4月「さんか・さろん」高坂勝さんのお話

4月のさろんゲストは著作『減速して生きる―ダウンシフターズ』を出して話題沸騰の高坂勝さん。減速して生きる暮らし・半農半Xのスローライフの実践論を聞きたいと、超満員のさろんとなりました。
◆「LOCALIZATION-田舎に散ろうぜ!」
◆高坂勝さん(オーガニックバー「たまにはTSUKIでも眺めま)しょ」亭主
=スピーチ要約=
■年収が半分でも幸せに生きられる
僕が30歳でサラリーマンを辞めて、世界を旅して、7年前に開いたオーガニックバー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」は、昔の自分への語りかけでもあるし、外へのメッセージでもあります。
サラリーマン時代は車を1台、バイクを2台、自転車は何台もあって、家は家具と家電だらけで、たくさんの洋服と靴で溢れ、しかもそれを使うための時間はなく、支払いに追われる生活でした。今は当時の年収の半分ですが、最初は週1日だった店の休みを、今は2日に増やして、妻や子どもと一緒の時間が取れて、千葉の畑でオーガニックの米と野菜をつくって、おいしくて安全なものを食べて、豊かで実に幸せな生活ができています。
ゆとりのない生活から減速=ダウンシフトしたら貯金ができて、親に仕送りもできて、しかも自由が生まれた。それを本にしたのですが、不思議なことにたくさんのメディアに取り上げられました。
でも、僕は大企業を否定しているわけでもないし、サラリーマンが悪いといっているわけではない。それ以外にも生きる選択肢があることを伝えたいですね。
■グローバル化のトリック
グローバル化というのはおかしな世界で、ハワイに行くほうが沖縄に行くよりも運賃が安い。国境を越えたら非効率になるはずなのに、中国の労賃を求めて企業が日本から脱出する。日本は社員を大事にする国だったはずなのに、正社員が減って派遣が増え、本来非効率であるはずのことが、お金のトリックでまかり通って行く。それで幸せかといったら、誰も幸せになっていない。もっと、バランスの取れた社会、健全な資本主義というものがあるのじゃないか。
それは小さな範囲で消費や需要を回していく分かち合いの経済が働く社会ですね。
店では自分で作った有機農産物の他に、各地の本物の素材で料理したものを出しているので、たくさんの農家さんを知っていますが、みなさん実に豊かな生活をしている。取れすぎれば、近所に配る分かち合いの暮らしは豊かです。食料が調達できれば、怖いものは何もないんですね。
■これまでの資本主義から卒業
自分でも畑をやってみて、また、田舎の皆さんの暮らしを知ってから僕は、「LOCALIZATION-田舎に散ろうぜ!」といっています。
お金とメシとエネルギーを地域循環させる社会。お金とメシは顔が見えて、どこにお金が回っているかわかるところに払いたい。それは半農半Xで可能になる。僕の場合は、半農半“呑み屋のオヤジです。XはITでも、歌手でも、自分のやりたいもので組み合わせる。
今回の大震災で原発の怖さがわかった。原発はシステム開発に3千億円、ウラン処理に1兆円の予算が使われ世界で一番高い。その開発費を自然エネルギーに使えば、太陽や風や水といった再生可能なエネルギーで、サステナブルな循環型地域をつくること可能なんです。でも原発利権や既得権益を守るシステムのせいでできていない。それを変えましょう。
脱というよりも、卒業ですね。人を幸せにしないシステムから卒業する。日本人が何をどう選択するのか。いま、世界が日本を見つめている。今回の大震災は、大変悲しいことですが、日本人がより健全な生活を選択をするための気づきのチャンスだと思います。 【2011年4月19日開催】