スローライフ学会分科会読書会開きました

2006年6月に発足した「スローライフ学会」の分科会活動として
10月18日、スローライフな本を楽しむ読書会を都内で開きました。
今回のテーマ本は、
当NPO理事でジャーナリストの筑紫哲也氏の著書
「スローライフ ―緩急自在のすすめ」(岩波新書)。
[img id=72]スローライフ本>参加者はそれぞれに、「スローライフ」を読んで印象的だった言葉を抜き書きしたレポートを用意。章ごとに報告しながら、なぜ印象的だったのか、そこから考えたこと、感想などを和気あいあいと話し合いました。
[img id=73]読書会風景”>
以下は、読書会世話人の早野透さんからの報告です。
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第2回スローライフ読書会報告
2006.10.18開催
「スローライフ」(筑紫哲也著 岩波新書)を読みました。参加者は7人。
本は15章あります。それを鈴木理映子さん、小池利佳さん、早野透の3人で5章ずつ分担して報告しました。担当の章から印象的な言葉を抜き書きして、それぞれ感想を述べました。
「それで人は幸せになるか」「私たちはゆっくり生き、ゆっくり食事をする。広場の教会の時計台の針は止まっているかもしれない。正確に時間を刻んでいないかもしれない。それでもよかったら、どうぞ私たちの町にいらしてください」「ゆったりしようが、急ごうが、それを決めるのは自分」「自在とは、おのれが在るということではないか」などなど、言葉の抜き書きをしたら、この本のいわんとするところがわかりました。
議論が進んだのは「こどもの世界」のこと。鈴木さんが抜き書きした中に「跳ぶ、走る、投げる能力がともに低下し続けるというのは、子どもたちが身体を使って遊んでいない証拠である。そして、お腹が減るという状況にめったにならない子たちが多いという」というフレーズがありました。
昔はこどもは外が暗くなるまで遊んで、「かあちゃん腹減った」と家に戻ってきました。保育園に勤める鈴木さんが、「こどもはハシで食べる方がいい。食べ物をひとつずつ確かめてゆっくり食べることになる。スプーンだとかきまぜて食べてしまうんです」と話してくれました。なるほどね、ハシはスローライフで、スプーンはファストライフということかもしれませんね。
筑紫さんが渡辺京二著「逝きし世の面影」という本から引用して、文明開化のころ日本を訪れた西洋人が「ニッポンのこどもたち」に魅了されたことに触れています。「街はほぼ完全に子どもたちのものだ」「「街頭で最も興味ある光景は、子どもたちの遊戯」というのが西洋人の観察です。たしかにぼくらの子どものころまではそうでした。いまは車が選挙して、子どもが街路でなわとびしたり、石蹴りしたりしている光景はまったくみられません。こどもたちの世界こそスローライフだったのです。
筑紫さんの本は最後の15章を、「真の勝ち組になるために」という表題でしめくくっています。この章を担当した小池さんから、果たしてスローライフは「勝ち組」になるとかいう言い方がふさわしいのか、という疑問が出されました。そうですね、スローライフはもっと、そこを突き抜けた生き方であるように思います。スローライフが何か「恵まれた階層」の生き方のように思われている傾向もあるよという指摘もありました。
みんなで議論すると、スローライフって何だろうと思索が深められたように思います。ぼくたちも何となくはやりのスローライフに興じていたくはありません。
読書会に参加したのは、3人のほか、中野智規さん、川島正英さん、野口智子さん、永高康江さんでした。
次回は、辻信一さんの書いた「ハチドリのひとしずく」を読むことにしました。またみなさんに報告することにいたしましょう。
読書会世話人 早野 透