日光・全体会会報告


「スローライフ・フォーラムin日光」の内容報告。全体会のご報告です。
前日から参加の方々は日光市栗山地域の湯西川温泉へ。雪の中、開催中の「かまくら祭り」を見学しました。
一方、全体会会場の鬼怒川温泉駅前は晴天。同じ日光市でもこんなに天気が違うとは!日本で3番目という広い面積を実感しました。
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・2月12日(日)13:30~16:00 藤原公民館
・テーマ 『「交流」-いまあるもの あたりまえが輝く』
・参加者 120人
・パネリスト
神野直彦さん (東京大学名誉教授)
山田 功さん (特定非営利法人足尾まるごと井戸端会議代表)
平 英一さん (川俣自治会長)
野口智子さん (ゆとり研究所所長)
坪井ゆづるさん(朝日新聞論説副主幹)
斎藤文夫さん (日光市長)
・コーディネーター
増田寛也さん (野村総合研究所顧問)
・司会
長谷川八重さん (NPO法人スローライフ掛川)


シンポジウムでは市長からご挨拶をいただき、神野直彦さんからキイノートスピーチを。続いて2日間の分科会の報告を、野口智子さん(足尾分科会)、坪井ゆづるさん (栗山分科会)から。その後、いよいよ話し合いとなりました。以下、皆さんの意見を要約しご紹介します。

神野直彦さんの基調スピーチ(略)
粗野なアメリカのライフスタイルに対するアンチテーゼとして起きた運動が、スローライフ運動。グローバリゼーションに対抗するもの。日本はファストなライフスタイルに席巻された。大規模な店舗が展開、コンビニエンスストアが瞬くうちに津々浦々に広がった。これに対してスローライフ運動は。スローライフは他の文化と交流することを拒否し、それぞれの地域の文化を守れ、ということではない。交流・国際という言葉は、インターナショナル、つまりナショナルなものが存在してそれぞれを磨きながら、お互いインターさせる。これがインターナショナル。グローバリゼーション、アメリカの粗野な文化を押し付ける、そういう画一的なライフスタイルを拒否していく。それがインターという考えであり、交流という考え方だ、とスローライフでは考えている。
これを日本人の素敵な知恵で表現すると、どういう日本語になるのか。それは「ちゃんぽん」。ちゃんぽん、こそ交流の本質。長崎ちゃんぽん。あれはオランダの文化と中国の文化と日本の文化を「ちゃんぽん」させるが、それぞれの文化を否定しない。それぞれの文化の良いところをそのまま、存在させて混ぜる、交流させる。(略)

少し踏み込んで、観光とは何か。お釈迦様の教えでは、観光の「観」というのは悟りを開くという意味。「光」は明るいもの、明るいものから連想される希望を見る。希望を見て新たな悟りを開くこと。これが観光である。(略)
私たちが今、観光を考えるとすると、スローライフの考え方に立てば、グローバリゼーションが押し付けてくるような観光ではなく、それがもたらしてきた観光化への不安を克服するような、新しい観光がつくられるはずで、そのことは、私たちがその地域社会で培ってきた伝統的なライフスタイルを切り売りする悲しみではなく、今のように交流させるということがポイントになる、ということを最初の問題提起だ。
◆スピーチ全文→ http://www.slowlife-japan.jp/modules/bulletin1/index.php?page=article&storyid=30

山田 功さん
足尾町は、公害の原点とも言われる土地。なかなか足尾出身と言えなかった。今は地元愛に駆られてガイドを担当。お客さまに、足尾の、光と影を伝えている。日本の近代化の産業を支え、近代化の先駆者として足尾が果たした役割はどなたも否定をできるものではない。一方、その影として大きな社会問題も抱えている。ただ田中正造元代議士はヒーローであって、片や古河市兵衛は悪党と言われる。いや違う見方があるんじゃないかと、自分なりに、資料を見たり、勉強させてもらっている。今、小学生高学年対象の小冊子ガイドブックを編纂をしている。また昔の足尾の良い所も悪い所も両方知ってる年配の方がまだまだ健在なので、聞き取りをさせてもらっている。足尾はここで暮らせる産業おこしが一番大事と考える。

平 英一さん
栗山地域では、昔のままの郷土の「食」、石焼、ばんだい餅などが。「まつり」では、獅子舞、国の重要無形民俗文化財である元服式など、昔のままの形でまだ数多く残っている。これらの地域文化遺産を、ずっとこのまま続けていきたい。観光交流については、いかに本物を皆さんに提供して、見て、聞いて、味わって、触れて、そうした体験をしてもらって、ということが大事。地元と、交流される方と、まさに互いに五感を通して満足感を互いに共有する、ということが大切と昨日の分科会を通して気づいた。そういうものを含めて、これからも活動をしていきたい。石焼まつりを何とかつくりあげて、盛り上げていきたい。

野口智子さん
緩急自在、ファストとスローとそれを選択できる豊かさがあることが素晴らしい。日光で、今までどおりのドンちゃん騒ぎタイプのファストライフ観光は、それはそれであっていい。捨てろと言ってるわけじゃないが、それだけの時代じゃない。1週間くらい、ゆっくり歩いて地元と丁寧に付き合いたいとう人が増えてきている。そういうときには足尾や栗山の出番なのだ思う。足尾から、栗山から、鬼怒川や旧日光と繋ぐ観光メニューも考えられる。交流時代の観光の一番大事なのは人。まちづくりはイコール人づくり、自分自身を磨くことが結果、まちを良くしていくんだということになる。

坪井ゆづるさん
こういう話をするときに必ず一つ言おうと決めていることがある。それは、行政に頼るな、ということ。まちおこしとか産業不振の自治体で何が起きてるか、市民が行政になんとかしろといっている姿が全国各地にある。行政に頼ってうまくいっているところは、産業振興に関してはない。自分たちでなんとかしなきゃいけない。それを考えると、栗山地域は、「元服式」をやって、「親分子分」の関係を今も続けてる。これはそもそも行政的なものから縁遠い地域だったから続いているのだと思う。行政に頼らないで自分たちでなんとかしよう、と。そういうマインドを持ち続けていれば、恐らくうまくいく。行政は利用してもいいけど、頼ってはいけない。そこだけは肝に銘じていただければと思う。
神野直彦さん
全国さまざまいろいろな違いはあるけれども、ともすると日本人は「差異」ということと、「格差」ということを混同する。私たちは、格差は無くさなくちゃいけないが、差異、違いはお互いに大事にしあわなくちゃいけない。今、交付税という制度でもって、日本はどうにかまとめようとしているが、そうしたことも含めて格差は是正するけれども、差異はそのままそれぞれらしくしなくちゃいけない。格差と差異というのは違うんだ、それを乗り越えて、私たちは共通なものを、やってくんだということが重要だ。そのことは何かというと、私たちは日本国民は仲間なんだという共通感。そして仲間である誰もが、誰ものために貢献したいと願ってること。日本の国民に内村鑑三先生が残した言葉。それは「成功本位の米国主義になろうべからず。誠実本位の日本主義にのっとるべし」。私たちは日本全国いろいろな差異はあるけれども、お互いに友達なんだ、自然も同じ、ということを基本的に考えて、行動しなければならない。

斎藤文夫市長
合併後、それぞれの違いを認め、尊重しながら、そういう中から同じ日光市民になったんだということを、早く皆で感じるようになったらいいなぁと。どうしたら一体感の醸成ができるか、ということに取り組んできた。グローバリゼーション、市場主義経済では解決できないものは福祉だ。高齢者を大切にするように人の心を変えねばならない。高齢者支援、そういう中で観光が生まれ、外来者も高齢者の暮らしを認めながら交流を求めていきたい。地元だと自分のまちが見えなくなる。そう、今回わかった。外部から来た人は気づくことが、ただ住んでいる人がなかなか気づかない。やはりそこに日光流観光の課題があると思う。日光は日本一と皆から言われる。日本一の資源、自然があるのであれば、やはり日本一の観光地、日本一の交流を市民の皆さんと一緒に作っていかなければいけないなと思う。

増田寛也さん
例えば、そこへ行ってみたいなというときに、何で栗山を選ぶのか、何で足尾なのかというところが大事だ。いろいろな地域資源があるところは全国にある。何でか?っていうそこに、またひとつ違いがあると思う。そこを乗り越えると、その地域は光り輝いていくだろう。
岩手で知事のときに「がんばらない宣言」を出した。もっとゆっくり手間ひまかけてというのは、それぞれの地域でそれぞれの伝え方があっていいと思う。多様な価値観があって、大事なことはそれを持ちつつ、皆が同じ和の中に入っていって、そして新しい価値、新しい考え方をお互いつくりだして共有するというところに重要な意味がある。神野先生から「ちゃんぽん」という話が出た。世の中は「ちゃんぽん」だけども、そのことから何か大きな化学変化があって、新しい価値が出てくると思う。
年に1度、各地域でこうしたフォーラムを開催しているが。今年は諸事情でこの2月の厳冬期、雪の時期ということになった。ただ、私はこういう冬の時期に、まわりが素晴らしい紅葉や、若葉に目を奪われることなく、そこにお住まいになってそこの地域を守ってきた皆さん方のお話をも聞くことができて、大変良かったなと思う。大変実りの多い時間を過ごさせていただいた。雪が溶けたら水になるが、春にもなる。また、季節をかえてうかがいたく思う。
「スローライフ・フォーラムin日光」はこうして幕を閉じました。「交流」でお互いを磨きあったことが、それぞれのお土産です。日光市民の皆様これからも繋がりましょう、日光市職員の皆様もありがとうございました。
3日間シンポジウムと夜なべ談義全ての司会をして、盛り上げてくださった長谷川八重さん、スタッフとして走り回ってくださった篠原伊佐武さん、梅田陽子さんにも感謝です。