「蝉と団扇」蝉を模った香袋と奈良団扇

蝉と団扇

8月の部屋の一隅には、蝉を模った訶梨勒(かりろく)と奈良団扇。正倉院の御物(御物)にも記載がある植物・訶梨勒の実(訶子)は香りも高く万病を治す治療薬とされ、袋に入れて吊るし邪気を祓ったといわれます。その後室町時代になり、錦や緞子の美しい布で仕立てた袋に他の香料と一緒に収め、飾り物の香袋となったのが「訶梨勒」です。袋は古来より復活、再生の象徴とされてきた「蝉」を模ってつくり、夏の掛物としました。団扇は奈良らしい文様が透かし彫りされた奈良団扇。奈良時代に春日大社の神官の手によってつくられたのが起源といわれます。何よりもシンプル。色鮮やかで飾っても美しく、実用性も兼ね備えていて、大好きな夏のアイテムです。外国へのお土産品にもお薦めの逸品です。

室礼・文:丸山薫(心葉主宰)