瓦版2024.4.9第708号 斉藤睦さんほか11人のコラム掲載

スローライフ瓦版 (2024.4.9 第708号)

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発行:スローライフの会

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 みなさんはもう、お花見をされましたか。それとも、これからですか。場所はどこですか。お近くの公園や川沿いの並木でしょうか。毎年、同じですか。あるいは今年は旅先で、という方もいらっしゃるでしょうか。それぞれの「花見の宴」で、笑顔があふれている模様を思い浮かべながら、今回の瓦版をお送りします。「花冷え注意」の言葉を添えて。

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ご感想を下記にお寄せください。

slowlifej@nifty.com

 

■コラム 緑と絆の木陰

 

 

ハレとケ

  斉藤睦(地域総合研究所 顧問)

 

 民俗学者の柳田国男先生はハレとケという言葉で生活を区別しました。

 ハレは非日常の時間を指し、祭りや式典のように、晴れ着とご馳走で祝う日で、ケは変り映えのしない地味な日常を指すと柳田先生はいいます。わたしたち日本人にとって、ハレは人生の華であり、ハレを晴れやかに過ごすため、ケのいわば退屈な時間をやり過ごすといった趣も、この二つの言葉にはあったように思います。

 どうも天邪鬼な性質もあってか、私はハレの行事は苦手。早く終わってしまえばよいなどと思い、むしろケの日常のほうに魅力を感じます。

 何気ない繰り返しの日々が、たまらなくいとおしく、ケこそが心わくわくするハレであり、先生のいうハレはむしろさっさと行き過ぎたいケとすら思えます。

 なぜ、こんなにもハレとケが気になるのか。多分、世界に多発する地震や洪水、無残な戦地の光景が、何気ない普段着の日常の豊かさに気づかせてくれたからかもしれません。

 朝の陽の光。変り映えのしないいつもの食器と料理の食卓。散歩で目にする草花や互いにあいさつを交わす人々の姿。このスローないつもの日常こそ、晴れ晴れとしたハレのときではないか。ふと、そう思う今日この頃です。

 

 

■あっちこっちで多事争論 (会員投稿)

 

 

長崎ー東京ぶらぶら節
  高橋征吾 (東京都 スローライフの会会員)

 

 スローライフ瓦版3月26日号で長崎市・赤坂伸子さんの「坂と階段のまち、長崎」を拝読し、僭越ながら「あっちこっちで多事争論」の意義が光るご投稿だと思いました。

 同県出身である私にとって長崎市の印象は「坂が多い大変な街」というものです。ですが坂道を歩くことで有酸素運動になり、10キロの減量に成功するという”成功体験”からは、先入観のない移住者だからこそ示される気づき、新鮮な視点をいただくことができました。

 『病気の9割は歩くだけで治る!』(長尾和宏著、ヤマケイ文庫)という本がありますが、これによれば大正時代くらいまでの庶民は実に一日三万歩は歩いていたそうで、高血圧、糖尿病、不眠症、うつ病、認知症などの現代病と運動不足の関係性、そして歩くことの重要性が語られています。

 私は都心暮らしではありますが、まずは地下鉄の上り下りの階段を身近な坂道だと考えて、せっせと歩くことから始めてみたいと思います。

 

 

野口さんの「スローライフ曼荼羅」を読んで。
  佐藤政直(北海道美唄市 地方公務員)

 

 つい先日、TBSの報道特集で安楽死のドキュメントが放送されました。その中で、いま亡くなろうとしているにもかかわらず、とても希望に満ちているような表情の人を観て、これも選択肢のひとつなのかと複雑な気持ちになりました。

 野口さんのお母様は、高齢で無理のできない身体で、おむつ替え等の介護も必要な状態とのことですが、笑顔がとても素敵で、お母様の「何でも、ありがとうと言うのが大事だね」という言葉には、多くの人が勇気づけられると思います。

 ”死”を選ぶことで希望を見出した方と、”ありがとう”と感謝することを選んだ野口さんのお母様。どちらにも正解・不正解はないものですが、どんな困難な中でも、感謝の心を生きる希望にしていきたいと感じたところです。

 

心も空間もお互い様のバリアフリー
  武南千賀子(大阪府堺市、スローライフの会会員)

 

 スローライフにあこがれています。されど自分の生活は多忙を極めています。職業は社会福祉法人「野のちから」理事長。小さな法人ですが、精神障がい者の方たちの働く場を作り続けています。堺市内に5カ所の事業所があり、そのすべてがちょっとしゃれた喫茶と食事のお店です。コンセプトは地域の居場所づくり。心も空間もお互い様のバリアフリー。毎日沢山のお客様でにぎわっております。

 理事長の私の出勤は一番早く、毎日100食の昼食作りから始まります。食は体と心を作ります。産直のお米、みそも手作り。麹も作ります。野菜は近隣の農家さんから。仕事柄、心の問題と食が大きく関わっていることを実感しており、良いものを食するという法人の姿勢、私のこだわりが、地域との結びつきに大きな役割を果たしていると自負しております。https://nonochikara.jimdofree.com/

 

濱口梧陵翁は、どう「偉い」のか?
  山下茂(東京都 スローライフの会会員)

 

 前回お話した耐久舎の創立者・濱口翁は多くの社会貢献をされました。ウィキペディア、地元・和歌山県広川町「稲むらの火の館」のホームページ、先日のNHKテレビ番組(3月31日「明日をまもるナビ」。再放送や見逃し配信ありか?)などを参考にして下さい。

 翁は、2歳の時に父死没という困難の中で成長し、家業のヤマサ醤油(紀州から銚子に進出していた)を経営しつつ、津波の後は私財を投じ村民に賃金を払って「広村堤防」や被災者用住居を建造し生活再建を促すなど復興に尽力。全焼した江戸の種痘館(東大医学部の前身)の再興に多額の寄付をするなど医学の支援もしました。

 政治でも、紀州藩で勘定奉行、和歌山県でも大参事など中枢幹部となり、中央で駅逓頭(現代なら郵政大臣)に就任、県会では初代の議長など、地方も中央も要職を務めました。惜しむべきは、国会開設(明治23年・西洋暦1890年)より前、米国視察中に客死されたことです。リーダーとしての資質が豊かで、多彩な社会貢献もされた濱口翁が国会で活躍されたら・・・・・・、残念。

 

 

濃密な時間を共有した留学生との交流
  大原興太郎(三重県津市 松阪農業公園ベルファーム・指定管理者)

 

 私が定年までいた三重大学生物資源学研究科に博士課程が作られたのは1991年のことである。たまたまその翌年から教授の仕事をすることになったが、博士課程の学生を育てることは暗黙のプレッシャーであった。

 若い日本人院生を確保することはとても難しく、留学生や社会人院生がターゲットであった。中でもそのころ中国からの留学生が多く日本を目指してくれていた。アジアとの関係を大事にしたいと考えていた自分は来るものは拒まずで、大学での専門が異なる学生も含めて定年まで十数名の留学生の主査やお世話をした。

 その彼・彼女ら中国学友会約30人が3月末に三重大を表敬訪問してくれたが、その中に私の元研究室の4人(博士2人、修士2人)が含まれていたので自宅に招いた。3人は卒業後に中国でも会っていたが、1人は33年ぶりの邂逅だった。身元保証人などから始まり、何とか修了にこぎつけるには双方がたいへんだった分、筆舌に尽くしがたい楽しい時間だった。

詳しくはこちらを見ていただきたい。 http://blog.livedoor.jp/okaeri33/

 

良心は蕾から開花するか
  大山皓史(千葉県松戸市 弁護士)

 

 この3月末で東京都港区の社会福祉協議会の第三者委員を退任するにあたり、福祉の現場に関わる区の職員に、日本社会の現状をどう見るか意見を述べて退任の挨拶とした。

 改めて言うまでもないが日本は民主主義国家である。国民が主権者なのだが、立法・行政・司法の統治機構の中で実権を握っている指導層は生の現場を知らない。

 そして自分達が権力主体であると驕り、国民を見下して国民の生活向上よりも自分達の既得権益を優先しているように見える。もちろん統治機構の内部にも良心的な公務員はいる。しかし行政権力の上位者の過った恣意的決定に異議を述べるような行政内部の良心者は孤立し権力者から排除されがちだ。身近な人は良心者を孤立させずに支えてほしい。さらに国民は、不適切な政治権力の行使者に対し、主権者としての立場から良心の蕾を開花し、権力者の過ちを是正させる投票行動をしてほしいと思う昨今である。

 

 

被害者なくして核兵器の批判は成立するか
  柴山恵美子(東京都 スローライフの会会員)

 

 この映画はこの小道具がないと成立しない。観終わってそう思う映画がある。以前、格差社会を描いた映画が、世界で立て続けに評価されたことがあった。発表順に、「万引き家族」、「ジョーカー」、「パラサイト」だが、この時は、それらの小道具が作製された国を象徴しているなと思ったものである。アメリカ発のジョーカーでは「拳銃」、韓国発のパラサイトでは「スマートフォン」、これらはドラマに必須のアイテムだ。日本発の万引き家族は・・・・・・、と考えていたら、「ドライブ・マイ・カー」が何かの映画賞を受賞した。

 そして遂に、アメリカ発、核兵器がないと成立しない映画がやってきた。公開中の「オッペンハイマー」。当初、被爆者が描かれていないとの批判もあったが、日本は映画ならじとも、原爆がなければ創作し得ない作品を多数世に送ってきた。今の時代、加害者側のみの視点を持った作品もあってよいと思う。敢えて被曝の実態をさけ、アメリカを出ないで描かれることに意味がある映画だ。

 

 

老いとは厄介なものです(上)
  竹内義昭(神奈川県平塚市 スローライフの会会員)

 

 80歳をこえた昨年秋以来、4回も転倒が続いた。10月4日、自宅から平塚駅に向かう途中、杖代わりに持っていた傘を側溝の穴に突っ込んだはずみで顔面から倒れたのが事の始まり。2度目はその2週間後、病院帰りの新宿駅の階段を登ろうとして手すりをつかみ損ねて、階段の角でしたたか腕を擦りむいた。1か月後、築地のがんセンター前でバスから降りる際にステップを踏み外し、歩道上にバッタリ。3回とも近くにいた若い人たちが駆け寄って来て「大丈夫ですか」と声をかけてくれた。世の中、捨てたもんじゃない。

 4回目は大晦日の夜、寝室で着替え中に転んで、ベッド脇の木製家具に額を打ち付け、大出血した。その場は、薬箱の消毒液と絆創膏で応急手当をしてしのいだ。正月2日に透析病院で医師に見せたら6針も縫われてしまった。おまけに腰を痛め、ベッドから立ち上がるのに、一時は2時間もかかるように。何故転んだのか、いまだにわからない。さらに年が明けても苦難が続く。(つづく)

 

 

■まちむらニュース

 

・岩手県大槌町 自然満喫プチハイク ~つつじ回廊と湧水めぐり~

 

 三陸鉄道大槌駅から三陸ジオパーク認定ガイド資格のある観光ガイドと一緒に歩きませんか。「みちのく潮風トレイル」のコースになっている城山公園(大槌城跡)を登り、大槌の誇る湧水流れる源水川、近年希少種のミズアオイが発見された郷土財活用湧水エリアを通って大槌町駅に戻るコースです。お早めにお申し込みを。日時:4月28日(日)9時00分〜12時30分、参加費:500円、催行人数:20名、集合:三陸鉄道大槌駅、問合せ:大槌町観光交流協会℡0193-42-5121、詳細申込:https://otsuchi-ta.com/experience/?p=8095

 

 

■スローライフ曼荼羅

 

生理の歴史
  野口智子(ゆとり研究所)

 

 「月経から宇宙へ」。これは私が20代初めに雑誌に書いた原稿のタイトルです。当時、女性解放運動のようなことに目覚め、「月経は恥ずかしくない。毎月、生身の身体と向き合う女性こそが未来へ向けての発想ができる」というようなことを力説しました。それから50年、生理という言葉が定着し、スーパーで生理用品は山積みになる今です。先日、渋谷パルコで「生理の歴史」展があり、行ってきました。

https://noguchi-tomoko.com/post-10304/

 

 

 

■つべ小部屋

 

安倍さんは何と言ったのか
  つぼいゆづる(スローライフ瓦版編集長)

 

 処分だ何だと、だらだらと続く自民党の裏金問題での茶番劇を見ながら、ずーっと疑問に思っていることがある。世間では、安倍晋三さんが裏金をやめるように言ったのに、いつのまにか復活した経緯について、誰がどこで決めたのかが問われている。だが、私が解せないのは、なぜ安倍さんは「やめよう」と言い出したのか、だ。

 報道を普通に読めば、安倍さんは裏金を廃止しようとした。だが、安倍さんが派閥幹部たちに「違法だからやめる」と明言していたのなら、幹部たちも簡単には復活させにくかったのではないか。それをすんなり戻したことから見えるのは、そもそも安倍さんも違法な行為をやめるという発想ではなかったのだろうということだ。

 だとすれば、安倍さんが廃止を唱えた理由は何だったのか。そう思っていたら、政治取材の長い知人から一つの仮説を聞いた。どこの新聞にも載っていないので、いわゆる憶測の域を出ないが興味深い。知人はこう言った。「安倍さんは『俺の派閥のパーティーで集めた金は全額、俺のもの。俺に入るのが筋だ。ノルマ以上を戻す現状の仕組みはおかしい』と言ったんだよ」

 政治倫理審査会で、安倍派幹部たちは、従来のキックバック方式ではなく、派閥がその議員のパーティー券を買う形で戻す案も出た、と口をそろえていた。これは要するに知人が述べたように、「安倍さんの金なのだと明確にし、その差配も安倍さん本人が仕切ることで自分の権力掌握の手段に使う」という意味ではなかったか。さもありなん、と思えてならない。

 

 

 

■編集室便り

 

▽4月の「さんか・さろん」は「フクシマ」の写真を見ながら。

 

 「フクシマ」のことを忘れないために、という企画です。現地へ通い続けている金井さんの写真作品を糸口に、あらためて皆で「フクシマ」のことを語り合いましょう。

日時:4月16日(火)19時から20時30分まで。zoomで。

タイトル:「フクシマを見つめて」

講師:金井紀光(かないのりみつ 写真家・現代写真研究所講師)

申込:4月13日(土)まで。メールで。slowlifej@nifty.com

※詳しくはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2024/03/31/%ef%bd%93-298/

 

▽会員の方は、新年度の会費をお願いします。まだ会員でない方は、ぜひご入会を。

 

 2024年4月から2025年3月までの会費お納めいただきたく、よろしくお願いします。なるべく4月中にお納めいただけますと助かります。まだ会員でない方は、これを機会にぜひお仲間に加わってください。

  • 年会費:一口 5000円(何口でも)
  • 「さんか・さろん」参加費:年間 3000円(年間支払いでない場合、会員は一回1000円、非会員は2000円です)

会員は「スローライフ瓦版」に投稿できるほか、「さろん」「フォーラム」などの催しに安く参加できます。

この会は皆様の会費とボランティア作業で運営しております。今後の活動に向けてぜひご協力ください。

  • 振込先

ゆうちょ銀行 振替口座 00190-4-595293 スローライフの会

※他金融機関からのお振込みの場合は

店名:〇一九(ゼロイチキュウ)店、預金種目:当座  口座番号:0595293、スローライフの会 まで。

 

▽「さんか・さろん」カリキュラムです。

 4月から来年3月までの年間カリキュラムが決まりました。毎月第3火曜日、zoomでの勉強・意見交換会。楽しみながら、参加しながら学びましょう。

※詳しくはこちらから https://www.slowlife-japan.jp/2024/03/28/%ef%bd%93-297/

 

▽3月の「さんか・さろん」報告です。

こちらからご覧ください。「スローライフ瓦版5つの心得」が載っています。

https://www.slowlife-japan.jp/2024/03/23/%ef%bd%93-294/

 

 

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※今までこのコーナーで、応援いただいていた自治体、企業のお名前を掲げてきましたが、3月末でひと区切りとさせていただきました。ご了承ください。

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