長崎・雲仙の空は、どこまでも青く晴れわたり、まるで、スローライフ・フォーラム㏌雲仙(雲仙市の市政施行20周年記念)を心から歓迎し、祝福してくれているかのようでした。10月12日、会場は市民の熱気に包まれつつ、笑顔も広がる楽しい集会になりました。次号はフォーラムの感想特集です。*写真は幸せの黄色い列車王国「島原鉄道」の大三東(おおみさき)駅。海に一番近い駅のひとつです。雲仙市の隣の島原市にあります。
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『緑と絆の木陰』
バンコクでの家探し
室﨑千重 (奈良女子大学准教授)
10月から1年間、夫氏がバンコクに住むことになった。私はあんまり関係はないのだけれど、面白そうなので9月に1週間、バンコクでの家探しに同行してきた。
さすがバンコク、日本人向けの不動産屋さんもある。しかし、彼らのターゲットは企業のバンコク駐在員で、安物件を求める私たちには、すこぶる反応が鈍い。このままではまずい、家が見つからない。が、インターネットには、比較的安いコンドミニアムも出ている。で、何とか帰国前日に3物件の内見に漕ぎつけた。
最後の物件が間取りも、静かな立地も、加えて最寄りの公共交通が船! という点も気に入った。
明朝が帰国なので、契約書などは間に合わないので、1カ月分の家賃を現金で渡すようにと言われる。
少し動揺する。でも、日本での手付金みたいなものかと思い、歩いて両替所へ。が、渡す段階になって、「10万円近い現金をこの人に何の証拠もなく渡して大丈夫? これ、詐欺では?」と巨大な不安が渦巻きはじめる。
だって、領収書も、あしたLINEで送るねと言うのだもの。本当? 本当に?
結局、疑問を抱きつつも、10万円相当のタイバーツを手渡す・・・・。
結果は・・・・。
騙されておらず、無事に夫氏はその家に住みはじめている。思えば、「信じられる根拠がない」など失礼なことをたくさん言ってしまった。申し訳ない。
今回、その国の常識がわからないと、こんなにも途方に暮れることを痛感した。旅行と生活で見える景色は大きく違う。この体験を経て、日本で暮らす留学生への尊敬の念が湧いてきた。すごいな、みんな。こんな知らない土地で暮らしているなんて!
<あっちこっちで多事争論>
早起きは三文以上の徳
岩崎久美子 (東京都 スローライフの会会員)
秋風吹く自然に身を置きたく、日程をやりくりし北海道に出かけました。
肌がつるつるになるかけ流しの温泉宿があると聞き、縁もゆかりもない留辺蘂(るべしべ)町に逗留、宿に貼られていたポスターに目をとめ「丘と畑の早朝ウォーク」に申し込みました。出発は早朝5時30分。
町は大雪山の麓の町で、白花豆(しろはなまめ)の日本一の産地です。「早朝ウォーク」では、ガイドの女性が刈り取った枝の中から白花豆を取り出し手渡してくれ、白花豆と邂逅(かいこう)。ポットに持参された白花豆のおしるこを、遠くの山々を前にして賞味しました。町には白花豆をプロデュースする「白花豆くらぶ」という団体もあり、白花豆は町を象徴するもののようです。
留辺蘂町は玉ねぎの産地でもあり、近くの道の駅ではセメント袋ぐらいの大きさの赤い網に入った玉ねぎが一袋500円程度で売られていました。買いたいけれど量が……とガイドさんにお話ししましたら、走って自宅に行かれ、数個の玉ねぎや白花豆のレトルトパックをお土産に持たせてくださいました。参加費では足がでてしまうご厚意でした。
ガイドの梅原さん、温かいお心遣い、ありがとうございました。留辺蘂町を身近に感じる良い旅になりました。

ゆすはら再訪で、「おたがいさま」を実感
川竹大輔 (高知大学次世代地域創造センター)
昨年11月の「スローライフ・フォーラムinゆすはら」で訪ねた、高知県梼原町の集落活動センター「おちめん」を、前回参加した高知大学生3名と再訪しました。
地域の女性たちで集まるチームシルク(瀬戸口登貴恵代表)が越知面地区で戸別に訪問する月1度の定期巡回を、学生たちと拝見するためです。
集落活動センターを起点に、3つのグループで巡回します。地域の高齢者宅を訪ね、持参した市価より安めのパンや豚丼を「こちらどうですか」とおすすめしながら、さりげなく近況をお聞きします。無料配布では受け取る側に「負い目」が生まれるので、特産物を安く提供する、対等の関係を保つスタイルにこだわっています。
毎日、民家の倉庫に集まるという70代から90代の8名の方たちは、チームシルクの巡回が楽しみだと言います。大阪出身の男子学生がいて、話が弾みました。
徒歩で1時間ほどの小学校に通ったこと、畑仕事のあとの集まりが楽しみなこと、人口減少は仕方ないが会話があれば認知症予防になることなどを、笑いの絶えない雰囲気のなかで教わりました。
支援をする、される、という枠を超え、おたがいさまで楽しく活動する価値の大きさを実感する梼原再訪でした。これからは寒いので、活動は春まで冬眠になるそうです。

中村桂子さんのAI危険記事を読んで (下)
太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)
前号で示したように、AIに対する厳しい危機論がありますが、AI活用の大きな波が来ていることも事実です。今回は「生成AI時代に『議論をつくす』大事さ」を書きます。
小中学生がAIに接する機会が増えています。スマホ利用率は小学6年生で6割を超え、中学3年生になると92%になります(モバイル社会研究所、2024年11月調べ)。スマホで検索すればAIが勝手に回答を出す仕組みも日常になってきました。その回答は必ずしも正確かつ公平とは限りませんが。
文部科学省は「(初等中等教育では)生成 AI の利活用を一律に禁止したり義務付けたりするものではない」という方針です。
そうなると中村桂子さんのいう人間の存在意義を確保するにはどうすればいいのでしょうか。賢さ、そして想像力と創造力を育む方法を改めて考えてみる必要が出てきます。
興味深い大学の現場を紹介します。
「今後、大学教育を変える必要がある。議論することが最も大事」というのは中尾政之・元東大教授(生産技術)。授業で先生の言うことに対する反論も含め他の人と多くを議論することで創造力がつく、と主張。さらに「教科書に書いていないことを自らが問題設定する仮説生成力。そして、他者との共感だ」とも述べています。
3つのポイントは大学生に限らず、小学生から意識的にやっていくことが大事だと思います。生成AIに取り込まれないためにも。
(発言の引用は、日本記者クラブ会報を参考にしました)
或る先輩僧侶の話
笠原俊典 (滋賀県長浜市 持専寺住職)
ある先輩僧侶からこんな話を聞いた。仏教では、自分の年齢を「満」(年齢)でなく、「かぞえ」で確認する。生まれた時を1才と数える。そして、元旦を境に年を重ねていくのだという。湖北(滋賀県)にはこうした文化が息づいていた。
大阪から移住してきた彼も、これまでは年齢を満で数えていたので、こちらの先達がかぞえで言うことに大層驚いたそうだ。その先達が言うには、生まれた時を0から勘定すると、そこで一旦、「(いとなみが)切れるやないか」とのこと。
生まれた時が1才というのは、両親をはじめとする背景のある文化なのだ。昔は出産すると「子をもらう」といわれてきたのとも重なる。
現代人は当たり前のように”Happy birthday to you” と誕生を祝うが、年配者たちは元旦の挨拶などの際に、年を重ねたことを労(ねぎら)い励まし合った。特に地域の寺の門信徒は、個人的でなく、仏様の前で、共に年を重ねてきたのである。
かぞえで年を数えるというのは、自分だけの「いのち」でないことが見据えられているのだと思う。両親があって、そのまた両親があって…、誰が欠けても自分はこの世に存在しなかった、という思いである。
湖北には、後世に継いでいきたい文化がたくさん残っています。是非あなたの物語もお聞かせください。そして分かち合いましょう。よろしければご連絡ください。英語でも大丈夫です。(Email: timkasahara@yahoo.co.jp )
丹波篠山だより
竹見聖司 (兵庫県丹波篠山市 たけみ農園)
丹波篠山では、大阪・関西万博に合わせて丹波篠山国際博を開催しています。これは、特別な催しというよりは、暮らしのなかのお祭りや生活をありのままに知っていただくとともに、そこに暮らす私たち自身も地域の良さを再発見して美しい「日本の農村を未来につなげていこう」という壮大な取り組みです。
その一環で、9月にはユネスコ創造都市ネットワーク(クラフト&フォークアート)に加盟して10周年を記念した国際会議を開いたり、町屋を使って芸術家の個展を催したりしました。
そして、丹波篠山の秋といえば、なんといっても丹波黒枝豆。今が正に限られた短いシーズンで、大勢の観光客でにぎわっています。
「たけみ農園」でも、酷暑と少雨だった長~い夏を心配しましたが、短い秋を謳歌するように、例年以上に実りが多いです。この機会に是非、丹波篠山が誇る丹波黒枝豆を味わってみてください。
詳しくは⇒https://www.facebook.com/profile.php?id=100094576700339#

『スローライフ曼荼羅』
「おーちゃんの店」
野口智子(ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)
地方の商店街には、人口減でもなにくそと頑張っているお店があるものです。先日うかがった群馬県富岡市の「朝日屋」さんもそうでした。地元で「おーちゃん」と呼ばれている女性が切り盛りしています。仏壇屋さんで、鍵屋さんで、台所用品屋さんで、お祭り用品屋さんで、さらにはご家族のコレクションや手作り作品の展示まであるお店。ブラリとよれば、おーちゃんとずっとおしゃべりもできます。QRコードを読み込んでから、なんてことはない、私の居場所のような店でした。https://noguchi-tomoko.com/post-10923/
■■つべ小部屋■■
やったぜ、これぞ自民党
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
奈良県生まれの筆者としては、ふるさと初、しかも憲政史上初の女性の宰相が誕生しそうなことを喜ぶべきなのかもしれない、と自問する気にすらなれない現実に、目がくらくらする。所信表明演説を聞く前から悪しざまに言うのもいかがなものかとは思うけれど、よりによって彼女なのか、という気持ちはぬぐえない。自民党執行部の顔ぶれを見て、この思いはさらに強まっている。
公明党が背を向けたことで先行きは波乱含みだが、一つだけはっきりしていることがある。今回の総裁選は、これぞ自民党だという実態を浮かび上がらせている。
総裁選に参加できた自民党員は91万人余。昨年の衆院選の時より約14万人も減っている。最多だった1991年の546万人の6分の1ほどで、いまや全有権者数1億123万人余のわずか1%にも満たない。
これで「国民政党」を名乗るのだから恐れ入るが、とにかく5人の候補者が争ったなかで、彼女は党員票の4割以上を集めた。総裁選前日の10月3日に発表された自民党の昨年の党員獲得実績によれば、彼女は2位。茂木氏が4位、小泉、林、小林各氏はベスト10圏外だった。
小泉氏との決選投票では国会議員票はともに140票台。勝敗を分けたのは、彼女が36票で、小泉氏の11票を大きく上回った地方票だったのだから、彼女の党員獲得が勝利の原動力だったのは間違いない。
同時に、党員獲得数1位が4年連続で青山繁晴参院議員(比例代表)だったのを見れば、いま自民党に党費を払っている人々の政治的志向性がよく見える。ゴリゴリの右派的言動で知られる青山氏や彼女を推す人々が、現在の自民党の「岩盤支持層」なのだ。
改めて指摘する。全有権者の1%未満の「岩盤支持層」が、国の政治を大きく左右する位置にいることを。これは、ごく少数である日本会議や旧統一教会が自民党への発言力を保持していた政治構造の延長線上そのものだ、ということを。
*前回の小欄で触れた5人の日本記者クラブでの揮毫は、小林鷹之さん「有志竟成」、茂木敏充さん「知命立志」、林芳正さん「仁」、高市早苗さん「崇高雄渾」、小泉進次郎さん「異志統一」。茂木さん(「自我作古」)と小泉さん(「決着」)以外の3人は、昨年の総裁選の時と同じでした。
<編集室便り>
▽こんどの「さんか・さろん」はテーマが2つ
今度の内容は、10月11日・12日に催した長崎県雲仙市でのフォーラムの報告と、11月15日(土)・16日(日)に東京都練馬区で予定の「全国都市農業フェスティバル2025」のご紹介です。この催しに深く関わっておいでの斉藤 睦さん(地域総合研究所顧問、スローライフの会相談役)から内容を伺います。ご興味ある方々、いまからご予定ください。
・10月21日(火)19時から、Zoomで
・内容①雲仙フォーラムのご報告、事務局・参加者の皆様から
内容②「全国都市農業フェスティバル2025」について、斉藤睦さん
詳しくはこちらから https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/nogyo/toshinou_festival/festival2025.html
・参加費 スローライフの会会員1000円(年間参加費をお支払いの方はそれで結構です)、一般2000円
・申込 10月18日(土)までにメールで slowlifej@nifty.com
▽次回の「瓦版」は雲仙特集です。
雲仙のフォーラムにご参加の方々の投稿をお楽しみに。
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