瓦版2025.9.23第743号神野直彦さんほか、多数のコラム掲載。

 きょうは秋分の日、お彼岸の中日です。「暑さ寒さも彼岸まで」が通じなくなって久しいですが、今年はどうでしょう。「小さい秋見つけた」(サトウハチロー作詞)に「わずかなすきから 秋の風」という歌詞があるように、ふと秋を感じる瞬間が増えてゆくのでしょう。虫の音、紅葉、コスモス、ススキ……。いや何よりも実感できるのは、食欲でしょうか。*写真は静岡県・細野高原のススキ、八巻史恵さん写す

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『緑と絆の木陰』

未来を救うスローライフ

  神野直彦 (東京大学名誉教授 スローライフの会顧問)

 今年の酷暑は、このままでは人類が滅亡してしまうという異常気象の恐怖に、誰をもが脅えさせられたはずである。こうした恐怖に立ち竦み、地球環境問題の解決に絶望して諦めるのではなく、未来へ希望を見い出そうとすれば、スローライフへと舵を切ることである。

 人類の生存に都合のよい自然のリズムを、人間の生存を困難にするように、人間自身が狂わせ始めた契機は、工業社会へと足を踏み入れる産業革命にある。それまで大気に排出される二酸化炭素と、吸収される二酸化炭素のバランスを、自然が人間の生存に適するように調整してくれていたのに、産業革命によって、石炭にしろ石油にしろ、地下に眠る生物の亡骸にエネルギー源を求めて、祈りを捧げることもなく掘り出すことによって崩し始めたからである。

 しかも、産業革命は「囲い込み」によって、地域共同体や共有地を解体して、労働市場を創り出すことによって実現する。そのため「食」の歴史を研究している小野塚知二・東京大学名誉教授によると、「囲い込み」を徹底させたイギリスでは、地域の「食」を伝えていく「祭り」と「村」を解体させて、イギリス料理を消滅させてしまった。

 もちろん、それは自国の自然に依存しない「食」の誕生を意味する。既にイギリスの「食」は「機内食」化しているといわれる。「機内食」化とは火も刃物も使わずに、料理人さえも存在せずに料理をつくることである。それは「食」の自然制約からの解放の極致であるとともに、地域の自然と調和することのない「食のグローバル化」でもある。

 日本でも「食のグローバル化」が急速に進んでいる。日本食ブームだとはいえ、日本料理で自給できるのは、コンブやかつお節という出汁を除けば、水と塩だけだといわれている。材料だけではなく、祭りと村が解体されたことで、地域の自然と季節に彩られて、地域の人々が育ててきた食文化は姿を消してしまったのである。

 このように産業革命は、人間の生活に必要なエネルギーだけではなく、食料生産をも自然制約から解放する。しかし、エネルギーや「食」を自然制約から解放することは、人間にとって「両刃の剣」である。というのは、エネルギーと「食」を自然制約から解放すると、人間の生命をも持続不可能にしてしまうからである。

 ところが、イタリアから「食のグローバル化」に抵抗するスローフード運動が起こり、イタリアンが復興していく。スローフード運動は瞬くうちに世界に広がる。日本ではスローフードがスローライフへと進化する。地域の個性豊かな自然と調和するように築いてきた伝統的な生活様式を、新しい状況のもとで再創造する運動である。

 地球環境問題は「エネルギーのグローバル化」と「食のグローバル化」を両輪とする人間の生活様式のグローバル化によって生じている。私たちが未来への責任を果そうとすれば、人間の生活を自然制約のもとで、自然と調和する充実した生活様式を創り出していくスローライフしかない。

<あっちこっちで多事争論>

市長がご存じだなんて

  栗林ゆか (仙台市 フラワースタイリスト)

 「さんか・さろん」で雲仙市長の金澤秀三郎さまのお話と、皆さんとの質疑応答を拝聴でき、とても有意義な時間でした。私が初めて「さんか・さろん」に参加したのは、「雲仙人(くもせんにん)」の方のお話の回でした。北海道池田町の移住定住体験住宅で、ひとりで静かに「とても活発な活動をなさっているなぁ・・・」と驚いた記憶がございます。

 職業柄、今回はやはり「種とり農業」のお話がとても興味深かったです。ご質問させていただいたように、雲仙市はハイレベルな花の産地として有名です。何らかの形でこのことがもっと外部の方々へ発信できたら、雲仙の「粘土質の土壌」から生まれる素晴らしい奇跡の花々に関して、「もっと色々知りたい!」という花業界の関連人口が増えるのではないかしら?、と個人的に思った次第でした。

 雲仙市長がスカビオーサのことをお話してくださいましたね。比較的マニアックな花でもあるかと思いますので、それを市長がご存知だなんて!、と少々びっくりもいたしました。

昔は浸水しなかった地域でも、今は危険

  小松崎いずみ (埼玉県越谷市 スローライフの会会員)

 昨今、日本のどこかで「線状降水帯が発生」というニュースを耳にします。

 私が経営する工場は鉄骨の二階建てですので、いざという時には近隣の高齢者の方々にも声をかけ、避難できる場所として備えております。

 越谷市では「災害リスクの見える化」と言えるように、電柱に青と赤の線が描かれています。これはハザードマップに基づき、主要な河川が氾濫した際に水が到達すると予想される高さを示したものです。

 「この辺りは昔から浸水なんて無かったから大丈夫」と世間話で聞くこともありますが、地盤沈下によって状況は変わり、背丈を超える水位が想定される場所もあります。

 電柱を見上げながら、そんな世間話に花を咲かせている姿を見て、変わらないようでいて確かに変わってきている地域の姿を感じます。

 

散歩していたら

  小畠 祥 (高知大学4年 地域協働学部地域協働学科)

 高知県の集落に移住し生活しています。近頃は全く進んでいない卒業論文に焦りを感じながらも、休日はただYouTubeの動画を見てしまう事が多いです。休日を無駄にしてしまったと感じる時は、集落を散歩することにしています。

 狭い集落では皆が当然のごとく顔見知りなので、いつも誰かが声を掛けてくれます。

 前回は小学生の子どもが話しかけてくれ、一緒に虫取りをしました。たまたま家にあった昆虫図鑑を持ち出し、捕まえた蝶やトンボの名前を2人で探しました。蝶の気持ちになって住処を探したり、知らない虫にオリジナルの名前をつけたりと、小学生ならではの豊かな感受性に驚くことが多く、勉強になりました。

 ヤギを飼っている人からは、その習性や味の嗜好などをお聞きしました。草刈り要員なのに、あまりに可愛く、日頃から果物などを与えてしまうので雑草をなかなか食べてくれないという話が面白かったです。(写真・シャンティちゃん。小畠さん写す)

 ぶどうや炊き込みご飯をお裾分けしてもらったこともあります。移住してきた身でおこがましいかもしれませんが、親戚が増えたような気分です。来年の就職を機に集落からは離れますが、これからも草刈りなど集落の行事には顔を出して皆さんと関わっていきたいと思います。

中村桂子さんのAI危険記事を読んで (上)

  太田民夫 (神奈川県 スローライフの会会員)

 中村さんの「緑と絆の木陰」(8/12日号)への感想を2回に分けて書きます。

 1回目は「コンピューターの歴史の延長にある生成AI」です。

 AI(人工知能)はコンピューターです。コンピューターの歴史は「スピードとお金」を追求した歴史です。1970年代の集積回路の出現を受けて、自分の指先で情報を操れる可能性に興奮し、熱情をもった米国の若者がパーソナルコンピューターを開発しました。「コンピューターを使う人のため」のいわば消費者(使用者)の立場に立った初めての製品でした。それは情報の独占からの解放でもありました。

 1995年以降、インターネットの急速な拡大をとらえ、「こんなサービスがあったらいい」という消費者の欲求をさらに満たし、徹底したのが米国IT企業です。いまや彼らは日本のGDPをも凌駕しそうな時価総額を稼ぎ、いまも成長しています。便利さとスピードの追求の結果です。

 生成AIはその延長線上にあると思います。普通の人が使うAIの大衆化です。そしてこの生成AIがこれからの情報産業の覇権を巡る大きなキーワードとなっています。

 ただ、これまでの情報サービスと決定的に違うのは「人間の思考様式を生成AIが直接変えるかもしれない」(山本龍彦・慶應義塾大学教授)ことです。「AIの父」といわれ2024年のノーベル物理学賞を受賞したカナダ、トロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授は「AIが私たちよりも賢くなると、支配権を握るのではないか」と危機感を述べています。

(発言の引用は、日本経済新聞を参考にしました)

中村さんの本を読んで

   南條青志 (和歌山県紀の川市 スローライフの会会員)

 野球部の息子の世話をする合間に、近くにある県立図書館に行くことが増えて、先日から中村桂子さんの本を図書館で借りて読んでいます。

 生命が誕生してから38億年、生命をつないできてくれて、自分がいたり、猫がいたり、山の木々があったり。中村さんは、ヒトもサルも細菌も38億年つないできた生命としてはみんな平等とおっしゃっています。

 まして、人間同士で優劣つけるなんてバカバカしい話ですよね。そう考えると、無理せず自然に生きられるだけで幸せだと思いました。

 雲仙のフォーラムに行って中村桂子さんとお話ししたかったのですが、今回は無理。今度是非、大阪・高槻市のJT生命誌研究館に行ってみようと思います。

巳年の弁天様縁起 (下)

  八巻史恵 (静岡県東伊豆町、スローライフの会会員)

 熱海の来宮(きのみや)神社と東伊豆町稲取のご縁について少し切ないお話があります。

 稲取温泉観光協会に勤務し、細野高原イベント会議に出席していた頃の事です。稲取地区の4区が財産区として守る細野高原は126ヘクタールの一面のすすきと海が臨める絶景地。すすきが穂を開く前の9月は、自生している数種類の萩が見頃となります(写真)。この萩を神事に使用するから分けてほしいと来宮神社から頼まれ、毎年分けていましたが、神事で使う量どころではなく刈り取り、それを観光客にも配っていた事がわかったので、今年から断ったと聞きました。

 さて、来宮神社にも弁天様が祀られております。ホームページをのぞいてみたら、夢枕に現れた弁天様に繋がりました。立身出世を願い奥州金華山に参り、出世したという江戸時代の武士の由来からと知り、心がクスッと笑いました。仲直りだな。細野高原の萩から疎遠にしていた来宮神社ですが、観光では賑わっていますので涼しくなったら詣でましょうと思いました。

 稲取・細野高原の裾野にもカーネーション畑の真ん中の小さい森に地元の人が「ベティさん」と呼ぶ弁天様が祀られています。海の近くが多い弁天様ですが、ここは山にあります。稲取の人は、神様をお名前で呼ぶ風習があり、ベティさんは、笑いのツボにはまりました。笑う門には福来たる。これが神様のメッセージかもしれません。

 

『スローライフ曼荼羅』

高齢者ワークショップ

  野口智子(ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)

 まちづくりのワークショップには、高齢者が多くご参加です。地域に根差したテーマで、昼間の開催となるとどうしてもそうなります。こんご、ますます高齢者ばかりの世の中になるのですから、これは当たり前としなくてはいけません。先日は「高齢者仕様で」というオーダーがありました。カタカナ言葉の多い内容だとイヤになる。アカデミックすぎるとしんどい。都会の若者が進行役だと田舎の高齢女性は参加しにくい。とのこと。ならば、私、高齢者。腕まくりで頑張ります。https://noguchi-tomoko.com/post-10914/

■■つべ小部屋■■

自民党総裁選を10倍楽しむ方法

  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)

 あぁ、また自民党総裁選をやっている。1年前の敗者復活戦だから何の新鮮味もない。7月の参院選のあとの政治空白をさらに延長させて騒ぎ立てる面々に、いつまで付き合わされるのかと不快に思う人は多いに違いない。

 10月4日の投開票まで、新聞やテレビは情勢なども報じるだろう。個人的には、生理的に嫌悪感を抱く顔がアップになるたびに、げんなりするし、投票権を持っていないのだから、誰が勝とうが、ああそうですか、という話。しょせんコップの中の争い。独自の政策などと宣伝しても、原発依存も防衛費増大も企業献金死守も夫婦別姓忌避も、この選挙で変わるはずがない。

 さらに末期的なのは、あの裏金問題も旧統一教会との関係も本気で真相を究明すると約束し、その具体策を示して戦う候補者がいないという事実だ。

 こんな総裁選を、外野席からどう楽しむか。妙案はないが、一つだけ確認しておこうと思うことがある。まったくどうでもいい話なのだが、これくらいしか思いつかない。(タイトルに偽りあり、ネットにありがちな誇大見出しです。ごめんなさい)

 あす24日午後、日本記者クラブで候補者による討論会がある。登壇者には事前に控室で揮毫をしてもらう。さて、彼らは何と書くか。ちなみに、1年前は以下の通り。

 林芳正さん「仁」、高市早苗さん「崇高雄渾」、小林鷹之さん「有志竟成」、小泉進次郎さん「決着」、茂木敏充さん「自我作古」。

 これと同じかどうか。変えたら、なぜ変えたのかを聞いてみたい。

 ご参考までに挙げておくと、石破茂さんは「着々寸進 洋々万里」で、今回は出ない上川陽子さんは「鵬程万里」、加藤勝信さんは「一点素心」、河野太郎さんは「〇」と書いていた。石破さんの「洋々万里」が目に染みる。

<編集室便り>

▽10月の雲仙フォーラムのチラシができました。

こちらからご覧ください。

https://www.slowlife-japan.jp/2025/09/17/%ef%bd%93-358/

▽投稿をお寄せください。

 この「スローライフ瓦版」へご投稿ください。基本、投稿は会員の方に限りますが、一般の方はご相談ください。500字以内、写真も1点つけられます。連載の場合、上下2回でお願いします。締め切りは、毎月第1木曜(第2火曜配信)、第3木曜(第4火曜配信)です。スローライフの会  slowlifej@nifty.com

 

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