原益軒先生が何と81歳で公刊(西洋暦1710年)した『楽訓』(益軒會編纂『益軒全集』巻之參に所収。中公バックス14『貝原益軒』に現代語訳あり)を指針としています。先生の『養生訓』は今も健康に有益で多くの読者がいますが、『楽訓』は、摘み食いや斜め読みでも「楽」を得るので、スローライフを目指すなら、若い方々にもお勧めです。(つづく)
**『眞暦考』からの引用を“・・・”としています。
春になれば、楽しい手仕事待ってます
前原民子 (岐阜県高山市、東京都杉並区 スローライフの会会員)
毎年3月になると、生活クラブ生協の「水俣きばるの甘夏」を頼みます。50年ほど前、水俣病で海に出られなくなった漁師さんたちが甘夏作りを始めたことが水俣きばる(精を出す、よく働くという意の方言)の始まり。「被害者が加害者にならない」という想いから、低農薬、有機肥料で、防腐剤、ワックスを使わない作り方で若者たちと共に取り組んでこられました。水俣の農家さんへの応援の気持ちと、安全なだけでなく気持ちのいい甘酸っぱさが美味しくて、毎年何キロも頼んでしまうのです。
ことしは、近所の友人にレシピを教えてもらい、念願のマーマレード作りに挑戦しました🍊。皮の苦味を減らすため中綿をスプーンで削り取る(苦味がないと甘いだけで美味しくないので塩梅よく)のと皮を細かく切り刻むのが面倒ですが、あとは、コンロの火と煮詰める時間が琥珀色の美味しいマーマレードにしてくれます。この季節、花粉症は辛いけど、楽しい手仕事になりそうです。
(注)もちろん水俣の甘夏がなくても、ご近所の、お庭に夏みかんの木があるお家があれば、ジャムを作りたいので5個ぐらい分けてもらえませんかと声をかけてみてください。正真正銘無農薬のマーマレードが出来上がり! あとでひと瓶お届けすれば喜ばれること請け合いです。

食事療法半年で、お肌つるつるに
八巻史恵 (静岡県東伊豆町、スローライフの会会員)
きっかけは再燃した持病でした。食事療法を様々試みましたが、高額医療となる新薬の選択を迫られる事態に至り、思い切って4種類の食品をとらない決意をしました。
植物性の油、小麦、乳製品、甘い物をやめました。食事の理想は戦前の日本食です。玄米または白米。味噌汁、海苔、海藻類、豆、青魚、ぬか漬けなど。もちろん肉も食べます。
始めてから1週間で炎症値が劇的に下がり、減薬になりました。半年経過して実感しているのは、毎朝スッキリと目覚め、お肌もつるつる。化粧品はBBクリームを薄くつけるのと色付きリップだけ。食品の買い物はシンプルに生鮮食品と昔ながらの乾物です。砂糖は使わず必要に応じて本みりんを少量使います。出汁と醤油、味噌で味付けるだけで十分です。味覚も鋭敏になったのか素材の味が美味しく感じます。
お伊勢参りの人の波 別宮で静謐な空間
太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)
伊勢商人の経営思想を学ぼうと研究仲間と松阪を訪れる。松阪まで行くなら、やはり伊勢神宮参りは欠かせない。3月の日曜日昼過ぎ、1970年の万博の前年にできた五十鈴川駅から伊勢神宮に近づくと駐車場は満杯、駐車場に入る車で交通渋滞だ。内宮の前のおはらい町通りはまともに歩くことができないほどの混雑ぶり(写真)。食べ物屋、土産物店などが立ち並ぶが、ゆっくり見るどころではない。若者同士、カップル、子供連れの家族でにぎやかだ。
内宮に入り、祈祷所のところでは朱印状帳に朱印してもらう長い列。若い女性が多い。
江戸時代、物見遊山の長旅をしてお伊勢参りした日本人たちの姿は21世紀のいまも続く。伊勢音頭にいう「お伊勢行きたや伊勢路が見たいせめて一生に一度でも」とあまり難しい理屈がないのが民間信仰のパワーなのだろう。資料によれば17世紀から19世紀にかけて60年周期で「おかげ参り」と称して伊勢へ一斉に押し掛け、1830年には半年で500万人の参拝客との記録もあるという(2024年は年間約754万人)。
仲間との集合時間より早く着いたので、内宮の別宮である月読宮(つきよみのみや、写真下)に赴く。人がいない静謐な空間だ。
内宮近くのおかげ町通り
内宮の別宮 月読宮
何も思いつかない
松井悠夏 (東京都 スローライフの会会員)
何か書かなければならないのに何も思いつかない。今がそんな状況だ。適当に書けばいいのに真面目な私はそれもできない。高校生の頃、国語の先生に「文章が思いつかない時はまず手を動かせ。それでもあかんかったら外に出て体を動かして早く寝て次の日に書け」と言われたことがある。
今なら分かるが、文章が書けない時は大体アウトプットかインプットが不足している。手を動かしてアウトプットを無理にでもする。外に出れば文章のヒントが見つかってインプットができる。早く寝て次の日に書けばインプットされた情報を冷静に取捨選択できる。わかりやすく、理にかなった教えを授けてくれたのだと思う。
教え通り外に出てみると3月なのに雪が降っている。枕草子の「香炉峰の雪は…」なんて格調高くていいネタかもしれない。一晩寝かせてみるかと寝たところ、天気予報が瓦版の配信される頃には気温が20度超えると告げている。暑くて雪の記事なんか読めないだろうと、このネタで書くのを止める。
仕方がないので無理にでも手を動かした結果、「何も思いつかない」ことがテーマになってしまった。さて、ここで気づいた。数百字の原稿に悩んでいたはずなのに、もうそれなりの分量になっている。つまり何も思いつかないと思っていても、書き進めるうちに何かしらの形になっているのだ。先生の教え通り「まず手を動かす」ことって大事なのだ。
『スローライフ曼荼羅』
煙の匂い
野口智子 (ゆとり研究所、スローライフの会共同代表)
3月なのにまだ寒い、寒いうちに火を焚く話を。いま通っている京都府綾部市、会合を開くと、参加者からふわっと香ばしい匂いがします。焚き火、煙の匂いです。オール電化暮らしではありえないいい香りです。この人の家には囲炉裏がある、薪ストーブがあるんだ、と羨ましくなります。自分をスモークしている人は、なんだか味わい深い人に思えます。先日、よそのお家で、私も火を焚かせていただきました。煙の匂いするかしら。https://noguchi-tomoko.com/post-10750/
■■つべ小部屋■■
続・「ふるさと納税」廃止論
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
726号(1月14日付)に続き、「ふるさと納税」廃止論です。筆者が在籍する(公財)地方自治総合研究所で席が隣の研究員から、もう一つの根拠を教えてもらったからです。それは「地方財政法の第2条に抵触している」という事実です。
第2条 地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない。
2 国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない。
たとえば、2023年度に宮崎牛を目玉に全国最多の「寄付額」約194億円を集めた宮崎県都城市は、それほどの巨額を他の自治体から引きはがしており、明らかに「他の地方公共団体の財政に累を及ぼ」しているという指摘です。
また、国が制度を普及させるためにワンストップで活用できるようにしたのは、2項目に反するとの見立てです。
「納税」とは名ばかりの「官製通販」の売上高上位には北海道の紋別市(192億円)、白糠町(168億円)、別海町(139億円)など、地元産品が人気の自治体が並びます。これを過疎地の健闘と称える人もいるでしょう。東京都が海外留学費用に所得制限なしで最大315万円を補助することに象徴される地方税収の格差、自治体の貧富の差が目に余るだけに、過疎地が地方税制の歪みに対抗して頑張っていると考える向きもあるでしょう。
ただ、地方税収の偏在は税制を抜本的に改正してただすのが筋です。自治体に売上高を競わせて穴埋めするような手法は、前回も書いた「さもしい国」への道そのものです。先日、筆者が住む東京都杉並区の区議会議員は「23年度に区から流出した税額は53億円。小学校1校ぶんの改築費に相当する」「中には1億円をふるさと納税に費やした人もいる」と話していました。こんな事実に目をつむり、「官製通販」を楽しむ気にはとうていなれないのです。
3月13日付の東京新聞で、練馬区長が「ふるさと納税は個人的には憲法違反だと思う」と語っていました。「官製通販」への批判の波が広がり、高くなるのを期待しながら読みました。
<編集室便り>
▽4月の「さんか・さろん」は、あの「雲の上の図書館」から。
昨年、スローライフ・フォーラムを開催した高知県梼原町、ここで印象深かったのが隈研吾さん設計の「ゆすはら 雲の上の図書館」でした。
建物だけでなく集められた本が素晴らしい、子供たちの居場所になっている使われ方が素晴らしい。どうすればこんな図書館ができ上がるのでしょう?
準備段階からかかわられた司書の木稲(このみ)沙央里さんにお話をうかがいます。
・4月15日(火)19時から。お申込はメールで事務局まで。
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▽農楽里ファームの遠藤夏緒さんのお話、楽しかったです。
3月18日の「さんか・さろん」は、同じ時間にMLBの試合もありましたが、熱心に皆さまがご参加くださいました。ホームページとYouTubeへの報告は、今しばらくお待ちください。
▽会費の季節です。
スローライフの会会員の皆様、年度末で新年度の会費をお待ちします。今まで会員でなかった方も4月からはぜひお仲間に。詳しくはこちらから。
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