瓦版2011.3.29第49号

週刊スローライフ瓦版 (2011.3.29 第49号)
発行:NPOスローライフ・ジャパン
スローライフ学会
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「瓦版」の先週号は、東日本大震災の特集といった形になりました。
これからも応援を続けながら、充実した「瓦版」にしていきたい。
「街角から畦道から」「まち・むらニュース」への原稿をよろしく。
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このメールは毎週火曜日の発行です。NPOスローライフ
ジャパンとのご縁を頼りにお送りしています。初めて受信
される方も含めて、お気軽にお付き合いください。
コラム<火曜日の鐘> 早野 透(桜美林大学教授)
~~~ スローライフ運動も問われている

日本列島を襲った巨大地震、私も福島県いわき市のさる避難所に、友人とと
もに車を駆って料理を届けてきました。家が、道路が、港が無残に破壊された
荒涼とした風景を縫ってたどりついた小学校の講堂には、地震、津波、火事に
襲われ、さらには原発に追われて逃げてきた人たちが肩をよせあっていました。
でも、おばちゃんたちは、自分も被災者なのに強いですね。食事の手配、お
年寄りの世話などを仕切って走り回っていました。
原発システムの崩壊は、現代文明の脆弱性を浮き彫りにしました。
今後、日本人のライフスタイルの変化をもたらすでしょう。スローライフ運動
が豊かな社会の趣味的生き方なのか、それとも人類文明の転換点なのか、根本
的に問われるときが来たようです。

学会コラム<緑と絆の木陰>
~~~~~
神野直彦(東京大学名誉教授) 「罪」を背負いてスローライフ

その日はスローライフを決め込んで、万歩計をセットして17時30分に、ゆっ
くりと霞が関を歩き始めた。お茶の水を通り過ぎて、東京大学に辿り着いた時
には、もうすっかり日が沈んでいた。暗き歩道を孤独に歩く。孤独といっても
本郷通りの歩道には人が溢れ、車道には自動車がひしめいていた。
私は常に「TUMI」というメーカーのリュックに重い本を詰めて歩いている。
重い「TUMI」を背負うと、重い「罪」を背負いながら生きている私を象徴して
いるようで、心が安まるからである。
駒込に差し掛かると「TUMI」の重さが気になり出した。ふとみるとラーメン
と書かれたほんのり赤い提灯が、人恋しげに揺れていた。その提灯に誘われて
暖簾をくぐる。「いらっしゃい」と愛想よく声をかけてくれた。近所の人が飛
び込んできて、地震で停止したガスを復帰させる方法を聞き、人の良さそうな
女将が、懇切丁寧に教えているのが微笑ましい。
心が温まる思いで店を出て、王子から赤羽へ。南北線が動き始めるという。
我が家はさいたま市の浦和にあるので、南北線で浦和美園まで行けばタクシー
がつかまるだろうと思い、動き始めた地下鉄に乗車した。
ところが、浦和美園にはタクシーの姿はない。あるのは、寒風に耐えながら
並ぶ人の長い列だけである。同じさいたま市といっても、我が家まで、10キロ
メートルほどもある。人の姿もないどころか、寒風が吹きつける暗い見沼田圃
を抜け、我が家に辿り着いた時は、3月12日午前1時になっていた。万歩計に
目をやると、5万歩近くになっていたので35キロメートル程度を歩いたことに
なる。
義理堅い中国の国務院発展研究センターの林家彬部長が、直ちに安否を尋ね
てきた。5万歩近く歩いたけれども、無事だと伝えると、「35キロメートル歩
いたのであれば、その半分の17.5年は生きますよ」と喜んでくれた。
歩く距離が寿命に関係すると知っていれば、もう少しスローに遠回りすれば
よかった。5月に来日する林部長に、重い「TUMI」を背負っていたことを考慮
し、あと2年か3年寿命が延びないか交渉してみるつもりである。
■東日本大震災をおもう ~ 街角から畦道から ————————
「がれき」から「たから」を蘇らせるプロジェクト 塚本英樹、藤井頼暁
(アース デザイン インターナショナル・EDI)
東日本大震災で、多くの町が瓦礫に。尊い命が奪われただけでなく、大切な
思い出も津波で流された。他人にとってはガラクタであっても、お金では買
えない大切な大切な宝物が山積みとなって散乱しています。
それが、がれきの廃棄物として処理されてしまうことはとても悲しい。
がれきの中から大切な宝物を見つけだすお手伝いできないものか。わが社の
システム「えころび」は、ITを活用し廃棄物の管理と監視を行う仕組み。
家具、めがね、アルバム、時計、位牌、それに車・・。地域の人々に大切な
思い出を蘇らせてあげることが私たちの希望です。
津波で流されず残った建物や土地の持ち主は、津波が運んできた山積みの品
が、廃棄物か財産なのか、だれのものか、どう扱えばいいのか、わからない。
県の廃棄物対策課などに問い合わせる事例が増えています。
そこで、わがシステム「えころび」を活躍させたい。ITを活用し廃棄物の
管理・監視をさせたい。この仕組みを、震災復興のために無償利用いただく
ことにしました。さまざまな画像を現地から送っていただいて、その情報を
登録しておく。それらは地域を指定、閲覧することができて、持ち主がわか
れば報告することができます。
私たちも、県庁やボランティアセンターなどと連絡をとっていますが、津波
被害が広域であること、電話などのITインフラが整っていない、面談でな
いとシステムの説明が難しいなど、やきもきしている状況です。
関心のある方は下のサイトをご覧ください。
登録の手順などを記した説明書も準備しております。
また、こんな仕組みがあることを広くお伝えいただければ幸いです。
http://www.ecorobi.com/ganbare.pdf

南三陸町、復興に着手 永田英雄(NPO法人交流・暮らしネット 千葉市)
大震災から2週間余り経った。被災地区のひとつ、町家の7割が津波に流さ
れた南三陸町では、震災3日前の8日に、滞在型ツーリズム・キャンペーン
=【のんびりステイ~南三陸】http://www.m-kankou.jp/nonbiri/ を発表
したばかりだった。キャンペーンの最終作業で3月4日まで現地に滞在して
いた見慣れた町の情景が、瞬間跡形もなく消え去ったことに、呆然、言葉を
失う。これだけの天災に見舞われても、東北の人々の我慢強く、つつましい、
気丈な言動には、全く頭が下がる。自然の脅威を知り尽くして賢く折り合い
をつけながら生業を営んできた父祖伝来の心映えだろうか。
都会でぬくぬくと育った元小説書きの、“天罰などという舌足らずな指弾
は、おおよそ筋違いというものだ。
体育館の敷地の一角に、町役場の臨時プレハブ庁舎ができた。だが、住民基
本台帳はじめ、一切の書類やパソコンが消失した中で、ゼロからの復興作業
開始となる。多くの役場スタッフの行方不明がこれにかぶさる。
町復興の困難な仕事を軌道に乗せるには、町外の専門家や応援隊の長期的な
支援が、不可欠に違いない。
手元に、2007年刊行の「南三陸町町勢要覧」がある。在庫はそっくり流れた
と思われるので、勝手にPDF化して、サーバーにアップした。
⇒ http://www.slowstay.org/pdf/m-sanriku_2007youran.pdf
ここには、滋味豊かな生活ぶり、歴史と文化に対する誇り、未来への想いが
凝縮されている。リアスの海を縁取っていた東北沿岸の街々が、何れかの日
に、その輝きを取り戻すことを、切に願う。
心から元気で生きててくださいと願います 中村友子(ライター 千葉市)
頭の中が知識の渦のような人の「天罰」発言は、相変わらずの心ない人間性
を強く感じます。福島の原発事故で、地元の人が「もう少し東京の人たちが
電力を使わないでくれたら・・」と新聞に書かれていたと思います。たった
一人の言葉かもしれませんが、日本の中心が東京だと豪語している「天罰」
発言の主に、何とかもっと灯りを減らす暮らしを考えてもらいたいです。
CMで「・・・こだまでしょうか」という金子みすずの詩が話題になっている
そうです。心に響き、力を与え、落ち着く言葉の使い形は、こうゆうものだ
と思います。買占めなどの状況を見ると被災地とそうでない場所との温度差
を感じますが、節電しましょう。深夜番組は自粛を考えて欲しいです。
■まち・むらニュース ————————————————
・北海道 「北のめぐみ愛食応援団」を募集中
道では、地産地消、食育、北海道に合った「スローフード運動」を総合的に
進める「愛食運動」を展開しているが、さらに道民が「愛食運動」に関する
意識を高め、主体的に行動するための「北のめぐみ愛食応援団」をつくる。
企業や団体、グループを「応援団」として登録、道からの情報提供を通じて
それぞれ自発的な取組みを促進、また道民と協力し合う愛食運動を展開する。
お問い合わせ:北海道農政部食の安全推進局食品政策課販路拡大グループ
TEL:(011)231-4111(内線:27-666、27-668)FAX:(011)232-7334
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ns/shs/dosanday/ouendan.htm
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「KDDI」から・・・
KDDIのCSRはTCS (Total Customer Satisfaction: トータル・カスタマー・サテ
ィスファクション)」と位置付けています。詳しい取組みはこちらを。
http://www.kddi.com/corporate/csr/idea/index.html
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「たかおか屋」から・・・
東日本の大災害。あまりのひどさに何も残らず、再開のメドさえたたず。
今、日本中・世界中が復興を願って(応援して)います。
http://www.takaokaya.jp/news/2011/03/21-155145.php
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コラム<象さんの散歩> 重苦しい空気の中の統一地方選挙・・
~~~
この見出しは、タウンペーパーからの依頼で書いた原稿のタイトルである。
重苦しさは、大震災で延期の選挙が続出という日程のことだけでない。
そもそも意義重く、深刻さをもつ選挙。地方分権をどうつくるのかが根底に
ある。「地域主権戦略大綱」改革が進み、都道府県・市町村にとって、必須の
論点のはず。河村たかし名古屋市長、橋下徹大阪府知事らが提起した自治体の
二元代表制とか政令指定都市制度、加えて道州制などの憲法論議も出ている。
平成の市町村合併がもたらした「まちづくり」もあらためて問い直されよう。
何よりも中央政治が混迷と動揺の極にある。二大政党が民意を回復できず、
候補者も党色をぼかし、政権、政策選択の態をなさない。そこへ震災。対決色
の薄い危機管理、防災計画が最大の争点に。あれもこれも重苦しい。
このペーパーは「4月1日」号と聞いて、石原慎太郎氏の天罰発言を戯画化
したようなエイプリールフール原稿を書きたかったが・・ ∧ 川島正英 ∧
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「日光『食』の研究所」から・・・
「計画停電」は、確かに不便で大変なものですが、今は国家の一大事。皆様も
発想の転換で数時間の「スローライフ」を楽しまれてはいかがでしょうか。
http://nikkokekko.blog121.fc2.com/blog-entry-97.html
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クオリティライフから・・・
春は、ほろにがく、香りの強いフキノトウやウドなどがおいしい季節。
夜のメニュー「本日の野菜コース」4800円で力強い春の野菜を存分に。
http://earth-art-cafe.com/?page_id=287
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コラム やまさかのぼる <暦と季節と暮らしと>その43
~~~ 年度の区切りを大切に
遅きに失しますが、まず、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
本欄も2週休ませて頂きました。筆者自身は東京で帰宅難民になり職場で床
に寝て一晩過ごした程度でしたが、テレビなどで被災の状況を拝見して、本欄
に適した言葉を失いました。でも、そろそろ小生もガンバロウと思います。
季節の移り行きに思いを馳せる心の余裕はないのですが、もう3月も終わり
で、あと3日で4月です。公共でも民間でも新しい「年度」がスタート。1月
4日の本欄でお話ししたように、「年度」は仕事の成果をまとめ、その説明責
任を果たすための区切りです。今回は大災害のために区切りどころではない方
々が多いのですが、そういう区切りの意義は記憶しておきたいものです。
被災者の皆さんの暮らしが一刻も早く安定することをお祈りしています。

コラム 野口智子<スローライフ曼荼羅> ふなずしパイ
~~~
滋賀県守山市。かつて商店街を元気にするために一店逸品運動をすすめていた
とき、ここの名物・鮒寿司を使ってお菓子ができないかとみんなで考えました。
研究会メンバーのお菓子屋さんが、あの強烈な臭いと戦いながら失敗を重ねて
「ふなずしパイ」ができあがりました。先日、10年ぶりに守山へうかがうと、
パイは今も健在、すっかり守山の名物として根付いていました。
http://noguchi-tomoko.com/modules/yutoriaruki/details.php?blog_id=98
■事務局からのお知らせ
△4月の「さんか・さろん」は、半農半Ⅹの哲人・ 高坂勝さんをお招きします。
高坂さんは『減速して生きる ダウンシフターズ』(幻冬舎刊)の著者。池袋で
手作りのオーガニック・バーを経営する。7年前に開いた。回転率よりも客との
対話、週休2日と季節ごとの長期休業という「減速」思想のバーで、半農半Ⅹを
推奨する人生哲学は、多くの人びとの共感を呼んでいる。
大手百貨店営業のトップセールスマンを30歳でリタイア、世界を放浪したという。
いままさに、東日本大震災の山形・宮城で被災者支援のお手伝い真っ最中。その
様子は高坂さんのホームページでぜひ。http://ameblo.jp/smile-moonset/
推薦者は、いつも会場をお借りしているクオリティ(株)の浦聖治社長。
○日 時……4月19日(火)19時~20時30分(18時40分受付開始)
○場 所……平河町Mercury Room (千代田区平河町1-4-5
平和第一ビル6階 クオリティ(株)会議室)
○テーマ……「減速して生きる ダウンシフターズ」
○講 師……高坂 勝(こうさか まさる)さん
バー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」経営者
○主 催……スローライフ学会
○参加費……スローライフ学会会員1000円、一般2000円。
(学生500円、講師の紹介者1000円)
※終了後、希望者で簡単な懇親会を行います。会場は、当日お知らせします。

△筑紫哲也賞「作文コンクール/神話・民話を読み継ぐ」の入賞作品集をネット
上(e-book)で公開中!
◆「上巻」→ http://www.slowlife-japan.jp/web_vol1/flipviewerxpress.html
◆「下巻」→ http://www.slowlife-japan.jp/web_vol2/flipviewerxpress.html
△スローライフ学会へのお誘い
スローライフ学会はNPOスローライフ・ジャパンが運営する学会(学長・
神野直彦、会長・増田寛也)です。
スローライフについて多くの分野から学び、楽しく語り合う。また、全国で
スローライフなまちづくりをすすめる皆さんとのつながりでもあります。
年会費5000円。会員は、この「瓦版」に記事を出したり「さんか・さろん」
などで交流したりできます。「学会便り」や、各種ご案内もお届けします。
また、学会申し込みはこちらから↓
http://www.slowlife-japan.jp/modules/liaise/index.php?form_id=5
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■いつも応援していただき、ありがとうございます。
日本テレネット株式会社
http://www.nippon-tele.net/
クオリティ株式会社
http://www.quality.co.jp/
KDDI株式会社
http://www.kddi.com/
株式会社ダイイチ
http://www.co-daiichi.co.jp/boring.html
アース・デザイン・インターナショナル(edi)株式会社
http://www.edi.ne.jp/
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最後までお読みくださって、ありがとうございました。
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