奈良・川上村フォーラム報告①「視察」

明けましておめでとうございます。
昨年11月23・24日と奈良県川上村で「なんゆう祭」の一環として、開催した「スローライフ・フォーラムin水源地のむら川上」について数回にわたりご報告します。
なお、スピーチ、講演、シンポジウム内容は要約です。全体のテープおこしなどをご希望の方は当事務局までお問い合わせください。


11月23日。お天気に恵まれ川上村の紅葉が美しく、さわやかな日和となりました。
50年がかりで完成した大滝ダム。様々な苦労を乗り越えて、昨年春に完成しました。
ダムサイトを交流の場に利用していこう、ダム湖をスポーツに利用しよう。地元では、できた以上はむらの暮らしに活用して行かなくてはという雰囲気が盛り上がってきています。
その、見本となるような催し「なんゆう祭」では、ダムサイトにたくさんのテントが出て、奈良県南部の物産販売があったり、村のお弁当コンテスト、木こりさんの技を競う催しなども
行われました。ダムが賑わいの拠点となったのです。
この日、「なんゆう祭」の一環である、スローライフ・フォーラムのために、スローライフ学会会員や一般の参加者が川上村に集まりました。まずは30数名がマイクロバスで村内見学。

白屋橋に行きました。向うに見えるのが川上村白屋地区です。2003年大滝ダムの完成が間近に迫り試験貯水が行われたときに、ここで民家や道路に亀裂が入り、地すべりが。
このため37世帯が移転、ダムの完成は10年先となりました。村人にとってはつらい思い出の場所ですが、今はここに新たな景観計画がなされ、杉の多い村内で貴重な花や紅葉の景観が育ちつつあります。
見学したスローライフ学会会員の中に、この橋の建設に関係した方がいて、臨場感ある解説もありました。花の美しく育ったころに、再びこの橋からお花見したいものです。

奈良県南部地域の吉野町や川上村の“吉野杉”は国内外に知 られる高級ブランド材です。人工三大美林のひとつであり、その美林の中に身を置くだけでも何か美しい清らかな生気を感じます。
500年以上前から植林が進められ、川上村のほとんどの山は人工林。長年この山仕事で生きた村ですが、昨今は安い外国産の木に押され国内産の木は売れず、放置される山林が増えつつあります。
でも、川上村ではまだまだ踏ん張っている、とのこと。切り出した杉はヘリコプターに吊るして運び出すそうです。国産の木をもっともっと使い、木のある上質の暮らしをしたいとつくづく思いました。

続いてうかがったのは世界遺産の大峯山の登山口前で、130年前から宿をしている「朝日館」です。
川上村柏木は熊野街道の中継点で宿場町として栄え、行者宿として周囲にも昔は宿があったそうですが、今はここだけ。明治、大正と続いたその建物で、今もその古さを大切に女将さんが頑張っています。

手作りの「柚子羊羹」はここの名物。それをいただきながら、2階のお座敷で昔話を伺いました。台所にはかまどが残り、羊羹づくりやご飯炊きに今も現役で使われています。
ずっと居たくなるような懐かしさ、ここに寄って皆が川上村の温かな心に触れたひとときでした。
川上村のほとんどは人工林、このため貴重な天然林を後世に残そうと、三之公地区約740haを村で購入し、「水源地の森」として保存しています。
その「水源地の森」をフィールドに、森の美しさ大切さを実感する森林学習を進めているのが「森と水の源流館」。ここでは、まるで森の中にいるようなジオラマを観ながら、森の役割について学びました。

大滝ダムの工事で、村人の暮らしは変わりました。かつての家が湖中に沈んだ人々もたくさんいます。「丹生川上神社上社」(にうかわかみじんじゃかみしゃ)も山の上に移転した社。かつてはこの、見下ろす湖面の下に上社がありました。
移転の際の調査で、本殿跡の真下から平安時代以前に遡る自然石を敷き並べた祭壇跡が出土したとのこと。はるか昔からこの上社は川上村の村人の拠り所だったのでしょう。

水や雨の神、龍神を祭ってある丹生川上神社上社。信仰の場であると同時に、村人が集まり、村おこしのために使われる場になってほしいと宮司さんは話します。
ここには昔の基礎の石や、ご神木が抱えていた石などが博物館のように展示もされています。川上村自慢の名水もここで味わうことができました。
そして、ここでいよいよ手作り交流会の「宴」が行われたのです。(つづく)”