


瓦版2025.01.14第726号 斉藤睦さんのコラムほか、「ふるさと納税」廃止論など掲載

瓦版2024.12.24第725号 川島英樹さんら10人のコラム掲載。

寒中お見舞い申し上げます。大寒が過ぎて1週間余り、最も凍れる日々が続きます。おでん、水炊き、カキ鍋、ポトフ、シチューなど、あったかい食卓が嬉しい季節です。でも、立春(2月3日)まで、もうちょっと。暖かくなれば、あれをしよう、これもやろうと考えながら、「春よ来い、早く来いっ」と口ずさんでいる、そこのあなた、もう少しの辛抱です。(上の写真は高知県梼原町の「きじ鍋」)
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『緑と絆の木陰』
愛に抱かれて
神野直彦 (東京大学名誉教授 スローライフの会顧問)
この齢になると、新しき年は悲しみとともにやってくる。「生」をともにしてきた「愛」を失ったことを、嫌というほど知らされるからである。もちろん、新しき年が近づくと舞い込む、喪に服しているという知らせは、増え続けていく。
それにしても、今年は異様だった。賀状の返信が来ることなく、私の親しき友人の子供たちから、父あるいは母が亡くなったとの知らせが殺到したからである。私は親しき者を失っていく悲しみに打ちひしがれた。もっとも、それは自分の「生」から「愛」が剝ぎ取られ、「死」に向かう孤独への恐怖に脅えていただけかもしれない。
というよりも、新しい年の幕開けという高みから、時の流れを眺めると、愛を失った孤独の恐怖が、いたるところで渦を巻いていることがわかる。こうした孤独の恐怖から逃れる常道は、集団に同調させることである。新しい年とともに、威嚇と脅迫によって、集団に同調させようとするトランプ政権が、覇権国アメリカで誕生したことは、それを象徴的に物語っている。第二次大戦前に覇権国イギリスが覇権国としての力量を失い、「自分さえ良ければ」という近隣窮乏化政策を展開したことが、ブロック経済を招き、世界大戦という破局に突入したことを考えると、トランプ政権の誕生は、「悲劇の時代」の開幕を告げていると考えられる。
しかし、私個人にとっていえば、温かい「愛」に抱かれた年になることは間違いない。この2月に私の教え子たちが、大規模な集いを開催してくれるからである。コロナ・パンデミックで中断されていたこともあり、全国から万障繰り合わせて駆けつけてくれるようである。まさに「朋有り、遠方より来る、また楽しからずや」となる。そして私の悲しき心は、巡り来る春とともに癒されていくのである。
<あっちこっちで多事争論>
冬籠り。
遠藤夏緒 (長野市 農楽里ファーム)
毎年12月から3月までは畑の土が凍みて雪にも覆われてしまうので、野良仕事はお休みになります。農家民宿も、隙間だらけの古民家が寒すぎるためにお休みしています。独楽鼠のように動いていた農繁期の労働から解放され、薪ストーブの火が絶えないように薪をくべながら、猫と一緒に一日のほとんどを炬燵にあたって過ごしています。まさに冬籠りです。
私が暮らす集落では1月7日に新年会と総会、そしてどんと焼きの行事があります。その際には集落の皆さんと顔を合わせるのですが、それ以外では3月の末の柴さらい(用水路にたまった落ち葉や枝等の掃除)の共同作業まで、ほとんど顔を合わせることがありません。
80代以上の一人暮らしのおばあちゃんの家も5件あり、皆さんどうやって冬を乗り越えているのか解らないのですが、春になるとちゃんと野良着姿で鍬を振るう姿を目にするようになります。
とはいえ、5年後にも同じような光景を見ることが出来るのかと言えば、やはり訝しく思います。90歳に手が届きそうでもシャキッとした女性たちの輝きを見ていると、まだまだ大丈夫かなと感じることもありますが。
今、集落の構成員は11戸14人。平均年齢約75歳。かなり崖っぷちの「限界集落」です。※写真は、冬籠りのお供の猫たちです。
『1.17』に思う!
佐藤義孝 (東京都 スローライフの会会員)
「阪神・淡路大震災」から30年が経った。
しかし、最愛の肉親を「突然」亡くされた方々にとって、あの瞬間から時間は全く進んでいない。
「いつか地震が来ると分かっていたら、娘は死ななくても良かった。タンスの側に寝ていたのが、悔やまれる」。22歳、笑顔の絶えない彼女は前夜に卒論をまとめ終えた矢先だった、と言う。ほぼ同い年のわが家の娘も、当時は社宅のタンス部屋に寝ていた。他人事とは思えない。
地震のこの「突然」を無くする「地震予知」には時間が掛かると言うのはやむを得ないと思うが、阪神・淡路を契機に地震予知を目指して全国に設置された「電子基準点」により、近々この地方に大きな地震が来ると言う「切迫」情報の入手が世界に先駆けて可能となって来た!(注)。
一方、この30年間で地震災害対策はどれほど進化したであろうか。避難所の雑魚寝状態は30年前の神戸と昨年の能登の映像からは、何も変わっていない。まさに惨状である。
阪神・淡路では最大31万人が避難所生活を余儀なくされた。この規模の災害に備えてのT(トイレ)、B(ベット)、F(食糧)の確保が緊急課題である。数十億あれば備えは出来よう。防災庁に期待したい。
注)国土地理院のデータをもとに地震の10日から30日位前に起きる地殻の前兆異常を捉える。
本システム稼働から これまでの20年間の大地震(新潟県中越沖地震から能登半島地震)
の全てで前兆異常が確認されている。
日光人的「上と下」
舟越隆裕 (栃木県日光市 珈琲CoCom)
日光には、独特の方言というか、表現があります。
そのひとつが「上」と「下」。
たとえば「このお店の場所はどこですか」と聞いた時に、「郵便局の上」とか「郵便局の下」と答えられたらどんな感じを思い浮かべますか。むろん、郵便局の屋上や地下を表すものではありません。
日光の人には、「上」は奥日光寄り、「下」は駅寄りを意味するのです。
日光の地形は、標高530mの駅周辺、スカイツリーの高さと同じ標高の東照宮表参道、さらに「いろは坂」を登った中禅寺湖は、スカイツリー2つ分プラス1mの標高1269m、というふうに大きな標高差があります。なので、当たり前のように、奥日光の方向を「上」、駅方面の方向を「下」と呼ぶのです。
これは、道路や電車が、東京方面に向かうのを上り、その反対を下りというのとは、まったく逆ですね。
ま、ある意味、理にかなっている表現なのですが、観光客の方は戸惑うこともしばしばです。
これも日光、これが日光。
ゆったりな鞆時間にある歴史の新たな発見
太田民夫 (神奈川県、スローライフの会)
広島県福山市にある鞆町(ともちょう)を学んでいる。2月の「さんか・さろん」で発表する「報告 鞆はいま」の準備のためである。鞆に行き、感じることは「ゆっくり、ゆったり」感。時間がだらりと流れていく感じだ。江戸時代、明治時代の建物が並ぶ狭い小路という空間、近代化に取り残された港と雨の少ない温暖な気候がかもし出すスローライフだ。
ただ、1000年以上の鞆の過去を見ると様々な歴史の断片を記憶する土地であることも確か。「(14世紀)京にも劣らぬ殷賑(いんしん)な商業都市となっていました」と福山市の資料は記している。
その根拠は土地の売買を裏づける「屋地売券」という証文が発見されたこと。福山駅から北東約1㎞のところにある真言宗・胎蔵寺の釈迦如来坐像の胎内に施入(せにゅう)されていた。
2001年11月に発見された屋地売券に1328年(嘉暦3年)、ある女性が自ら鞆にある相続した土地と屋敷を別の女性に代金20貫文で売り渡したと記録されている。同時代に、「京都では屋地一段(たん、1ha)当たり15貫文から5貫文で売買されているので、この売券による不動産取引は高額取引といえる」(白井比佐雄・広島県立博物館アドバイザー)という。スローライフの地から新たな発見が期待される鞆でもある。
(下の写真は、鞆の街並み)
「餅つき」万歳 (下)
西川展子 (和歌山県海南市 「げんき大崎」理事)
初めは杵つき餅の美味しさに惹かれて始めた「餅つき」ですが、あらためて感じたのが、参加者全員が自然とコミュニケーションが図れる要素がいっぱいだということ。まず、餅つきを側で見ていると、「よいしょ!」って、つい、誰でも声がでてしまう。その声が合わさり、一つのリズムになって、つき手もさらに頑張れて、その場にいる人全員でお餅を仕上げる、そして、つきたて餅をみんなで食べる、その一体感がすごく心地いいのです。
また、餅つきは必ず二人ペアで、短時間で次々と交代してやるので、親子だったり、夫婦だったり、兄弟だったりと、年齢も関係も性別もごちゃまぜの色々な組み合わせがうまれます。
二人の息がぴったり、あるいは、杵が当たりそうになったり、杵を振り下ろすリズム、相方や手合いとの掛け合いや力加減など、どの組み合わせにも見どころがあって、素直に感動したり、お腹が痛くなるぐらい大笑い。とにかく見ていて楽しいんです。
外で餅つきをすると、ご近所にも音や笑い声が響き、懐かしさと年の瀬を感じて、「餅つき、いい音やね~」と声をかけてくれることもしばしば。こんなに自然と声が出て、思いっきり笑えて、みんなで一緒に楽しめて、しかも、食も満たされるイベントって、そうそうないんじゃないかって思います。こんな魅力いっぱいの「お餅つき」が大好き。やれる限り続けていきたいです。
<スローライフ曼荼羅>
ゆすはら、再び
野口智子(ゆとり研究所 スローライフの会共同代表)
高知県梼原町での「スローライフ・フォーラムin ゆすはら」から、2ヶ月半。再び梼原町を訪ねました。報告書を出し、収支をまとめる最後の実行委員会です。地元の方々から「改めてスローライフについて考えた」「次のフォーラムに参加したい」「すごくいい経験をした」など感想がありました。「高校生、大学生、町民、スローライフの会、この繋がりを大切に育てて行こう」と、意見が盛り上がりました。もちろん大賛成、思いついたらGO!ですね。https://noguchi-tomoko.com/post-10686/
■■つべ小部屋■■
通常国会、3つのヤマ場
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
いよいよ国会の論戦が本格化する。少数与党政権の先行きは見通せないが、3つのヤマ場が思い浮かぶ。
国民民主党が唱える「103万円の壁」の落としどころを探らねばなならい。昨年は「178万円をめざす」という合意だけで補正予算案に賛成した国民民主が、どう出るか。玉木さんは「103万円の更なる引き上げとガソリンの暫定税率の廃止が実現した場合には新年度予算に賛成する」と公言しているので、これに与党側がどこまで応じるか。旧来型の政治手法ならば、178万円満額の回答はせず、それでも「すぐに補正予算で対応するから」とか何とか言って収めるのだろうか。
この時期は企業・団体献金の結論を得る期限なので、与野党とも譲れない一線をめぐる攻防になりそう。企業献金死守を掲げる自民党案の中身が問われる。政党支部への企業献金だけは廃止するとか、資本金に応じて750万円~1億円という現行の企業献金の上限額を下げる、といった話になるのか。その程度で野党や世論が容認するのか。自民党が「政治とカネ」のけじめをまったく付けられていないなか、野党がこの時点で内閣不信任案という切り札を切るかどうか。
国会終盤では野党が選択的夫婦別姓問題の採決を迫り、賛成の公明党に揺さぶりをかけるだろうが、最大の関心事は衆参ダブル選挙をするかどうか。東京都議選の投開票日も6月22日になり、その情勢判断によっても、さまざまな憶測は飛び交いそう。与党は参院の非改選議席が75あるので、50議席を取れば、参院の過半数を維持できる。過去に50議席を割ったのは2007年の歴史的大敗のときだけなので、参院選単独で実施されるとの見方が多い。
だが、参院選だけだと焦点の1人区での野党候補の一本化が進み、与党には不利。衆参ダブル選挙にすれば、衆院の比例票を集めたい野党の一本化が進まず、野党が分断されて与党に有利という見立てもある。
最後にひとつ。現状は1980年の衆参ダブル選挙の前に似ているかもしれない。あのときは79年10月の衆院選で敗れた自民党で「40日抗争」が起き、半年後に不信任案が可決された「ハプニング解散」。昨秋の衆院選敗北から、この夏の参院選までもほぼ半年である。
<編集室便り>
▽増田寛也さんの「さろん」盛況でした
1月21日の「さんか・さろん」、講師:増田寛也さんのお話「スローライフとの出会い」は盛況でした。増田さんから筑紫哲也さんや中村桂子さんの、昔の秘蔵写真が披露され、歓声が上がったほどです。参加できなかった方、録画をYouTubeにあげるのに、もうしばらくお時間ください。
▽2月9日、大阪で綾部里山交流大学
2007年に開講しグリーンツーリズムや地域交流などの学びの場を提供、継続してきた「綾部里山交流大学」(学長:山崎善也市長)。2月9日(日)13時〜16時、大阪市北区茶屋町の「ちゃやまちホール」で特別講座を開催です。
メインゲストには「半農半X」の考え方を提唱された塩見直紀さん、綾部市内で農家民泊を運営される方々もご参加です。
「スローライフ・フォーラムin綾部」で一昨年お世話になった綾部市、塩見さんは分科会アドバイザーをされました。お近くにお住まいの方、ぜひご参加を。無料です。詳しくはこちらからhttps://www.city.ayabe.lg.jp/cmsfiles/contents/0000005/5144/panfu.pdf
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【たまな商店】フルーツ王国・和歌山から、できるだけ自然のままに!という古田さんの想いがたくさん詰まった、人と環境にやさしい農薬不使用・有機栽培のキウイフルーツをお届けします。 https://tamana-shop.jp/organickiwi/
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