瓦版2024.09.10 第718号 中村桂子さんら11人のコラム掲載。

 ジ、ジ、ジリジ,ジジジジ……。私鉄駅への道すがら、セミの辛そうな声が聞こえてきました。真夏のけたたましさはなく、季節の主役の座を降りてゆく挨拶のよう。まだ暑い日々が続きますが、もう9月。はや1年の3分の2が終わりました。いざ、秋へ。あなたは、どんな秋を満喫しますか。芸術、読書、スポーツ、それともやはり食欲でしょうか。

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『緑と絆の木陰』

涼しいと思ったら29℃という今年の夏でした
  中村桂子 (JT生命誌研究館名誉館長 スローライフの会共同代表)
 猛暑ですかと思っていましたら、いつの間にか酷暑になっていた今年の夏です。25℃で夏日、30℃で真夏日、35℃になると猛暑、酷暑は40℃以上と気象庁が決めているとのこと、これ以上はないでしょう。
 私は、閉所恐怖症のところがあり、朝起きると家中の窓を開ける癖があります。冬はすぐに閉めますが、それ以外はそのまま。風さえあれば夏も気持ちよく暮らせます。閉め切ってエアコンの方が快適という方が多いでしょうし、この暑さですから分かります。ただ、雨が降ってすっと気温が下る時、夕方涼しくなっていく時のホッとする感じは悪くありません。この変化を楽しまないのはもったいない気がしています。最近は29℃で涼しいと感じるようになりました。体が暑さに慣れたのでしょうか。
 この異常気象の原因も含めて、いま喫緊の課題はエネルギー大量使用の見直しでしょう。原発、水素、など技術の力で大量使用を続けていくというのが主流の考え方ですが、それはできないと私には思えます。
 地球は生きものの星だと思っていますので、そのシステムの中で上手に生きる方法を考えていくには、まずエネルギー消費を落とすところから始めるしかないでしょう。それはわびしいと決めつけず、自分自身を含めて身近なエネルギーを使うことを楽しむ方向にもっていきませんか。そんなことを考えながら団扇を使っています(手持ちの扇風機には?です)。

<あっちこっちで多事争論>

夢はかなう
  安井美裕 (北海道池田町長)

 本町は「ワインのまち」として知られていますが、もう一つ「ドリカムのふるさと」でもあります。
 DREAMS COME TRUE(以下、ドリカム)の吉田美和さんは本町出身です。
 7月6、7日に開催した「池田ワイン城50周年感謝祭×DREAMS COME TRUE35周年  ドリカムとドリカムの日」には延べ1万5千人が来場されました。
 ちなみに本町の人口は6千人、この数だけ見ても町にとって、歴史的なビックイベントであったことは想像いただけるかと思います。音楽あり、映画あり、ダンスあり、ワインは2日間飲み放題でした(詳細は以下を)。
 町長として私はオープニングで「澄んだ空気をいっぱい吸って、たくさんの元気と勇気を持って帰ってください」と呼びかけました。その後も何度かステージに上がりましたが、ステージの締めはドリカムのライブです。
 まだ最終出番のあった私はステージ裏で少々センチな気持ちになっていました。「無事に成功させたい」「全国からいらっしゃった皆さんに楽しんでほしい」。そして用意した町民優待チケット1千5百枚で訪れた町民の皆さんには、この光景を見て、「自らのまちに誇りを感じてほしい」。そのすべての夢がかなったと思えたからです。
 そして最後のあいさつに呼ばれ一言、叫びました。「夢はかなうのですね」
https://www.town.hokkaido-ikeda.lg.jp/files/kouhou/pdf/162_67704187.pdf

画像はドリカム事務所(ディーシーテーエンタテイメント)提供。

「240年」と「150年」 (上)
  古川 伝(福島県郡山市、スローライフの会会員)

 第717号のつぼい編集長の「あぁ、燃料デブリ」にあった「1日10㌔処理できたとして完遂までに240年」との試算に妙に納得してしまいました。880㌧のデブリとは、いったいどんな量なのでしょうか。重さだけで言えば、体重100㌔の人が8800人、50㌔の人なら17600人になります。スプーン1杯分の3㌘でつまずいている現状からすると、気の遠くなる量です。しかも、そのデブリを取り出せたとしても、最終的に処分する先は全く決まっていません。
 昔から指摘されてきた「トイレのないマンション」状態を解決しないまま、政府は原発を「最大限活用」するとしています。この矛盾と、「廃炉完了は30年から40年」という計画の虚構性に通底するのは、「問題の先送り」に他なりません。方針を決めた人たちの中に「どうせそのころは生きていないし」「生きていても責任ある立場ではなくなっているし」という無責任さを感じざるを得ません。もちろん、「走りながら考える」ことは日常生活の中でもあります。しかし、事の重大性が違いすぎます。
 一方、これとは対極のような考え方で地道な活動をしている人たちが福島県内にいます。NPO法人「あぶくま山の暮らし研究所」(青木一典理事長)。メンバーたちは150年先を見据え、地元の豊かで美しい山を残していくための様々な取り組みを展開しています。次号でその様子をご紹介します。(つづく)

りんごの森保育園
  増田満喜 (東京都 スローライフの会会員)
 岩手県滝沢市の自然豊かなりんご園の一角にある保育園。管理栄養士の資格を持っている私は、年数回、給食のレシピを提供している。給食で小さい時から適正な塩分濃度やバランスの良い食事などを知り、それが家族にも伝わり、地域で健康に過ごしてもらいたいとの思いがある。
 給食レシピ提供の日は、私も園児たちと一緒に調理、食事をする。不慣れな子もいて、食材が不揃いになる場合もあるが、歯応えが変わり、それはそれで良さがある。園庭で自分達が育てた野菜や椎茸を使うと、育てる大変さも知っているので、みんな食材を大切に扱い、多少苦手な野菜でも感謝しつつ美味しそうに食べる。
 7月には園庭で流しそうめんの給食。流しそうめんには、星形に切った人参、プチトマトを追加した。プチトマトを流すのは園の栄養士さんの発想。笑いが止まらないほど盛り上がった。プチトマトは超速で転がり落ちるので、最初は子どもたちには掴むのが難しかった。でも、ちゃんと学習し、次にはお箸の幅を狭める。それでもお箸の傾斜でお箸を飛び越えて下に落ちる。さらに学習して最後にはお箸を立てて、縁に添わせ器に入れ取れるようになった。
 食べる事は生まれてから一生ついて回る。自分でバランスの良いものを選ぶ力も養えると嬉しい。これからも健やかに成長してもらいたいと願っている。

断食で心身のリセット (下)

  大原興太郎 (津市 スローライフの会会員・放送大学生)

 断食の実感的恩恵は以下の通り。

 その1。断食をすると毎回、食べられることのありがた味を思う。たった3日食事を抜いただけで、重湯やお粥と梅干しが、こんなに美味しいのかと感じられる。回復食になると、1食1食に力が出てくる感じ。8月は原爆や終戦など戦争のニュースが多く、いまも戦火に苦しむ世界の人々に思いを馳せることがあった。食事をできることが、歴史的世界的に見ればとても有り難いことなのだと気付かされる。

 その2。断食中も股関節と肩関節をほぐすAOTAKEヨガ体操を続けられ、首周りの柔軟性はだいぶ改善した。腰痛がほとんどなくなり、腕・肩の柔軟性も改善した。いつも、なぜかわからないが関節などがほぐれる。

 その3。爪の色が桃色で循環が良くなっている。肌が少しツルツルしている。末端への血液循環が良くなっている気がする。

 全体としてみて、回復食の2、3日目に黒っぽい宿便が出るが、ここから体調は一気に良くなってくる。体も軽い感じで朝の散歩(速歩)のスピードも出てくる。心身とも調子良くなり、やる気も増す。

 断食期間の体重の変化は、ざっと4キロ減って2キロ戻り、経験的に何とか2、3カ月はこの状態が保てると断食をやってよかったと実感できる。

参考https://livedoor.blogcms.jp/blog/okaeri33/article/

厚底シューズの進出
  竹内玄 (東京都 スローライフの会会員)
 「ランニングをはじめました」というと、やっと健康に気を使い始めたのですね、と言われそうだが、そうではない。夏の終わりの富士登山に誘われ、止む無く取り組むこととなった。ひと夏だけだからと、特段の設備投資もせず、通勤用の運動靴で走り始めた。
 2週間ほど後に知人と走った際に「ランニングシューズは無いのか」と驚かれた。膝を守るために、ランニングシューズが必須だと言うのだ。
 私の若いころのシューズは靴底が薄く、路面の感覚を感じられるものだったが、今のシューズは厚底である。なんというか、走るとふわふわする。たしかに足への衝撃は少なく、蹴り出しやすい。何年か前に、マラソン界に厚底シューズが登場し、軒並み新記録更新のニュースを見たが、こういうことかとわかった。新しい経験を楽しみながら、夏の後半もランニングを楽しむことができた。
 さて、富士登山に向けて、登山用品店をのぞいてみると、厚底シューズの波は登山靴の世界にも進出していた。登山靴に関しては、硬く重圧で、足が守られている感覚が好きなのだけれど、と試し履きもせずに思ったところで、再び保守的になっている自分に気付いた。新しい世界に進出しなくては。

私の好きな佐賀の焼き物 (上)
  坂田啓子 (佐賀市 スローライフの会会員)
 佐賀には、有田焼、唐津焼、伊万里焼……と書いていると、なんだかとっても風格があって心静かに落ち着いた気分になっています。
 その中のひとつ、400年もの歴史を持つ伊万里鍋島焼といえば、白磁にきれいな絵柄が施された絵皿などを想像されることと思います。
 今回は少し前に実際に見て驚いたものをご紹介します。焼き物で作られたアトマイザー(香水噴霧器)なんですが、なんとなんと、見た目は「革」、革にしかみえない! 触っても感触が「革」っぽく柔らかいんです。もーびっくり。焼き物? えー!? というのが見せてもらった時の私の驚きようです。
 伊万里鍋島焼の畑萬陶苑さんが5年の歳月をかけて開発したそうです。「革」の質感を磁器表現として置き換える、5~7回もの焼成を繰り返し完成させる、と書いてあります。
 ブランドコンセプトに「鍋島焼が目指してきた世界でも類を見ない唯一無二の存在」「徹底的にこだわり続けてきたモノつくりへの精神」「日本的美的感覚を体現することで生み出す品格」と掲げてあり、本当に努力を重ねられて具現化されていることに感動です。写真を添付しますが、本物を見ていただきたいです。
 ぜひ、涼しくなったら窯元巡りに佐賀へお越しになりませんか。

もうひとつのライフワーク  (下)
  舟越隆裕 (栃木県日光市  珈琲CoCom)

 何度かのO.J.T.(実地研修)を経て、8月にビジットジャパン案内所のカウンターデビューを果たしました。
 初日からたくさんのお客様をご案内しました。道案内やら、バスの乗り方やら、日帰り温泉の紹介やら。そんな中、一番心に残ったのは、フランスからの素敵な雰囲気のご夫婦。世界遺産までのルートをご案内しながら、ちょこっと雑談しました。
 すると、帰り際に満面の笑みで「メルシーボク」の一言。涙が出そうになりました。このシーンは一生忘れません。
ボランティア始めてよかった・・・。

 

「災害の記憶 がれき富士」

  金井紀光(東京都新宿区 写真家)

 2018年7月広島県坂町。土石流で流出した岩石の集積場は、まるで、がれきでてきた富士山のようになっていた。

『スローライフ曼荼羅』

温泉文化

  野口智子 (ゆとり研究所)

 群馬県安中市「磯部駅」に降りると、「ここが温泉表記の発祥地」と石碑にありました。江戸時代の地図に「♨」のマークが出てくるのだそうです。それにちなんで、ここから日本の温泉文化を世界遺産にしようとお考えの大学の先生にお会いしました。なるほど、日本の温泉文化は独特、それだけの価値があります。私もかつて温泉文化研究会を立ち上げ、「日本温泉文化曼荼羅」を描いたり、『温泉道教本』を作ったりしましたっけ。また、むらむらと温泉文化を追いかけたくなりました。
https://noguchi-tomoko.com/post-10511/

『つべ小部屋』
一度だけの「聞く力」
  つぼいゆづる (スローライフ瓦版編集長)
 もう忘れている人も多いと思うが、まもなく退陣する岸田首相は「聞く力」を標榜していた。3年に及ぶ政権でいったい誰から何を聞いたのだろうかと考えてみると、一つ、はっきりと、「ああ聞いたな」と思えるできごとがあった。それは総裁選のときに掲げていた金融所得課税についてだ。
 2021年9月の総裁選討論会で、岸田氏は「従来の成長戦略だけでなく、分配も組み合わせた好循環をつくらなければいけない」と訴えていた。広がり続ける格差社会の弊害が問題化するなか、「分配」を強調し、さも株式の配当や売却益への課税強化をめざすという姿勢だった。だが、10月に株価が大幅に下落した途端、「当面は金融所得課税に触ることは考えていない」と、あっさり棚上げしてしまった。
 株式市場から発せられた大ブーイングを、しっかりと拝聴して受け止めたのだ。金融所得の税率一律20%の恩恵を享受する富裕層に優しい政治の継続を図り、持たざる者の民意には耳を傾けなかった。その挙げ句に「貯蓄から投資へ」の旗を振り、少額投資非課税制度(NISA)を拡充させる始末。あの「分配」は、どこへいってしまったのか。
 以下は本当にどうでもいい話。
 今回の総裁選で、岸田氏がとった一つの行動が、いかにも岸田氏らしかった。同じ派閥(宏池会)の林芳正官房長官が立候補を表明した日に、その宏池会の解散届を提出したのだ。岸田氏がいかに林氏を嫌っているのか、が見えた。

<編集室便り>

▽あの写真は誰が

 前回717号の冒頭の写真「水浴びするオオルリ」の「撮影者Hira-san」について、誰なの、どんな人、プロカメラマンなのかとの問い合わせが編集部にありました。お答えします。彼は「一般企業法務、金融機関関係、再生エネルギー、国際取引などを専門とする弁護士。1958年、大阪市生まれ」です。

 

▽9月 の「さろん」は高知県梼原町から
 11月9日・10日と「スローライフ・フォーラムinゆすはら」を開催する、梼原(ゆすはら)町はどんな町なのでしょう?吉田尚人町長のご登壇です。もうフォーラムにご参加を決めている方は予習のためにご参加ください。まだ、考え中の方はこれを機会にぜひ梼原行きの決定を。
日時:9月17日(火)19時からzoomで
タイトル:「雲の上のまちでお待ちします」
講師:高知県梼原町・吉田尚人(よしだひさと)町長
申込:9月14日(土)までにメールで slowlifej@nifty.com
参加費:「さんか・さろん」へはどなたでも参加できます。スローライフの会会員は参加費1000円、(年間参加費3000円を納めた方はそれでOKです。)一般は2000円です。

 

▽8月のアドレスフリーの「さろん」報告
 「さんか・さろん」第142回、2024年8月20日開催。タイトル:「社長自らアドレスフリーを実践 ペルーでワーケーション」講師:浦 聖治さん(クオリティソフト株式会社  CEO)。このお話をこちらからご覧いただけます。

●ホームページ https://www.slowlife-japan.jp/2024/09/05/%ef%bd%93-317/

●YouTub https://www.youtube.com/watch?v=kUUadjNdT1A

 

 

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