スローツーリズム分科会/1日目

スローツーリズム分科会を岩手県遠野市で開催しました。遠野の自然、歴史、文化に触れた2日間でした。
世話役の永田英雄さんから報告が届きました。ご覧ください。
●スローツーリズム分科会報告
10月27・28日の両日、スローライフ学会(事務局:スローライフジャパン)のスローツーリズム分科会が、岩手県遠野市で開催されました。と言っても、講演会やセミナーがあった訳ではなく、遠野をスローに楽しむことに専念した2日間でした。
告知期間が短かかったせいもあって、参加者はワンボックスカーで充分間に合う総勢6名。小回りが利くだけに、皆さんの旺盛な好奇心とその場その場の思い付きが膨らんで、わずか26時間の滞在の中に、スローかつクイックなプログラムがてんこ盛りになってしまいました。
10月27日(土)午後1時前に、釜石線の遠野駅に到着。その前に車内で、昼食は遠野名物ジンギスカンにするか、道の駅「風の丘」で、地元のオバちゃんたちがやっているおでん屋に行くか、鳩首協議。女性陣の強い要望もあって、結局秋野菜の買出しを兼ねて、道の駅に行くことになりました。

道の駅「風の丘」は、東北の道の駅の中で2番目の売り上げを誇るところで、地元で取れる野菜、米、果物、花卉などが市場並みに販売されています。花巻、北上などの内陸部と、宮古、釜石、大船渡などの沿岸部とのちょうど中間にあたるので、かつて遠野が両地域の荷駄の中継・集積地として大いに賑わったことを思い起こさせます。
件のおでん屋は、2坪あるかなしの屋台然とした店ですが、月平均500万円の売り上げがあるというから驚きです。ここのおでんネタは笑ってしまうほど大きく、通常の2倍はあります。鶏卵だけが普通の大きさです(当たり前ですね)。

その大きなおでんをてんこ盛りにして、目一杯食べた後、駅前に戻って、スローライフ遠野2007事業「女性技の達人展」を見に行きました。パンフラワー、和紙のちぎり絵、草木染、型染め、裂き織、端切れ手芸等の展示会でした。作品の一つ一つとその解説を拝見すると、いくつかは農閑期に農家の奥さん方が伝承の技として引き継いできた手技のようで、
●作品の素材となる草木の繊維、端切れ類や、染色に使う草花を、自分の手で準備する
●織りから縫いに至るまで、一人で仕上げる
のが基本です。
中でも目を引いたもののひとつが、麻糸(?)を草木染して、肩掛けやハーフコートに仕上げたもの。もうひとつは、裂き織で作られた嫁入り衣装の打掛で、白無地の絹織物を自分で染めて、裂き織にして仕上げたもの。デザインと色の選定に苦心惨憺して、10年がかりで制作された逸品です。

遠野のおばあちゃん達の手技に感服したあと、夕刻、地元ご婦人連の手作り観月会に出かけました。
10月27日は旧暦9月17日にあたり、日没間もなく、山の端に月齢十六夜の晩秋の月が昇るはずでした。しかし、関東沖合に台風が接近していて、遠野もその夜は雨。
雨にもめげず、観月の宴は、地元の料理屋「一力」で粛々と行なわれました。この観月会は、観光客向けのイベントではなく、地元遠野商工会女性部の人たちが、自分達の楽しみのために準備したイベントです。地方では、ハレの場は自分で創りださないと、ポカンと待っていても、なかなかその機会が生まれません。私達はそのお相伴にあずかることになりました。
当夜「一力」の大広間に集まった人は、ざっと60名、9割はおめかしをした地元のご婦人連で、男性は小さくなっておりました。広間には、しきたりに則って、お供えの草花、秋の野菜、団子、清酒等が設えられ、やがて、舞台では遠野伝承民話の琵琶の弾き語りと、語り部による月にちなんだ昔話が始まりました。
遠野民話の中には、血腥い話も数多く含まれていますが、語り部の口を通すと、南部訛りの独特の柔らかさも手伝って、母親の胎内でぬくぬくと怪異譚を聞くような趣になります。しかし、琵琶の弾き語りで聴くと、琵琶特有の不気味な顫音と心臓の鼓動を高めるような撥音が、おどろおどろしい雰囲気を醸しだすから不思議です。機会があったら、是非お聞き逃しなく。
<当夜の演目>
太田桜幸さんの琵琶の弾き語り:おしらさま、座敷わらしの2題
語り部工藤サノミさんの昔話:お月とお星
遠野市立博物館前川さおり学芸員による遠野お月見の縁起話
遠野の言い伝えでは、月見のお供えを女は食べてはいけないことになっているそうですが、宴会締めくくりのじゃんけん大会で、お供えの食べ物は悉く無くなってしまいました。