行って良かった。 参加したからこそ得たものがある。 遠路はるばる出向いた甲斐があった。 ほんとうに楽しくて、わくわくした……。 高知県梼原町での「スローライフ・フォーラム」への感想が続々と届いています。 今週の瓦版は、あの濃密な2日間の特集号の第1弾です。 読者のみなさまに、「雲の上のまち・ゆすはら」の雰囲気をおすそ分けします。========================================
ご感想を下記からお寄せください。
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『緑と絆の木陰』
梼原町の魅力の一番は人とその暮らし
室﨑千重 (奈良女子大学准教授)
梼原町には2回目の訪問でした。 隈研吾さんの建築を中心に町を外から眺めた1回目(5年前の大学研究室での旅行)に対して、中の暮らしの一端を見せていただいた今回、梼原町の魅力が何十倍にも感じられました。
やはり、地域の魅力とは、人とその暮らしであり、ふらっと訪問しただけでは見えないことが多い(これは、もったいない)ということを痛感しました。 特に、越知面地区の女性グループ「チームシルク」さんの活動が印象的でした。
地域の高齢者宅への見守りを兼ねたパンのお宅訪問販売では、ちょっとした変化があると地域包括に情報を届けていたり、高齢者が育てるニンニクを買い取り、魅力的な商品開発もされていたり。 おかげで、耕作をやめていた畑で再度ニンニクをつくる高齢者も出てきて、新たな生きがいを生んでいました。
地域で暮らす地に足のついた発想と、それを何より自分達が楽しんで明るく実践する女性たちの姿にたくさんの元気をいただきました。
この地の人と暮らしの魅力を、ふらっと訪問した人に、少しでも伝わる・伝える方法が必要だけど、難しいですね。 私も十津川村谷瀬集落での研究室活動を通して模索していこうと思いました。
<高知 ・ゆすはらで多事論>
自然のサードプレイス
日根野谷 風奈 (奈良女子大学大学院生)
昨今は、家でも職場でもない第三の居場所「サードプレイス」を求める動きが盛んです。
昔は「集落」そのものがサードプレイス的役割を果たしていたと考えますが、「集落」が消え去った都市部でも、決して人と繋がることを諦めるわけではなく、地域でイベントを開催(又は参加)してみたり、オンラインの集まりに参加してみたり、どうにかこうにか人と繋がろうとしています。 形は変われど、人にとって「集落」は必要なのだろうと思います。
「ゆすはらには自然村が残っている」というお話がありましたが、私はまさにこの「自然の」サードプレイスが残っていることが魅力の一つだと感じました。 都会にある「人工の」サードプレイスは活動時間や曜日など制限が伴うため、必ず「終わり」が存在しますが、自然のサードプレイスは住む人がいなくならない限り、いつでも変わらずそこに在り続けます。
ゆすはらの高校生の多くは大学進学を機に一旦は町から離れて都会へ出ていくと思いますが、「ゆすはら」という、困った時に(別に困っていなくても)いつでも温かく迎え入れてくれるサードプレイスがあることは、孤立しがちな現代において何にも代えられない価値だと思いました。
(下の写真はバスの中で挨拶する日根野谷さん)
梼原でのスローライフ・フォーラム感想
川竹大輔 (高知大学理事特別補佐)
高知に働き暮らして事情を知る立場で、事務局の野口さんを少しでもサポートできればと1月の準備段階から加わり、本番には高知大学生7名を引率する形で楽しむことができました。
梼原町には20代後半で高知に帰ってきてからの数年、わが家の子どもが小さかったころに、千枚田の棚田オーナーとしてお世話になり、季節ごとの自然の変化を堪能しました。 そんな梼原に、大勢のみなさんにいらしていただいたことで、多少の恩返しができたかなと思います。 その一方で、今回も梼原のみなさんにご厄介になることが多く、また何か梼原でやれないかとの思いも募っています。
参加した大学生たちは、地域にインターンシップで出ていく、休学して地域に住み込む、高知のことをもっと知りたいと相談がある、学園祭で地域の産物を若い人につなぐ、全国の地域をまわって農業で暮らす道を探す、といった活動のなかで知り合った、志のある若い人たちです。
集落活動センター、若者定住対策審議会、梼原高校の人たちから、そして、フォーラムに各地から集まったみなさんから、たくさんの刺激を受けた、今後の活動に活かしたい、と帰りのバスの中で語っていました。
あっという間の、秋の季節を感じる2日間でしたが、今回のテーマ「集落と、若者と」に関連し、梼原と高知大学、そして、スローライフの会のみなさんと、何かがあの場を通じて動いたね、と振り返ることができるよう、今後も励んでいきたいと考えています。
スローライフ・フォーラムinゆすはらに参加して
小牟田弘子 (長崎県雲仙市 スローライフの会会員)
初めての四国・高知県ということで、とても楽しみにしておりました。
梼原町は町の中心部に主要な施設が集まるコンパクトなまちですが、キジ料理や津野山神楽、茶堂といった伝統の食と文化、隈研吾さんが手がけた「雲の上の図書館」や「町総合庁舎」など、自然と調和した公共施設、そして地域のために生き生きと活動していらっしゃる地元の方々などたくさんの魅力が詰まったまちでした。
特に、地元の方が仰った「地域の活動は楽しいことをすぐにやる」という言葉がとても印象に残りました。
2日目の全体会の会場になった木造の芝居小屋「ゆすはら座」は外観・内装だけでなく、ステージの設えも素晴らしいものでした。
地元から採ってきた植物、神楽で使用するお面や鯛の飾り、立派な角が生えた鹿の剥製、そして「よさこい」で使う鳴子などが飾り付けられており、フォーラムの最後まで町の伝統・文化を感じながら皆様との貴重な時間を過ごさせていただきました。
梼原町の皆様、そしてスローライフの会の皆様には大変お世話になりました。2日間、ありがとうございました。(下の写真は分科会で語る小牟田さん)
輝ける町、ゆすはら
松井悠夏 (東京都 スローライフの会会員)
過疎地域にどうすれば人が戻ってくるのか――その答えを梼原で見つけた。「大人が輝けば人は勝手に集まるのではないか」。それが私の答えである。
私は地元の田舎が心底嫌いで去年から東京に住んでいる。田舎は不便だからとか、チャンスがないからといった理由で地元が嫌いだと思っていた。しかし、梼原に行って、気づいた。私の周りに輝く大人が誰もいなかったから地元が嫌いになったのだ、と。
梼原では特産物を売り出したり、観光できる場所を作ったり、年齢を問わずみんなでワイワイ工夫して宣伝していた。さぞ体力的に大変だろうが、みんな顔ツヤ良くイキイキして楽しそう。いくつになろうが自分の決めたことを一生懸命するというのは美しい。二十年後、三十年後にこんな輝く大人に自分もなれるなら、ここに住んでいいかもしれないと思える。若い人が定住するのも理解できる。
「町おこし」というキーワードを使うと、どうしても雇用の確保やイベントの開催などの話になるが、その地域に住む人が楽しく笑って生活をしているというのも立派な町おこしだと思う。輝ける町には輝きたい人が集まり、より輝く町になる、その循環を梼原で学んだ。
(下の写真はフォーラムのための名札の準備をする松井さん)
<あっちこっちで多事争論>
突撃! あいにいかんば雲仙人(くもせんにん)
小松崎いずみ (埼玉県越谷市 スローライフの会会員)
スローライフ・フォーラムで顔馴染みになった方々との交流を楽しんでいる。
和歌山県紀の川市の神徳(じんとく)政幸さんが、長崎・雲仙でロケットストーブとドラム缶ピザ窯を作るとの情報をかぎつけ、お手伝いに。と言っても、私はその土地のオリジナルピザを食べるのが専門。エタリ(カタクチイワシ)の塩辛、こぶ高菜、チーズを使ったライスピザ。焼きたてを頂き、口の中で一度に雲仙の名所を周ったような気分になる。その美味しさに、やっぱり雲仙にきて良かった〜、とホッとしている自分がいる。
冊子『あいにいかんば雲仙人』に、雲仙人からサインを頂くのも旅を楽しくさせている。アポ取りなしで伺うので会えなかった雲仙人には次回にと、また訪れる楽しみも倍増している。実は密かに冊子のコンプリートを狙っている。
今回の旅の最後は、がまだすドーム(雲仙普賢岳災害記念館)で火山について学んだ。どんな災害も備えが1番大切であることを知る。火山が生み育んだ山、海からの恵みをふんだんにいただいた雲仙の旅。雲仙人さんたちの自然に寄り添う生活が光って見えた。
ぜひ、動画もご覧ください。(8) Facebook
(下の写真は「雲仙人」のひとりと会う小松崎さん=左)
フィンガーライム
ほんだゆかり (静岡市 静岡スタイル代表)
フィンガーライムという果物をご存じだろうか。オーストラリア原産の柑橘類で、文字通り「フィンガー」、指のような形をした果実をポキリと割ると、中から、果汁が袋に入った鮮やかな色のツブツブが転がり出る。キャビアに似ていて、キャビアライムと呼ばれることもあるそう。5年ほど前に、このフルーツのことを知り、「へ~、みたことないな。へ~」。さらに商業栽培が少なく、高価! それなら、家で育てて、もし収穫できたらお小遣い稼ぎになるかも~などという浅慮で、さっそく苗を購入し、植えた。
あれから5年。最初の苗は、いま樹高1メートルくらいまで育ったけれど、まだまだ実をつけるまで何年か、かかりそう。フィンガーライムは果実の色が、赤、黄色、緑、ピンクと、さまざまあるのも特徴で、どんどん苗を買い足してしまい、現在12本の樹を自宅の庭で育てている。もともと、家庭菜園が好きで、今年建てた自宅では「食べられる庭」を目指しているので、趣味と実益を兼ねた栽培は楽しみでもある。毎朝の水やりと、春・夏には、イモ虫取りが日課。いつごろか、また皆さんに収穫のご案内をしたいな。
日々散歩
川島宏子 (東京都 スローライフの会会員)
九十一才。三本足。この我家のぞうさん(夫の正英)とほどほど元気な私……。毎日散歩に出掛けます。
近くの神田川。春は桜、今は紅葉。日によって買物かたがた右に左にコースを変えます。うれしい花屋さん、チョコレート屋さん。タオルハンカチをひいて、あちこちでひと休み。学校帰りの子供達とたわむれながら。
花屋さんでは白スチールの二人掛け椅子を用意してくれて、一休み。チョコレート屋さんでは試食用チョコをいただいたり……。やさしい街の人々に感謝しながら、ぞうさんは散歩を楽しんでいます。
ぞうさん、長い長い仕事、仕事。仕事から解放されて何年か、ようやく本当の「ゆっくり、ゆったり、ゆたかに」の日々です。
見える事が、見える物が、見える景色がちがってきたのでしょうか。すっかり穏やかにありがとう、ありがとうの日々です。いつまでも良き日であるようにと欲ばって……。
大谷翔平選手の功罪 (下)
児玉征也(和歌山県紀の川市、NPO法人紀州粉河まちづくり塾代表)
今回は「罪について」。孫の小学1年生の男の子が最近、野球チームに入会した。勿論、オオタニショウヘイに憧れてのことだ。先日キャッチボールとトスバッティングの相手をした。やはりセンスがない。運動から遠ざけられた私と球技が苦手な妻との作品である長男の子供であって、子供の母の父は昆虫オタクでおよそスポーツに縁がない。その面々の孫だ。上手いはずがない。
当の本人は、素質、才能、センスなどの言葉の概念すら知らず、熱心に練習に取り組む健気さに心打たれる。夢を描けば描くほどこれから幾度となく、悔しい思いをするに違いない、と私には容易に想像が付く。いつかきた道だからだ。世界はオオタニだけでない、スローライフの中にもダイバーシティの世界にも自分の強みを生かせる場所があるはずだ。
高齢者のスローライフに彩りを添えると同時に、少年たちにチャレンジする楽しさを教えてくれる大谷選手はここでも二刀流だ。
ゆっくり、ゆったり、マインドフルに
高橋征吾 (東京都 スローライフの会会員)
10月22日配信の瓦版に掲載された滋賀県・笠原俊典さんの「豊かになる時間」に共感するところがあり筆を執りました。笠原さんが紹介されている「マインドフルネス」について、『マインドフル・ワーク「瞑想の脳科学」があなたの働き方を変える』(デイヴィッド・ゲレス、NHK出版)という本を思い出したからです。
この本では様々な世界的企業がマインドフルネスを取り入れ、従業員の心の健康、仕事のパフォーマンス向上に力を入れている事例が紹介されています。
「マインドフルネスは、心や身体の中で、また私たちを取り囲む世界で、現在起こっていることについて、もっとも基礎的なレベルで気づきを深めることだ。これらの動きに気づくこと、目の前の現実と違うものを手に入れようと躍起になるよりも、それをありのままに受け入れることだ」「人間の苦しみを取り除き、すり減った神経をなだめてくれるツール」とあります。
「瞑想」というと難しくてハードルが高そうに感じますが、マインドフルネスはスマホの電源を切って目の前の食事をゆっくり美味しく食べること、自分の呼吸に集中してゆったり深呼吸をすることなどから手軽に始めることができます。まさしく「スロー」を実践し、心のゆたかさを可能にするマインドフルネス。日々の生活に無理なく取り入れてみてはいかがでしょうか。
『スローライフ曼荼羅』
「古い」を「新しく」
野口智子 (ゆとり研究所)
あるもの探しをして、それを活かす。というのは地域おこしの原則です。高知県梼原町でパネリストのお一人、中村桂子さんは「古いものを捨てないで、新しく」と発言されましたが、今回のフォーラム会場そのものがそうでした。古い芝居小屋をシンポジウム会場に設え、山の紅葉や地元の神楽に使うお面や太鼓で装飾。取り組んだ若者たちは、「どうですか、素敵でしょう」と胸を張っていました。
--つべ小部屋--
フォーラムで出た「二地域居住」について
つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
衆院選での与党過半数割れや米国の「またトラ」も気になるが、今回は「ゆすはら特集」なので、フォーラムで増田寛也さんが紹介した「二地域居住」について書く。
二地域で生活する人を増やすことで、地方への人の流れの拡大をめざす施策で、国土交通省が旗を振る。根拠法は「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律」。ことし5月に成立し、11月から施行されている。
増田さんは、国が複数の生活拠点を持つことをすすめる以上、何らかの公的証明が必要であり、「二地域それぞれに住民票を持ち、納税の義務を果たした上で住民サービスを受けてもらうべきだ」という考え方だ。使った水道代や電気代だけでなく、住民税も納める制度にしないと、「タダ乗り」批判が出るというわけだ。
まったく異論はない。が、「二地域の住民票」は簡単な話ではない。実は東日本大震災の原発災害の避難者向けに論議されたが、二重納税への懸念と、どちらの自治体で選挙権・被選挙権を持つのかがネックになり、とん挫した経緯がある。マイナンバーカードを持っていれば、納税問題は解消できるのかもしれないが、やはり選挙権の問題は残る。
たとえば、A市とB町に居を構えた人が住民税の6割をA市に、4割をB町に納める場合、どちらの有権者になるのだろう。0.6票と0.4票を持つとか、B町を選ぶというのは現実的でないだろう。だが、A市を選んだとしても、住民税の10割を納めている市民と対等な1票を行使できるのか。などと、つらつら考えていたら、ある事実にぶち当たった。
いまや1兆円規模に達する「ふるさと納税」である。この「納税」とは名ばかりの「官製通販」では、都市部の住民税が各地の特産品代として地方に渡っている。「官製通販」を活用している人は既に住民税の一部を地元に納めていないわけだ。
うーん、だったら二地域居住でも問題ないでしょ、というのが大勢になるのだろうか。みなさんは、どう考えますか。(下の写真はフォーラムでの分科会)
編集室だより
▽編集長・つぼいゆづるがブックレットを上梓しました。
『「転回」する地方自治 2024年地方自治法改正(下)【警鐘の記録】』(公人の友社、1900円+税)です。
さきの国会で成立した改正地方自治法に潜む危うさ、問題点を深く、わかりやすく解説し、警鐘を打ち鳴らしています。分権改革で確立した国と自治体の「対等・協力」な関係を、「さながら戦前回帰」と言われるほどに「上下・主従」に逆戻りさせる改正法の内実を、論者へのインタビュー集を中心にまとめています。
▽次号(11/26発刊)も「ゆすはら」特集です。
フローラムに参加した高知大学の学生さんからの投稿を載せます。「雲の上のまち」で、若者たちは何を思い、考えたのか。お楽しみに。
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