1月「さんか・さろん」増田寛也会長のスピーチ

1月の「さんか・さろん」は新春とあって参加者は40人。遠く岩手県遠野市、兵庫県淡路島からおふたりずつの会員も駆けつけ、お話のあとの懇親会はわきあいあいと情報交換。にぎやかな会合になりました。◆新春放談「日本の行方とスローライフ」◆増田 寛也(スローライフ学会会長 野村総合研究所顧問) =スピーチ要約=■お正月は厳粛な感じがなくなり残念 今年の正月は東京はずっと良いお天気でした。岩手から東京に居を移してからは、初詣は近くの日枝神社に行くのですが、階段下まで人がいっぱいでお参りは諦め、街を歩きましたが、コンビニは24時間開いているし、デパートも開いていて、普段と変わらない。 昔の東京は大掃除が終わって一夜明ければ、お店はみんな閉まっていて、街が静まりかえっていましたね。ぴーんと気分が引き締まって、厳粛な感がして、その方がどちらかというと好きですね。■気になる気候変動 ただ、岩手の話を聞くと今年は大雪で、停電もあったとか。天候不順は世界規模で、昨年中国に行ったときは、砂漠化現象が北京近くまで及んでいました。かつては「農業は大塞に学べ」と、山の木を伐り段々畑にし、灌漑するやり方を全土が真似たのですが、今は「退耕還林」がスローガン。耕作はやめて木を植え、林に還そうの意味で、中国でも環境破壊からの転換を掲げてます。それでも日本に来る黄砂は春に限らなくなって、中国の環境破壊の影響はまだ大きい。 中国の雪は薄汚れています。それに引き換え日本の雪は、白い。今、夕方銀座に行くと観光バスがずらっと並んで、大きな紙袋を持った中国の方たちをたくさん見かけますが、銀座よりも上海の方が進んでますよ、と近代化にはだんだん驚かなくなった。 でも日本の地方に行くと山紫水明、雪が白いと驚く。リピーターの皆さんは岩手をはじめ地方に行きたがりますね。■日本のまちづくりを学ぶ中国 岩手の知事になった16年前は、日本と中国の高速道路の長さは、7千キロと同じでしたが、今は中国は4万キロ。自主開発したという新幹線そっくりの高速鉄道が時速350キロで上海~南京間を走ってます。2050年のGDPは、日本は8番目。1位中国、2位アメリカ、インドも上位でインドネシアも7位で日本を上回っているとの予測です。やはり人口が影響しますね。 それでも日本が空気や水をきれいにする環境技術をはじめ、都市づくりでは2歩も3歩も進んでいる。あるいは高齢社会の問題も含め、中国の先を行っています。 私は東大で教えてますが、中国の政策担当者が、都市政策を学びに来てます。日本が人口膨張したとき、郊外に人口移動して都心が空洞化した。今は、青森市が有名ですが、都心に人を回帰させて、コンパクトシティ化を図っている。同じことが中国で2~30年後に起こるはずだからと、人口膨張時の都市づくりと交通混雑の解消の仕方、また、その後の回帰の手法と土地利用コントロール、防災、高齢社会への対応等々と、日本の行政運営を真剣に学んでます。■中国がスローを見直す日も来る 中国は今はスピード一辺倒でスローライフの価値はぴんとこないかもしれない。しかし、日本の地方が美しい景観とその地域らしいライフスタイルを維持していることが、必ず評価される日が来るはずですね。 学ぶべきは都市づくりだけでなく、地方も含めた日本の多様性ということになると思います。 暮れから正月にかけて井波律子さんの『中国名詩集』を読みましたが、中国の人々の心や自然の美しさに改めて驚きました。中国にスローな価値が再びどのように浸透していくかまだわかりませんが、あの漢詩文化のある国ですから、そう遠くはないかもしれません。 〔2011年1月18日開催〕